逢魔ヶ時に鬼魔は来る。   作:庵パン

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アニメの方、どうなっちゃうんでしょうね?
49話辺りネズミが良い仕事するとか噂されてますが、この目で見るまで安心出来んのですよ。
まぁ鬼太郎に活入れるのがネズミの役どころだろうとは自分も思うんですが。
ねこ姉さんの復活まだ?

で、今回からこっちでも鬼太郎とねずみ男が本格的に出て来ます。
オリ主も妖力はあるけど妖術が無いなりにまぁまぁ頑張ります。
他の妖怪も出ますが、ねこ姉さんはまだ出ません。


萍水の魔物
1話


池沼グループが責任を持って新田雅子の遺族の所在を調べているのだが、一磨の耳には何の音沙汰もない。

池沼グループの最高経営責任者が夫でも妻でもなく、その先代である池沼・呉虎狼(ごころう)なのは初耳だったが、あの爺さんはこの事態に真摯に向き合い、調べる気があるのだろうか?

研修同期の(よしみ)でお台場の本社まで赴き、ダミヤン店長で過去の研修生名簿を見せて貰おうと思ったが、個人情報ということで既にダミヤンとは関係無い一磨は見せて貰えなかった。

「調査中という名目で、体よく支払いを逃れようとしてんじゃないだろうな?」

そんな疑念を受け付け嬢にぶつけてしまうが、彼女らも企業末端部の手足に過ぎない。

自分でも池沼(現:松本)への怒りを手当たり次第の池沼グループ関係者にぶつけてしまったのだと判る。

その事を詫びると、冷静きなってから物事を考えるようにした。

 

*  *                            *  *

 

 

情報を集めるのは、人間のネットワークだけの話ではない。

都市部や住宅地で良く目にするハシブトカラスは、元々森林を住処としてきた。だが森林には天敵である猛禽類が存在することと、都市部で餌が取り易いことで彼等はハシボソカラスに代わり、日本を代表するカラスとなった。

ハシブトカラスは非常に頭が良く、幼鳥の時から飼うと非常に懐き、九官鳥のように喋ることもできるし、野生では余暇を使って遊ぶこともある。

そして、天敵が来た際には仲間に知らせ、群れで逃げて行くのだ。

鳥類ですらネットワークを持つのだ。先月になって知る様になった妖怪の世界では、どのようなネットワークを持つのか。想像するだに楽しみもあるし、相応の怖さもある。

一磨は調布に行って一番身近な妖怪……であろう新井・マスを探すことにした。

彼女は深大寺付近の住所を履歴書に記入していたが、その場所は都内でも滅多に見ない森林になっている。

少し場所を移ると池沼邸よりも巨大な建造物がある。個人の家ではないと思われるが、不明だ。何せ場所が遠い。

個人の邸宅か公共の施設かはさて置き、一磨は新井を探さなければならない。まさか遠くに見える巨大な建物が新井の家ではないと思うが、それ以外の建物と言えば北側に植物公園がある程度だ。

(一体どこに……?)

そもそも履歴書の住所欄に「深大寺付近」と書いてるだけで受け付ける池沼がおかしい。

だからと言って他の者が「東京都」だけを記入して済む訳でもないあたり、池沼は金儲けの嗅覚が発達していたようだ。

「困ったな……」

そう独りごちる一磨に声を掛ける者がいた。

「何かお困りスか?」

見れば、以前に池沼邸の前で会った顔だけ出した貫頭衣の男である。

以前は気付かなかったが、この男からも微量な「気」のような物を感じる。鬼から感じたソレとは違うが、同時に池沼に似た感覚も感じさせた。

池沼に「氣」を感じた訳では無い。我欲という物が似てるのだ。

「新井って人を探してるんですけど、知りません?」

少しだけ池沼に似たな氣、というか気配を感じながらも一磨は会話を続ける。

困ってるのは本当の話だからだ。

「新井だけじゃ分かりませんねぇ」

「新井・マスって人。それとあなた、他の人間と違いますよね?」

他の人間と違うというか、臭い。ここまで臭う人間というのはこれまで人生で遭遇したことがない。

「……あぁ、この間の人間か。それじゃその新井・マスって人間探したら、謝礼出して貰えるか?」

新井も探さなくてはならないが、最終的には新田・雅子の両親も探さなくてはならない。

「まぁ、礼金くらい出すけど、あと二人探して貰いたい。できる?」

それに続けて一磨は問う。

「その娘ももう亡くなってるけど、本当に出来るんだろうね?」

「えっ、もう死んじゃっつてんの?」

以前に「ねずみ」と呼ばれていたその男は、雅子が既にこの世に居ない事を知って戸惑った。

何らかの手段で生きてる者を探す方法はあるようだが、鬼籍に入った者の遺族を探すのは難しいようだ。

「何やってるんだ。ねずみ男」

二人の会話に入ってきたのは小学校中学年ほどの少年だ。

左目を髪で覆い隠している。

「いや、ちょっと妖怪的情報網で人を探して欲しいって話をしてたのさ」

先日の鬼や新井から感じ取っていた「氣」が妖気に類するものと仮定して、一磨は敢えて「妖怪」的な…と口にする。

「貴方、確か以前に……」

この日、改めて一磨は鬼太郎と知り合うことになった。

 

 

*  *                            *  *

 

 

「貴方の言うことは解りましたが、死んで地獄まで見てきた貴方がどうしてこの場に居れるのか解りません」

「俺にだって解らんよ」

それも含めて新井を捜し、補償費用の件も併せて聞こうとていたところ、ねずみ男と遭遇したのだ。

「それより鬼太公、どこ行くつもりだったんだよ?」

鬼太郎は敢えてか否か、ねずみの言葉をスルー。

「おい鬼太郎、待てって」

「多摩の天狗から頼まれたんだよ」

「また金にならない話か」

一磨は自分の感覚に納得した。池沼に似た気配は、このような守銭奴的な気配だったのかと。

「お前には関係ないわい」

鬼太郎に隠れていた何時ぞやの目玉の妖怪が頭を現して言う。

「ちょっ、ちょっと待ってくれ」

一磨は今にして思い出した。宋帝王が口にしていた「 怪気象」という現象を。

その現象から世の中を守るよう、一磨は宋帝王から言い(つかさ)どっている。

「妖怪なら〈怪気象〉って聞いたことない?」

率直に訊ねてみたが、鬼太郎は知らないという。

今気付いたが、人間に色々と尋ねられて傍目にも鬱陶しそうだ。

「あぁ、すまん。俺ばかり色々聴いて」

相手は人間ではない。異質な存在だ。

見た目は人間の少年に見えても秘めてる「力」が違うのは、彼等の世界の存在を知ったばかりの一磨でも判る。

「まぁ鬼太郎。そう邪険にするでない」

一磨に助け船を出したのは鬼太郎の頭の上に乗ってる目玉の妖怪だ。

「儂は目玉のオヤジじゃ。この鬼太郎の父親じゃよ」

丁寧に自己紹介されてしまった。これには一磨も姓と名を名乗り反す。

「……随分と、顔が似ない親子なんですね」

今までよりも鷹揚に話す一磨は、この目玉の親父様は話せる妖怪であることを直感した。

「それについては、君に時間が有れば道すがら話すとしよう」

こうして一磨は鬼太郎が出生してからの話を聴くことになったのである。

 

「その昔、日光の寂光寺(じゃっこうじ)覚源上人(かくげんしょうにん)という皆から尊敬されるお坊さんがおってな、その上人が地獄を巡って来たという話があるのじゃ」

道中、目玉の親父からは一磨が知らない……いや、知ってはいたが忘れていた話を鬼太郎と共に聴かされていた。

覚源上人は雲に乗って地獄門を越えたのだが、一磨は一般の死者として長い道のりを歩いて地獄まで行っている。

その違いがあるのだが、一磨はそれを訂正するどころかでは無かった。

「カ、カラスさん。余り揺らさないでよぉ……っ!」

化けカラスの大群に綱……というか紐で椅子を引っ張らして空中を飛んでいるのだ。

この秋山・一磨――苦手な物は無いかと思いきや、高所恐怖症である。一般的なジェットコースターなら足場があるから平気だが、足場の無い宙ぶらりん状態だと生きた心地がしない。

鬼太郎は近くで一反木綿という九州弁の妖怪に乗っているが、アレはアレで乗った感じがしない。実に心許ない浮遊感なのである。

「この紐、切れたりしない!?」

化けカラスが変なマニューバを取ると絡まって落ちないだろうか?

水場の妖怪と聞いて、人類の英知の結晶入ったリュック背負う一磨は、足場のある木綿の方に乗れば良かったと後悔したり、落ちたら天命と悟りを開きかけながら目的地の奥多摩へと向かうのだった。

 

 

*  *                             *  *

 

 

奥多摩で待って居たのは人……ではなく、姿形は人に近くとも明らかに人外の存在――天狗

しかも白い羽毛の鴉天狗である。

「目玉の親父殿、鬼太郎殿。お待ちしておりました」

言う白鴉天狗は、アルビノの赤い瞳を一磨に向ける。

「この人間は……?」

その鴉天狗の質問は最もだろう。鬼太郎達は妖怪の用事で呼ばれたのだろうが、一磨は妖怪を感じ取れるとは言え人である。

「まぁ白延威(しらぬい)。聞いてくれんか、この人間にも訳あってここまで付いて来たのじゃよ」

白延威という鴉天狗を含め、一磨は此処で初めて彼等に地獄を巡り、現世に戻ってきた経緯を話す。

「俄かには信じ難い話ですが……」

「人間の中ではあるにはある話じゃ。大天狗にも心当たりのある話じゃぞ」

明らかに怪訝そうな白延威の赤い目は、一磨には居心地の良いものではない。それでも目玉親父は一磨がこの場に居る理由を説いてくれる。

「近頃の人間は我ら妖怪が存在することも認めようとしないのです。そんな人間と……」

「待て、実際見て話し合ってるだろうが。実際俺自身、最近の若い奴らは……とか思うことはあるけど」

同じことは古代エジプトから嘆かれている。つまり、ジェネレーションギャップは何時の時代にも存在するのだ。

「ともかく怪気象なんて起きたら困るんだよ。それを止める手段を得る為に、協力する機会を俺にもくれないか?」

「怪気象など聞いたこともない。人間が起こした数々の戦なら見てきたがな」

「それは……産まれて半世紀経ってない俺に言われても困るんだが」

若干、言葉を詰まらせながらも人間が起こす業を問い詰められても、それは一磨以外の先人が始めたことなので返す言葉もない。

「怪気象に大天狗様に聞いたり、書庫を調べてみても良かろう。ともあれ、今は白延威が大天狗様に命じられた務めを終わらせるのじゃ」

目玉の親父のその言葉で、3体の妖怪と1人の人間は多摩川の源流を目指す。

向かう最中、白延威の本拠地が高尾山であることが会話の中で判明した。

「あぁ、やっぱり高尾山の天狗だったのか」

高尾山から40km以上離れた多摩川源流まで出張とは、頭が下がる。

尤も、高尾山口に住む人間の会社員は毎朝朝早くに起きて、満員電車に揺られて60kmほど離れた都心の会社に向かってるそうだが。

「そういや、鴉天狗が日本を守ってるって話があるけど、他の妖怪の手を借りたりもするの?」

日本で天狗と言うと、今でこそ鼻の長い天狗をおもい浮かべるのだが元々は全て鴉天狗であることが一般的だった。

一説には仏法を守護する八部衆の1つ、迦楼羅(カルラ)天が変化したものともいわれ、江戸時代から明治時代にかけて、厨子に入れられて保存されている鴉天狗とされるミイラが修験者達に担ぎ上げられ、利益を説きながら諸国を回ったといわれる。

もっとも、ミイラに関して言えば学術調査でトンビであることが判明しているし、それ以前にも平賀源内の「天狗髑髏鑑定縁起」ではそもそも不老不死とされる天狗の骨がなぜあるのだという意見を問う者もあったということが記されている。

 

「僕も、妖怪が人間界で騒ぎを起こす件数が近頃になって急に増えたという気はしませんね」

「しかし形体は変わっておるぞ。一磨君が言うには、先日の渋谷駅の爆発事故も妖怪が起こしたものなのじゃろ?」

「あぁ、親父様。敬称は要りませんから」

この歳で君付けされると背中がむず痒い。

「 あぁ、そうだ白延威さんが鬼太郎を呼んだ用件というのは?」

恐らく多文、絶対歳上なので一磨は 白延威を「さん」付けで呼ぶ。

「そうだな。水源に(あやかし)が出たのだ。幸い人間が来る季節ではないが、放っておいたら何時喰われる者が出ないとも限らない。そこで鬼太郎殿を呼んだのだ」

「相手はどんな姿してんの?」

人間を食うタイプとは、最初から危険なヤツである。

或いは、肉食性の野性動物に近いのか?

河童をイメージしてたから、頭の皿の水を超吸水性ポリマーで弱体化させようと考えていたが、熊や虎の化物なら意味がない。

「その体は水で出来ている。動きは亀の如く鈍いが巨体を持つ水の妖怪だ」

それを聞いて、別の事を懸念しなくてはならなくなった。

(コレ、絶対足らんな)

 

*  *                            *  *

 

 

春は近いと言っても未だ2月である。

奥多摩の水源を行く人影は一磨達の他に無く、清流は静かに下流へと流れて行く。

啓蟄までには暫し日にちも有り、寒空の清流には虫も獣も見られない。

ここに来て一磨は、長靴付の胴長で来るべきだったと深く後悔した。

鬼太郎は下駄履きにも関わらず妖怪故に警戒に岩場を跳び回ってるし、白延威に至っては低空飛行で水に濡れる心配がない。

ここに来る際の鬼太郎もそうだったが、一反木綿という布妖怪も揚力を得ているのか解らないし、白延威の体躯を宙に浮かすのに何の風圧も無い。

一方の一磨は喫煙者である自身を今日ほど呪ったことはない。岩に手を突いて肩で息をしている。流石に失意体前屈のように地に両手を突くことはなかったが、年齢相応の体力はあると思っていた。

池沼から注意された中に正しい事が有ったとは認めがたい事実だが、考えて見れば一磨も37のアラフォー。もう立派なオッサンである。

ちなみに失意体前屈とはorzや_ ̄|○という|AA(アスキーアート)の形だ。前者はオルツとも言われ後者は「もうみてらんない」と読ませることもある。

そんな一磨を置いて、鬼太郎と白延威はどんどん先に行ってしまう。妖力が高いとはいえ、ただのオッサンが彼等の世界で生きて行くのは不可能なのか?

しかし彼等の後方を行く一磨はこの世界でやって行かなくてはならない理由がある。

そうしないと母の魂も地獄に居る同期の彼女も救えないのだ。

白延威は足場の悪さに手古摺(てこず)る一磨を一瞥してから、鬼太郎と共に先を見る。

「居ますな。だがこの気配……」

「急ぎましょう!」

2人が何を感じたのか解らないが、俄かに彼らが急ぐのを見て目標を発見したのだと理解する。

「……ふんぬおァ!!」

気合い1番岩を蹴り、先を征く2人を追う。その一磨が見たのは、一人の女性が透明の不定形妖怪に捕らわれているところだ。

「なんだぁアイツ!?」

河童も水虎も実際には見た事が無い一磨だが、そのどちらとも違う妖怪であることは判る。

そして、人に害を成す者であることも理解した。

「止めろ!水妖!」

「この人間から飛び込んでかきたんだよお」

亀の如く鈍重と言われた通り、実にゆったりとした喋り方だ。

「それはお前の姿が見えなかったからだろ」

「そうは言っても折角喰われる為に飛び込んで来た人間を喰わない訳にも……」

「それ違うから!見えないのに飛び込むかって!」

鬼太郎と水妖の問答に一磨が追い付く。どうやらこの水妖怪は自分に喰われる為に人間が飛び込んで来たと思ってる節がある。

「人間を喰う必要無いだろ!もっと別のモン食えって!」

サブカルチャーに見るスライムのように強い酸性が有るわけでは無さそうだが、半身以上が水妖に引き込まれた女性には意識が無い。

息が出来ないのであれば何れ死んでしまうのは確実だ。

「水妖!その人を放すんだ」

「断るよお。折角摂れた人間だろお」

「鬼太郎殿。人間に危険があるとは言え先ずはヤツの体を切るしかない!」

白延威が叫ぶように鬼太郎に声を掛けると一磨も漸く問題を理解した。

鬼太郎や 白延威が攻撃すると女性にも当たってしまう可能性があるのだ。

「二人とも待て!俺に任せろ」

「人間に何が出来る!?」

「21世紀科学の真髄を見せてくれよう!」

一磨が腹に抱えたリュックのファスナーを開く。

中から取り出したのは大量の吸水性ビーズ。

「食らえ!ポリマーハリケーン!」

敢えて説明すると、紙おむつを切り裂いて取り出した大量の吸水ポリマーをばら撒く必殺技である。

効力があるのは限られた相手のみだ。

「な、なんだとー!?」

白延威と水妖怪ほぼ同じリアクションで驚きの声を上げる。

一磨はそのリアクションの最中、げっそりと病的に痩せた水妖怪の体内に手を突っ込んで女性を引っ張り出して救出した。

「ほら、今だっ」

女性を庇いながら退避する一磨の後ろで、白延威は柏葉のような団扇で風を操って水妖怪の手脚を斬り、鬼太郎はチャンチャンコで本体を縛り上げた。

「わ、わかった~。勘弁してくれよぉ」

こうして、鬼太郎が呼ばれた理由である水妖怪は至極あっさりと白旗を上げたのである。

 

 

*  *                               *  *

 

 

鬼太郎に水妖と呼ばれていた水妖怪は今年産まれた(というか発生した)個体であるとが、白延威も言っているし当の本人もとい本妖からの証言でも判った。

(やたらデカい新生児だな)

一磨はそう思う。人間は現在地球上確認される動物の中では比較的大型な動物だが、ここまで巨大だと食料に苦労しそうだ。だからこそ人間を取って食べようとしたのだろうが、妖怪なのだから摂取すべき栄養が哺乳類とは違うんじゃないかと考える。

「今までどうやって生きてきた?」

既に犠牲者がいた可能性も考えてした一磨の質問だが、

「オラ水さえ有れば生きていけるんだ」

「じゃあ人間喰おうとするなよ!?」

この妖怪曰く、人間は飼うにしても食うにしても贅沢な嗜好品らしい。

「まさかお前らもなのか!?」

同道してきた二体の妖怪に訊ねる。

「僕は人間と同じ米とかですよ」

“とか”の部分が気になるが鬼太郎の食性は人間と余り変わらないらしい。

「いや、鬼太郎が産まれる前に水木という青年を蛙の目玉やヤモリの焼き物で持て成したことがあるぞ」

甲高い声が聞こえ、誰かと思えば鬼太郎の髪の間から顔(というか目玉)を出した目玉の親父だ。蛙の目玉はタピオカと脳内変換出来たとしても、やはり彼等の食性は変わっているようだ。

気付かない故に数に入れて無かった目玉の親父の話は参考程度に聞くとして、鴉天狗はどうであろうか?

「私は木の実や鼠などの小動物ですね。修行すれば霞でも食べていけるはずです」

正に鴉と修験者が合わさったような解答である。

「それより秋山殿、先程までの数々の御無礼。本当に申し訳ない! まさか貴方があのような術の使い手だったとは、恥じ入るばかりです」

いやに改まった言葉遣いになっていると思ったら、物凄い勘違いをしていた。

「いや、そこまで難しいことをした訳じゃないし。まぁあそこまで上手く吸水性ポリマーを撒けたのは意外だったけど」

それでも白延威は一磨を褒めそやす。

「しかしあの気迫。人を喰う妖怪と耳にしながらも恐れを知らず水妖に立ち向かい術を仕掛けた」

言われて見れば確かに短慮だった。水妖怪は物理法則に則り吸水された物の怪……即ち物の病だったが、以前の鬼などの怨霊の類だったら一磨が第二の犠牲者だったのだ。

「あと、何の術でもないから」

「なんですと!?」

今更驚く白延威を余所に、一磨はこれから取るべき人生の進路を考える。

彼が見る空には、ゲゲゲの森という鬼太郎が棲む森に、小さくなった水妖怪を吊り下げ、移住させていく化け鴉の群があった。




白延威って良い名前を考え付かなかったので大神のアマ公ちゃんみたいな感じになっちゃいました。
イメージ的デザインは「うしおととら」威吹です。
「いぶき」を変換したら当パソの辞書に「威吹鬼」ってあったんですが、鬼の字が付くと鴉天狗って感じしませんよね。

まぁそんな訳で、今回の妖怪退治は(退治してませんが)1話で終了です。
でもこの章はまだ続きます。
で、救出した女性に付いても次回以降に触れます。

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