とある科学の力学支配(オーバーフロー)   作:甘党もどき

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どうも甘党もどきです。

更新のペースが安定してなくてすみません。
間が開き過ぎないように頑張ります。

では第9話どうぞ。


誰よりも近くにいた

絶対能力進化(レベル6シフト)計画をどうするか?」

 

「そうだ。俺もオマエも少なからず実験に対して責任がある。最初は俺一人でやっちまおうかと思ったが、それじゃオマエが納得しねーだろ?」

 

「そ、それはそうだけど……」

 

霧嶺冬璃は御坂美琴の心を見透かしていた。

人とは追い詰められると意外と行動が単純になってしまう。霧嶺はきっとそこから予想したにすぎないのだろう。

美琴は霧嶺冬璃の目的が測れないでいた。

絶対能力進化(レベル6シフト)計画をどうするか、と目の前の少年は言った。

自分にも責任がある、とも言っていた。

それ故に美琴は一つの可能性を導き出した。

 

(コイツは、味方なの……?)

 

そして、霧嶺はその考えすらも分かっていたかのようにハッキリと告げる。

 

「あぁ、味方だとか思うなよ?俺はただ利害が一致するからオマエと話に来たってだけだからな」

 

「利害の一致……?」

 

「オマエは『妹達(シスターズ)』をこれ以上犠牲にしたくない、だから実験を止める。俺は一方通行(アクセラレータ)が実験に参加する原因の一つを作った可能性がある、だからその責任を取る。ほら、間違っちゃいねーだろ?」

 

その通りだ、と美琴は心の中で頷いた。

幼かった御坂美琴は筋ジストロフィーの患者を救うつもりで、自身のDNAマップを提供した。だがそれは美琴のクローンを作るために使われ、今もこうして実験の為に犠牲になっている。

美琴はそれを何としてでも止める、それが原因を作り出した美琴のせめてもの罪滅ぼしだと思っているからだ。

それならば霧嶺冬璃の言っていることも間違いではない。

しかし、ここで一つ問題が発生する。

美琴は霧嶺冬璃が言う『彼の責任』の意味が分からなかった。

一方通行(アクセラレータ)が実験に参加した原因の一つ、と霧嶺は間違いなくそう言った。

どういうことなのか、

美琴は聞かずにはいられなかった。

 

「アンタの責任って、何なのよ」

 

「ん?そうだなぁ、一言で言えば……孤独ってのが正しいかもな。俺はアイツから逃げたのさ」

 

逃げた。霧嶺のその言葉に嘘はない。

だが、それだけで、その一言だけで満足出来るほど美琴には余裕がない。

そうだな、と美琴の表情を見てから霧嶺は付け足す。

 

「信用も必要だ。いいぜ、昔話をしてやる」

 

そう宣言した霧嶺の目は未だに、どこか遠い所を見ていた。

 

 

 

学園都市に数多く存在する研究所、その一つに10歳くらいの少年は連れてこられた。

傍らには白衣を来た20代後半の男性。この研究所に所属する研究員だ。

顔立ちから彼らは親子のようには見えない。実際彼らは親子ではないのだから当然だろう。

少年の顔色はお世辞にも良いとは言えない。ストレスや不安、原因は様々だろうがとにかく、年頃の子供がする表情ではなかった。

さて、と隣にいる研究員が明るい口調で切り出す。

 

「今日から君にはここで生活してもらうよ。なに、悪いようにはしない。君にはこの街の頂点に立てる可能性があるのだから」

 

研究員は笑っていた。少年を安心させるように、少年に希望を持たせるように。

 

「……強く、なれるの?」

 

少年の声は暗いものだった。それでも視線は研究員に向けて上がっていた。

 

「ああ、なれるとも。それでまずは君に紹介しておきたい子がいるんだ」

 

その声に合わせるように、別の少年が通路の前から歩いてきた。

こちらも傍らに研究員を付けて。

 

「紹介しよう。彼は一方通行(アクセラレータ)。君もその内なるであろう超能力者(レベル5)の先輩、といった所かな」

 

少年が受けた印象は白。髪も肌も透き通るほどに白い。赤い瞳と灰色の服がより際立って見える。整った顔立ちだが中性的で女性と見間違えそうになるが、研究員の話によれば男らしい。少しだけ目付きが悪い。

 

一方通行(アクセラレータ)、紹介するよ。彼は霧嶺冬璃くん。君と同じ超能力者(レベル5)になる可能性を秘めた子だ。仲良くしてやってくれ」

 

こちらも顔立ちは整っており、一方通行(アクセラレータ)よりも男性よりな印象を受ける。だが、それと髪の色素は一方通行(アクセラレータ)ほど薄くなく、少し灰がかっているくらいしか印象は受けなかった。

 

「まだ来たばかりだからね、とりあえず検査を受けにいこうか」

 

そう言って研究員は霧嶺を別の部屋へと連れていった。

一方通行(アクセラレータ)はそれを横目で見ながら、研究所内の生活用スペースへ戻った。

 

 

検査は10分程で終了した。

身長や体重、血圧などを測り。その後に軽く脳をスキャンしたくらいだった。

霧嶺は別室で検査着から私服に着替えていた。

そこで部屋のドアがノックされ霧嶺の返事を待たずに開かれる。

 

「おっと着替え中だったか、すまないね」

 

別段研究員は驚くこともせず淡々と謝罪をした。

研究員はそのまま続けた。

 

「今日はこれて終わりだよ。せっかくだから一方通行(アクセラレータ)と話でもしてくるといい。これから当分は同じ研究所で暮らすんだ、仲良くしておきたまえ」

 

話を聞きながら着替えを終えた霧嶺は、研究員の言葉に頷くとその部屋を後にし生活スペースへ向かった。

 

 

一方通行(アクセラレータ)という少年は異質だった。

その名前。一方通行(アクセラレータ)というのは少年の本名ではない。彼にも元々は日本人らしい名前があった。

だが、能力の発現に伴いそれからはずっと能力名である一方通行(アクセラレータ)で呼称されている。

そして能力。彼はあらゆる向き(ベクトル)を操る能力を有している。そしてそれは普段自身を防御する反射膜として自動的に展開されている。

そのために発現した当時の彼は無意識の内に周りのモノを傷つけてしまっていた。

10歳程で周りから化け物と称され、恐れられてしまった一方通行(アクセラレータ)は孤独となった。

だが今日、一方通行(アクセラレータ)の『日常(いつも)』とは違うことが起こった。

霧嶺冬璃。新しく研究所に来た少年だ。

だが一方通行(アクセラレータ)はあまり期待していなかった。

何となくではない。それは彼の経験から来るものだった。

一方通行(アクセラレータ)の力は異質だ。周りを傷つけ、彼の周りからは人がいなくなる。

 

(どォせ、アイツも同じだ)

 

霧嶺冬璃もすぐに居なくなるのだろうと。だからこそ彼は期待しないようにした。

そこで一方通行(アクセラレータ)の思考は切れる。

 

部屋のドアが開き、霧嶺冬璃が入ってきたからだ。

霧嶺は部屋に入ると、一方通行(アクセラレータ)と向かい合うような形で床に座り込んだ。

 

「……」

 

「……」

 

どちらも話すことはなく、数分が経過した。

沈黙を破ったのは霧嶺だった。

 

「あ、あのさ……」

 

「あ?」

 

いきなり声を掛けられた一方通行(アクセラレータ)は反応出来たものの、つい目が鋭くなってしまった。

その目を見て霧嶺は少し怯えるが、そのまま続けた。

 

一方通行(アクセラレータ)って、本名なの?」

 

いきなりか、と一方通行(アクセラレータ)は心の中でため息を吐いた。

普通は軽く自己紹介でもしてからだろう。

もしかしたら目の前の少年は常識が欠けているのでは、と一方通行(アクセラレータ)は思った。

 

「違ェよ。能力名だ」

 

ぶっきらぼうに一方通行(アクセラレータ)は答えた。

別に会話がしたくないという訳ではないが、ついつい会話が途切れるような返答をしてしまった。

だが、意外なことに霧嶺冬璃は会話を続けてきた。

 

「どんな能力なの?」

 

「『向き(ベクトル)』変換」

 

「髪とか目の色も能力のせいなの?」

 

「そォだ」

 

最早会話というより面接試験のような質疑応答だった。

役は逆にすべきだろうが。

しかし、ここで霧嶺の質問は途切れた。

質問する内容が尽きてしまったのだろう。

ならば、と一方通行(アクセラレータ)は自分がされたように今度は質問し返す。

 

「オマエ、能力は?」

 

「え、えっと……エネルギーの増減……」

 

「能力名は?」

 

力学変遷(エナジーグラフ)……」

 

「オマエの髪は能力のせいか?」

 

「うん」

 

自分が受けた質問と同じものを聞いただけだが、今一方通行(アクセラレータ)が気になった情報は知ることが出来たので彼はそれなりに満足していた。

だが、霧嶺が予想外の質問を投げる。

 

一方通行(アクセラレータ)はなんでここにいるの?」

 

「────」

 

それは一方通行(アクセラレータ)にとってあまり思い出したくはない過去を思い出させる言葉だった。

目の前の少年が不安そうな視線を向けているのが見え、悪意は感じなかった。

それならいいか、と一方通行(アクセラレータ)は答える。

 

「能力で周りのヤツを傷つけちまうから、俺は独りの方がいいンだよ」

 

「寂しく、ないの?」

 

「……別に」

 

霧嶺から視線を外す。寂しくない、というのは一方通行(アクセラレータ)にとって嘘だった。

原因は自身の能力とはいえ、周りから恐怖の対象にされ遠ざけられる。とてもではないがそれは10前後の少年が経験するには重く、辛いものだ。

それでも一方通行(アクセラレータ)は取り繕う。

自分は独りでなければならない、そう心に言い聞かせる。

 

「そういうオマエはどォなンだよ」

 

研究所に来る、ということは超能力者(レベル5)になれるという

以外にも理由があるのだろう。

それを一方通行(アクセラレータ)は知りたかった。

 

「……能力の制御が出来てなくて、皆を傷つけて。でも制御さえ出来れば大丈夫で、超能力者(レベル5)にもなれるって」

 

一方通行(アクセラレータ)の予想通りだった。

能力によって他人を傷つけ、研究所(ここ)に来た。

 

「似てるな、俺と」

 

「うん……あのさ」

 

霧嶺冬璃は一方通行(アクセラレータ)にとって衝撃的な言葉を発した。

 

「友達になろうよ」

 

「……は?」

 

一方通行(アクセラレータ)は理解出来なかった。

今まで彼と関わって来た人間は、研究員を除いてその全てが一方通行(アクセラレータ)との繋がりを絶ってきていたのだから。

一方通行(アクセラレータ)は霧嶺を見据える。

目の前の少年は一方通行(アクセラレータ)に対して恐怖を抱いているイメージはなかった。初めて来た施設に少し不安があるようだが。

もしかしたら彼は一方通行(アクセラレータ)の希望になれるのではないか。

それでも期待はしない方がいいと、彼はまたぶっきらぼうに答える。

 

「……好きにしろ」

 

その日から、彼の周りは少し騒がしくなった。

 

 

 

霧嶺冬璃が研究所に来てから半年位が経った。

一方通行(アクセラレータ)にしては珍しく、1つの研究所に大分長く留まっている。

そして霧嶺と一方通行(アクセラレータ)の関係も変化があった。

悪い意味ではなく、良い意味で。

お互いが少しずつ心を開いていったのだ。

 

「はァ……」

 

検査が終わった一方通行(アクセラレータ)は研究所内の休憩スペースに設置された自動販売機で缶コーヒーを買う。

最近はブラックに挑戦しているようだ。

そして缶コーヒーを手にベンチに座りプルタブを開けたところで、

 

「検査終わりか?」

 

斜め後ろから声がした。

しかしベンチに座った一方通行(アクセラレータ)の後ろは壁なので普通ならばそんなことは有り得ないのだが、生憎その相手は普通ではなかった。

そしてそれに慣れてしまった一方通行(アクセラレータ)も普通ではなかった。

 

「そォいうオマエは何してンだ」

 

「いやー、俺も今さっき検査終わってよ。暇なんだよ」

 

上下逆さまになり壁に張り付くように胡座をかいて浮かびながら、霧嶺冬璃は一方通行(アクセラレータ)の手元を見る。

 

「お前それブラックじゃん。飲めんのかよ」

 

「当たり前だろォが、俺を誰だと思ってやがる」

 

そう言って一方通行(アクセラレータ)は真っ黒な液体を一口流し込む。

まずは苦味、そして鼻に抜けるコーヒーの香りの後にまた苦味。

一方通行(アクセラレータ)は未だにブラックコーヒーに慣れていなかった。

 

「お味は?」

 

「悪くねェ」

 

「本音は?」

 

「……苦ェ」

 

「飲めてねーじゃん」

 

「飲めてはいるだろ。つーかそれならオマエはどォなンだよ」

 

「無理無理。カフェオレみたいに甘い方が美味いね」

 

「糖尿になンぞ」

 

「んな頻繁に飲んでねーよ」

 

こんな会話をするくらいには彼ら2人の関係は親密なっていた。

2人の様子を見ている人間がいれば、間違いなく友人同士と言うことだろう。

 

「オマエ、実験の方はどうなンだよ」

 

「ん?あぁ、もう増減だけじゃなくて操作も出来るようになったし。明日から本格的にやるって」

 

「……そォか」

 

どんな実験か、など一方通行(アクセラレータ)はわざわざ聞くことなどしなかった。

彼もその内容については聞いていたからだ。

 

「俺の対となる超能力者(レベル5)か……」

 

「そうそう。『向き(ベクトル)』の対、つまり『(スカラー)』を操る能力者だって」

 

本当にそんなことが出来るのか、と一方通行(アクセラレータ)は半信半疑だった。

 

「でもよ、もし俺がそうなった場合って序列どうなるんだろーな。やっぱ俺が第一位?」

 

「ハッ。な訳ねェだろ、オマエは第二位に決まってる」

 

「は?」

 

「あ?」

 

しかし、霧嶺に対する一種の信頼のようなモノが芽生えていたのだろう。

霧嶺冬璃ならば出来るかもしれない、そう思っていた。

 

 

次の日、つまり霧嶺冬璃を対象とした実験が開始される日。

ガラス張りの部屋に設置されたベッドの上で、頭に機械を装着させた霧嶺にガラス越しに研究員が説明を始める。

 

「いいかい?君が目指すのはあらゆる『(スカラー)』を操る能力、『量子掌握(オーバーフロー)』だ」

 

量子掌握(オーバーフロー)』。現状における霧嶺冬璃の到達点。実験が成功すればあらゆる『(スカラー)』を操る学園都市第二位の超能力者(レベル5)になる予定のモノ。

研究員は霧嶺へ散々説明を繰り返し、念入りに実験内容を確認させる。

そして一言、

 

「君は『そこに在るモノ』を掴み取るんだ」

 

実験は開始された、霧嶺の頭に付けられた装置の電源が入り脳波を調節し、最適化するために電波が送り込まれる。

霧嶺冬璃はそれに合わせて演算を行い周囲を観測し、掴み取る。

そして、

 

バキン、と。頭の奥で何かが割れる音がした。

脳が割れ、間で火花が散るような刺激を感じた。

直後、霧嶺冬璃の周囲が歪む。

演算が狂い、制御が出来なくなる。

それが意味するのは、

暴走。

 

「がッ、ァァァァああああああああああああああッ!!」

 

霧嶺が頭に付けていた装置だけではない、ガラス越しにあったパネルやモニターからも電気が漏れ火花が散る。

研究員達はすぐに対処をしようとする。

 

「何が起きている!?まずい……実験を中止しろッ!」

 

「だめですッ!信号が送れません!」

 

「……一方通行(アクセラレータ)を呼べ!ヤツを抑えさせろ!」

 

研究員の1人が生活スペースにいるであろう一方通行(アクセラレータ)に通信しようとした瞬間。

 

ズバァ!という音と共に光と熱を伴った光線が研究員に襲いかかる。

そして、研究員は下半身だけを残してこの世から消滅した。

 

「なッ!?」

 

残った下半身はバランスを失いボトリと倒れる。その断面から赤が広がっていく。

 

最早一方通行(アクセラレータ)を使うことすら忘れ、恐怖から逃げ始める研究員が続出する。

それを許さないかのように、光線は研究員達の命を刈り取る。

だが、突然光線の雨は止んだ。

 

霧嶺冬璃が意識を失い倒れ込んだからだ。

その頭には先程まで付けられた装置はなく、彼の足物で粉々になっていた。

 

 

一方通行(アクセラレータ)は初めてと言っていいくらいの焦りを感じていた。

理由は施設内に鳴り響いた轟音。

この研究所にいる人間の中でそんな音を鳴らせるのは一方通行(アクセラレータ)ともう一人、現在実験を行っているはずの霧嶺冬璃だけだ。

一方通行(アクセラレータ)が生活スペースで寝転がっていた以上、原因は霧嶺冬璃以外に存在しなかった。

初めての友人と言える存在、いつの間にか心を開いていた存在。

その相手に何かが起こっている。

それだけで一方通行(アクセラレータ)が生活スペースから飛び出すには充分すぎる理由だった。

モニタールームに着いた一方通行(アクセラレータ)の目に入ってきたのは、

 

床一面に広がる赤い血、生き残り呆然としている研究員が一人。

そして、

力尽きたように倒れている霧嶺冬璃(トモダチ)だった。

 

「ッ!?」

 

何が起きたのか一方通行(アクセラレータ)はすぐに理解出来た。

 

────実験が失敗し、霧嶺冬璃が暴走した。

そんなことはすぐに分かってしまった。この惨状を見れば誰でも分かることだろう。

だが、一方通行(アクセラレータ)はそれを受け入れられないでいた。

 

「オイ……どォいうことだ……何で────」

 

その声は震えていた。一方通行(アクセラレータ)が人生の中で初めて出した声だろう。

辛うじて絞り出したような、今にも消えてしまいそうな心の叫び。

信じていた。だがそれと同時に嫌な予感もしていた。

そしてその嫌な予感は的中してしまった。

今まで霧嶺冬璃は一方通行(アクセラレータ)と一緒に居ても傷つくことはなかった。

それは霧嶺が何かをしたのか、一方通行(アクセラレータ)が無意識に反射を切っていたのかは分からない。

どちらにせよ、霧嶺は一方通行(アクセラレータ)と一緒に居られる唯一の存在だった。

そんな彼が、

 

「────何でそンな事になってやがる、霧嶺ェ!」

 

霧嶺冬璃は一方通行(アクセラレータ)の対となる、『(スカラー)』を操る能力者になるはずだった。

ある意味で、一方通行(アクセラレータ)を目指していたと言ってもいい。

それがどうだろうか、その彼はこうして傷つき倒れている。

だからこそ一方通行(アクセラレータ)は思う、

 

「俺が……俺がコイツと居たから────」

 

────霧嶺冬璃(コイツ)は傷ついたのでないか。

 

一方通行(アクセラレータ)の視界の中で何かが動いた。

 

霧嶺冬璃が意識を取り戻し立ち上がったのだ。

未だに足がフラフラと揺れ、意識が完全にはっきりとしている訳ではない。

それを見ていた、一人生き残ってしまった研究員は叫ぶ。

 

「何、故だ、何故なんだ!ふざけるな、この失敗作!」

 

死への恐怖から狂い、挙句の果てに出た言葉は罵倒。自身の研究を破綻に追い込んだことへの怒りを含んでいることだろう。

 

「一体お前の為にどれだけの費用を費し」

 

それ以降の言葉は聞けなかった。

 

霧嶺冬璃が明確な殺意を持って光線を放ったからだ。

人一人分程の光線に巻き込まれた研究員は跡形もなく消し飛ばされた。

そして、

霧嶺は一方通行(アクセラレータ)を尻目に壁に大きく空いた穴からおぼつかない足取りで出ていく。

 

彼は逃げるように一方通行(アクセラレータ)の前から立ち去った。

昨日までの『日常(いつも)』は、跡形もなく砕け散っていた。




ということで今回は過去話でした。
原作を元にさらにオリジナル要素を加えるのがすごく難しいなーって書いてて思いましたね。
初めて叫び声を入れた気がする。
感想、お気に入り、評価待ってます。
良ければ活動報告の方も見てくださいね。

ではまた次回。

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