いやもう本当に申し訳ない。
前回の投稿から大分時間がたってしまいました。
言い訳をさせて貰うと、大学でレポートやらプレゼンの準備やらで忙しかったのと、なかなか満足のいくような書き方が出来なかったのが原因です。
最近になってレポートとかプレゼンとかの課題が増えて来てしまいまして。あまり執筆に長い時間を割けなかったんですよね。
できるだけ毎日執筆するようにはしていたのですがその時も上手く書けなくて。やっぱり創作活動って難しいですね。
書いていて楽しいのは事実なので頑張って続けますが。
まあ遅くなったのも事実なのでとりあえず10話どうぞ。
御坂美琴は言葉を失った。
『
いや、仮に『
目を見開いているものの、一体自分がどこに焦点を当てているのか分からない。美琴はそれほどまでに動揺していた。
「で、満足したか?これで満足してくれねーとこっちも困るんだが」
霧嶺は美琴の様子を見ながら、怪訝な表情を浮かべる。
その一言で我に返った美琴は未だ動揺を抑えられないまま了承した。
「え、ええ……でもそれだけの事でアンタは私に手を貸すの?」
「それだけってのは酷い言い様だな。そうだな……俺にも責任の一旦はあるし、そのせいで作り物とはいえ命が大量に奪われんのは寝覚めが悪いんだよ。これでもまだ不満か?」
「それは、もう大丈夫だけど……」
「あ?……あぁ、そういうことか」
霧嶺は美琴の表情を見る。それだけで美琴の言わんとしていることを理解出来たらしい。
「問題ねーよ。
「そう……」
困惑。動揺が治まってきた美琴の心に入り込んだのはそれだった。
目の前の少年は、
何故そこまでするのか。過去を知った美琴でも、それは受け入れ難いモノだった。
それでも御坂美琴は必要以上に口出しをするつもりはなかった。
元より美琴自身も似たような事をしているのだから。
つまり、結論として御坂美琴は霧嶺冬璃を受け入れたのだ。
「わかったわ。それでアンタはどうするつもりなの?」
「それは言うまでもねーだろ。そもそもこっちはこっちで勝手にやらせてもらう、そっちも好きにしてていい。極力そっちの邪魔をするつもりはねーから安心しろ。ただ、やる事くらいは決めておけよ」
「言われなくても分かってるわよ」
「そうか。用は済んだ、じゃあな
そう言って霧嶺冬璃は施設を後にした。
取り残された御坂美琴は今後の方針を考えていた。
そして霧嶺はこうも言っていた。
好きにしろ、ただしやる事くらいは決めておけ、と。
ならば、と美琴は決意する。
「やってやろうじゃない」
確かこのブロックに計画の引き継ぎ先が1つあったはずだ。そのことを思い出した美琴は施設を飛び出した。
◇
美琴の行動に迷いはなかった。
今まで散々研究所を潰して回っていた美琴に、迷いなどあるはずもなかった。
ドォン!という豪快な爆発音が鳴り響く。
「な、何だ……爆発?」
「……いえ、あれは……」
「ひィいいいいいいッ!!」
研究員達の悲鳴が聞こえる。
今までも美琴は派手に研究所を破壊し尽くしていたのだ、そもそも上層部が知らないはずがない。
つまり結局は美琴も踊らされているに過ぎないのだろう。
それでも、御坂美琴は止まらない。
御坂美琴は、立ち止まってはいけない。
機材も、資金も、欲も、野心も、美琴はその全てを跡形もなく潰す。
そうすれば、いつか────、
────『いつか』?
声が聞こえた。
とても聞き覚えのある声。
いや違う、と美琴の動きが止まる。
────そんな都合のいい日が訪れるとして、
それは、紛れもなく御坂美琴の声だった。
びくり、と美琴の体が震えた。
────その時までにあと何人『
美琴の願った
紛れもない自分自身に現実を叩きつけられた。
「うるさいッ!」
小さな子供が癇癪を起こすように、叫んだ。
「ならどうすればいいってのよ!?」
美琴の内にある思いは、霧嶺冬璃と手を組んだとしても変わらなかった。
霧嶺冬璃がいつ行動を起こすのかは分からない。
それが余計に美琴の心を焦らせた。
「計画を!今すぐに!中止に追い込む、どんな方法があるっていうのよッ!」
そこで美琴の目が、煙の向こうに見えるモニターの映像を捉えた。
どこにでもあるような路地裏、
だが、そこに映っていたのは異常そのものだった。
常盤台中学の制服を着た少女、暗視ゴーグルさえなければどちらか分からないほどに美琴に似ている。
紛れもなく、『
肩を真っ赤に染め上げた少女は、後ろに迫る真っ白な少年からがむしゃらに逃げる。
少女が死に物狂いで放った電撃も、少年に当たると跳ね返り少女の胸を貫いた。
そこでついに、少女は地面に転がってしまう。
「あっ……ああ……」
美琴の呼吸が止まる。
その口からはまともな言葉が出てこなかった。
結果などとうに見えていた。
やめて、と叫びたかった。
もう二度と見たくないと思った。
それでも御坂美琴は目を逸らすことができなかった。
白い少年の指が、穴が開き赤く染まった少女の肩に触れる。
少女の体が一瞬、びくりと震えた。
「やだ…やっ、やめ……」
少女の体が少し膨張したように見え、
美琴の心は砕け散った。
◇
完全下校時刻をとうに過ぎ、大分暗くなった学園都市を霧嶺は歩いていた。
どうするか、と霧嶺は考えていた。
(アイツを止めるなら、実験が終わりに近づく前の方がいいよな……)
つまりそれを終える前、特により早い段階ならば
(でもまぁ、強えーのに変わりはねーんだけどな)
同じ
「どうすっかな……」
霧嶺は最初から交渉によって解決するとは微塵も思っていなかった。
ここまで来て
そもそも、それで解決するのならこんな事態にはなっていない。
(ま、リスクは承知の上だがな……)
結局は、霧嶺冬璃に選択肢など残されていなかった。
学園都市の第一位、
霧嶺に出来ることといえば、それしかなかった。
しかし、そこには1つ問題がある。
現状、
当然だな、と霧嶺は素直に肯定する。
霧嶺が真正面から挑んだとしても
そもそも、
彼の能力の真髄であるベクトル変換。そして、常に
とてもではないが、まともに戦い合える相手ではないだろう。
(アイツの能力の隙を突くしかねーってことか……)
霧嶺は考える。
それを知るにはどうすればいい?
そこで霧嶺は何かを思い付いたように顔を上げた。
「そーいや、
霧嶺はすぐに電子辞書くらいのサイズの端末を取り出して、
目的の資料はすぐに見つかった。レポートの作成者は木原数多。
かつて
霧嶺はこれを無理矢理ハッキングすることで入手したためバレたら色々と問題が発生しそうなモノだが、この際そんなことは気にしないことにする。
紙の端に書かれた日付は何年も前のもので、データ名も窺うことができる。
『
それを見た霧嶺は少しばかり笑みを零した。
『木原』の一員である時点でまともではないと思っていたが、公開する訳でもなくただ記録として残しておくだけのモノに律儀に表題を付けるあたり意外と真面目なのかもしれない。
内容は表題通り、
これだけ調べてやっと能力のごく一部、だが霧嶺にとってはそれだけでも十分だった。
元々勝算などない。ただ、完全な敗北を味わう確率が減ったに過ぎない。
(策は1つじゃねぇ……これで、
霧嶺はスマホの画面で時間を確認する。
現在時刻は午後8時00分。
今日行われる予定の、第10032次実験の開始は午後8時30分。
対抗策を持ったとしても、無傷で終えられるなど万に一つもないだろう。
それでも、霧嶺冬璃には止まるつもりなど欠片も無かった。
◇
午後8時25分。
御坂妹は第十七学区にある列車の操車場に辿り着いた。
操車場に人気はない。
学園都市では終電が完全下校時刻になっており、操車場からもあっという間に人気がなくなる。当然作業用の電灯は消され、周囲に民家がある訳でもないので光もない。
そんな恐ろしい程の闇の中に、ソレは立っていた。
学園都市最強の
「時刻は8時25分ってトコかァ。てことは、オマエが次の『実験』相手ってことで構わねェンだよな?」
裂けるような笑みの口から発せられる、悪魔の囁きのような声。
「はい、ミサカの
とミサカは返答します」
それに対して、これから命が奪われるというのに御坂妹は眉一つ動かさず冷静に応える。
それを見た
「オマエ達が何百何千何万と死のうが知ったこっちゃねェし、実験に付き合わせてる身としちゃァこンな事いうのも野暮だけどよォ。俺には自分の命を投げ打つなンざやっぱ理解できねェんだよなァ」
「それならミサカの方こそ、あなたが実験に参加しさらに『上』を求める事の意味が理解できません、とミサカは答えます。あたなは既に最強の
「最強ねェ……そりゃ確かにそォだ」
けどな、と
「結局俺はまだ
全然ダメだ、と
「俺が目指してンのはその先なンだよ。『戦おう』って気すら起きねェ程の絶対的な強さ。『
触れるだけで簡単に相手を殺せる両手を大きく広げ、口を裂いて少年は笑う。
「もォいいか?そろそろ死ンじまえよ、出来損ないの乱造品」
嘲笑うかのような少年の言葉にも、御坂妹は相変わらず眉一つ動かさない。
それどころか、淡々と自分の命のカウントダウンを始める。
「午後8時29分、30秒、29秒、28秒────これより第10032次実験を────」
開始します、と御坂妹は言いきれなかった。
避けられない『実験』が始まるはずだった。
しかし、
御坂妹の視線の先。つまり
「オイオイ、この場合『実験』てなァどォなっちまうンだ?」
「こりゃァ、秘密を知った一般人は口を封じるとか言うお決まりのパターンか?全くよォ、関係ねェ一般人なンざ連れこンでンじゃ」
「久しぶりだな、
「 」
背後から名を呼ばれ、
直後、
知ってる。
感じたことの無い重圧と全身から血の気が引いていく感覚を覚えながら振り向く。
霧嶺冬璃。
お互いに唯一無二同士だった2人がここに再会を果たした。
お互いに望まない形で。
「オマエ……何でここにいやがる」
「何で、ねぇ……答える必要あるか?」
「ハッ。まさか
「それこそまさかだろ。哀れには思うが、行動理由にまで格上げできるレベルじゃねーよアホ。それに俺の方こそ理解に苦しむぜ」
「あ?」
「オマエがやってんのは、ラスボス前に始まりの街でスライムをプチプチ潰してレベルアップしてんのと同じだ。俺には何が楽しいのか理解できねーよ。それとも、ガキのケツに欲情でもしたか?それはそれでやべーがな」
「OK。オマエが死にに来たってのは理解できた。まさか第八位如きが第一位サマに勝てるとか思ってるわけ?」
「どーかな。やってみなくちゃわかんねーだろ?本当に死ぬつもりなら真っ先に殴りかかってるさ」
学園都市の頂点。
かつての友情など微塵もない。
あるのはただの殺伐とした雰囲気。
それは傍から見ていた御坂妹だけではなく、対峙している2人も感じていた。
2人の怪物が動き出す。
先手は霧嶺からだった。
いつもの様に、周囲に無数の光を収束させ、レーザーとして放つ。
それだけで人の命を簡単に奪える攻撃だが、
反射。
「オイオイ、まさかそンなモンが通用するとでも思ってたのか?」
「いーや。思ってねーよ。核撃っても死なない野郎に、レーザーが効くわけねーってことぐらい理解してるさ」
ただの出力確認だよ、と霧嶺は吐き捨てながら
(あァ?何考えてやがンだコイツは)
反射という絶対的な防御を持っている
(アイツの反射はアイツ自身を基準に反射させてる訳じゃない。触れたベクトルそのものをただ反対に変換してるだけ……つまり、タイミングさえ合えば!)
音速を超えた自身のエネルギーを全て左の拳に移し、
あらゆる攻撃を反射する
霧嶺の拳は止まることなく吸いこまれ、
ゴッ!と。
「ごぶっ!?」
常に能力に頼りきりの華奢で軽い
「あ、は?い、たい」
殴られるどころか、攻撃が通ったこと自体初めての
痛みだけではない、殴られた、ダメージを受けたことに理解が追いついていなかったのだ。
やっと起き上がれたかと思えば、視界が揺れて上手く立つことができない。
これが、痛み。
揺れる視界の中で霧嶺を捉える。
殴った少年は倒れることもなく、しっかりと2本の足で立っていた。
「ぐっ……」
しかし霧嶺も無傷という訳では無かった。
反射が発動するタイミングで拳を寸止めの要領で戻す、そうすることで
しかしタイミングを合わせて
そもそも音速を超える拳を当てられて、一般人よりも軽いはずの
その証拠に、使った左手は燃えるように熱く、手首から先は動かすこともままならない。確実に折れているだろう。
「でもまぁ、及第点ってとこか。流石に気絶まではいかなかったが……」
「面白ェよ、オマエ……」
今までのクローンとも、調子に乗ったバカ共とも、
実験などどうでも良くなるくらいに最強の怪物は昂っていた。
怪物同士の戦いが始まり唖然としている御坂妹のことなどとうに忘れ、
「最っ高に面白ェぞォ!」
白い悪魔は、裂けるような狂笑を浮かべた。
どうでしたか?
今回はやっと、やっと一方さんとの戦闘。長かった。
実のところ、今回で一方通行との戦闘を終わらせる辺りまで書くつもりだったんですけどね、なんか書いてたら文字数が意外と行ってしまって結果的に次回に持ち越すことに。
というか戦闘も入ったばかりなのでメインは次回になるかも。
あと実は今回木原くんを出そうか迷ってました。というか原案では出てました。ただ余計に長くなるのでカット。結局主人公が自分で調べることに。
まあそういうのがいろいろあって遅くなったんですけどね。
ただの言い訳ですが。
今回更新が大分遅くなって本当に申し訳ありませんでした。
次回以降の更新はできるだけ遅れないように頑張ります。
感想や誤字報告、お気に入りも是非是非、じゃんじゃんお願いします!
ではまた次回。