甘党もどきです。
更新が大幅に遅れてしまい申し訳ありませんでした。
元々大学が休みに入ったらやろうと思っていたのですが、大学が休みに入ってから家のことでドタバタしてましてなかなか執筆に割く時間が取れませんでした。
感想などの返信はしていたのですが、執筆はできるだけ一度に時間を掛けてやりたいタイプなのでなかなか取り掛かれませんでした。
先ずはその事で謝罪を。
前書きはこれくらいにして、それでは本編をどうぞ。
「おら、さっきまでの勢いはどォしたンだァ」
今度は
触れただけで命を奪える両手が突き出される。
チッ、と霧嶺は舌打ちして上に飛ぶ。
(さっきの戦法は……もう使えないか)
左手から熱を感じながら考える。手首は完全に折れ、肘の辺りまでヒビが入っているのだろう。。
しかし、所詮は付け焼き刃。タイミングは完璧でないため、もう一発が打てるとは思えない。
リスクが大きすぎる。
ほぼ唯一とも言える反射の突破口を、霧嶺はあっさりと捨てた。
「オイオイ、まさかさっきので手札ゼロって訳じゃあねェよなァ?」
「当たり前だろーが。余裕かましてんじゃねぇよ」
下手をすれば、霧嶺冬璃は勝利どころかこれ以上一矢報いることすら不可能かもしれない。
それほどまでに
しかし、そんな
むしろ、能力を考慮しないならば
全てを能力で解決し、免疫も体力も筋力も捨てた少年は生身においては最弱に近い。
それを考慮した上で、霧嶺が考えられた手札は2種類。
確証はない。
だが、選択肢など最早存在しない。
仕方ない、と霧嶺は心の中で息を吐いた。
左手からの鬱陶しい熱と痛みを、左手から熱を奪い冷やす。
加減を間違えれば凍傷になりかねないが、この程度でヘマをする
その間も
霧嶺は電撃を
「チッ。鬼ごっこも飽き飽きなンだよ」
霧嶺の行動の変化を尻目にさらなる追撃をしようとして、
別の異変に気がついた。
息切れを起こしている。それだけではない、何か鼻につく。異臭を感じ取った脳が警告を鳴らしている。
「酸素の電気分解……これだけ言えばわかんだろ?」
離れた場所から、今度は霧嶺が嘲るような笑みを浮かべる。
既に纏っていた電気は無くなっていた。。
「ハッ。なるほど、オゾンって訳か。確かに悪くねェ。だが、それじゃあァ────」
酸欠状態。
追い詰められているはずの
「────もう俺の反射を突破することは出来ねェって言ってるようなモンだろォが!」
そう笑った
「……ッ!」
ギリギリで反応することが出来た霧嶺は体を捻って何とか避ける。
もう一度、と演算を開始した瞬間、
「くっ……!」
「やっぱりなァ……おかしいとは思ってたンだよ」
地面を転がる霧嶺に、
「そもそも、オゾンを使って本気で俺を酸欠にするなら休む暇なくずっと逃げながら電気を放ってりゃイイ。逃げ続けるだけならオマエでも不可能じゃねェしな。だがオマエはそれをしなかった」
つまり、と
「オマエは、エネルギーの変換と操作を同時に行うことが出来ねェってことだ」
「…………」
「沈黙は肯定と見なすぜェ」
「一々勘のいいやつだな。ムカつくぜ」
「弱点バレたってのに随分と余裕そうじゃねェか」
「ハッ。一つ看破したくらいでいい気になってんじゃねーよ」
「後悔すンぜ。さっきので俺を倒せなかった時点でほぼ負けみてェなモンじゃねェか?」
「言ってろ」
直後、霧嶺は光線を
(あァ?)
反射を突破された時は驚いた。オゾンを使って酸欠を狙ったのは感心した。
だが、それだけだった。結果
追い詰められる場面はあっても全体的に見れば
しかし、
なぜ追い詰められているはずの少年は絶望せず、今もこうして攻撃を仕掛けているのか。
放たれた光線は簡単に反射されコンテナを貫通するだけ。
分からない。
効きもしない攻撃を続け。なぜ未だに立ち上がっているのか。
そして、
コンテナから大量の小麦粉が撒き散らされた。
「ッ!?」
余計なことを考えていたせいだろう。
霧嶺の狙いが
それを見た霧嶺は、
「粉塵爆発。言わなくても分かるよな、バーカ」
最大限の嘲笑で
直後、操車場から音が消し飛ばされた。
大量に撒き散らされた小麦粉は一瞬にして空間そのものを大きな爆弾へ変えたのだ。
炎と熱が周囲に放出される。
しかし爆発よって酸素が奪われ、さらに燃焼によって一酸化炭素が急激に増加するだろう。
「ま、核を打っても死なない野郎が完全にダウンするかは微妙だがな」
「そォだなァ」
煙の中から悪魔の声がした。
「だがまァ、核を打っても大丈夫ってキャッチコピーは流石にアウトかなァ?酸素ボンベでもありゃ別だがなァ」
予想していたにも関わらず、霧嶺は舌打ちした。
次で決まらなければ間違いなく、霧嶺冬璃は敗北する。
つまり、奥の手。
仕方ないか、と霧嶺は決断する。
(やるしかねぇ……リスクはデカいが、仕方ねーか)
「おら、さっきまでのリズムはどォしたンだよ」
とん、と。
まるで靴を履く時のように、つま先で軽く地面を踏んだ。
ゴッ!!と。
直後、霧嶺の立っていた地面が、地雷を踏んだかのように爆発した。
地面を抉りとるような爆発は、その場にあった砂利も何もかもを吹き飛ばした。
唯一、
霧嶺冬璃だけは微動だにせず、突っ立っていた。
「まさか、効くとでも?」
「思ってねェよ」
音速の3倍を遥かに超える速度で打ち出された小石は、数メートル進んだだけで消滅した。
しかし、衝撃波までは消えていない。音すらも破裂させるソレを、霧嶺は周囲のエネルギーをありったけ集めて相殺する。
衝撃同士が激突し、彼らの周囲を簡単に抉りとった。
「オイオイ、どーした第一位。こんなもんかよ」
「ハッ。調子乗ってンじゃねェぞ、三下ァ!!」
十数メートルあった両者の間を一瞬で縮め、
しかし、
霧嶺は距離を取るどころか、その場から動く素振りすら見せない。
死ぬ覚悟でも出来たのか?と
「あァ?」
のはずだった。
しかし、
動こうにも、動けない。
「確かに、オマエはあらゆる『向き』を操る能力者だ。上限なんてないし、『向き』がある時点で全てオマエの武器って訳だ」
霧嶺は、展示物のように停止した
「動けねーだろ?そりゃそうだ、たとえどれだけ『向き』を操っても、オマエはその絶対値を弄ることは出来ねーんだからな」
「オ、マエ……」
「俺はエネルギーを操る
これが切り札。
しかし、完璧ではない。『変換』を行っていないにしろ、変動するエネルギーを常に操作するというのは精密な演算を必要とする。
種類によるが、人間に内包されているエネルギーを操るのは霧嶺にとっても難しい。
そして距離が離れれば当然精度は落ちる。
つまり、今の状態を維持するためには、霧嶺はここから離れられない上に他の能力使用ができない。
何より、それを理解していない学園都市最強ではない。
「なるほどなァ……これがオマエの奥の手って訳か。確かに驚かされたぜ。確かに俺は『向き』を操れても『量』自体は操れねェ」
狂笑。
霧嶺の努力を認めながら、それを嘲るかのような笑み。
でもよォ、と。怪物は笑いながら呟く。
「まさか、俺が何も出来ねェとか思ってねェよなァ?」
確かに
だが、それがどうした。
それは大気に流れる『風』の向きも同じ。
ゾクリ、と。霧嶺は背筋が凍った。
だが、もう遅い。
瞬間、霧嶺を砲弾のような突風が襲った。
自動車すら簡単に舞いあげる不可視の槍は、目の前の少年を軽々と吹き飛ばした。
「がッ…!?」
「ったくよォ。俺も甘く見られたモンだよなァ。そもそも、体の動き止められた程度で俺が完全に止まるとか思ってたのかァ?俺が動けねェなら、それ以外の『向き』を操っちまえばイイ。それだけの事だろォが。だがまァ、オマエは俺にここまでさせたって訳だ、よくやったと思うぜェ」
「ぐ……ぁ…」
「でもまァ、オマエは良くやった方だぜ。オマエが初だぜ、俺にダメージを負わせたっ上に焦らせたってのはよ。誇ってイイ」
今度は
目の前に倒れ伏す少年。ある意味
つまり、
(ここでコイツを殺せば……)
もう過去に囚われることも、余計なことを考える必要もない。
1歩踏み出し、軽く触れる。それだけで目の前の少年の命は終わる。
しかし、
「クソッタレが……」
「……その人から、離れろ」
その言葉に、
「今すぐその人から離れろっつってんだ、このクソ野郎!」
上条当麻は、
(何だ、コイツ……?)
何故この少年は、怯むことなく立っている?
(気に入らねェ)
「お、────ォおお!!」
上条はもう一度地面を強く踏みしめて、勢いよく駆け出す。
(あァ?まさかコイツ……)
ゴバァ!!と。破裂した地面から、砂利が散弾銃のような勢いで上条の全身を叩いた。
「ぎ…ッ!?」
「オイオイ、オマエ舐めてンのか?」
一体、どう『
地面を転がり避ける上条に、2発3発とレールを容赦なく叩き込んでくる。
「ぐっ……!」
「ったく、どォせならもっと俺を楽しませろってンだよ!」
上条当麻を追いかけて御坂美琴は少し遅れて操車場に来ていた。
そこで目にしたのは、戦闘を行っている上条当麻と
「ちょっと、アンタ大丈夫!?」
霧嶺は、答えない。
「まだ生きてはいます。ですがとても危険な状態です、とミサカは簡潔に述べます」
「アンタ、その傷は」
「これは戦闘の余波で受けたものです、とミサカは事実を伝えます」
「そう、良かった……」
「何故ですか、とミサカは問いかけます。ミサカはボタン1つで作れるのです。作り物の体に借り物の心。いくらでも替えがあります。そんな模造品に対して、替えの利かないお姉様や
御坂妹の言っていることは全て事実だ。
ボタン1つで自動生産でき、単価にして18万円。2万体いるうちのただの1体。
それに対して、美琴だけではない、霧嶺も上条も決して替えの利かない
命に価値のない御坂妹と、1人の価値が大きい美琴達。
御坂妹には彼らが命を賭けて戦う理由が分からなかった。
「そんな作り物の1つの為に『実験』全体を中断させるなど」
御坂妹の言葉はそれ以上続かなかった。
美琴が御坂妹の頬を抓ったからだ。
「そんなこと関係ないわよ。私だけじゃない、コイツもアイツにとってもそんな事情は問題じゃない。たとえボタン1つで作れても、他に何体いても、アンタは1人しかいないでしょ!」
御坂妹には分からない。
欠ければ欠けた分だけ補充すれば何も問題はない。御坂妹とはそういう存在のはずだ。
「理屈なんでどうでもいいから、アンタは黙って見てなさい」
それでも、姉の威厳を思わせるその言葉は、少しだけ届いた気がした。
すると、血塗れになった霧嶺がモゾモゾと動いた。
「ぅ……れー、るがん?」
「ッ、アンタ大丈夫なの!?」
「いや、正直言うと、結構、やばい……」
「なら病院に」
「そうもいかねぇ……アイツは?」
アイツ、というのは先程駆けつけた上条当麻の事だった。
「アイツは、
だから、その言葉を聞いた瞬間霧嶺は全身が凍りついた。
つまり最弱。
それが最強に挑んでいる。結果などとうに見えている。
でも、と美琴は首を横に振った。
「アイツなら、きっとやってくれる」
何故だか、霧嶺はその言葉を否定する気にはなれなかった。
そして、美琴の視線を追うように戦場に目を向けると、
上条当麻の右手が
「ごぶぁ!?」
「負けたことがない、ね」
一直線に上条を捕らえようとする
「
「くっ、は……舐めてンじゃねェぞ、三下がァァァああああああッ!!」
直後、『
台風すらも超える突風は、少年を容易く投げ飛ばした。
そして現れるのは、眩い白光。
一点に収束した光点は、周囲の空気を呑み込み一瞬で膨れ上がる。
夜の暗闇は、たった一つの光によって埋め尽くされた。
この瞬間、最強の少年は世界を手にした。
「う、そ」
美琴は既に言葉を失っていた。
馬鹿みたいに口をする開け、ただ呆然としていた。
あんなものが放たれれば、上条当麻は確実に死ぬ。
それだけは駄目だ、と美琴は右手にコインを構える。
「やめておけ」
それを静止したのは、満身創痍の霧嶺だった。
赤く腫れ上がった左手で、掴むことすらできず、ただ美琴の右手を上から押さえていた。
「でも、それじゃあアイツが!」
美琴の目には涙が滲んでいた。
しかし、
「いいから」
霧嶺にはもう、美琴の意見を聞くつもりなど欠片もなかった。
それでも美琴は、
「俺がやる」
反発する気にもなれなかった。
体はとうに限界を迎えている。左手は折れ、身体中から悲鳴が上がっている。
だが、脳だけは十分に動く。
それさえあれば学園都市第八位の力を存分に振るえるのだから。
(確証なんかねぇ。それでも俺には)
直後、
(あァ?一体何が起こってやがる!計算式に狂いはねェ。そもそもこの動きは自然風じゃねェぞ!)
この不自然な風は街の隅々に及んでいる。とてもではないがそこら辺の風使いでは不可能。
そして、
焦る
(待て。確か風力ってのは、風の持つエネルギーのことも指すって話が……ッ!?)
そしてこの場にはエネルギーを自在に操る
「あの野郎……ッ!」
霧嶺冬璃。
死にかけの少年。
だが、彼は確実に
そして、
がさり、と。
「…………ッ!」
体の至る所に血を滲ませ、両脚はがくがくと震えていた。
それでも、
少年は倒れなかった。
ボロボロの体を無理やり動かして、1歩ずつ
体も、意識も既に限界が近づいていた。
それでも、少年は前へ進む。
自分のために、涙を流してくれる少女がいた。
自分のために、ボロボロの体を酷使した少年がいた。
たとえ、体にほとんど力が残っていなくても。
上条当麻は右手の拳を握る。
────行け、最弱。
声が聞こえた気がした。
触れただけで人を殺す手が上条に襲いかかる。
残る力を全て注ぎ込んで、その手を払い除ける。
「歯を食いしばれよ
瞬間、
必殺を封殺され、超至近距離で拳が見える。
(あァ……何やってンだ、俺)
「俺の
直後。
上条の右手が
その日、
いかがでしたか?
とりあえず妹達編は次で完結になります。
前書きでも書きましたが、本当に遅くなって申し訳ありませんでした。
ただマイペースに執筆、投稿するスタンスは変えることはないのでそこはご了承願います。
これからも多くの人に読んで頂き、楽しんで頂けるように願いながら、
今回はこの辺で筆を置くことにします。
感想、お気に入り、評価などお待ちしております。
ではまた。