指揮官は今日の執務が少ないことを嬉しく思いながら仕事をしていた。
「指揮官様、こちらは陛下からです。」
そう言ってリアンダーが差し出した紙には、食料、装飾品や小物、食器など、クイーン・エリザベスがまとめたパーティに必要な品が書いてあった。これを買い出しに行けということである。
「流石に慣れてるな。それじゃ今日は仕事が少ないし、早速買い出しに行くか。」
「これは1人では少し大変ですね。私もお供させていただきますわ。」
リアンダーも紙に目を通して、指揮官を手伝うべきであると思って申し出た。
「ところで指揮官様、これは指揮官様が自分で買い出しに行かなければならないものなのですか?」
「別に私でなくてもいいけど、皆には訓練に励んで貰いたいし、余計な仕事を押し付けたくないし、ほいほい外出許可を出すわけにはいかないよ。」
「そういうことですのね。」
そしてすぐに指揮官とリアンダーは町へ買い出しに行った。
最初に装飾品や小物の入手のための店に向かっていく中、指揮官は重大なことに気づいた。
(リアンダーと2人きり……成り行きとはいえ、これはデートではないか!?)
いくら意識しても意識するだけである。指揮官は真面目な上に度胸もなく、別に何かしようとは考えなかった。
「あ、指揮官様、このお店なら買えそうですね。」
リアンダーが指揮官の心情などは知る由もなく、店を指さしながら言った。
「そうだな。」
指揮官も先ほどまで考えていたことは忘れ、買い物に意識を向けなおして店に入った。
指揮官は入店後、どういったものがパーティに合うか尋ねた。
「そうですね……これなんていかがでしょうか?」
リアンダーはロイヤル風の装飾を指さした。指揮官はそれを確認後、すぐに購入を決断した。
「リアンダーはセンスがいいな。」
指揮官は精一杯の気持ちでリアンダーを褒めた。
「ありがとうございます。」
少し照れながら礼を言った。
その後も食料や足りない食器などを探していくらかの店に出入りし、一通り購入し終えると、丁度お昼時になっていた。
「指揮官様、お疲れではありませんか?」
自分が疲れているから言うのではなく、心からリアンダーは指揮官の体を労わった。
「これぐらいは大丈夫だ。ああ、でも……その、母港に帰ると遅くなってしまうし、食事でもどうだろうか!?」
(ああ、言ってしまった。これは大丈夫なんだろうか、やはり急ぎ過ぎただろうか……。)
食い気味になりながらだが、指揮官の精一杯の誘いだった。内心は不安だらけだった。
「あらら、もうそんな時間でしたのね。そうですね、それではどこか行きましょうか。」
リアンダーは特に意識することもなく誘いに乗った。指揮官はとても安堵した。
(ここまでいいだろう。次の問題はどこで食事をするかだ。ここを間違えてはいけない。)
そう言って指揮官は母港に戻りながら、周囲を見回し丁度良さそうな店を探した。
指揮官は色々考えぬいて、イタリアンの店に入店した。
「はい、メニュー。」
指揮官はメニューを向かいに座っているリアンダーが見やすいように向けた。
「指揮官様、これでは指揮官様が見にくいですわ。」
そう言ってリアンダーはメニューを指揮官が見やすいように向けた。
(ここで張り合っても仕方ないな、なるべく待たせないように……どれにしようか。とりあえず基本のミートソースのスパゲッティにしよう、そうしよう。)
指揮官は何を頼むか決めて、再びリアンダーが見やすいようにメニューを向けた。
「それでは、私も指揮官様と同じものにいたします。」
指揮官は少しドキッとしたが、他意はないと考え直し、店員に注文をした。
料理が届いた。指揮官はスパゲティを巻いて口に運んだ。リアンダーも指揮官が食べ始めるのを見てから食べ始めた。
「美味しいですね、指揮官様。」
リアンダーは柔らかく微笑んだ。
(まるで天使だ、食事の味なんて気にならない程の可愛らしさだ。しかも食べ方もとても美しい。)
指揮官は度々ちらちらとリアンダーの食べる様子を見ながら食事を終えた。
「あら、指揮官様、お口にソースがついてますわよ。」
そう言ってリアンダーは指揮官の口をちり紙で拭った。
「はい、とれました。」
「あ、あり……とう。」
指揮官はフリーズした。
その後指揮官はなんとか意識を取り戻し、店を出て、今度こそ母港に帰った。
「お疲れ様でした。」
「ああ、でもまだこの荷物をあるべき場所に届けないとな。」
指揮官とリアンダーは買ってきたものを適当な場所に置いて、仕事に戻るのだった。
(今日は成り行きとはいえ、リアンダーと一緒に出掛けられて楽しかったな。何か失敗がなかったのならいいが……。)
(買い出しでしたのに、楽しんでしまいましたわ。指揮官様と一緒だったからでしょうか?)
指揮官は不安がったが、リアンダーは楽しんでいた。その想いを指揮官が知ることは、まだない。