指揮官とリアンダーが付き合うことになった次の日、指揮官は酷く緊張し、リアンダーも思うところはあったが、仕事は変わらず続いている。
「す、少し外の空気を吸ってくる。」
指揮官は付き合い始めたのにも関わらず、息苦しさだけを感じていたため、外へ出てみることにした。
「大丈夫ですか?私も付き添いますわ。」
一方のリアンダーはそんなことを知る由もなく、ただただ好意で付き添うことを提案した。
「あ、ありがとう。お言葉に甘えるよ。」
指揮官もわざわざ好意を無碍にしたくはないし、リアンダーが好きなのは変わらないため、承諾し、リアンダーと指揮官は執務室を出た。
指揮官は他のKANSENたちも休んでいる、噴水近くの庭に出るとすぐに深呼吸をした。
「指揮官様、本当に大丈夫ですか?お体の調子が悪いのならば、お仕事は私に任せて、医務室に行くべきですわ!」
リアンダーは心の底から心配し、首を傾げて、段々と語調を強くしながら言った。
「大丈夫だ。そういうのではない。」
「そういうの……?きゃっ!」
急に強い風が吹いてきた。リアンダーは赤いスカートがめくれないように、きゅっと抑えた。
「驚かせてしまって申し訳ありません。急に強い風が吹いたもので……。」
「いや大丈夫、大丈夫だ。」
(すぐ抑えたせいで見えなかったのは少し残念だが……。)
指揮官は少しだけ顔を赤らめながらそう思った。
「あーっ!」
指揮官とリアンダーが言葉を交わし合っていると、庭に音階の高い叫び声が響き渡った。
「リアンダー。」
「指揮官様。」
リアンダーと指揮官は向かい合ってお互いを呼び合い、2人で声のした方へ向かった。
2人が声の主と判断したのは、睦月だった。しかし睦月に問題はなさそうだ。一緒に陸奥型が何人かいたが、そこで異常があったのは卯月だった。他の子との違いは帽子がないことだ。
「卯月さん、どうかいいたしましたか?もしかして……帽子をなくしてしまわれたのですか?」
リアンダーは涙目の卯月に、あやすよう優しく声をかけた。
「うんとね、おぼうしがかぜでとんでいって、きにひっかかっちゃったんです……。」
如月は卯月の代わりに答えた。リアンダーはそれを聞くと、卯月の方に向かって屈んだ。
「今取ってきて差し上げますからね。」
リアンダーは優しく声をかけて、身長の4倍程度の高さの木の方を向いた。
「いや、リアンダー……私が行こう。」
「指揮官様、体の調子が悪い時は無理をしてはいけませんわよ。それに、指揮官様にもしものことがあったら大変ですわ。私は最悪落ちても、KANSENですから、それほど問題ありませんし。」
リアンダーの意見は全くの正論であるため、指揮官は黙って木へ登るリアンダーを見送った。
(何かしようとして断られるとはなんと格好の悪い……。それより、もし落ちた時にキャッチできるようにちゃんとリアンダーの方を見ていなくては……。うん、あ、これはダメだ。リアンダーの下着が丸見えじゃないか。いいや、今はそんなことを考えている場合じゃない。)
リアンダーのスカートの長さでは、木に登る姿を見上げれば当然は下着が見える。指揮官は一旦手で目をこすり、平常心を心がけて、もう一度リアンダーの方へ目を配った。顔は真っ赤である。
リアンダーは木を容易く登り、枝に引っかかった帽子を回収し、下を確認した。
「今降りるのでもう少し待っていてくださいね。」
そう言うとリアンダーはすぐに木から降りて、卯月の方へ向かって屈んで帽子を手渡した。
「ありがとう、リアンダーおねえちゃん!」
卯月だけでなく、他の睦月型もリアンダーにお礼を言った。指揮官は睦月型に囲まれているリアンダーを少しだけ離れたところから見つめていた。
(悩んでいたのが馬鹿らしいな。リアンダーはこんなにも品があって、優しい素晴らしい女性だ。もっとちゃんとリアンダーと向き合わなきゃいけないな。そしてこれからでも、好きになってもらえばいい。)
指揮官は決心した。
(それにしても……ダメだ、さっき見た彼女の下着が頭から離れない。思い出すと顔が熱くなる。)
「指揮官様、お顔が赤いですが……本当に大丈夫ですの?」
リアンダーは睦月たちから離れて、指揮官の近くに寄って、首を傾げた。
「ああ、なんでもない。大したことは……」
指揮官が喋っている途中で、リアンダーは「失礼します」といいながら指揮官の額に手を当てた。指揮官はリアンダーが近くにいて、しかも額を柔らかい手の平が触れたことでさらに顔を赤くした。
「すごく熱いですよ?具合が悪い訳でないのならばどうして……。」
(リアンダーが凄く心配している。もうこれは正直に言うしかない。)
「実はさっき木を登っている時に……その……見えてしまって……。」
指揮官はリアンダーから目を逸らしながら言った。
「見えた……?何が……あっ……。」
リアンダーは再びスカートをきゅっと抑えた。
「指揮官様のエッチ……。」
リアンダーの顔も急に赤くなり、その顔をやや下に向けた。
(終わった。もう終わりだな。これは嫌われても仕方ない。やはり誤魔化すべきだった。まずはとりあえず謝ろう、そうしよう。)
「すまないリアンダー。本当に……。」
「いいえ、見えてしまったのは仕方ありませんわ。それにそれだけ私のことを気にかけてくださったということですよね?うん、大丈夫大丈夫……怒っていませんよ。」
指揮官とリアンダーはしっかり見つめ合って話をした。リアンダーは本当に怒ってはおらず、指揮官もそれを感じ取って、安堵した。
「ありがとう……やっぱり君は優しいな……さっきもすぐに帽子を取りに行こうとしていたし、今もこうやって許してくれる。リアンダー、やっぱり私は君のことが好きだ。」
少しだけ間を取ってから指揮官は今の想いを伝えた。
「そんな私なんて……でも、ありがとうございます。」
リアンダーは優しく微笑んだ。
しかしこの話の発端はただのパンチラである。