指揮官とリアンダーは付き合い始めたと言っても、現状では恋人らしいことをはまったくしていない。そこで指揮官はとりあえずデートをしてみようと考えた。
今日も秘書として仕事、KANSENとしての仕事、そして個人的な人助けをしていたリアンダーが執務室に戻ってきた。
「リアンダー、その、次の休みにでも……一緒に出掛けないか?」
指揮官はどうにか言葉をひねり出した。
(これが皆が言っていた「デート」のお誘いなのですね。)
「分かりました。楽しみにしています~。」
流石のリアンダーも、他の姉妹たちやセントルイスなど、他の知り合いのKANSENたちとの話をしていたことなどもあり、デートぐらいは理解していた。
(よし、あとは失望させないように頑張らないとな。)
そしてついにデートの日となった。リアンダーは部屋の鏡で念入りに異常がないかチェックをしている。ちなみに、念のためということで、アキリーズとエイジャックスも近くにいさせてチェックしている。
「リアンダー、そんなに心配しなくて大丈夫ですわ。」
「そうだよ!髪だってあんなに一生懸命整えてたし。」
2人はリアンダーの心配は無用であると指摘する。
「そ、そうですよね……。」
「まあ……リアンダーの気持ちも仕方ないかもしれませんけどね。それにしてもリアンダーが……可愛らしいですわね。」
エイジャックスは天井を仰いで感傷に浸った。
「指揮官はリアンダーにべた惚れだし、ちょっとくらい何かあっても気にしないと思うぞ☆はぁ……リア充め~!」
アキリーズはリアンダーの顔をぷにぷにした。
「あひりーず、やめへふはさい。」
リアンダーが抗議するとアキリーズはすぐにやめた。
「よしっ!それでは行ってきますね。」
リアンダーはなん十分もかけてやっと納得し、部屋の扉を開けるのだった。
一方その頃、指揮官は結局スーツでびしっと決め、母港の門でリアンダーを待っていた。天気は快晴で、心地よい風が吹いている。
しばらくすると、リアンダーは小走りで指揮官の近くへ駆け寄った。ちなみに時間はまだ待ち合わせの20分前である。
「はぁ……お待たせてして申し訳ありません。」
リアンダーは少し深く呼吸をしてから喋った。彼女は頭にはいつもと少し違うリボン、ブーツを履いて、清楚でフェミニンなワンピースに上着を着ている。
(私服リアンダーも可愛いなぁ。)
指揮官は昇天しかかって、リアンダーに心配された。
「いや、凄くその……、か、かわいいから……。」
「可愛いだなんて……えへへ、ありがとうございます!」
リアンダーは少し頬を赤らめ、手を頬に当ててから礼を言った。
2人は、とりあえず市街地に向かって、手と手がギリギリ触れない程度の距離で並んで歩き始めた。
「ええと……今日は付き合ってくれてありがとう。」
「ふふっ……そういう言葉は最後に言うものではありませんこと?でも、私もずっと楽しみでしたわ。」
指揮官は言葉を間違えたと思い、バツが悪そうな顔をしたが、リアンダーの言葉ですぐに笑顔を浮かべた。
「ところで、まずはどこに行こうか?何か案がなければ、映画館でもどうだろうか。」
「映画ですか。それにしましょう。楽しみですわ。」
2人は、指揮官の心拍数が常に高いこと以外は、何事もなく映画館にたどり着いた。どの映画を見るか相談している。
(やはり、デートのときは恋愛映画だろうか?家族愛などとがテーマのものもありかもしれない。さて……。)
「指揮官様、よろしければ、あれにしませんか?」
リアンダーが指したのはファンタジー的な世界観の作品だった。
「確かに丁度いいかもしれない。よしそれにしよう。」
2人は暗い映画館の、真ん中あたりに座った。席は満員に近かった。映画が始まった。よくあるおとぎ話のような内容である。主人公は才覚を持ちながらも生まれに恵まれなかった男性と、いつも努力を怠らない貴族の女性である。この2人が恋をし、家や戦争、魔女などという障害に阻まれながら、ついに一緒になれなかったという悲劇だった。
指揮官はその話で涙を流していた。リアンダーも難しそうな顔をしていた。2人はその状態で外に出て、ロビーの椅子に座った。
「悲しい最後でしたね。仕方なかったんでしょうか……。」
「いいや、そんなことはない。彼らは間違っていなかった。私なら諦めたりしない。」
「そうですよね。やっぱりあれで終わりなんて悲しすぎます。」
「ああ……。結末以外は演出とかも面白かったんだけどね。」
そうして2人はしばらく感想を言い合ってから、映画館を後にした。