映画館を出て、指揮官とリアンダーはレストランで昼食を取ることにした。指揮官は映画を見てから、ややデートに慣れてきたようだが、太陽の光に美しく照らされるリアンダーのピンクがかったブロンドの髪を見るたびに、動悸が早くなる。
「確か、この辺りに雰囲気のいい店があったはずだ。」
「もしかして、あれのこ……すごく並んでますね。」
リアンダーは口元に手を寄せて驚いた表情で言った。
(そうか、行列のことを考えていなかった。さてどうするか……やはりこういうとき、行列は避けるべきだろう。予約でも取っておくんだった。)
指揮官は、自分も地面もアスファルトになったかのように、その場に固まった。
「指揮官様……あ、私、ハンバーガーが食べてみたいです!」
リアンダーはやや食い気味になり、指揮官に顔を近づけて言った。指揮官は、それに驚いてやっと硬直が解除された。
「それでいいのか?」
「はいっ!」
リアンダーは髪を揺らし、にっこりとほほ笑んで返事をした。
ハンバーガーショップは回転率がいいのか、人はいてもすぐに順番が回ってきた。しかし、座席は満員だった。
「席には座れなさそうだ。」
「仕方ありません。近くに公園がありましたし、そこで食べましょう。」
そう言って、2人はハンバーガーを選び始めた。
結局、2人ともただの「ハンバーガー」を頼むことにした。
「ご一緒にポテトはいかがですか?」
「あ、頂きます~。」
店員のすすめを聞いて、リアンダーが少し戸惑いながら答えた。指揮官は特に何もリアクションをせずにそれを聞いていた。
「それでは今からお作り致しますので、少々お待ちください。」
2人は会計を先に済ませ、近くの椅子に座って完成を待つことにした。
2人は数分経って店員から頼んだものを受け取ってから、外へ出た。そして公園へと向かっている。
「指揮官様、勝手にポテトを頼んでしまって申し訳ありません。」
歩行中に、リアンダーは本当に申し訳なさそうに、少し俯いて言った。
「いや、ああいわれると確かに断りにくいから仕方ない。私だって断れない。それに、食べたい気分だったよ。」
指揮官は首を振った。
「それならいいのですが……。」
「リアンダー、そんなこと気にしなくていい。本当に大したことじゃないから。まあ、君のそういう真面目なところが私は……ぐっ。」
指揮官は横を向いて拙く言葉を繋いでいると、前の看板にぶつかった。
「指揮官様!大丈夫ですか?」
幸い指揮官の体にはこれと言った外傷はない。あまりに正面から綺麗にぶつかったためだ。
「ああ大丈夫だ。問題ない。そろそろ公園だな。ベンチも空いているようだ。」
看板にぶつかるという失態を隠すように、早口で指をさしながら言った。
「それならよかったですわ。ところで、先ほどは何を言おうと?」
(そんなところが好きだって言おうとしたなんて、タイミングを逃した状態では恥ずかしくて言えない……。)
「なんでもない。」
指揮官は赤面して首を振った。リアンダーは不思議そうに首を傾げた。
そうこうして、誰もいないベンチは2人は座ることできた。先に指揮官が端に、リアンダーはすぐ隣に座った。
「うん、こうしてお外で食べるのもいいですよね。」
「ああ。」
(近い近い、わざとやっているのか?)
指揮官はリアンダーがとても近くにいることの興奮を押し殺しながら答えた。リアンダーが近くに座ったのは、単に場所を無駄にしないようにしているだけである。
2人は紙袋から、より小さい紙袋を取り出した。紙袋からハンバーガーを取り出して、リアンダーは上品に口をつけた。
(こんなにハンバーガーを上品に食べる人間がいたのか。)
指揮官は彼女の食事姿に見惚れた。
「美味しいですよ、指揮官様。」
リアンダーは口にソースもついていない顔で、にっこり微笑んだ。そして、指揮官も慌ててハンバーガーに口をつけ、ポテトの味見をした。
「ああ、美味しい。」
指揮官はリアンダーから目を逸らして、正面の滑り台を見ながら言った。
それから2人はハンバーガーとポテトを食べ終えて、ごみを近くのごみ箱に捨てた。リアンダーは近くの並木道に止まっているクレープ屋が気になっている。指揮官はリアンダーの輝く瞳を見てそれを察した。
「食後には何か甘いものも食べたいな。丁度いいものはないだろうか?」
「で、でしたら、あそこのクレープ屋さんなんていかがでしょうか。」
リアンダーは少し驚きながら答えた。
「ああ、丁度いいところにあるな。買ってこよう。」
2人はクレープ屋に向かって歩き出した。
クレープ屋に着くと、3人ほど人が並んでいた。
「どれにしましょうか……。」
リアンダーは目を輝かせて選んでいる。
「うん、ピーチにしましょう。」
「私はイチゴにしよう。」
そうして考えているうち、順番がやってきて、無事クレープを購入できた。
2人はベンチに戻って、それを食べている。
「甘くておいしいですね~。」
リアンダーは今度は上品というよりは、小動物のような可愛らしい顔でクレープを頬張っている。
(喜んでもらえて良かった。それにしても、リアンダーのイメージカラーとピーチがぴったりだな。)
指揮官はリアンダーが食べる様子を眺めていた。
「どうかなさいましたか?」
「いや、桃みたいだなと……。」
リアンダーは不思議そうな顔をして、再びクレープを頬張った。指揮官も、リアンダーを少し観察すると自分のクレープから飛び出しそうなイチゴを口に入れた。
「指揮官様、あーん。」
リアンダーは突然自分のクレープを差し出した。自分のクレープの味見をしてみろということである。
「汚なっ!!ふざけんなよ!!」
指揮官がリアンダーのクレープに口をつけるか迷い、周囲を確認していると、大きな声が鳴り響いた。