溺れぬレアンドロス    作:白鳥桔梗

16 / 21
第15話「リアンダーとデートⅡ」

 映画館を出て、指揮官とリアンダーはレストランで昼食を取ることにした。指揮官は映画を見てから、ややデートに慣れてきたようだが、太陽の光に美しく照らされるリアンダーのピンクがかったブロンドの髪を見るたびに、動悸が早くなる。

「確か、この辺りに雰囲気のいい店があったはずだ。」

「もしかして、あれのこ……すごく並んでますね。」

リアンダーは口元に手を寄せて驚いた表情で言った。

(そうか、行列のことを考えていなかった。さてどうするか……やはりこういうとき、行列は避けるべきだろう。予約でも取っておくんだった。)

指揮官は、自分も地面もアスファルトになったかのように、その場に固まった。

「指揮官様……あ、私、ハンバーガーが食べてみたいです!」

リアンダーはやや食い気味になり、指揮官に顔を近づけて言った。指揮官は、それに驚いてやっと硬直が解除された。

「それでいいのか?」

「はいっ!」

リアンダーは髪を揺らし、にっこりとほほ笑んで返事をした。

 

 ハンバーガーショップは回転率がいいのか、人はいてもすぐに順番が回ってきた。しかし、座席は満員だった。

「席には座れなさそうだ。」

「仕方ありません。近くに公園がありましたし、そこで食べましょう。」

そう言って、2人はハンバーガーを選び始めた。

 結局、2人ともただの「ハンバーガー」を頼むことにした。

「ご一緒にポテトはいかがですか?」

「あ、頂きます~。」

店員のすすめを聞いて、リアンダーが少し戸惑いながら答えた。指揮官は特に何もリアクションをせずにそれを聞いていた。

「それでは今からお作り致しますので、少々お待ちください。」

2人は会計を先に済ませ、近くの椅子に座って完成を待つことにした。 

 

 2人は数分経って店員から頼んだものを受け取ってから、外へ出た。そして公園へと向かっている。

「指揮官様、勝手にポテトを頼んでしまって申し訳ありません。」

歩行中に、リアンダーは本当に申し訳なさそうに、少し俯いて言った。

「いや、ああいわれると確かに断りにくいから仕方ない。私だって断れない。それに、食べたい気分だったよ。」

指揮官は首を振った。

「それならいいのですが……。」

「リアンダー、そんなこと気にしなくていい。本当に大したことじゃないから。まあ、君のそういう真面目なところが私は……ぐっ。」

指揮官は横を向いて拙く言葉を繋いでいると、前の看板にぶつかった。

「指揮官様!大丈夫ですか?」

幸い指揮官の体にはこれと言った外傷はない。あまりに正面から綺麗にぶつかったためだ。

「ああ大丈夫だ。問題ない。そろそろ公園だな。ベンチも空いているようだ。」

看板にぶつかるという失態を隠すように、早口で指をさしながら言った。

「それならよかったですわ。ところで、先ほどは何を言おうと?」

(そんなところが好きだって言おうとしたなんて、タイミングを逃した状態では恥ずかしくて言えない……。)

「なんでもない。」

指揮官は赤面して首を振った。リアンダーは不思議そうに首を傾げた。

 そうこうして、誰もいないベンチは2人は座ることできた。先に指揮官が端に、リアンダーはすぐ隣に座った。

「うん、こうしてお外で食べるのもいいですよね。」

「ああ。」

(近い近い、わざとやっているのか?)

指揮官はリアンダーがとても近くにいることの興奮を押し殺しながら答えた。リアンダーが近くに座ったのは、単に場所を無駄にしないようにしているだけである。

 2人は紙袋から、より小さい紙袋を取り出した。紙袋からハンバーガーを取り出して、リアンダーは上品に口をつけた。

(こんなにハンバーガーを上品に食べる人間がいたのか。)

指揮官は彼女の食事姿に見惚れた。

「美味しいですよ、指揮官様。」

リアンダーは口にソースもついていない顔で、にっこり微笑んだ。そして、指揮官も慌ててハンバーガーに口をつけ、ポテトの味見をした。

「ああ、美味しい。」

指揮官はリアンダーから目を逸らして、正面の滑り台を見ながら言った。

 それから2人はハンバーガーとポテトを食べ終えて、ごみを近くのごみ箱に捨てた。リアンダーは近くの並木道に止まっているクレープ屋が気になっている。指揮官はリアンダーの輝く瞳を見てそれを察した。

「食後には何か甘いものも食べたいな。丁度いいものはないだろうか?」

「で、でしたら、あそこのクレープ屋さんなんていかがでしょうか。」

リアンダーは少し驚きながら答えた。

「ああ、丁度いいところにあるな。買ってこよう。」

2人はクレープ屋に向かって歩き出した。

 クレープ屋に着くと、3人ほど人が並んでいた。

「どれにしましょうか……。」

リアンダーは目を輝かせて選んでいる。

「うん、ピーチにしましょう。」

「私はイチゴにしよう。」

そうして考えているうち、順番がやってきて、無事クレープを購入できた。

 2人はベンチに戻って、それを食べている。

「甘くておいしいですね~。」

リアンダーは今度は上品というよりは、小動物のような可愛らしい顔でクレープを頬張っている。

(喜んでもらえて良かった。それにしても、リアンダーのイメージカラーとピーチがぴったりだな。)

指揮官はリアンダーが食べる様子を眺めていた。

「どうかなさいましたか?」

「いや、桃みたいだなと……。」

リアンダーは不思議そうな顔をして、再びクレープを頬張った。指揮官も、リアンダーを少し観察すると自分のクレープから飛び出しそうなイチゴを口に入れた。

「指揮官様、あーん。」

リアンダーは突然自分のクレープを差し出した。自分のクレープの味見をしてみろということである。

「汚なっ!!ふざけんなよ!!」

指揮官がリアンダーのクレープに口をつけるか迷い、周囲を確認していると、大きな声が鳴り響いた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。