病院までの道のりの間に、指揮官の足取りはよろよろしたものから、しっかりとしたものになった。そのため、指揮官は病院なんて大げさだと言うが、念のためと言ってリアンダーは聞かず、小さな診療所へ着いた。今は待合室で診察を待っているところである。
「指揮官様、お水いりますか?」
「ああ頼む。」
指揮官はリアンダーがウォーターサーバーから持ってきた水を受け取り、飲み干した。指揮官の体は足取りは確かだが、落ち着いたせいか、体に痛みが走るようになっている。
それから15分ほどで指揮官は診察室に呼ばれ、リアンダーと一緒に白い廊下を歩いて行った。
2人が診察室に入室すると、医者は要件を尋ねてから、指揮官の体を触り始めた。
「軽い打撲ですね。処置をするから、服を脱いでください。」
指揮官はリアンダーの方を向いた。リアンダーは不思議そうな顔をした。
「恥ずかしいから、一応出て行ってもらえると有難い。」
指揮官は消え入りそうな声で、横にいるリアンダーに向かっていった。リアンダーははっとした顔をしてから、診察室の扉を開けて外へ行った。
処置が終わって指揮官は待合室でリアンダーと合流した。
「どうでしたか、指揮官様。」
「最初に言われた通り軽い打撲や、あとはかすり傷が体にいくらかあったぐらいだった。」
「あまり大きなケガではないのは良かったです……。」
2人は喋りながら椅子へ座った。リアンダーは浮かない顔をしていた。
(私のせいだなこれは。)
指揮官も自覚はあったが、かける言葉が思いつかなかった。
それから、金を払い薬を貰って診療所から出た。流石にこのままデートは難しいということで、母港に帰ってきた。
「リアンダー、今日はすまない。私のせいでデートも半端だし、こんな情けない姿を見せてしまったし……。」
指揮官は足を止めて、うつむきながら言った。リアンダーはその様子を見て、右手で指揮官の左手を握った。
「指揮官様、お体が痛むかもしれませんが、最後に、灯台に行きませんか?」
リアンダーは少し右手に力を入れて、ゆっくりと指揮官を引っ張って灯台を登った。
「ここもいい眺めですよね。」
「リアンダー!」
リアンダーは指揮官に背を向けて灯台から外を見渡していた。指揮官は声を大きくして彼女を呼んだ。
「指揮官様、私は指揮官様は情けなくなんてなかったと思いますわ。いじめられている方を助けるだけでも立派ですし、私たちに何事もないように、自分で体を張っていたんです。とってもかっこよかったですよ。」
リアンダーは指揮官の方を向いて笑顔で言った。指揮官の顔を夕日のように赤くなった。
「それに、指揮官様の可愛らしいところも見られました。ちょっとハプニングはありました。でも、私は今日のデート、楽しかったです。」
「ああ、私も楽しかった。怪我はしたけど、こんな痛みより、君と一緒にいられて良かった。」
「良かった……指揮官様も楽しんでくださったのですね。」
リアンダーも実は緊張していたため、指揮官の言葉で安堵した。
「指揮官様……また、デートに行きましょうね。」
そして、一切の屈託のない笑顔で言った。太陽よりも輝いていて、どんな怪我だってたちまち直してしまうような笑顔だった。