溺れぬレアンドロス    作:白鳥桔梗

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第19話「リアンダーVS赤城Ⅱ」

 赤城の宣戦布告から1週間後、ルール発表もあり、リアンダーと赤城の勝負が始まることになった。今は演習場で艤装を装着している。観客のKANSENたちも何十といる。

「それでは、これよりリアンダーと赤城の演習を始める。空母と前衛艦との戦い方の参考になるはずだ。よく見ておくように。」

審判を務める加賀が戦闘開始の合図を出した。「空母と前衛艦との戦い方」という体裁であった。

 近距離での戦闘開始ではリアンダーが有利すぎるため、互いになんとか相手を視認できる程度の距離を取ってから始まっている。赤城はまず艦載機を発進させた。遠距離では空母が圧倒的に有利である。リアンダーはまずは距離を詰めることに専念した。

「指揮官、あれは大丈夫なの?」

隣にアキリーズが近づいてきて指揮官に尋ねた。

「KANSENでなければ、圧倒的にリアンダーは不利だろう。しかし、君たちKANSENと人間が乗る船は戦い方も何もかも違う。」

指揮官は腐っても指揮官として今まで戦ってきた。冷静に分析をした。

「でもリアンダーに対して、赤城の表情……読めませんわね。」

戦術家であるエイジャックスは赤城に対して何かを察したようだ。

「それにしても、2人ともリアンダーが心配なんだな。」

「だって相手はあの赤城だよ。」

どうやらKANSEN同士の間でも赤城の人格は知れているようだ。

「一番気になってるのは指揮官なのではなくて?」

「ああ、私も胸騒ぎがな……。」

普段のエイジャックスなら、ここで一発指揮官をいじり倒すところだが、今日はそれはせずに、すぐに演習場で戦う2人の方へ視線を戻した。

 

 赤城の艦載機の攻撃で、リアンダーは思うように近づくことができていない。しかし、少しずつだが、爆撃の雨をかいくぐりながら、何とか近づいている。

(流石赤城さん……正確な航空攻撃ですね。それだけでなく、巧みに動かして迎撃しにくくさせています。)

(各国代表クラスではないと侮っていましたが、中々隙のない……っ!)

リアンダーはまだ冷静だが、赤城は段々と苛立ちを感じてきた。艦載機に頼る空母の性質と、1対1という性質上、艦載機を失うことは大きな打撃となるため、赤城は迂闊に攻めることができない。

 そうしていくうちに、互いの距離は縮まり、リアンダーの主砲の射程圏内に入った。しかし、既にリアンダーの艤装には所々に焼けた跡がある。

「ふふふ……攻撃が当たるようになったのは、あなただけではありませんわ。」

赤城はにやりと笑って、航空攻撃を再開した。リアンダーにとって一番怖いのは爆撃ではなく、攻撃機による雷撃である。ここまでは躱せていたが、距離が近づいていくにつれて、赤城の視界に入り、その正確さは増していた。

(これは厳しいですね。ここは一気に距離をつめて魚雷で……っ!。)

リアンダーは自らの進行方向に煙幕を張った。艦載機の攻撃も正確さが失われる。

 煙幕の中からリアンダーが抜け出すと、すぐ近くに赤城がいた。

「こう近づけば、四方からの攻撃は無理なはずです!」

リアンダーは普段の表情からは考えられないような、鋭い表情で言い放った。そして魚雷管から攻撃を放った。

 赤城に命中してリアンダーが勝利……リアンダーだけでなく、この演習を見ている者たち全てが思ったことだった。しかし、KANSENの艤装が壊れた程度ではない、大きな爆発と水しぶきが2人を包んだ。

 爆発と水しぶきが終わり、よく見えるようになると、そこにはぼろぼろの赤城とリアンダーがいた。両者とも艤装はほぼ破壊され、戦闘不能状態である。

「赤城さん、この戦い方は危険すぎます!」

「この戦い方が赤城の『覚悟』ですわ。それに、ちゃんと怪我はないようにしたでしょう?」

「それでも危険ですわ!」

どうにか水上に浮かんでいる2人が言い争いを始める。

 

 演習を見ていた者たちからもざわざわと言葉が聞こえてくる。

「勝負あり!この勝負は引き分けだ!」

加賀は2人の様子を見届けてからそう叫んだ。そして、言い争っている2人の方へ駆け寄っていった。

「奇策ですわね。それに、あの土壇場で狙った部位は艤装だけ……流石の練度です。」

エイジャックスは感心したような、しかし怒りを込めたような口調で言った。

「指揮官、リアンダー大丈夫かな?」

アキリーズはまず心配だという様子だ。

 加賀がリアンダーと赤城を連れて戻ってきた。リアンダーは暗い顔で、対して赤城は満足げな顔だった。

「ふふふ……指揮官様、赤城の『覚悟』を見てくださいましたか?」

「ああ、よく見ていた。確かに君の『覚悟』は素晴らしい。だが、演習程度でそれはやるな。そんな戦い方を普段から認める訳にはいかない。」

「わかりました……申し訳ありません。」

赤城は素直にしおらしく謝った。

(でも、指揮官様の為ならば、赤城はこの命すら惜しくありませんわ。)

「さて2人とも、まずは怪我がないかチェックして、休んでくれ。続きはそれからだ。」

リアンダーと赤城は頷くと、母港の建物へと入っていった。アキリーズとエイジャックスがリアンダーについていこうとしていたが、指揮官はそれを止めた。赤城の反感を買わないようにするためだ。

「指揮官、すまない。姉様が。」

加賀は申し訳なさそうに言った。

「ああ、彼女の気持ちはわかっているつもりだ。しかし……彼女の抑えるには君が必要なようだ。こちらこそすまない。」

指揮官は加賀に頭を下げた。

「指揮官がそう簡単に頭を下げるべきではない。姉様のことはわかっている、任せてくれ。」

(私も彼女としっかり向き合わなくてはいけないな。)

そして、最後に指揮官は玉砕のような戦い方はしてはいけないと、集まっていた母港の皆に言ってから、解散した。

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