指揮官の仕事は意外と忙しい。しかも、業務としてはそこまで大変でないときも、部下のケアや視察などをしているため、勝手に忙しくなっている。今日は単純に仕事量が多い方だ。
「ふぅ……。」
指揮官は一仕事終わったところで、息を付いた。
「指揮官様、お疲れですか?」
秘書であるリアンダーは指揮官の側にいて、優しい声でそう尋ねた。
「まあそれは、多少はな……。」
指揮官は特に偽る必要もないと思って正直に答えた。それから背伸びをして、再び書類と向き合った。しかし、疲れからかいまいち捗らない。
「指揮官様、少しお休みしませんか?」
リアンダーはそれを見兼ねて尋ねた。
「まあそれぐらいは時間はあるが……。」
指揮官は生真面目なため、あまり余分な休みは取りたがらない。かといって過剰に体を酷使する訳でもないが、頑張りすぎる癖がある。
「私、お茶を淹れてまいります。」
指揮官は「そうか」と見送った。
リアンダーはお茶を淹れて、作りすぎたスコーンのことも思い出し、それらを持って執務室に帰ってきた。指揮官は仕事中である。
「どうぞ、指揮官様。」
リアンダーは紅茶とスコーンを差し出した。
「カップが1つしかないようだが?」
ティーポットとカップが1つ、それからスコーンの乗った皿が1つ。リアンダーは指揮官の分だけ持ってきた。
「ええと……だからつまりだね……い、一緒に飲んだらいいんじゃないかな……と……。」
指揮官は赤面していることを自覚して、顔をリアンダーから背けながらどういう意味か説明した。
「指揮官様は優しいのですね。指揮官様がおっしゃるのなら、そういたしますわ。」
リアンダーはそう言ってもう1つのカップを取りに戻った。
それからカップを取って帰ってきたリアンダーは、自分のカップにも紅茶を注いだ。ちなみに指揮官は、その間紅茶にもスコーンにも口をつけないでいた。
「いただきます。」
指揮官はリアンダーが帰ってきたのを確認すると、重桜流の挨拶をしてスコーンを食べて、ちょっとだけ紅茶を飲んだ。指揮官は熱いものが苦手だった。
「あの、指揮官様……いかがでしょうか?」
リアンダーは少し不安そうに紅茶とスコーンの味を尋ねた。
「あつっ……。」
「あらら、指揮官様は子どもっぽいんですから……ちゃんと気を付けてくださいね。」
「あ、ああ。でも美味しい。もしかして、手作りなのか?」
指揮官は少し躊躇いながら手づくりなのか尋ねることにした。
「はい、その通りです。」
「そ、そうだったのか。料理も上手なんだね。」
(つ、つまりリアンダーの手作り料理を今私は食べているということか。好きな人の手作りを……あぁぁぁしあわせぇぇ。)
指揮官はクールを装っていたが、内心悶えていた。
「ふふ……やっぱり誰かに食べて頂いて、美味しいと言った頂けるととても嬉しいですね。」
リアンダーは笑顔でそう言った。指揮官は思わずその天使のような笑顔に見惚れてしまった。
「ええと……、どうかしましたか、指揮官様?」
「い、いやなんでもない。うん、なんでもない。」
「変な指揮官様……でも、何かあったらちゃんと言ってくださいね。私、がんばりますので。」
リアンダーが指揮官の心配をしてそう言ったことに、指揮官は再び悶えた。また、その前の「変な指揮官様」で少しぞくぞくした。
それから指揮官は紅茶を飲み終えてスコーンも食べ終えた。
「ご馳走様、美味しかったよ。」
いたってクールに指揮官は感想を言った。それからあくびをして書類に向き合った。
「指揮官様、よろしければ、リアンダーの太ももでお寛ぎになりませんか?」
リアンダーは完全にただの善意からそれを申し出た。
(太ももで?それってつまり膝枕か?いやいや、まだそんな関係じゃないし。ていうか、それって色々不味くないか?私が強要しているみたいでは?だからと言って断るのも……ええい!)
指揮官は勿論悶えて、それからどうすればいいのか悩みまくった。
「ええと……そ、それじゃ少しだけ……。」
「はい!」
結局欲望と断ることでの申し訳なさが勝ち、指揮官はそれを頼んだ。そしてリアンダーは笑顔で答えた。
リアンダーは執務室のソファーに腰かけ、太ももをぽんぽんと叩いて指揮官を呼んだ。
(恥ずかしい……ていうかこれはどういけばいいのだ?勢いよくか?わからん……。)
指揮官は迷いを捨てきれない中、少しずつ近寄って、控えめにリアンダーの太ももに頭を乗せた。向きはもちろん、片耳を下に、顔はリアンダーの体ではない方向である。
「指揮官様、もっとちゃんと頭を乗せてくださいませ。」
リアンダーはそう言って、指揮官の頭を微調整した。指揮官の側頭部とリアンダーの絹のように白くなめらかな太ももがしっかりと触れあう。
「うんうん……。」
リアンダーは1人で頷いて、指揮官の頭をそっと撫でた。
(ああああああああ、太もも柔らかいいいいいいい。それに頭も撫でてもらえて……最高だ。でもやっぱりこんなことしていいんだろうか?それにドキドキが止まらない……。)
指揮官はさっきまでの恥ずかしさや迷いを忘れて一旦は楽しんだが、冷静になったらまた悩み始めた。さらに好きな人の膝枕と言うことで、段々ドキドキが一番大きくなってきた。
「あ、頭を撫でるなんて失礼だったでしょうか……?」
「いや、問題ない。」
指揮官は話しかけられて動揺しながら答えた。
「良かったですわ。それでは、少しだけでもお寛ぎくださいね。」
確かに指揮官は居心地の良さも感じているが、ドキドキしてしまっているため、一向に休めなかった。
それから10分ほど経過して、やっと指揮官は落ち着いて休めるようになったのだった。
「ところで、これは他の人にもやったことはあるのかい?」
指揮官はなんとなく気になって聞いてみた。
「殿方では指揮官様が初めてですが、他の方にもこうした経験はありますね。」
リアンダーは特に何でもないように答えた。
「そうか、そうか……。」
(男では私が初めてか……ふふ……。)
指揮官は密かに喜んだ。
「どうかなさいましたか?」
「い、いや、なんでもない!そうだ、そろそろ終わりにしよう。」
指揮官は話を逸らすついでに、このままでは体が蕩けてしまいそうなため、そろそろやめることにした。
「はぁ……指揮官様がそうおっしゃるなら。少しでもお寛ぎいただけましたか?」
「ああ、もちろん。」
「良かったですわ……。」
リアンダーは少しだけ残念そうな顔をした。
「それと……も、もしよかったら、またしてほしいかな……なんて。」
指揮官は赤面した顔を逸らして頭をかきながらそう言った。
「はい!」
リアンダーは太陽のような笑顔で返事した。
ただイチャイチャしただけでした