Dream Shout   作:Re:GHOST

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甘々成分がアップを始めたようです。

おらおら、これが欲しかったんだろ!?ってな訳で紗夜さん可愛さ爆発回。

本編どうぞ!



遅起きは三文の徳にならないが得はする.........時もある

 .................や、ばい.........寝そう、だ。ああ、カバンの中にあのCD入れっぱなしな気がしてきた.........。まぁいいか、風紀委員の持ち物検査があるわけじゃないし、入れといても何ら問題は無い.........は、ず.........

 

 僕の意識はそこで途切れた。襲い来る睡魔に対抗できず、まんまと懐柔されてしまったのだ。遠出で疲れた体、ふかふかのベッドに最高の空調。そこにダメ押しの現在時刻25時だ。この好条件で寝るなという方が無理な話である。.........実際のところ、9時だろうが疲れてなかろうが、床に就つけば寝てしまうのが僕だ。親が掃除機をかけているような劣悪で醜悪で最悪な悪条件でも寝る自信しかない。.........なんの自慢だこれ。

 

 そんな感じで僕の一日は幕を閉じた。CDという爆弾をカバンに入れたまま.........

 

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「やばいやばいやばい!」

 

 ドタドタと階段を駆け下りながら、焦っている男が1人。うん、それ僕だわ。昨日の疲れが抜けきらず、あっさりと寝坊してしまったという訳だ。RoseliaのCD買いに行って曲をリピートしてたら寝ちまったなんて.........死んでも氷川には言えないな。

 

 

 

 .........なんて思ってたのに、校門前にいたのは悪魔だった。忌々しい腕章を身につけ、制服を着崩すことを悪とし裁く。その姿はまるで閻魔大王を彷彿とさせる。花咲川学園の絶対女王、氷川紗夜がそこにはいた。

 

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「え?なんだって?」

 

「風紀委員です。抜き打ちで荷物検査を行っていますので、ご協力をお願いします。西上さん」

 

「.........別にいいけど、赤っ恥かくのはお前だぜ?氷川。僕はやましいものは勿論。学校生活に不要なものすらも所持していないからな」

 

「別に西上さんが何も持っていなかったとしても、私は恥をかきませんが。それが風紀委員の仕事なので」

 

 .........まぁ、一応確認しておくか。万が一、億が一って可能性もあるし。

 

 .........ええっと、週刊少年ダウン.........これはセーフだろう、少年の必需品だし。少女分類の氷川が持っていい代物じゃない。後は.........なんだこれ、水鉄砲?なんでこんなものが.........いや、今はなんで入っているか議論している場合じゃない。学校にいるか要らないか、この二択だ。.........これはどう考えてもセーフ。体育で使うかもしれないし、何より今日は少し暑い。これを没収するのはパワハラに当たるというものだ。ふぅ、これであらかた見終わったな。全く.........抜き打ちなんて卑怯なことするもんだ。僕は大丈夫だけど他のやつは軒並みアウトだろう。

 

 .........残るはこいつか。Roselia1st single「BLACK SHOUT」.........の初回限定盤。これだけは何としても見つかってはならない。その理由は3つある。1つ目はどう転んでもこれが学業に関係するわけがないから。2つ目は初回限定盤という所が最高にダサい。氷川のCDが欲しかったのバレバレだし。3つ目は.........あんだけ盛大にディスっておいて、結局買いに行ったとか、バレたら死ねる。こいつはビニール袋の中に入れておこう。うん、そうしよう。

 

「よし、大丈夫だぜ氷川」

 

「では、拝見させて貰いますね」

 

 よっしゃ、どんとこーい!

 

「週刊少年ダウン.........アウト」

 

 は?

 

「水鉄砲.........子供じゃないんですから。アウト」

 

 え?

 

「ビニール袋の中も見させてもらいますね」

 

 え、ちょ、それはまずい!何としても阻止せねば!

 

「氷川!」

 

 僕は氷川が持っているビニール袋を取り返そうと手を伸ばした。が、掴めたのは虚空だけ。ビニール袋は依然として氷川の手の中だ。うん、終わった。

 

「.........私達のCD」

 

 氷川はとても驚いた様子で僕が買ったCDを見つめている。ねぇねぇ、今どんな気持ち!?NDK!?NDK!?優越感に浸ってんの?それとも哀れみの目なの!?

 

「.................ああ、そうだよ。悪いか?僕がお前のCDを買ってちゃ。お前の音楽をカッコイイって思っちゃダメか?」

 

「.........セーフ」

 

「は?どうしてだよ」

 

「私から言えるのはこれだけです。勿論、ダウンと水鉄砲は預からせてもらいますけどね」

 

「.................それを持ってることを許してくれるのか.........?」

 

 僕が恐る恐る尋ねると、彼女は嬉しそうに、楽しそうに微笑み、こう言ってくれた。

 

「せっかくのファンを、無下には出来ませんから」

 

「はは、なんだそれ」

 

 氷川のこの言葉でやっとわかったことがある。僕はこいつに一生勝てないだろう。逆立ちしたって、僕と氷川の能力を丸々入れ替えたって、勝てないだろう。人間的に、精神的に、技術的に、氷川はずば抜けているんだ。.........勝つことを目標とするのは、やめよう。こいつに胸を張って、頑張ったって、心から言えるようなことがしたい。追い越すんじゃない、追いつくように、頑張ろう。僕は、氷川の心の広さを目の当たりにして、ふとそう思った。

 

「.........ほら、西上さん。こっちに来てください」

 

「んあ?ああ、わかった」

 

 氷川に手招きされたので、僕は億劫そうに近づいた。すると、いきなりネクタイを引っ張られ、引き寄せられた。それこそ、キスでもしそうな距離まで、僕と氷川の顔は急接近した。

 

「.........全く、ネクタイが曲がっていますよ?時間が無いのはわかりますが、登校前には、きちんと身だしなみを整えて来てくださいね?」

 

 まるで、蜜月の夫婦だ。会社にだるそうに行く夫と、それを窘め、ネクタイを直してあげる妻。.........想像してたら予想以上に恥ずかしくなったので、これ以上の深追いはやめよう。

 

「あ、あの、氷川!」

 

「なんですか?あまり、暴れないで欲しいのですが」

 

「ちっ、近い!」

 

「.........っ!///そ、そうですね。すみません、西上さん」

 

 この時、氷川の優しさと香りに包まれて、少し泣きそうになったのは、墓まで持っていく僕の秘密の一つだ。

 




はい!終わり!

いや続くけど!久しぶりの更新。すみませんねぇ.........言っちゃあなんですが、日菜の方が5倍は書きやすい。うん。

では、今回はこの辺で。

お読みいただき、ありがとうございました!

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