というか、次話もいつになるのやら.........更新はします、絶対。
紗夜と龍樹は逃避行の果てに何を見るのか.........?
では、本編どうぞ!
ヨレヨレのTシャツをルーズに着こなす男が目を止めたのは一つの名簿。男の正体は教師で、名簿の正体はクラス名簿だ。何故教師がクラス名簿に違和感を覚え、目を止めたのか。答えは単純明快で、クラス名簿に書いてあり、教室に居るはずの人物が居ないからだ。
「西上はいつものサボりだが.........ひ、氷川はどうした?」
教師は壇上から生徒に問う。生徒達も同様のことを考えたのだろう、皆が首を傾げ、氷川紗夜の行方を口々に話している。
──ある一人を除いては。
「.........ひ、氷川さんは!旅に出るって、言ってました!」
喧騒に包まれた教室内に、鐘を打つ。白金燐子が、椅子から勢いよく立ち上がりそう告げたのだ。燐子の顔は恐れなど全く見せず、それどころか清々しそうだ。氷川紗夜失踪の真相を知っているのは燐子だけなので、教師はどうにかして問いただしに来るだろう。人見知りの燐子は、先生と会話する覚悟が決まっているのだ。
「.........白金?すまないが、どういう意味が教えてくれないか?」
「言葉通りの意味なんです。今朝、氷川さんから連絡がありまして、今日は学校をサボります.........との事です」
「なにィ!?.........それは本当なのか?」
「はい!」
彼女をよく知る者がこの光景を見たらこう思うだろう。あれは燐子ではない.........と。それ思われてしまう程、今の彼女は楽しそうに笑って、会話を楽しんでいる。
「ぐぬぬ.........はぁ、そうか。氷川もそういう時くらいあるか」
肩に入っていた力をどっと抜き、教師は溜息を一つ漏らした。随分と物分かりが良い.........と言うよりかは、氷川が考えも無しにサボりなどしないという、一種の信頼から来ている安堵だ。
(氷川さん.........あとは頑張ってくださいね)
そして、白金燐子は祈る。旅の無事と、氷川紗夜が前に進めるように。同じバンドメンバーとしてだけではなく、友達として.........
いつもは机の空きは一つだけなのだが、今日だけは二つ。二人の人物が学校には来なかった。龍樹の机に書いてあった文は、いつの間にか消えていて、ピカピカになっている。
この日、長く続いてきた氷川紗夜の無遅刻無欠席に、終止符が打たれた。
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「白金さんには、感謝しないと」
「それに関しては、俺も悪かったと思ってるよ」
「.........そうね。でも、私はいい気分よ。今日は宜しく頼むわ」
「エスコートは任せてくれ、お嬢様」
ガタンゴトン、ガタンゴトンと電車に揺られる俺たちの間には、ゆっくりとした時間が流れる。知り合いはみんな学校に行っている為、恥じることは何も無い。俺と紗夜は手を繋ぎ、二人がけの席に座っている。
「それにしても、今日の紗夜は一段と可愛いな」
「そ、そうかしら.........?こういうのって初めてだから、どんな服装で行けばいいのかわからなくて.........だから、日菜に可愛いって言われた格好で来てみたのだけれど.........」
「ああ、よく似合ってるよ」
この旅の終着点は、天国か地獄か。それは定かではないが、少なくとも俺は、どちらに転ぼうとも後悔はない。自分で決めた選択に、後悔することが最も不正解な選択だと知っているからだ。迷いは断ち切った。後は、紗夜と楽しむだけ。それが、今の俺に出来る最高の回答だと信じて。
「.........今日は、何したい?」
「そうね.........とにかく話がしたいわ。場所はどこでもいいから」
「ん、わかった。じゃあ、後4駅くらい乗ったら降りようか」
「ふふっ、なによそれ。適当すぎない?」
「適当でいいんだよ、頭を空っぽにして話し合うにはそれくらいが丁度いい」
俺達が降りた後もこの電車はずっと走り続けるのだろう。それこそ、見たことも行ったことも無い土地まで、ガタンゴトンと無機質な音を奏でながら進むのだ。壊れるまで、ずっと。それは、少し寂しいことかもしれない。でも、使命や目的があるということは素晴らしいことだと、俺は強くそう思う。それだけで、人や物に無限の可能性や価値を持たせられるのだから。俺が今、本当にやりたいことはなんだろう、そう考え始めると、深みにはまってゆく自分がいた。
「.........龍樹?」
「ああ悪い、少し.........寝不足でな」
「大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、ありがとうな」
最初は、紗夜の恤救だった。それが恋になって、愛になった。もう、利用し合う関係も、依存関係も終わりだ。俺は今日、紗夜との関係を終わらせ、進ませに来たんだから。こんな思考をしている場合ではない。紗夜に伝えに来たんだから、もう死にたくなんてない、いつまでも一緒にいたいと。
「紗夜、今日は楽しもうな」
「.........ええ、勿論そのつもりよ」
紗夜は少しびっくりしていたが、直ぐに笑ってくれた。何で紗夜がびっくりしたか.........それは、俺が笑ったからだろう。心から、笑ったからだろう。久しぶりに楽しいと、俺は今、本当にそう思っている。
こう思わせてくれたのも、笑わせてくれたのも、全部全部、紗夜のお陰なんだ。ありがとう、大好きだよ。
心の中で紗夜に最大限の感謝を告げると、すぐさま意識を切り替える。今日は、しみったれた感情はなしだからな、笑っていこう。
車窓から見える景色は、青色に光り輝く空。少し、曇りがかっている部分もあるが、綺麗な景色だ。
次の作品は香澄ヒロインで書こうと思っています。うん、香澄良いよね、最近気づいた。
もう本当に終盤!最後まで付いてきて下さいね!?感想、評価などをして貰えると作者が飛び跳ねます。本当に嬉しいんだもん!
では、今回はこの辺で。
お読みいただき、ありがとうございました!