Dream Shout   作:Re:GHOST

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最終話です。皆様、長らくのお付き合い、本当にありがとうございました。

夢を諦めた少年が出す決断とは、夢を追う覚悟を決めた少女が出す答えとは。

語りたいことは後書きで語ります。

では、最後の本編をどうぞ!


叫べ、その心

「今日は.........楽しかったか?」

 

 5時の鐘が鳴り、近所の小学生達がこぞって帰り出す黄昏時。デートスポットでもなんでもないただの橋で、俺が切り出した話は今日の感想だった。俺の眼前.........つまり、手摺の向こうには川が広がっていて、水面には雲の隙間からちょこっと顔を覗かせた月が反射している。デートの締めにしてはちょうどいい時間帯だろう。電車の中で必死こいてデートプランを構築した甲斐があったというものだ。少し曇天なのが、なんだか俺たちみたいで少し面白い。

 

「ええ、楽しかったわ。.........まるで、自分が自分じゃないみたいに」

 

「.........それは、どういう意味だ?」

 

「私がこんなに楽しんでもいいのかしらって、そんな気分になったのよ」

 

 彼女の目はとても暖かくて、とても冷たい。理想と現実の狭間で葛藤しているのだろう、その目はキラキラ輝いていてその実、空っぽだ。俺も経験している事なので、その気持ちはよくわかる。なんだか.........友達に対して、世界に対して申し訳なくなってしまうのだ。普通じゃないことをして、普通に戻ろうとしても戻れなくて。何度も何度も、「なんで、なんで出来ない」って自問自答して、普通の人が羨ましく見えて、何も持ってない空っぽな自分を恨む。そうして後に待っているのは、絶望だ。自分の才能を見限り、死ぬことだけを考える。そんな、最底辺の生活を送ってしまうんだ。経験者じゃないと分からないかもしれないけど、この生活はハッキリ言って生きている心地がしない。全ての行動、言動、思考に罪悪感が、拭いきれぬ程の罪悪感が付きまとう。だから、その内生きていることが罪に感じてしまうのだ。

 

 誰だって幸せに笑って暮らしたい。でも、この思考に陥ってしまうと、幸せとは普通の人生を送って普通に頑張っている人へのご褒美だと感じてしまうのだ。つまり、普通じゃない自分は幸せになる権利がないと、そう解釈してしまう。

 

 紗夜は今、自分が幸せになっていいのか困惑しているんだ。

 

「.........俺は、お前の事情も知ってるし、お前のことが大好きだからハッキリ言うぞ」

 

 だから、誰かが教えてあげなければならない。この世に、存在を否定される人間がいていいわけがないと。

 

「確かに、俺たちはおかしい.........言っちまえば、イカれてるって奴だろうよ。生きてる理由がわからなくなって、他のやつがキラキラして見えるのもわかる」

 

「でもさ、それってそんなにおかしいことか?」

 

「.................え?」

 

「今、生きてる理由がわからないってそんなの当たり前だろ。だって俺たち人間は」

 

「「生きる理由」を探す為に生きてるんだから」

 

「お前がキラキラして見える奴らは、たまたま理由を見つけるのが早かっただけだ」

 

「生きる理由を見つける早さで優劣を付ける奴こそ、俺は本当にイカれてると思うぞ?」

 

「迷ったっていいんだ。立ち止まったって、泣いたって、自分を傷つけたって」

 

 俺はこの時、どんな顔をしていただろうか。泣いていたか、笑っていたか、はたまた怒っていたか。今となっては、どうでもいいことだが。だって、今の俺は.........

 

「生きる理由を見つけて、最後に笑ってられたら、今までのことが全部報われるんだからな!」

 

 こんなにも笑顔なんだから。

 

「.........いいの?こんな私が夢を追いかけても」

 

「勿論」

 

「.........生きてても、いいの?」

 

「勿論!」

 

「.........迷惑も沢山かけるかもしれないわよ.........」

 

「足りないとこは、半分ずつ補えばいいだろ!それが.........恋人じゃねぇのか!?」

 

 誇張無しで、生きてて一番大きい声を出したと思う。大声と言うより最早、怒号に近い。ここで自分の気持ちを吐露しておかないと、一生後悔する確証があったから。そして何より.........紗夜にクヨクヨした顔は似合わないと思ったから。俺はここで、すべてをぶちまける。

 

「大体、日菜ちゃんは関係ないだろ!紗夜が何したいか、どうやって生きていくかに、あの子は全く関係ない!」

 

「家族や社会に囚われんな!俺の中での紗夜は.........俺が惚れた氷川紗夜は、そんなことでへこたれる女じゃねぇぞ!」

 

「いつだって冷静で、優しくて、カッコよくて、魅力に溢れてんのがお前だ!」

 

「俺は紗夜のそんな所が好きになったんだよ、病んで落ちぶれたお前なんて見たくねぇ!」

 

 力説に次ぐ力説。紗夜の心に届くように叫べ。精一杯、思っていることを言葉に乗せて叫べ。それが出来なきゃ、俺は本当のゴミ野郎だ。好きな人を泣かせるだけ泣かせた、最低な野郎だ!

 

「お前が辛くなったらいつでも駆け寄る!本気で夢を諦めたくなったら、俺も小説家になることは諦める!」

 

「でもよ.........お前の夢を諦める理由に、才能だとか日菜ちゃんだとか、そんな下らねえもんを使ってんじゃねぇ!」

 

「お前の負の感情の捌け口に使われる為に、日菜ちゃんはいるんじゃねぇんだよ!お前の心が折れそうになった時に、支える為に日菜ちゃんはいるんだよ!それは、俺には出来ないことで、姉妹の二人にしか出来ないことなんだよ!」

 

 顔が熱くなって、呼吸も早くなる。曇り空から落ち始めた雨粒が、体を冷やしてくれて気持ちいい。紗夜の顔は暗くて伺えないが、少しは俺の気持ちが伝わっていることを切に願う。もし、紗夜に気持ちが伝わっていなかったとしても、伝わるまで俺は言うつもりだが。だって、それが恋人の役目なのだから。

 

「.........龍樹.........」

 

「.........悪い。少し、言いすぎた.........って、紗夜?もしかして泣いてるのか?」

 

 暗闇で光るのは、紗夜の顔に走る、一筋の涙。暗いからハッキリと視認した訳ではないが、なんだか声も震えているし、きっと泣いているのだろう。

 

「雨が隠してくれると思ったのだけれど、そうはいかなかったみたいね」

 

「わ、悪かった!え、ええっと.........ごめん!?」

 

「ふふっ、私が好きになった龍樹は、そんな風にオドオドしないわ。さっきみたいに、私を叱ってくれる龍樹を、好きになったのだから」

 

 .........何だか一本取られた気分だ。微妙に、いや非常に悔しい。そして、再認識出来たよ。俺はやっぱり、紗夜とこういうやり取りをするのが本当に好きだということを。紗夜と下らないことで笑って、喧嘩して、仲直りして。そういった、普通の事が、紗夜と一緒だと何倍も楽しくて、幸せだということを。

 

「.........仲直りのキスをするわよ」

 

「外ですけ.........ど」

 

 俺が言い終わらぬ内に口内に侵入してくるのは、ヌルッとしていて、少しざらついた舌。今でも、紗夜とキスをしている間は、時が止まったような錯覚を覚える。周りの景色がモノクロームになって、紗夜しか見えなくなる。

 

 お互いの腰に手を回し、愛おしそうに抱き合う。雨に濡れた体はひんやりとしていて少し寒いが、心は暖かい。一つ、二つとキスを重ねる度に、心がポカポカとしてくるこの気持ちを、愛と言うのだろう。

 

 ──傘は、もう要らない。

 

 これは不甲斐ないから出た涙じゃなくて、嬉し涙なのだから。拭う必要なんて、何処にも無い。雨に打たれよう、そして濡れよう!あの時とは違うのだから、どこまでも笑って生きて行こう!

 

「龍樹、何で私のこと.........んぅ、好きになったの?」

 

「気づいたら、お前のことを目で追うようになってた」

 

「なによそれ、変態じゃない」

 

「.........かもな」

 

 俺たちは雨が止むまでの長い長い間、ずっとキスをしていた。天が俺たちのラブストーリーに泣いてくれているのに、期待に応えない訳にはいかないからな。

 

 その後雨が止んでも、星や月は雲に隠れて姿を見せてはくれなかった。その事に、とてつもない親近感を覚えたのは俺だけだろうか......?だって、最後の最後でカッコつけられないのは、まるで俺たちみたいだから。

 

 

 

 

 

 

 ─────── ─────── ───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これからは、酒も自傷行為も禁止だな」

 

 帰り道、俺はそう呟いた。酒まで禁止する意味は別に無いが、ついでということで辞めよう。紗夜が支えてくれるなら、そんな物に頼らなくてもきっと大丈夫。

 

「エッチはどうするのよ」

 

「.........それは、週2から週4くらいで.........って、何言わせてんだバカ」

 

「ふふっ、冗談よ」

 

 俺たちはこれからも挫折して、諦めて、死にたくなるだろう。それが人生というものだ、仕方ない。

 

 .........でも、生きる事を諦めるという事は、もう無いだろう。二人で支え合うって決めたのだから。

 

 .........そうだ、この体験談をエッセイみたいにして小説にしよう!

 

 タイトルは、そうだなぁ.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Dream Shout」なんて、どうだ?

 

 二人の道に、光あれ。

 

 

 




Dream Shoutこれにて完結です。ここまでの応援、本当にありがとうございます。

この作品は作者が実際に龍樹君の様な状態に陥り、感情を発散したくて始めた作品でした。今は解消され、元気になったのですが、当時は本当に地獄でしたね笑 布団に入っても明日が怖くて眠れない。朝起きても、外に出るのが怖くて、着替えている途中も手が震える。眠れない夜のお供はDream Shout(以下、ドリシャ)でした。ドリシャを書いている時だけは楽になって、感想やPVが伸びているのを見ると、生きてていいのかなって安心出来たんです。

そういった意味では、ドリシャは私にとって精神安定剤のようなものでした。ドリシャを徹夜で書いて、朝日が昇ったら外に出る。こんな感じの生活を続けてましたね笑 まぁ、日中に睡眠時間が足りてなくてよく吐いてましたけど笑

これは制作裏話になってしまうのですけれど、執筆開始時はこの物語、龍樹と紗夜を心中自殺させて終わらせる予定でした。でもそれは流石に救い無さすぎるよなぁ.........とか、いや、俺の気持ちを晴らすならそれくらいしないと!とか、色々考えたんです。最終的にハッピーエンドにしたのは、物語が後半になるにつれ、私のストレスが無くなっていったからです。元々、この暗い鬱設定もストレス発散で始めたものですから、ストレスが無くなれば、話はハッピーになります。てか、実際なりました笑

どんな人間も、生きてていいんです。どれだけダサくたって、生きてることがすげぇカッコイイんだから。そんな小っ恥ずかしいことを伝えたかった作品です。

実は自分が若干躁鬱気味だったので、気分がいい時は隣の一等星、辛い時はドリシャって感じで分けて更新してました笑 謎の更新頻度にはそんな浅い訳があったのです!

さて、後書きはこの辺でおしまい!次は香澄ヒロインで書きます!今までの作品とは違って、バンドメンバーばんばん出す!ポピパの出番多くする!うん、そうする!

ではでは、ここまでの応援、本っ当にありがとうございました!!!

また、お会いしましょう!

(感想評価、待ってますね!笑)
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