時雨••••温和で優しいみんなの相談役。伝説の5艦の一人。今は時雨2に隠れてしまっている。
時雨2•••時雨が作り出した第2の人格。荒い口調で好戦的、姐御肌。基本的に現在はこの時雨が表立って行動している。
鳳翔••••居酒屋鳳翔の店主。細かいところまで気が利き、察しもいい。提督には店を増築してもらい感謝をしている。
※『』はメガネで見える艦娘の願いです
今回は基本提督視点です。
「いい機会だからいっておくよ。僕はね、提督のことが大っ嫌いなんだ」
呆然とする私の横で、なんの淀みもなく時雨はいった。居酒屋、騒がしいはずの夕どきの店内なのに周りの喧騒が嫌に小さく聞こえる。今にも泣き出してしまいそうな曙をはただただ時雨を睨んでいるのだった。今まで保ってきた3人の関係性が大きく崩れた瞬間であった。
ー遡ること6時間ほど前
「はあ?時雨を怒らせる?」
考えがあると言われ医者から手渡された時雨対策用と書かれた書類。そこには確かに3パターンに分けられた寸劇のようなものが記されていた。
「はい、その通りです。あなた方にはこれから、3パターンのロールプレイで時雨さんの気分を害してもらいたいんです」
「いやあの....イマイチ意図がわかりません。時雨の病気の原因究明とどんな関係が?」
「これは失礼、そうですね。まずは1から説明します」
そういうと医者は私たちに渡した資料に沿って今回の作戦の意図と内容を話し始めた。
「まず、説明しないといけないのは一般的な多重人格の対処方法についてです。多重人格の要因究明としては先ほど私が時雨さんに戦争のビデオを見せた例を出しましたように、人格を作り上げてしまった要因の特定が始めのステップです。しかしどうにも彼女は我々の想像の範囲外のことが要因のようでしてこの方法では時間ばかりがかかってしまうと判断しました」
「そうね。私たちじゃ正直、あいつの願いなんて皆目見当もつかないだろうし、その方法はナンセンスね」
「そこで私は考えました。わからないなら直接本人に言わせてしまえばいい、とね。そこで先ほどの寸劇です。喜怒哀楽の中で、怒りというものは最もコントロールが難しい感情といわれています。カッとなって気がついたら、怒りで我を忘れてなどの言葉にもあるように理性の壁を超え、本音を聞き出す方法としては怒らせるのが一番なんですよ」
「....なるほど、理屈は理解した。つまり時雨を我を忘れるほど怒らせて心の内に秘めている本音を吐き出させようって感じか。私たちはそのための演者というわけだ」
「はい、その通りです。もちろんこれはあくまで作戦の一つですのであなた方の意思は尊重するつもりです。関係性が悪くなる可能性は十分にありますからね....どうしますか?」
「やるわ。それで時雨を元の戻せるんなら....憎まれ役なんていくらでも買ってやるわ」
「無論、私も協力しよう」
「私たちもやります!時雨さんには本当にお世話になってますから!」
相手を故意に怒らせる行為は決して気の進む話ではない。ましてや相手が時雨だ。正直普通なら悩んでもおかしくない場面であったが、時雨を救いたいというみんなに意思は強く、即答するのであった。
「満場一致で同意ということで。作戦は本日午後から実行します。あ、それからこの作戦の要は、提督様、あなたです」
「私?」
「はい、時雨さんの病気の原因は少なからずあなたが絡んでいると私は踏んでいます。つまり作戦が成功し、時雨さんの行動をうまく誘導できるかどうかは、あなたの演技力にかかっています。ぜひそこのところ意識して臨んでください」
「わ、わかりました。頑張りますね...」
(この作戦を成功させるにはやはり....またこいつの出番というわけか。やれやれ...最近はどうも人の感情を読むことを強いられる場面が多くて困るな...)
私は机の引き出しから例のメガネを取り出し、小さくため息をついた。
ー午後
「.....で?話ってなんだよ。こちとらせっかくの休日に呼びだされてんだ。茶ぐらいおごってくれるんだよな?...ってかなんだよそのふざけたメガネはお前普段そんなんかけてねえだろ」
ージョナフル
鎮守府内のファミレスの一つ。一般的なメニューに加え、艦娘が提案した料理が月一で提供されることを売りにしている。食堂も完備してはいるが、創作料理目当てで、ここで食事をとるグループも割といるかなり人気の店だ。
私は話があると連絡を入れ、時雨をここに呼び出した。店内はお昼近いこともあり多くの艦娘で賑わっていた。時雨と提督に見えないように他の3人も裏で席を陣取りいよいよ作戦が開始された。
作戦1 クソ提督が即放置!?私にもっと構いなさい作戦
時雨を呼び出し、話をしようとすると、漣が登場。時雨がいるのにもかかわらずベタベタとひっつき話を妨害。二人の絡みを見せ続けられる挙句、放置された時雨が怒り心頭になるというシナリオ....。...え?この作戦名は何かって?知らんわ医者に聞け
「話っていうのは、その...なんだ。最近どうだ?」
(あれ、このくだり凄いデジャブだぞ)
「はあ?....別になんともねえよ」
「あーいや、その、なんだ。雰囲気変わったなあって思いまして...」
(あー、無理。雰囲気悪すぎてお腹痛い。漣ー早くきてくれえ)
事前に渡されたトランシーバーから声を聞き取り状況を確認する一行は裏で出るタイミングを伺っていた
「....なんかぎこちないですね。久しぶりに会う娘とお父さんみたい」
「あいつ話すの下手すぎでしょ!これじゃあ作戦実行する前に時雨帰っちゃうじゃない!」
「これは早めに進めたほうがいいですね。少し強引ではありますが、突っ込んじゃいましょう」
「了解ですぞ!」
「だーから!イメチェンって言っただろ!女の秘密を詮索する男は嫌われるぜ?...で、なんだよ話って。世間話しにきたんじゃねーよな」
「あー...話というのはだな「ご主人様ー!!!」
大声をあげて、凄いスピードで私の隣の席にきた漣は、私の腕に抱きつき、嬉しそうに話しかけていきた。
「こ主人!こんなとこで何してるんですぞ?私もご一緒しますぞ!」
「さ、漣、奇遇だな」
「本当に!ところで何してるんですかな?」
「あ、ああ、実は時雨と少し話しがあってな、それで....」
「だったら我も参加しますぞ!ここのお店のパフェでも食べながらゆっくり語らい合いましょうぞ」
「ほう、私は甘いものにはうるさいぞ?ここのパフェはうまいのか?」
「今は間宮さんが考案した期間限定スペシャル桃デラックスがオススメですぞ!きっとご満足いただけるかと!」
「それはいい情報だ。頼んでみるか」
「やったー!じゃあ我が奢ってあげますぞ!」
「え!本当か、気前いいな」
「いやいや、私と提督の仲じゃないですかあ、えへへ」
「........おい」
先ほどまで時雨と話をしていたのにもかかわらず、突然入ってきた漣の話に食いつき、挙句注文をしようとしている。時雨はしばらく私たちの様子を観察してから私と漣をじっと睨んできた。
当然だ。呼び出しておいてこの仕打ち、どんな寛大な艦娘だって怒る状況にこの時雨が怒らないはず.....
「おい!いい加減にしやがれ!」
(よし!作戦通り!後はボルテージを上げさせ.....)
「わざわざ半分なんてケチくせえだろ!俺が払ってやるから二人で一つずつ食べな」
「うるさい!私は甘いものには目が....ってえ?」
「え、でも...」
「いいってことよ、楽しみにしてたんだろ。ってか提督、おめえシャキッとしろや。艦娘の前にこいつだって女の子なんだぜ。本来はお前が奢ってやる場面だろうが」
「す、すまん。そういうところに気が利かず....。というか怒ってないのか?自分で言うのもなんだがわざわざ呼び出しておいて放置しちゃってた気がするんだが」
「ふん、俺はそんな小せえ女じゃねえよ。確かに最初はなんだこいつってちょっとイラっとしたけどよ、漣の様子見てたらそんな気持ちどっか行っちまった」
「あ、ありがとうございます.....」
作戦ではこの後も、漣が頼むことで自然とパフェの個数を一つにしてお互いに食べさせ合うという予定だったのだが、時雨があまりに意外な反応をするもんだから私も漣も黙々と1個ずつのパフェを食べることになり結局作戦は見事に失敗した。時雨はその様子を少しだけ眺めると、すっと立ち上がりレジに向かった
「あ、おい、待て話はまだ!」
「俺はこれでも忙しいんだよ。金は払っておいてやるからよ。話はそんな重要なことじゃねんだろ?だったらそいつに構ってやれよ、漣のそんな顔久々に見たぜ。じゃあなごゆっくり」
そう言って颯爽と店を後にする時雨をおうぜんと眺めながらパフェを完食し、罪悪感に身を包みながらトボトボと3人の元に戻る私と漣であった。
「私はなんてことを.....」
「ボノたんと潮の下着入れ替えるイタズラした時以上の罪悪感ですぞ.....」
「どさくさに紛れて罪の告白してるんじゃないわよ。ってかあれあんたの仕業だったのね、殴っていいかしら」
「....うーむどうやら寂しいとか嫉妬心と言った感情が要因ではなさそうですね。むしろ他の艦娘に対しては以前の時雨さんのままですし......ますますわかりませんね」
「つ、次の作戦....やるんですか?あの様子見ると次の作戦だいぶ危険な気が....」
「もちろんやります。提督様には申し訳ないのですが時間がありません。どんどん行きましょう」
「お、おー...頑張るぞお」
作戦2 本当にクソ提督!?セクハラまがいのアプローチに幻滅アンド激昂!?作戦
作戦はシンプルオブシンプル、私が潮に対してセクハラをしている場面を時雨に目撃させる。今まで付いて行ってた提督のそんな姿を見て時雨は幻滅。そして怒りのままに自分に罵声を浴びさせようというシナリオ。
....気がついた。この寸劇、私にとってトラウマになるわ。ダレカタスケテ
「時雨さんは現在、鎮守府内にある室内温水プールで泳いでいるそうです。休憩のタイミングでいい感じに視界に入るようにセクハラお願いします」
「わかりました....潮、すまんなこんなことになって、作戦とはいえ嫌だったら途中でやめてもいいからな」
「いえ、その、全然大丈夫です....!気にしないでください」
『早くきて!私にセクハラして!』
(あー、私は今日死ぬのだろうか、というかなんで潮さんノリノリなの、心の声に若干引いてるんですが)
「では作戦開始」
ー温水プール
喫茶店のすぐ近くにある我が鎮守府の艦娘専用施設だ。流れるプール、ウォータースライダーはもちろん、100mプールや飛び込み用も完備しており、鍛錬に、遊びに、気晴らしに多くの艦娘が訪れる憩いの場の一つ。
時雨はその一角、100mプールで黙々と泳いでいたが、区切りがついたのかプールサイドに上がって一息ついていた。
「よっこいしょっと...。1kmはちょっと泳ぎ過ぎだったかなあ、流石の俺も疲れたぜ、さってそろそろ寮に戻りますか...ってあれは提督と潮か?こんなとこで泳ぎもせずに何やってんだ....」
「うー、うーんいいねえ潮ちゃんその体。駆逐艦とは思えないよ」
「そ、そんなことないです....普通です」
「普通かあ?じゃあちょっとくらいなあ触っても問題ないよな」
「いや...その....ダメですよ提督....」
「なんだよお、いいじゃんか少しくらい!なあ!」
「や、やめてください!嫌がってます!私!嫌がってます!」
「そんなに嫌なら提督命令で無理やり触っちゃおうかなあ、ぐへへ」
(いや嫌がるって台本に書いてあるけど口に出しちゃダメでしょ!)
(す、すみません! こういう演技、いざしろってなるとセリフ浮かばなくて)
(こいつ脳内に直接)
「おい!何やってんだ。ってか漣はどうした」
「し、時雨!?なんでここにー(棒)」
「あ!時雨さん!よかった...。助けてください、提督にセクハラされてて....」
「な、お前!卑怯だぞ!時雨を盾にするんなんて!」
「へえ....。提督がセクハラねえ...」
「いや!これはその!違うんだ、聞いてくれ時雨!」
黒いオーラが一面に沸き立ち、ドスの効かせた時雨の声が私の耳に届く。演技することも忘れただただ手を前にやり弁明をしようとしていた。時雨はそんな私に顔をうつむかせて一歩、また一歩とにじり寄ってくる。
(あーこれ死んだわ。ごめんなさい母さん、私はあなたよりも先に旅立つようです)
そう覚悟し強く目を瞑った私の右手にほのかに柔らかい感触がした。というか今ムニって....
目を開けると真っ赤に赤面した潮と私の右手が時雨の胸を鷲掴みにする光景が広がった。
「ったく、みっともねえ姿見せてんじゃねえよ、てめえを信頼してる艦娘に見られたらどうすんだよ。....私でいいならいくらでもこういうことしてもいいから、ほかのやつには手を出すな、わかったな」
『潮を守りたい、提督も守りたい』
「は、はい、いえ!二度とこんなこといたしませんです....」
少し顔を赤らめてはいるものの、時雨のクズに対する大人な対応に思わずおかしな敬語で完全に屈服してしまった。潮は潮でこの状況を読み込めず、頭から湯気を出しながら目を回してフラフラしている。時雨は倒れかけた潮をすっと支えると私にこう言ってきた。
「ふん、わかればいいんだよ。潮のこと医務室に運んでやれ、気ぃ失っちまったみたいだ」
「え、でもいいのか、さっきまでセクハラしてた相手だぞ」
「別に普段の様子見てりゃ、そんなことするやつには見えねえしな。早く運べ。」
「は、はい!すぐに運びます!」
またもや作戦は失敗した。医務室で演技かと思ったら本当に気を失っていた潮を眺めながら3人は大きくため息をついた。
「あいつ...全然中身は変わってないわね。口調や態度は違うだろうけど、根本の性格は時雨と連動しているのかしら、ますます複雑な気がしてきたわ」
「うーむ、となると人格が連動している?それとも影響を及ぼして主人格の性格になりつつあるのでしょうか?ともかくこれだけやって全く要因がつかめないのは困りましたね」
「次の作戦....かなり過激ですぞ。本当はここまでである程度は解決する算段でしたし、本当にやる意味あるんですかな?」
「漣、ここまできてやらないって選択肢はないわ。あんな優しい姿見せられたら余計にね。大丈夫、次で必ず時雨を引き摺り出してあげるわ」
「ではすみませんが、提督様、曙さん。よろしくお願いします。周りを巻き込まないようにできるだけ人のいない場所でできるよう我々も善処します」
「うむ....。ではいこう、最後の作戦開始だ」
作戦3 このクソ提督!罵詈雑言を時雨の前で浴びさせる作戦!
作戦2よりもさらにシンプル。曙が時雨の見える前で私に対してありったけの罵詈雑言を浴びせる。それを見た時雨が曙に対して怒りをあらわにする、というシナリオ。ここで重要なのが配役。普段からおとなしい艦娘や私を明らかに慕っている艦娘ではこの作戦が破綻する。そこで普段からツンケンとした態度を取っている曙にお願いすることで、状況を自然とすることを可能とした。
「はい、では作戦開始します。時間的に終業後の夕食どきです。提督からお昼にできなかった話も込みで今晩のみたいとさそってあります。場所は居酒屋鳳翔の2階の個室、できるだけ端の席を取りましたので思う存分罵詈雑言言ってください。おそらく賑わっている店内であればそこまで目立つこともないでしょう。提督様はその...頑張ってください」
「「了解(した)」」
ー居酒屋鳳翔
1階2階と昔ながらの佇まいをした居酒屋。鳳翔が店主をしており、色々な地方のお酒を用意している上、メニューもリーズナブル。宴会場やカウンター席、テーブル席に個室席と、多くの用途に対応しており、料理は絶品。お酒好きはもちろん、普段からあまり飲まない艦娘も鳳翔には足を運ぶ子も多い。
「あら、いらっしゃい。懐かしい組み合わせですね」
「鳳翔さん、なんだかお久しぶりな気がしますね、すみませんが今日はよろしくお願いします」
「ええ、事情はわかりませんが、提督の頼みです。周りの席はできるだけ開けておきますので思う存分討論してください」
鳳翔さんにはあらかじめ店でもしかしたら喧嘩が起きてしまうかもしれないこと、それだけ重要で危ない話をするかもしれないことを事前に話してある。...まあ私がただ悪口言われまくるだけなんだけど。全面的に協力してくれるとのことで助かった。
「ご協力痛み入ります。このお礼はいつか必ず。本当にありがとうございます」
「あらお礼だなんて、楽しみにしてますね♪」
「ほら!さっさと行くわよ!クソ提督!お腹空いてるんだから!」
「あ、ああ。では鳳翔さん、また」
曙に腕を引かれ、指定された個室に行くとすでに時雨は日本酒を片手に座っていた。
「おっせえな、あんまり待たされるもんだから先にいただいちまったぜ」
「ああー、すまんな、今日はよろしく頼む」
「.....よろしく」
「しっかし懐かしいメンツだな。最後に曙と提督と飲んだのはまだこの居酒屋が1階しかない頃じゃないか?あの時はほんと曙の態度悪かったよなあ、あー今もそれは変わんねえか」
「うっさいわね!それはこいつが悪いんでしょ!溜めてた鬱憤吐き出すために今日は思いっきり飲んでやるんだから!」
2人は初期の頃からいるメンバーで私は提督だ。話のネタは尽きることがない。この雰囲気も、お酒に酔ってしまうのもある種作戦内だ。酔った勢いとあれば悪口も自然と言えるし、居酒屋ならある程度大声出してもただの飲んだくれと思われて不審がられもしない。ある程度全員がお酒が回ってきたと判断し、曙は作戦を実行した。
「おい!クソ提督!私あんたに前から言いたいことあったのよ!」
「ど、どうした曙、急に...」
「急にもクソもないわ!日頃からあんたの指揮見てるとイライラすんのよ。作戦も消極的だし、指揮もいっつもどっちつかず!これでうまくいってるのが嘘みたいって今も思ってるわ!」
(うむ、自然だな。演技とは思えない、演技だよね?)
「なんだなんだ?愚痴ぶちまけコーナーか?いいねえ」
「いや、これはお前らのことを思ってだな....」
「思ってるならなんで積極的にコミュニケーションしないわけ?そんなの一部の艦娘からは嫌われてるって勘違いされてもしかたないわよ?その子の気持ち考えて行動したことあるわけ?」
(曙さん....普通にこの前の件の愚痴じゃないですか...ごめんよそんなに気にしてたんだ)
「おうおう、確かに提督は艦娘とのコミュニケーションが足りねえな。今日1日だけでもよくわかったぜ」
「時雨まで....」
「それにあんた、いっつも書類業務に追われてて、まともにご飯食べてない時期もあったじゃない。秘書艦制度だってイヤイヤつけて....そんなに自分の能力を高く見てるのかしら?」
「ははっ...痛いとこ突かれたな」
「.....へっ、まぁ確かにそういうとこあるよね、提督は」
曙は話に夢中で気がついていないが、ピクリと反応した時雨の口調はいつものものに戻りかけていた。
「この前だって、秘書艦業務なんていらない、終わる量だから休めって言われて休んだら、一人でヒイヒイ言いながら業務やってたのよ。見栄はるんじゃないわよって感じ」
「.......」
「まああれは確かに、私の技量不足だったな、迷惑かけた。....って時雨どうしたさっきから俯いて」
「ふん、私訂正する気は無いわよ」
時雨の顔を見ると酔っていたはずの赤い頬は元に戻っており、コップを握る手は震えていた。そして何かを覚悟するかのような大きなため息をつくと静かに話し始めた。
「本当に昔から....嫌になっちゃうよ。モットーだかなんだか知らないけど一人で理想を抱いて、抱え込んで.....。どんなに辛くなったって変わらないのが余計に腹が立つ。望むことをやって、嫌なことを自分で肩代わりする。そんな愛情押し付けだって、なんで気づかないのかな...正直迷惑だよ。ただのエゴだよそんなの」
(主人格の時雨が出ている...これは....!)
「し、時雨!言い過ぎよ!確かにこいつは不器用なやり方かもしれないけど、私たちのことを考えての行動なのは本当よ!私たちはそれを支えてあげるのが役目でしょ!私たちが提督を信じてあげないでどうするの?」
「曙も言ってただろ?作戦が消極的だとか、コミュニケーションが足りないだとか。ぼくらのような古参の艦娘にそう思われてる提督を支えてあげよう?笑わせないでよ」
「それは....その言葉の綾で....信頼しあってるからこその軽口で...」
少し涙目になる曙、だが間髪を容れずに時雨はそんな彼女をまくしたてる
「曙は大きな勘違いをしてるようだから伝えておくよ。僕はこの提督を一度だって信頼したことはないし、信じようって思ったこともない。あるのは提督と艦娘の関係それだけだ。いい機会だからいっておくよ。僕はね、提督のことが大っ嫌いなんだ、こうしてこの場にいることにも虫唾が走るレベルでね。今後はこういう会にも呼ばないでもらえると嬉しいな」
『〜〜〜〜』
「そん...な.....。時雨なら.....こいつのことわかってるって思ったのに...」
「じゃあそういうことだから僕はここら辺で失礼するよ。本当に苦痛な時間をありがとう、奪われてしまった分、せいぜい残りの休日を楽しむとするよ」
『〜〜〜〜〜』
(時雨....お前....)
そういってぴしゃりと襖を閉じ去っていった時雨。それを見て泣き出してしまった曙と最悪の雰囲気、最悪の状況だが提督はある確証が得られた。
「ごめんなざい....でいどく....私のせいで...こんなことにいぃぃ....」
「大丈夫、気にしていない、むしろ感謝している。曙が本音を引き出してくれたおかげで今回の件、解決できそうだ」
そういって曙の頭を撫でながら私は次の策を考えていた
(時雨、お前のその願い、木っ端みじんに打ち砕いてやる)
メガネから見えた本当の願いを見た提督は今回のトラブルの原因、そして時雨の行動の意図を理解し最終作戦に移行するのであった。
長い、ですね。話数を重ねるごとに文字数増えてる気がします。文字数的には問題ないでしょうか?
前編後編に分けるつもりだったんですけど書いているうちに完成してしまいました。笑
今回の話で一番悩んだのは時雨の怒り方です。
物静かな時雨が怒る姿がどうも想像できなくてシナリオがなかなか思いつきませんでしたがどうにか自分なりに納得できる着地点に落ち着きました。
時雨編もラストスパートです。良かったら最後まで見ていってください。
読みにくい、わかりにくい等ありましたら気軽に感想お願いします。