艦娘満足度日本一の鎮守府で溢れる願い   作:マロンex

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激突する時雨と曙の戦いの行方は...?



『』内は今回、主人格に出ていない時雨のセリフになります


※赤城と龍田についての補足
伝説の五艦の中でも屈指の実力を誇る二人は周りの艦娘にとってヒーロー的存在。戦闘能力もさることながら、その高い実力を鼻にかけず、常に強さを求める姿勢を目標としているものは多い。一部では赤城ファンクラブ、龍田ファンクラブが結成されており、その人気ぶりが伺える。




決着その後

「残念よ、時雨。せめて苦しまないように沈めてあげる!!」

 

曙の砲塔から光が出た瞬間に反射的に自分も引き金を引いた。

 

(まずい!この距離で外せば大破は防げねぇ!)

 

だがそんな思いを抱いた次の瞬間、砲塔を何者かに蹴り上げられ、体勢を崩された。発射された砲弾は、勢いよく放たれた矢によって天井を突き破り、食堂の外に飛ばされた。

 

「そこまでです!!何事ですかこれは!!」「曙ちゃん、提督の前でおいたはダメよぉ?」

 

ようやく事態を飲み込み目の前に広がったのは艤装も展開せず弓矢と薙刀で対処した赤城と龍田の姿だった。表情は普段通りで変わらないが、圧倒的なプレッシャーから有無を言わさぬ絶対的な実力がにじみ出ていた。自分の砲塔に目をやると相当強い衝撃が加えられたのか、ひしゃげて使い物にならなくなっていた。

 

「おいおい...出た砲弾に打ち込んで軌道変えるなんて...バケモンかよ...」

 

「そんな...私の艤装が...」

 

反対サイドの曙を見ると砲弾は真っ二つになっており、艤装もバラバラになって足元に無造作に転がっていた。しばらくの静寂が食堂全体を包み、一人の艦娘が驚嘆を漏らした。

 

ーすごい.....

 

「「「「「うおおおおお!すげえええええ!」」」」」」

 

「「「「これが伝説の5艦の実力かあああああ!」」」」」

 

「「「「赤城(龍田)さんかっこいいい!!」」」

 

その小さな驚嘆は多くの艦娘に伝播し、食堂全体の歓声へと変わった。目をキラキラと輝かせるものや夢中で写真をとるもの、うっとりと二人を眺めるものなど多数いたが、誰一人被害を受けた様子はなかった。

 

「けほっ...けほっ...。くそっどうなったんだ全く...」

 

「て、提督!お怪我はありませんか!?」

「大丈夫よ赤城、この人案外タフなんだから」

 

 

「ああ、龍田、赤城か。様子を見るに、この騒ぎを止めてくれたのだな、すまなかった。私なら大丈夫だこの通りピンピンしている。それよりもしかしたらこの騒ぎで周りの艦娘の誰かが怪我をしているかもしれん、至急巡回してくれ。念のため食堂で被害があった付近全域を頼む」

 

「わかったわぁ、切っちゃった砲弾、爆発しないうちに処理もしないいけないし、その仕事は私がやるわぁ。とりあえずそこの伸びてる夕立ちゃんを保健所...じゃなかった保健室に連れて行くわねえ」

 

特に大きな爆発はなかったものの、砲弾が出た時の衝撃をもろに食らった夕立は目を回して倒れていた。それを軽々と持ち上げた龍田は他の艦娘に怪我はないか呼びかけつつ、目で追えないようなスピードで保健室へと向かっていった。

艦娘は人間よりも丈夫で身体能力もかなり高く作られている。深海棲艦と戦うため、ある程度人間離れした動きをしてもなんら疑問は浮かばない。だが、この二人はそのような能力を持つ同じ艦娘から見ても異常な存在だった。

 

(赤城といい、龍田といいこの鎮守府の上位層はどうなってやがんだ...人間離れ...いや艦娘離れしすぎてる。今も震えが止まんねえ)

 

俺は得体も知れない畏怖と驚愕で動けないでいたが、曙もそれは同じようでぺたんと壊れた艤装の近くに座り呆然と穴の空いた食堂を見ていた。

 

ー保健室

 

食堂に残った赤城の無言の圧力で連れてこられた俺と曙は正座させられ部屋の隅でうなだれていた。少しでも逃げようとすると龍田の遠慮ない薙刀での牽制が飛んでくるためそれもとうに諦めた。

 

「改めてすまんな、二人とも。迷惑をかけた。龍田、夕立の方は無事か?」

 

「ええ、命に別状はないし、怪我もしてないわ。軽い気絶みたいよぉ。あ、それから周りの艦娘も特に目立った被害はなかったわ。」

 

「そうか、とりあえず一安心だな、ありがとう。では赤城、改めて今回の騒動の被害報告を頼む」

 

「はい、ではご報告させていただきます。物的被害に関しては曙、時雨の艤装と砲弾2発が大破、食堂の床と天井の一部が破損しました。しかし人的被害に関しては龍田が説明したように現状ではゼロです」

 

「うむ、了解した。一先ず一件落着かな。では今回の損害を至急大本営に報告する必要がある。事件の発端である私が抜けるのは心苦しいが、後のことは頼む」

 

「「了解です(よぉ)」」

 

提督はその場から出て行き、バタンと扉が閉められると赤城が龍田に監視されている俺たちの方に歩いてきた。

 

「さて...説明してもらいましょうか、どうしたらこんなことになるんですか全く」

 

「へっ、説明はいいけどよ、まず言わせてもらうぜ、俺は悪くn....。「今回の件は全て僕が悪いです。提督からいただいた物を粗末に破棄した挙句、ひどい悪口を言ってしまいました。曙が艤装を展開してしまったのもこれが発端です。曙は提督を守ろうと秘書艦の義務を果たした、それだけで非はありません。ですので今回の責任は自分に全て取らせてください。...本当に申し訳ありませんでした」『おい!何言ってんだよお前!』

 

「時雨...あんた..」

 

主人格である時雨は懇切丁寧に事情を説明したのち、頭を床に押し付け深く謝罪と反省を示した。その様子を見ていた曙は状況が掴めずただ時雨の方を睨んでいた。

 

「あらまあ...あの時雨ちゃんがそんなことを...」

 

「...にわかには信じられません。曙、本当なのですか?あなたをそこまで怒らせることなんてそんなに...」

 

「僕は『例の事件』を掘り返して提督を罵倒しました...僕は彼を犯人呼ばわりしてしまいました!!」

 

それまでは要因を探るように優しい声色で接していた二人だったが

その単語が飛んだ瞬間、目の色が変わった。

 

「なるほど...。それは確かに時雨さんに非があるかもしれませんね...合点がいきました」

 

「曙ちゃんが怒ったのも納得ねえ..私だったらこんなんじゃ済まなかったかも...まあでも今回は時雨ちゃんの日頃の行いに免じて許してあげるわあ」

 

「時雨、曙、今回の騒動、大方把握はできました。それを踏まえた上で伝えなくてはいけないことがあります。まず艤装は決して....」

 

結局その日は赤城さんの2時間に及ぶお説教を受けた後、喧嘩両成敗として曙と食堂の修理と間宮食堂での配給業務、に携わり1日が終わった。その間、僕と時雨は一言も会話を交わすことはなかった。

部屋に戻ると、夕立はまだ保健室にいるようで、自分一人だけの状態だった。それを確認すると他人格のしぐれがここぞとばかりに文句を言って来た。

 

『おい!てめえ、なんであの時勝手に入れ替わったんだよ!でしゃばんなよ!』

 

「全く...文句を言いたいのはこっちだよ、いいかい。疲れているから手短に話すよ。今回の一件で君に言いたいことが2つある。1つ、『例の事件』について触れるな。あれはそんな簡単に口に出していいことじゃないんだよ。今後一切あの話はしない、いいね」

 

『はあ?俺が共有した記憶では...』

 

「いいね?」

 

『ちっ...。わかったよ』

 

「2つ、僕の許可なしに勝手に行動しないで。君の行動は過激すぎるし短絡的だ。何か行動を起こす際は僕に相談、いいね」

 

『へっ、それについては俺も言いたいことがあるぜ。俺が勝手に出て来たのはお前があまりに中途半端だからだよ。何を迷ってるのか知らねえけどあんなんじゃ作戦が進まねえよ』

 

「それについては反省している。確かに僕は覚悟が足りなかったかもしれないそれは素直に直すつもりだよ。でもね僕が言いたいのはそこじゃない」

 

『じゃあどこだよ、俺の行動は強引かもしれねえけど、あくまでお前の願いの後押しをしてるつもりだぜ?』

 

「その『後押し』が問題だったんだよ。この鎮守府で一番厄介な二人に目をつけられたんだからね。もう後の祭りかもしれないけど今後は二人への接触は全て僕がする。特に龍田は一番慎重にいかなきゃいけない相手だったのに...」

 

『確かにあの二人の実力は別格だ。敵にまわしたくはねえよ。...だがよ、今回の作戦にそこまで影響出るもんなのか?』

 

「それに関しては明日以降、嫌という程わかると思うよ...」

 

『....そりゃ楽しみだ』

 

時雨のこの言葉、正直ピンとこなかった俺だったが、次の日から俺は思い知った。二人の本当の恐ろしさを。

 

<続く>

 

 




というわけで、今回はここまでです。いかがだったでしょうか?

結構提督視点が続いていたので書いていてなかなか新鮮でした。
今回は3,000字前後を意識して書いてみました。今後投稿頻度をあげていきたいと考えたときにこれくらいがいいかなあと自分なりに物語を切ってみました。
もっと長くていい、これでいい、もしくはもっと短いほうがいい等ありましたら、気軽にお願いします。参考にさせていただきます

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