「さあ! 始まりました! 第一回!鎮守府朝食王は誰だ! 決定戦! 司会を務めさせていただきますは私青葉ですーー!! よろしくお願いしますーー!!」
食堂を埋め尽くす艦娘たちとそれと対峙して楽しそうに司会をする青葉。 唐突に始まった料理対決? は広報部の宣伝効果もあり、みるみるうちに観客を集め、本日非番の子のほとんどがここに集結した。
「今回対決しますはこの二人! 鎮守府最強の駆逐艦二人組! 曙さんと時雨さんでーす! お二方、意気込みのほどをどうぞ!」
「絶対に勝つわ。あいつ(時雨)とは白黒はっきりつけないとと思ってたからね!」
「ほう、提督は絶対に渡さないと?」
「べっ、別に提督は関係ないわよ! 料理の腕前の話よ! ばか!」
<ガンバレーぼのたーん!
<ファンサービス流石っす!! 「うっさいわね!!」
「対する時雨さん! どうでしょう?」
「悪いけど負ける気がしないよ。料理は人一倍努力してきたんだ。戦闘ならともかく、その腕に関しては曙には譲れないね」
「なるほど、かなりの鍛錬を積まれているようですね!気迫があります!」
<かっこいいっぽい!
<昔みたいにヘマしないでねえ
「はい!ありがとうございます! では続いてルール説明に移ります! モニターをご覧ください!」パチンっ
青葉が合図すると食堂の後ろの壁が変形し、巨大な画面となった。元々は大きな作戦用に改造した特注の品なのだが...。まあ活用してくれるなら特に使い方を咎めるつもりもない。
「ルールは至ってシンプルです! 朝食に合う料理3品目をこちらでご用意しましたので、お二方はそのお題に沿って自由に料理を作ってもらいます。完成した料理をこちらの審査員3名に味見していただき、美味しかった方にこちらのボタンで投票していただきます! 1品目ごとに3人中、相手より多くの票を手に入れた方に1ポイント! 合計で2ポイントを取った方の勝ち! となります!」
「なるほど...それで私たち3人が審査員ってわけか」
「ご名答! 本日はよろしくお願いします!」
厨房で意気込む曙、時雨の目の前におかれたテーブルの前に座らされたのは、私以外に2名。間宮と鳳翔だった。お店や食堂の料理を日々行っているのだ、この鎮守府でこれ以上ない審査員だろう。
「お二人とも、わざわざすみません...。あくまで余興なんで用事があったら抜けちゃって大丈夫ですよ?」
「い、いえ! これも大事な経験だと思うので!(提督の味の好みがわかるなんて大チャンスじゃないの!)」
「私達の仕事はもう別の子に頼んでいるから大丈夫です!!(頼み込んで代わってもらったこの場を譲るわけにはいかないわ!)」
「そ、そうですか....」(なんだろう...圧がすごいな、怒ってるのかな)
「ご協力感謝します! それでは早速! お題は! こちらです!」
お題:1品目 味噌汁 2品目 卵焼き 3品目 自由料理
「制限時間は15分! 3品同時に完成できなければその時点で失格です!では! よーい...スタートです!!!」
カーン!
どこからともなく鳴らされたゴングとともに二人は一斉に作り始めた。
見た感じでは、あの言葉通り時雨はかなり慣れているようだ。長年培ってきたであろう包丁さばきや手際の良さは素人目から見ても料理が得意なんだとわかる。
一方で曙の方も負けていない。技術は多少時雨には負けるものの、無駄なく、効率よく、全ての料理に着手している。
時間がないときに作る料理、朝食にとっては理想的な動きだ。
二人とも系統は違うがこの朝食にかける熱意と気合は十二分に感じられた。
「すごい...本当に二人とも料理がすきなんだな...」 ボソッ
無意識に出てしまった言葉に、なぜか間宮と鳳翔は目を丸くした。
「え? 本気で言ってるんですか? 提督....」
「時雨ちゃんの言ってた話は本当だったんですね...かわいそう...」
「えっ....」
それっきり何も言わずうつむく二人。 まずいなこれは。昔も似たようなことを....
「は、はーい!なぜか気まずい空気が審査員席で流れてますが、ここで調理タイム終了でーす!! お二方は審査員に料理の提供をお願いします! 一品目はこちら! 朝食のど定番!『お味噌汁』です!」
「まずは私からよ!」
「はーい! 先攻は曙さん! これは...しじみの味噌汁でしょうか? 審査員の方々! 実食お願いします!」
「これは...いいですね。具材メインのしじみは丁寧に砂抜きもされていますし、副材の玉ねぎも相性抜群ですね。」
「ん...?少し山椒がきいているようだな? ピリッとしてていけるなこれ...」
「しじみには二日酔いを緩和する作用もありますからね。 お忙しい中上司との飲み会が多い提督にはぴったりの一品かもしれませんね」
先攻
曙の味噌汁:しじみと玉ねぎの味噌汁
材料:しじみ、玉ねぎ、唐辛子、山椒、合わせ味噌
作り方......
審査員の実食を終えると先ほどのモニターに作られた味噌汁の写真とともに、具材や作り方が事細かに記載され発表される。観客にもどんな料理が運ばれたかわかるようにと、運営側の配慮のようだ。普段料理をするものはもちろん、来ているもののほとんどが食い入るようにメニューを眺め、中には必死にメモをするもののちらほらといた。
(随分料理好きな艦娘が増えたな...曙や時雨の影響か?)
「これは! 審査員全員から、いきなりかなり高い評価だぁ! 時雨さんも続けるかぁ!?」
「ふん...。当然ね!」
「くっ...。そこまで提督ダイレクトな商品を持ってくるなんて...。でもこれはあくまで料理の味! 僕はこれで勝負だよ!」
「これは...? み、味噌汁なんでしょうか。赤い汁をしていますね!」
「名付けて!ミネストローネ風味噌汁だよ! 長年培ってきた僕の味噌汁の集大成!トマトと味噌の合わせ技だよ!」
「と、トマトって...。そんなの味噌と合うわけ...」
「い...いえ!これ合います! すごい美味しいです!!スッキリしていてとても飲みやすいのに濃厚!」
「ごぼうや大根といった普通のミネストローネには入らない具材も入っているのに...全く喧嘩をしないのは味噌のおかげでしょうか。素晴らしいアイデアです。参考にさせていただきます!」
「おーっと! 見た目のギャップは裏腹に料理人お二人から大絶賛されていますね!! これは勝負決まったか!?」
「......うむ。野菜たくさんで健康にも良さそうだな....」
「あれ? 提督....? まだ一口も食べてないようだけど....」
「あ、いやその....これはだな....」
「おーっと審査員である提督! なぜか時雨さんの料理に全く手をつけない!」
「あっ...もしかして提督さんのトマトが苦手ってお噂は本当だったんですか?」
「いやあ....その...はい....すまん、時雨.....」
「え....ええええええ!? 」
「おーっと! 全く料理の腕とは関係のないところで時雨選手思わぬ失点だあ!」
「そ、そんな....」
うなだれて膝をつき、がっかりする時雨とそれを慰める曙。申し訳ないとしか言いようがない。
「「提督はトマトが苦手...っと」」
「間宮さん達は何をメモしてるんですか....」
後攻
時雨の味噌汁:ミネストローネ風味噌汁
具材:赤味噌、にんじん、トマトの水煮、ごぼう、コンソメ、オリーブオイル....
作り方
「さあ! 料理も出揃いました! お三方! ボタンをどうぞ!」
鳳翔:時雨
間宮:時雨
提督:曙
「はーい!ということで提督以外の票を得たので、1回戦は時雨さんの勝利です!!」
「う、うん。とりあえずは1ポイントは1ポイントだね...やったあ....」(なんだろう...すごい複雑だよ....)
「時雨....敵ながら同情するわ....」
「ごめんな...時雨....」
「えっと...時雨さん!おめでとうございます! さあ!じゃんじゃん進んじゃいましょう!続いての料理は卵焼きです!」
「今度は僕から行かせてもらうよ!!!!」
「はい! 非常にテンションの高い時雨さん! 料理をお願いします!」
「僕はこれだよ! 名付けて! 春巻き焼きだよ!」
先攻 時雨
時雨の卵焼き:春巻き焼き
具材:卵、しいたけ、ナス、チーズ
時雨の卵焼きは春巻きと名がつくだけあって台形状に切られた形をしている。中には、普通の卵焼きでは到底入らないような具材がひしめき合っているが、決してごちゃごちゃとはせず、むしろお互いの具材が映えている。周りに彩られたソースも食欲をそそる。
「では審査員の皆様! 実食をお願いします!」
「なるほど...すごいインパクトですね。卵焼きの具材中に春巻きの具材を入れたような感じですか...。あ、美味しい」
「周りにポン酢がかかっているんですがこれもまたいいアクセントですね! 居酒屋で出すとしたら写真付きで出したい料理です」
「うん、甘い卵焼きしか知らなかったが、うまいな、味の幅が広がった気がする」
「いいですねえ、長年の料理愛が光っていると言ったところでしょうか! 対して曙さん!お願いします!」
「私のはこれよ!!」
「おーっと、これは!? 一見普通の卵焼きのようですが...見た目にこだわらず味で勝負といった感じでしょうか! では実食をお願いします!」
後攻 曙
曙の卵焼き:青のりの卵焼き
具材:卵、青のり
丁寧に作られた卵焼き。いい感じの焦げ目がついており、形もしっかりと崩れずに保っている。甘い卵焼きの為か、周りに装飾は一切せず、あくまで卵焼き本体のみ。青海苔がほのかに香る。
「これは...シンプルイズベスト...と言ったところでしょうか。優しいお母さんのような甘みですね」
「ふむ...何やら普通の卵焼きとは微妙に違った風味ですね、何か隠し味でも?」
「さすがは鳳翔さんね...。ご名答よ。隠し味に納豆のたれを入れているわ」
「この味の深みはそれのせいだったんですね...なるほど。 素直に勉強になります」
「いいな、それ。朝の時間帯なら余ったのを使えて一石二鳥だしな。実用性があって....ってあれ、残りの私の分は?」
「くっ...美味しい...。これが...これが提督好みの甘い卵焼きなのか...」
「なんであんたも食ってんのよ!!」
「はい!実食も終了したところで! 審査員の皆さん! ボタンをお願いします!」
鳳翔:曙
間宮:曙
提督:曙
「出ましたあ! 曙さんパーフェクトで勝利! 1ポイント獲得です!! おめでとうございます!!」
「やった!! これで追いついた!」
「さて、審査員の方々。 インパクトでは時雨さんが優勢だったようですがどうして曙さんに?」
「はい、確かに見た目は時雨さんには負けますが、朝の忙しい時間帯に作る、ということを考慮すると曙さんかなと感じました。朝食に大切なのは『毎日無理なく作れること』ですから。食堂でもこれは守って作っています」
「それに加えて曙さんの隠し味の納豆のたれも良かったですね。余り物を効率よく使えるのは料理をするに当たって持つべきスキルの一つです。経験的にはまだまだかもしれませんが、今後もこの技術は生きてくると思います」
「なるほど! 朝食として、そして料理を作るものとして、優っている点があったということのようです!」
「くっ...見た目に注力しすぎたか...。これは完敗だよ」
「さあ! 現在ポイントは均衡状態! 勝負はついに決勝戦です! 最後の料理はこちら! 自由料理です! 朝食に合う料理を作るというシンプルながら非常に幅が広い料理勝負ですが勝つのはどちらになるのでしょうか!では料理の方をどうぞ!!」
次回ついに朝食王が決定!? 後半へ続く
話が長くなっちゃったので前半後半に分けました。