艦娘満足度日本一の鎮守府で溢れる願い   作:マロンex

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今回の新キャラ

金剛:伝説の五艦の一人。他の艦娘とは違い、別の鎮守府の主力部隊であったが、諸事情がありこの鎮守府に榛名とともに中途で着任した。圧倒的な経験値と火力を保有しているが、本来の実力は出せていない様子。性格は天真爛漫でハイテンション。どんな艦娘に対しても分け隔てなく接するコミュニケーション能力の持ち主。




金剛の願い
艦娘ってなんですか?


「.....しかし、榛名のフレンチトーストはうまかったな。人生で食べ物で泣いたのは初めてだ」

 

特に何を思ったわけでもなく呟いたこの言葉を曙は見逃さなかった。

 

「何? 私たち二人に喧嘩売ってるわけ?」

 

「あーいやいや、そういうわけじゃ...」

 

「だいたいねえ! 元はと言えばあんたが約束かぶらせるからでしょーが! わかってんの!? あんたはほんといっつも!!」

 

「まあまあ、もういいじゃないか」

 

どんどんとヒートアップをしてにじり寄ってくる曙の肩を後ろから掴み、どうどう、といなした。曙には申し訳ないが、その姿はまるで小型犬のリードを引っ張る飼い主のようだと思ってしまった。

 

「提督も反省して、お詫びに昼食になんでも好きなだけ奢ってくれるって約束したじゃないか。今回は初犯だし許してあげようよ」

 

「な、なんでもとは....」

 

「提督?」

 

そう言いかけた私に笑顔を向ける時雨。それに反比例して刺さるのは氷のような冷たい視線。あ、ダメだこれ変なこと言ったら殺されるやつだ。

 

「あ、はい....仰せの通りに」

 

「よろしい」

 

温厚な人間を怒らせるのが一番怖いとはよく言ったものだ。まあ、時雨がそういうなら...と少し不満そうな様子ではあったが、ようやく曙は引き下がった。このイベントを通して随分二人の関係も変わったのを感じた。

 

「....ふん、時雨は甘いわね。まあいいわ、死ぬほど奢らせるから覚悟しなさい、ふふっ」

 

「もう好きにしてくれ...」

 

料理対決終了後、片付けを終えた二人と合流した私は今回の騒動の謝罪として飯を奢ることとなり、食堂に向かっていた。結局勝ち負けがつかずにうやむやになってしまった挙句、榛名の料理をべた褒めしたせいか不機嫌だった二人も、この提案を聞いてからはなぜか終始上機嫌だった。

 

「ふふっ...じゃあ僕も少しわがままを.....ん?なんだあれ...」

 

ふと時雨の足が止まった。視線の先では榛名の部屋の前に駆逐艦の人だかりができていた。よくみるとほとんどが先ほどの料理大会を見ていたギャラリーの艦娘たちであった。各々が嬉しそうに自身の手帳に何かを書き込んでいるようだが...。

 

「じゃ、じゃあ私は来月の水曜日に!よろしくお願いします、師匠! 楽しみにしてます!」

 

「はい、こちらこそ。楽しみにしていますねー...」

 

列の先頭をよく見ると輪の中心に立っていたのは今回の大会の優勝者、榛名。疲労が見えるその笑顔は終始引きつっていた。

 

「榛名さん、お疲れ様。質問攻めにあってたみたいだけど大丈夫?」

 

「あ、皆さんお揃いで...。いやはやなんというか....」

 

そう言って差し出されたスケジュール帳には来月の最後の日までびっしりと『料理講座』の文字。どうやら質問にあっていた全艦娘に対して個別で料理を教えていくことになったようだ。その原因の張本人であると思うとなんだかものすごい罪悪感に苛まれ、自然と声をかけてしまった。

 

「榛名、これからお昼食べるんだが、榛名もどうだ。今日は私がおごるぞ」

 

「提督とお食事!? い、行きたいです!....けど...すみません、今回は遠慮させていただきます」

 

誘った途端、先ほどの様子は嘘みたいな目の輝きを見せたが、何か気がかりがあるのか、即答はできない様子だった。まあ、急な誘いだったししょうがないかな。じゃあまた別の機会に...言いかけた私に、横にいた曙が横槍をいれた

 

「何よ榛名、もしかしてこいつに奢らせること気にしてんの? それなら気にしなくていいわよ、今回の件のお詫びを兼ねてるらしいからね。 好きなもの好きなだけ奢ってもらいましょ?」

 

悩んでいる榛名に嬉しそうに悪魔の囁きをする曙。ここぞとばかりにグイグイくるなこいつ。まあ今回は身から出た錆だししょうがないけど...。

 

「あ、いえそうではなくて....うーんでも...」バンッ!

 

「榛名! おっそいネー!! いつまでキッズ達と戯れてるネー!!」

 

榛名が悩んでいると、扉を勢い良く開かれ、中から金剛が出てきた。

 

「あっ...お姉様、これは...その...」

 

バサッと手に持っているスケジュール帳を落とした榛名はなぜかとても慌てていた。金剛がいるとまずい話でもしてしまっただろうか?

 

「ワオ、二人と提督も一緒だったのネ?グットモーニング!...で、皆サンも榛名に何か用でしたかー?」

 

「あー金剛、もしよかったら...」

 

「提督がお昼奢ってくれるっていうから榛名も誘ってたのよ、金剛、あんたもどう?」

 

先ほどのように、曙がまた横槍を入れた。なぜか異様にテンションが高いせいか他のものへの絡みも積極的になっている気がする。

 

「提督と....食事...デスか...」

 

先ほどまでの笑顔が消え、なぜか険しい表情になる金剛。私にはその真意はわからなかったが、少なくとも想像していた反応とはかけ離れていたので少し驚いてしまった。普段から明るく、ハキハキした性格の金剛だ。この手の誘いには乗るにしろ乗らないにしろ元気な返事が返ってくると思っていた。少し悩んだ様子を見せたが、すぐに誘いの返事は返ってきた。

 

「うーん...ソーリー今回はやめとくネ。今日は午後に用事もあるしネ」

 

「そっかー...残念だな。僕も金剛さん達と食事してみたかった...」

 

「まあ、仕方ない、また別の機会だな。じゃあ、榛名はどうする?」

 

改めて榛名に質問を投げかけた。先ほどの様子から察するに榛名にも何かあるのだろう。先ほどから金剛の事ををチラチラと眺めては心配そうにしている。せっかくの休日が被ったんだ。姉妹で何か用事でもあるのかもしれないしな、無理強いはしたくない。

 

「はい...では私も...「いってきなヨ、榛名。 私の事は気にしなくていいネ」

 

おそらく断ろうとしていた榛名の言葉を遮り、金剛が榛名の背中をグイグイと押し出し、部屋から榛名を突っぱねた。

 

「行きたいんでしょ? 榛名のことならお見通しヨ」

 

「で、でも...いいのですかお姉様? お姉様が行かないなら私も...」

 

お姉様が..と言葉にした瞬間から、だんだんと押す力が弱まり、そしてゆっくりと手を離した金剛。部屋の前に落とした榛名のスケジュール帳を拾い上げ、榛名に手渡した。

 

「いいも悪いもないネ。榛名が行きたいなら行けばいい、それだけネ。...もう私には気を使わなくてもいいんですヨ?」

 

「ご、ごめんなさい!そんなつもりは! 私はただ...」

 

申し訳なさそうに手帳を握りしめる榛名、いまにも泣き出してしまいそうだった。優しい性格の榛名だ。もしかしたら自分の行動が姉を傷つけてしまったと感じてしまったのかもしれない。

 

「......なーんて、冗談! 冗談ネー!もう榛名は相変わらず真面目だネー、私少し心配になっちゃいますヨ!」

 

そんな榛名の心情を読み取ったのか、金剛がまた元の明るい表情になって榛名の肩をバンバンと叩きながら笑った。先ほどのまでの思いつめた表情とは違い、いつもの金剛に戻った気がした。

 

「じゃー提督、榛名をよろしく頼むネ」

 

「了解した、任せておけ」

 

「さ、じゃあいきましょ。食堂こんじゃうわよ!タダメシが私を待ってるわー!」

 

「早めに行かないと席埋まっちゃうかもね!提督、先に二人で席とっとくよ」

 

「あ、ああ、すまない。廊下は走るなよー」

 

よっぽどお腹が空いているのか、時雨と曙は金剛に軽く挨拶すると、そそくさと食堂に向かってしまった。

 

普段の私であればこれに続いて食堂に向かうところだが、いまは違う。

最近、少しずつだが、艦娘と前向きにコミュニケーションが取れるようになってきた。そしてそれと同時に、交流する重要性もわかった。艦娘の不満、不安、悩みは物質的な拡充だけでは叶わない。直接話をし、そして聞くことが何よりの解決策なんだ。そう思っていたからか、私は自然と口が動いていた。

 

「...まあ、なんだ、金剛もまた機会があれば、食事にでも行こう。不満や不安があるならそこで聞きたいしな。艦娘の相談を受けることも立派な提督の役目だしな」

 

「えっと...先ほどから気になっていたんデスが...提督、何かありました?嫌に積極的というかなんといいますか.....。昔だったら自分たちが誘っても避けるレベルだった気が...」

 

怪訝そうな顔でこちらを見つめている金剛。かなり困惑している様子だ。まあ、無理もない。

 

「まあ、あれだ、ここ最近色々とあってな。心境の変化というやつだ。艦娘の幸せのためにはより親密なコミュニケーションが必要だとわかってな」

 

「コミュニケーションが必要...? WHY?」

 

「え?...何故って言われてもな...そりゃ艦娘のことを理解してより良い関係をだな...」

 

「より良い関係ってなんですか...? 私たちは艦娘で、提督は人間ですよ? それ以上の関係ってなんですか?」

 

「えっ? えっと、その...なんだ」

 

唐突に私に詰め寄ってきた金剛に矢継ぎ早しに質問をぶつけられた。思ってもみなかった状況に、思わず私は発言を言い淀んでしまった。困惑して立ちすくむ私にハッとした表情を浮かべた金剛は慌てて距離を取り直した。

 

「...ソーリー。取り乱しマシタ。 今のことは忘れて欲しいネ」

 

明らかにおかしな素ぶりを見せた金剛に聞きたいことは山ほどあったが、何一つとして聞いてはいけないような気がする。そう思った瞬間から、金剛の周りに踏み込んではいけない目に見えない壁のようなものを感じた。

 

「お、おう!別に気にしてないからな。まあ、積もる話は今度ゆっくり話そうな!」

 

「そう...ですね。提督、最後に一つ聞いて良いデスか?」

 

深く息を吸い込んで、呼吸を整えた金剛は、私を見上げるようにゆっくり、だがしっかりと私と目を合わせた。

 

「提督にとって艦娘ってなんですか?」

 

その問いに、私は答えることができなかった。

 




本話から金剛編開始です。

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