艦娘満足度日本一の鎮守府で溢れる願い   作:マロンex

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無意識の拒絶

事件から程なくして憲兵たちに取り押さえられた私は、ひどい精神疾患を起こしていた上、狭い部屋での発砲による怪我の具合が酷かったため、ひとまずは艦娘専用の病院へと搬送された。

 

精神鑑定も終わり、正常に戻った私のもとに数日後、軍部から通達があった。

 

本事件主犯、金剛の処遇 

 別鎮守府へ異動(その後の異動は軍部の意向のみで決定する。自己希望は認めない)

 今後一切の昇格、昇進なし

 執行猶予10年

 

後から聞いた話では、艦娘が人間に逆らったという事実、提督のバックについていた大手軍事企業のイメージダウンを嫌った軍の上層部が隠蔽のため、司法を仕組んだため、このような軽罪で済んだらしい。

人生というものはなんとも不思議なものだ。殺そうとまで考えた奴らに救われるなんてー

 

「...皮肉なものデスね。どうせなら...」

 

言いかけた口を噤んで、新しい鎮守府へと向かう。

憧れていた提督と一番自分を思ってくれていた比叡、同時に失った私はこれから何を目的に生きればいいのかわからなかった。

 

ー現在に戻る

 

「ーまもなく夕ご飯の時間です。寮の方は準備が出来次第食堂に...」

 

夕ご飯の時間を知らせるアナウンスで、ハッと目を覚ました。

どうやらまた窓際でうたた寝してしまったようだ。

頬杖の跡をさすりながらゆっくりと洗面所へ向かい顔を洗う。下駄箱にはまだ榛名の靴はなく、まだ何処かへ出かけているようだった。

 

「はぁ...たまの休みは結局...ほとんど寝て終わりましたネ...」

 

軽く身支度をして、玄関前で靴に履き替える。靴を脱いだり履いたりする習慣が無かった昔は窮屈に感じたこの作業も、今ではすっかり無意識にできるようになった。座った状態で、ボーッと、寝ぼけ眼を擦っていると、ドアの向こうから聴き慣れた声がした。

 

「...りがとうございます。うまくいけばお姉様もきっと...」

 

「...こちらこそ。また例の件で何か情報が...」

 

(榛名と...提督でしょうか)

 

普段から近くにいる私だからわかるのだが、榛名の声のトーンはいつもよりも高く、そして上ずっている。

昔に比べ大人びた性格になり、あまり好き嫌いを顔に出さなくなった榛名だが、好きな相手には無意識にとことん甘える性質はいまだ変わっていないようだ。

 

だが...その相手は...

 

バタンッ 「随分楽しそうですネー?」

 

勢いよくドアを開けた先にはやはり提督と榛名の姿があった。

急に出てきた私に予想外と言わんばかりに驚いた榛名は、明らかに動揺していた。

 

「っ!? お、お姉様! すみません、戻られてたんですね! てっきり...」

 

「てっきりなんデスか? 私がいたらまずいですか?」

 

「あっ...いや、別に...」

 

トゲのある言葉に気まずそうに目を逸らす榛名。別にこんな嫌味を言いたいわけではなかったのだが...

お互いに何も発さない沈黙の時が流れる中、空気を読まず提督が割って入ってきた。

 

「すまんすまん、声が大きかったか。つい話が弾んでしまってな」

 

「別に、もういいデスよ.。...で、榛名との用は終わりましたか? 終わったらさっさと戻ってくれますか?」

 

「お姉様! 提督に対して失礼ですよ!」

 

「あはは...手厳しいな。まあ用は済んだし、ここら辺でお暇させていただくよ」

 

提督と艦娘の主従関係上、普通なら本気で殴られそうなレベルの対応だが...。

本人はあまり気にしていない様子で、じゃあまた、と手を振りながらゆっくりと帰っていった。

どうしてだろうか、この人はあのクソ提督とは違うとはわかっているのに、なぜか心では酷く提督という存在を見下してしまう。

 

(私...ただの嫌な奴デスね)

 

喉に刺さった小骨のような罪悪感を抱えながら、部屋に戻ろうとした刹那、提督は思い出したように手を叩き私を呼び止めた。

 

「...ああ、そうだ、金剛。来週から秘書艦をお前に任せることにしたから。よろしく頼むな!」

 

「...はぁ。わかり...って...はいぃぃ!?」

 

聞き間違いだと思い、後ろを振り向くもすでに提督の姿はなかった。

 

ー鎮守府食堂

 

「---ウソぉ! 提督が指名したの!? 艦娘からの提案以外じゃ初めてじゃない!?」

 

「どんな徳を積めばなんの対価も払わずにあの場所に...」

 

「逆に考えよ! もしかしたら私たちも逆指名を受ける可能性がーー」

 

提督からの直々の掲示板公表により、宣言通り私は秘書艦担当に抜擢された。

当然これはあくまで抜擢、拒否すればそれまでなのだが、そんな艦娘はおろか、逆指名を受けた艦娘がこの鎮守府史上、私が初だったということもあり、とてもじゃないが首を横に振れる雰囲気ではなかった。

 

普段はこんな事態になれば私に肯定的な榛名も

 

「ま、まあこんな機会滅多にないんですから、貴重な経験だと思って、ね!お姉様!」

 

と珍しくグイグイとくるのにも面食らってしまい、渋々ではあるが承諾した。

この日を境に、日々の日常は周りも含めて大きく変わっていった。

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