艦娘満足度日本一の鎮守府で溢れる願い   作:マロンex

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文章中にも書いてますが、少し補足説明します。

鎮守府海岸・・・鎮守府自体が大きな島の上に立っている場所だが、その中で艦娘たちの出撃、帰港する場所とは無関係の整備が特にされていない海岸全域を指す。
利用目的は、海水浴、ビーチバレー、スイカ割りや釣りなど提督が許可したものなら自由に行われており、潜水艦たちなどは頻繁に利用している。


善意の対価

「ふぁぁ...あ、意外と秘書艦業務ってハードデスね...」

 

朝5時過ぎ、提督室へ向かう。

書類整理や午前中の作戦会議の資料作り、またなぜか前の艦娘がやっていた提督室の掃除を含め、秘書艦業務は私の想像を遥かに超えるほど多岐にわたっていた。

 

「あっ...おはようございます。今朝もずいぶん早いデスね」

 

「おう、おはよう、金剛。書類の整理が終わらなくてな、今日は少し早めにきてしまった」

 

ガチャリと扉を開けるとすでに提督は何かの書類作りをしているようだった。私が入ってくると少し嬉しそうにこちらに目を向け挨拶をするとまた直ぐに作業に戻った。

 

(今日はって...ここ数日毎日こんな時間ですけど....いつ寝てるんですかねこの人...えっと朝の業務は...)

 

秘書艦用の机に腰を下ろし、秘書艦になる前日に渡された「秘書艦業務メモ」なるものに改めて目を通す。

これには、前任者たちの業務日記のようなものにはやるべきこと、やったほうがいいことが事細かに記載されていた。

私が想像していた内容の業務の他、提督室の掃除、お弁当や夜食の作成などの雑務などもあるが、特に目を引いたのはこのメモ。

 

「※最重要業務※ 提督の体調管理 

 提督は常軌を逸した仕事熱心です。目を離すと一人で倒れるまで働きます。無理させないように徹底して管理をお願いします」

 

(仕事のしすぎって...何をどう管理すれば...)

 

嫌々だったものの、前の鎮守府でも秘書艦業務の経験は豊富だったと自負していたため、業務自体には自信があった。

だが、通常の秘書艦業務は基本的には提督の業務改善やサボり防止などが目的のことが多かったこともあり、その真逆をいくこの鎮守府の業務に早くも自信を喪失しかけていた。

 

(...ほんと、ここの人たちは何を考えているんですかね...前の鎮守府とはまるで...)

 

ここの鎮守府に配属されてから、ずっとここの艦娘やこの提督がどうしてここまで他人に優しくできるのか、まるでわからなかった。

何か見返りを求めるわけでも、媚を売っているような様子でもなく、ただただ純粋に他所から配属された自分や榛名を温かく迎えてくれたように見える。

 

人は必ず、やったことに対して対価を求める。前の提督が私を利用したように、比叡を利用したように。

 

きっとそれが「人」という生き物の根幹なのだ。そう信じてあの事件以降、ずっと生きてきた。

 

だから、ここの人たちの優しさを私は「気持ちが悪い」と思ってしまった。

見返りを求めないようなそんな純粋な愛情に、親切に理由のない「嫌悪感」を抱いてしまった。

何か裏があるんじゃないかと「不信感」を持ってしまった。

 

...ああ、いつからこんなに歪んでしまったのだろうか。私はあの事件からきっと...

 

「...ごう。...金剛、大丈夫か? さっきからずっとメモと睨み合っているようだが...何かわからないことでも...」

 

「えっ、あー、ソーリーね! 大丈夫よ、色々とやることを見直してて...」

 

メモを整理しながら、知らぬ間に随分と考え事をしていたようだ。提督が席から立ち上がり、心配そうに自分の方に近づいてきていた。

 

「...すまないな。急に秘書艦を任されただけでも大変なのに、結構ここ数日激務だったよな。とりあえず午前中は大丈夫だから、少し休んでも..」

 

「大丈夫です、やります。...提督こそ、ここ数日ちゃんと寝てるんですか? 無理して倒れないでくださいね」

 

「えっ、まあ...あはは。痛いとこつかれたな。心配ありがとな」

 

「...別に心配はしてません。提督がいなくなると秘書艦の業務量が増えるので...」

 

「ハハッ..。相変わらず手厳しいな...まあそれくらい本音で話してくれたほうが気楽でいいがな」

 

相変わらず、全く怒った様子も見せず、私の悪態を流した提督はグッと伸びをしてしばらく窓から外の様子を眺めていた。

つられて私も窓を眺めると、朝早くから楽しそうに駆逐艦の艦娘たちが花壇に水やりをしていた。

しばらくして、うんっと小声て頷いた提督は再び席に座り業務に戻った。

 

ーーー正午

 

昼の鐘が鳴り、外では騒がしく、鎮守府に残っている艦娘たちが、食堂に走っていく。

 

「...よし、私も少し出るとするか。金剛、今から海岸で少し用事があるのでな、先に失礼するぞ」

 

普段は声をかけないとお昼に向かわないほど集中している提督だったが、今日は珍しく、お昼の時間早々に立ち上がり、何やら外出の準備を始めた。

 

「あっ..それなら私も...」

 

「大丈夫だ! 私一人でなんとかなる仕事だから! 金剛はお昼休憩がてら、ゆっくりしてくれー!」

 

間髪容れずに慌てた様子で提督は部屋を飛び出した。

 

(こんな時間に海岸...? 一体何を...?)

 

別にお昼にそのまま行ってしまっても良かったが、不審な提督の動向が気になったため、少し跡をつけることにした。

 

海岸は艦娘たちが帰る帰港口とは反対側にあり、2階にある提督室を出た階段をおり、渡り廊下に出る前のドアを開ければすぐに行ける場所だった。

 

海岸といっても艦娘たちが普段帰港する場所とは反対側に位置するため、もっぱら潜水艦たちを中心としたグループがよくプールがわりに使用している場所で、あるのは砂浜と海、それと艦娘の誰かが希望を出しつくられたビーチバレー用のネットが設置されているくらいだった。

だからこそ、何かあるわけでもないため、余計に提督が向かったのが不思議でしょうがなかった。

 

「えっと...提督は...どこでしょうか...あっいました」

 

お昼時ということもあり、艦娘たちの姿も見えない砂浜にポツリと、軍手をつけた提督がゴミ袋を持って座り込んでいた。

波打ち際付近に近づいては、何かを拾い上げ、ゴミ袋に詰める。そんな作業を繰り返していた。

 

(ゴミ拾い...ですかね。何でわざわざお昼時に...)

 

突拍子もない行動で、一体何を隠しているのかと内心少しワクワクしていたこともあり、肩透かしを食らったような気持ちになった私はしばらく呆然と提督のゴミ拾いを海辺につながる階段付近に座り、じっと眺めていた。

 

(提督はどうして...)

 

ーーー

 

「ふう...。思いの外ゴミが落ちてるな...。これは日を分けてやらんとダメかもな...」

 

「ペットボトルのゴミはどの袋デスか? 結構あってもう持てないので」

 

「ん? ああすまない、ありがとな。これはプラだから...って金剛!?」

 

心底びっくりした様子の提督が、私のことを見上げ、その拍子で大きく尻餅をつく。

そんな提督を少し眺めた後、何事もなかったように私はそのゴミ袋に持っていたペットボトルを捨てた。

 

「...どうしました? お化けでも出たような顔して」

 

「あ、いや...すまない。驚いてしまってな」

 

正直一番驚いているのは自分だった。目的も意図もわからない、メリットや見返りがあるわけでもないこんな行動に参加するこの行動自体に。

昨日までの自分だったらきっと、そそくさとお昼に出てしまっただろう。何故かはわからない、無意識の行動だった。

 

(私もこの鎮守府に当てられましたかね...)

 

「すまん、金剛、決して隠していたわけでは...」

 

「私とっても悲しいデース。ゴミ拾いすらまともにできないと思われてたんですかー?」

 

「ち、違うぞ! これくらいなら一人でできると思って...それに何だ、こんなことに....」

 

「ジョークですよ、ほら、さっさとやりますよ。言い訳は終わってからたっぷり聞きますから。...どうせお昼もまだなんでしょ」

 

「...そうだな、ありがとう。....よーし、金剛も来てくれたことだし、もう一踏ん張り頑張ろう!」

 

「まったく...お昼、奢ってもらいますからネ」

 

結局、少し夏の陽気が近づく晴空の下、私と提督は二人、お昼の間中、海岸を掃除したのだった。

 

 

つづく 

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