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ー曙が秘書艦の日から遡ること二週間前
その日は秘書艦カレンダーの公表日であった
月初めに発表される恒例の秘書艦発表の日である。朝8時にあいつが秘書艦予定カレンダーを執務室の前の廊下に張り出し、青葉が写真をとり艦娘専用のコミュニケーションサイトにアップする。艦娘たちは直接張り出された紙を見に行く、ネットでサイトを見るかの2パターンで、それを確認することができるようなっている。
正直、直接見に行くなんて行為は恥ずかしくて到底できないのでこのシステムにはとても助かっている。
100人はいる艦娘がローテーションで指名されるこの制度は、単純に4ヶ月に1回ほどペースでしか秘書艦は回ってこない。大抵の艦娘なら選ばれたら嬉しい、くらいの感覚レベルの日だろう。だが私のように普段からあいつに対してきつい言動をとってしまう艦娘にとっては素直に好意を伝えられるかもしれない唯一の日となる。だから一部の艦娘たちにとっては第一志望校の合格発表日よりも重要なイベントとなっている。
私が最後に秘書官に選ばれたのが丁度5ヶ月前。いつもなら先月には確実に選ばれていたのだが、先月のカレンダーに私の名前はなかった。ネットでカレンダーを何度も確認し、それでも信じられずバレないように一人で直接見にいきもしたが、やはり私の名前はなかった。
(前回秘書艦の時に、きつい当たりしちゃったからかな.....それとも出撃の時に作戦をなじったから...?)
考えれば考えるほど思い当たる節が多すぎて嫌になる。
発表されてから目に見えて落ち込んでいた私を同じ部屋の潮と漣は何かあったのではと心配してくれた。
「ふ、ふん。なんでもないわよ、本当になんでもないってば...」
と強がりはしたが、目に見えて動揺していたためで余計に心配された挙句、我慢できず泣いてしまった。
結局、二人にだけは真実を話したのだった。
(今回こそは私の名前がありますように...)
私は部屋で、潮と漣とともに、部屋のベッドで携帯の画面が更新されるのを神に祈る気持ちで待っていた。時刻は8時丁度。何度もサイトを読み込み直し、握るスマホにはじんわりと手汗がついた。再度読み込み直すとサイトからピコンと通知音がなり、今月のカレンダーがアップされた。
11月
2吹雪 3金剛 4加賀 5時雨 6曙 7明石...
「いしょっしゃああああ!!!秘書艦きたー!!」
大きくガッツポーズをし、念のため何度も画面を確認しては、本当に選ばれたことを噛み締め、喜びに浸った。
潮「曙ちゃん、よかったね!」
漣「だから私言ったじゃないですか!ご主人がボノたんを見捨てるはずがないって!」
曙「ボノたん言うな!でも...そうねありがと。今回こそは頑張って挽回するわ」
先月の秘書艦発表の日、子供のようにわんわん泣いてしまった私を、普段は私に対して軽口を叩く漣が胸を貸し、背中をさすってくれた。潮も泣き止んだ私にホットミルクやら好きなお菓子を持ってきては普段あまり話さない口で必死に動かし、私とお話ししてくれた。そんな二人の優しさに触れ、その日からはこの二人にだけは少し素直に感情を出せるようになった。
現に今回も、秘書艦に選ばれるのか不安だから発表を一緒に見て欲しい、と私から二人にお願いして、いまに至っている。少し前の私なら卒倒してしまうレベルの偉業である。
潮「でもよかった。曙ちゃん先月から元気なかったから久しぶりにそんな顔見られて私も嬉しいよ」
漣「そうですなあ、あの日以来、落ち着きはしましたが、やはり普段のような覇気を感じられませんでしたからな。私もとりあえず一安心ですぞ。」
曙「私も割り切ったつもりだったんだけどね。心配させちゃって悪かったわね」
漣「それにしても、、あの時の泣き顔はぜひ青葉殿に写真を撮ってもらいたかったですぞ。伝説の5艦、誰からも尊敬される強気な駆逐艦のボノたんが、あんなに弱々しくなるなんて...。ギャップ萌えで漣が男だったら完全に落ちてましたよあれ。」
曙「あ、あんた!あいつにこのこと言ってないでしょうね!」
漣「さて、どうですかなあ。漣は水素よりも軽い口で有名ですし...っていはい!いはいよほノたん!」
曙「マジで言ってたらこれじゃすまないわよ!どうなのよ!」
私は漣のほっぺを両手で引っ張って尋問した。必死に抵抗する漣だが練度の差が物を言い、全く逃げることができない。
潮「もう、喧嘩はやめなよ二人とも、でも提督にも実は聞かれたんだよね。曙が元気ないから何か知ってるかって」
曙「え!?嘘でしょ!?あいつに!?」
引っ張っていた両手を離し、潮に詰め寄る。
潮「本当だよ。でも大丈夫。私も漣もわかりませんって言ってあの日のことは何も言ってないし、提督も原因は全くわかってないようだったしね」
曙「...まあ、少し複雑だけどよかったわ。と言うかありがと隠してくれて。」
正直口を聞くことはおろか、顔を合わせることすら少なくなっていた私をしっかり見ていてくれたことには驚いたし嬉しかった。おそらく艦娘の管理と言う業務の一環だろうがその事実だけでも今の私には十分だった
漣「乙女の秘密を守るのは当然の義務ですよ。でもさすがご主人様ですぞ、今回の件もここ1ヶ月のボノたんの戦績を見て違和感に気がつくとは...私達以外で気がついている艦娘すら少数だったというのに。そもそも出撃や遠征でのミスやらなんやらを月単位で見直して100人以上の艦娘の健康を管理する、なんて常人じゃ考えられませんな」
潮「そうだね、まるでデータを元に艦娘の精神状態を見てるんじゃないかってレベルで私たちのことよく考えてくれるよね。この前初めて秘書艦やったけど、正直もう2、3人はつけていい業務量こなしてるよ、あれは...」
曙「あいつのモットーは私たちの幸せらしいしね。私だって昔そんなことして負担増やすなら、直接話すのがが絶対早いって言ったけど『男の私に色々と言いにくいこともあるだろうしな。それにデータは嘘をつかん、これが私なりのスタイルなんだ』って突っぱねられたわ。あいつはあのやり方が自然なんでしょ」
漣「なんだかんだご主人様のことを心配してたんですな。さすがツンデレジェンドですぞ」
曙「し、心配なんてしてないわよ、ただあいつがまた倒れたら鎮守府のみんなが悲しんじゃうと思っただけで...。てかその呼び方やめなさいよ、はっ倒すわよ」
潮「まあでも、選ばれたからには頑張って提督に嫌いじゃないこと、アピールしないとね」
漣「そうですぞボノたん!あくまでこれはスタートライン、合法的にご主人様を独占できる日なんて機会滅多にないですぞ!」
曙「が、頑張るったってなにをどうすればいいのかわかんないし、、」
潮「簡単だよ。提督の業務を全力でサポートして、楽させてあげればいいんだよ。提督の行動パターンとか事務処理能力は他の艦娘よりも歴が長い曙ちゃんの方が上だしね」
漣「あとは私たちに接するように..まではいかないにしろ少しでもそっけない態度を取らないようにするべきですな。それだけでも印象は全然変わると思いますぞ」
曙「なるほど、そうね...。潮、漣、本当にありがとう、私今回こそは成功させるわ」
それから二週間、秘書艦の日まで、私はあいつの業務内容や行動パターンを紙にまとめ念入りに覚えた。潮と漣はどうやったら自然に接することができるのか、鳳翔さんや金剛さんにそれとなく聞いてリストしてくれたり、あいつの好みの食べ物や趣味を聞き出したりしてくれた。
そしていよいよ秘書艦の日、当日。
(服装よし、髪型よし、逃げるな私。リストも持ったし、業務内容や行動パターンも叩き込んだ....やれることは全てやったんだあとは私の気持ち次第...)
鏡を見ながら念入りに確認をして、大きく深呼吸をした。
曙「よし、じゃあ行ってくるわ」
潮「頑張って曙ちゃん。曙ちゃんなら大丈夫だよ」
漣「ご主人様のハートをキャッチしてくるんですぞ、ボノたん」
曙「ボノたん言うな、てかそんなんじゃないし...。でもありがと、行ってくるわ」
部屋の扉を開き、曙は一人、2人に見送られながら戦場に向かうかのような足取りで執務室に向かったのだった。
この前の話の曙視点で書いて行こうと計画していましたが、思った以上に前置きが長くなってしまったので前置き(秘書艦に選ばれてから当日まで)と本編(1話の内容)に分けました。(執筆のスピードの問題もあるのですが、、)
だいたい1話って何文字くらいが読みやすいのかなあと日々他の作品も読ませてもらい3000文字前後にしようかと落ち着きましたので、今後はそれを基準に長くなったらまた話を分けようかなと思います。
次回の話も連続して曙視点のお話となります。
1話の内容をなぞる形ですので良かったらご覧ください。