※読みにくかったり何か改善点ありましたら気軽にお願いします。
(まず書類の整理、それから午前中までに資材の確認と作戦の見直しをして午後からは...)
私は二週間みっちりと頭に叩き込んだ業務内容を頭の中で復唱しながら執務室に向かっていた。時刻はまだ7時ちょっと過ぎ。執務開始が8時だから少し早く来てしまった気もするがほかの秘書艦をやった子からの情報だとあいつは7時前には起きているとの事だったのでまあ大丈夫だろう。
ーコンコン
執務室と書かれた扉を軽く叩き、扉を開いた。
「ひ、秘書艦の曙よ、今日はよろしく頼むわ!」
しかし、その呼びかけに返事はない。中をみるとスヤスヤと寝息を立てて眠っているあいつの姿が見えた。
(やっぱり嫌われてるのかな..。いつもなら起きてるって聞いたのに..)
最近やたらネガティブ思考に陥る傾向がある。なんとなく心に不安が引っかかっているような不思議な感覚。そのモヤモヤが私をそのような思考に至らしめている感じがする。
しかしそれは杞憂であることにはすぐに気がついた。目の下にはひどいクマ、寝てる場所も布団ではなくソファだし、何より電気が点けっ放しであった。大方考え事をして寝落ちしてしまったというところだろう。
(先週の時雨の一件からろくに寝てないのかしら。昨日はやっと落ち着いたから見にいったって聞いたけど...)
先週の水曜日くらいであっただろうか、我が鎮守府の最大戦力の一人、駆逐艦 時雨が倒れてしまった。遠征の結果報告をしている最中に起きた突然の出来事であったという。原因は今の所不明だが、軽いめまいによるもので、特に命に別状はないらしい。
その時、秘書艦をやっていた榛名の話によると、あいつは倒れた瞬間、読んでいた書類を放り投げ、急いで彼女を抱きかかえるとそのまま鬼のような勢いで医務室に連れて行った。とっさの行動にあっけにとられていた榛名も後から急いで医務室に向かうと、ベットに横になった時雨と、医者に必死に無事かどうか確認するあいつの姿があったという。
榛名「提督の狼狽した姿なんて初めて見ましたが、本当に感激してしまいました...。私たちのこと、道具ではなく、人間として大切に思ってくれてるんだなって....」
あいつはあまり艦娘と積極的にコミュニケーションを取らないことで有名だ。というか避けてる感じがするレベルだ。
だが不思議と彼に対して不信感を持つものが少ないのはこういった行動の積み重ねがあるからだろう。
(にしてもどうするかな..。まだ執務前だし起こすのもかわいそうだし...。そうだわ!これよ!)
素直の極意その1『女たるもの料理で語れ』
潮と漣のリストに入っていた言葉を思い出し、早速行動に移すことにした。
ー間宮食堂
間宮「あら、朝早くから珍しい。ごめんなさい、まだ仕込み中なのよね」
大きな厨房の奥からすっと顔を出したのはこの食堂の料理長兼オーナーの間宮さん。
ここ間宮食堂は鎮守府内の艦娘のほとんどが利用する場所で、間宮さんと伊良湖さん、それに各地方からきたコック見習いをあいつが雇い、常に30人以上で料理を提供している。ここでは以前あった食券制を廃止し、席の机についているタッチパネルでの注文制をとっており、料理が出来上がるとセルフで取りに行くシステムを採用している。席さえ確保できれば、待ち時間や売り切れ、売筋の料理、栄養価などの情報がタッチパネルから確認でき、大変好評である。
また出されるものは味はすべて一級品、既存の料理に加え、和風洋風中華、庶民的な料理や最新のスイーツ、期間限定で旬の料理を使った料理など多種多様なメニューがあり、その数は実に100種類以上。
こうなったのもあいつが『栄養が偏らなければ、可能な範囲でメニューの追加を随時行う』
と宣言し、艦娘たちの希望を聞き入れ、間宮さんたちと相談しながら追加していった結果で、現在もメニューは増え続けている。
「違うの、今日は..その..て、提督に朝ごはんを作ろうと思って。でも時間ないから手短にできるのを教えて欲しいの...」
間宮「あらあら、こんな可愛い子の手作り朝食が食べられるなんて、提督ったら羨ましいわあ」
「ち、違う、そんなんじゃ!朝食抜いて執務に支障をきたしたら私が困るって思っただけで...」
間宮「はいはい、曙ちゃんは本当優しいわねえ」
「だからそんなんじゃ...」
間宮「とりあえずこっちにいらしゃい。時間もないことだしシンプルでオーソドックスなメニューにしましょう」
間宮さんに呼ばれ、厨房の中へ。中にはいり手を洗っている間に用意されていたものは卵、味噌、シャケ、海苔とご飯だった。
間宮「作るのは卵焼きと、お味噌汁、おにぎりと焼きジャケってとこかしらね。」
曙「わかったわ。間宮さん、じゃあまずは卵焼きから....」
間宮さんに教わりながら、おぼつかないながらも執務前ギリギリには一通り完成させることができた。
「あとはこれを持っていくだけね。うーんでもこれ全体的に不恰好....」
間宮「大丈夫よ、曙ちゃんが一生懸命作ったことに意味があるんだから。提督もきっと喜ぶわ」
「ありがとう、間宮さん、じゃあこれ少し借りるわ」
間宮「はーい。後で感想聞かせてねー」
間宮さんに見送られ、両手でお盆にのせた朝食を運びつつ、軽く会釈をして食堂を出た。
執務室に入ると、まだあいつは寝ていた。私は机の上にお盆を置いて、叩き起こした。
「起きなさいよ!起きなさいってば!」
足で寝ている提督を小突く。
提督「んあ?もう朝か....くそ...全然寝られなかったな....」
そう言うとあいつは、ゆっくりと起き上がり、よろよろと洗面所に向かった。
素直の極意その2『好きの気持ち、言葉が無理なら行動で示せ』
(きたっ!嫌っていないことと気がきくところを同時にアピールできるチャンスだわ!)
自然にあいつの横をとり、用意されていたタオルを渡した。よし、朝食持ってきたこと伝えるきっかけもできた。
曙「ったく、、またなんか考え込んでたわけ?ひどい顔よ。....どうせ先週の時雨の件でもうじうじ悩んでたんでしょ。シャキッとしなさいよ。朝食はあんたがグースカ寝ている間に持ってきたわよ。食べてから執務にしなさいよね」
そう言うとあいつは執務室の机を見た。最初は少し嬉しそうな顔をしたものの、すぐに困った顔になり、私の方を見た。
提督「曙、これはお前が作ってくれたか?だとしたら悪かった。私が寝坊したせいでお前の手を煩わせてしまったな」
「、、、そうよ。朝の少ない時間をあんたなんかに割いたの。反省なさい」
(そこは嘘でもありがとうとか嬉しい、って言ってほしかったな..。謝罪されるくらい距離置かれて、警戒されてるってこと?....。朝から張り切って、舞い上がって、なんかバカみたい...)
どんどんと自分でも訳のわからない負のループに陥っていると、あいつは気まずそうに椅子に座り朝食を食べ始めた。そして等々に重たい口を開いた。
提督「...しかしよく私が悩んでいる内容がわかったな、流石としか言いようがない」
(そ、そうよ、たとえ距離が置かれていようと、嫌われていようとあいつを昔から支えてきたのは事実よ、自信を持ちなさい私!)
「ふん、何年ここにいると思ってるわけ?嫌でもあんたの行動なんてわかるようになるわよ。それより早く食べなさいよ、時間が押してるのよ」
提督「うーむ、、曙にだけは隠し事できんな。あっこの卵焼きうまい、、俺の好みだ」
(情報通りあいつは甘めの卵焼きが好きなようね。練習をした甲斐があったわ。漣と潮には後でお礼を言っとかないとね)
小さなその声を聞き逃さなかった私は、食事をする提督から見えないように小さくガッツポーズをした。間宮さんには砂糖の量を間違えた、と嘘をついてしまったが、あいつ好みにできてよかったとホッと胸をなでおろした。
提督「ごちそうさま。とても美味しかった。後片付けは私がやるから先に書類に目を通しといてくれ」
出された朝食をきれいに平らげると食器を重ね立ち上がった。美味しかったんだ。何だろうすごい嬉しい。
「...わかったわ。早く帰ってきてよね、書類は山積みなんだから」
嬉しさの反動で、少し本音が出てしまい慌ててとってつけたような言い訳をしてしまった。今どんな顔をしてるんだろうか、恥ずかしい。
提督「もちろんだ、すぐに戻る」
そう言うとあいつはお盆を持って、静かに執務室を後にした。私は一人黙々と書類を整理し、考え事をしていた。
(やっぱり違う、これは私の勘違い。あいつは私のこと嫌ったりなんかしてないわ。不安なら聞けばいい。私としたことが何をうじうじしてたのかしら)
扉を開く音、あいつが帰ってきた。すると何を思ったのか、ゆっくりと歩みを進め私の正面にきた。
提督「執務を始める前に少し話がある」
その呼びかけに横目であいつを見る。普段の困り顔ではない、真剣な顔がまっすぐに私を見ていた。
私は不安で震える手を必死で抑え、書類を置き、彼を見る。
(今度こそ素直になるんだから)
私は提督と正面から向き合うことを決めた。
はい、と言うことでやっと1話が終わりましたね。難しいのはもちろんなんですが、どうも物語に入れたい要素が多すぎて間延びしちゃう感があるんですよね。そう考えると、読みやすい物語ってそう言うところがうまく凝縮されている気がしますね。
次回は提督視点。ついに正面から向き合おうと決めた提督、果たして彼女と何を話すのでしょうか。