艦娘満足度日本一の鎮守府で溢れる願い   作:マロンex

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時雨編 開始。

不思議なメガネでようやく曙と仲直りを果たした提督は、前回の秘書艦業務の穴埋めとして時雨の担当だった日に代役を彼女と潮、さざなみの3人にお願いすることに。束の間の艦娘とのコミュニケーションを楽しむ提督。そこに現れたのは先週に倒れてしまった時雨だったのだが、何やら様子がおかしい




時雨の願い
もう一人の自分


君は僕、だけど僕は君じゃない。じゃあよろしく頼むよ。『僕の願い』のためにね。

 

 

--執務室

「なあ、曙。マジでどいてくれよ。お前の頭で書類の文字すら見えないんだけど....。まぁ片手も塞がってるけど」

 

「ふん、だから今日の仕事は私達に任せなさいって、何回言わせればいいわけ?ばかなの?」

 

「いや、そういう訳にはいかんのだよ、私しか出来ない大切な業務とかもあるし」

 

「じゃあ私の頭を撫でる業務を分けてあげるわ?伝説の5艦の頭触れるなんて世界広しといえどあなた一人よ。最重要任務託すんだから誇りに思いなさい」

 

「はあ....。なんというか、オープンになってから一段と態度が太くなられましたな、曙さん」

 

「女の子に!!太いっていうな!!こんのクソ提督!もう朝ごはん作ってやんないから!」

 

「ぐえっ!」

 

現在、本来秘書艦の担当であった時雨が倒れたこともあり、その穴埋めとして曙、潮、漣に秘書艦業務を手分けしてやってもらっている。実の所、ここ数日、青葉の取材やら、周りの艦娘の質問ぜめやらでほとんど執務室にいられず死ぬほど業務が溜まっていたのでありがたい、と思っていたのだが.....。

 

「て、提督は太い女の子が好きなんですか...?たくさん食べなきゃですね...書類終わりました。私もあ、頭を撫でてもらっても.....いいですか?」

 

「ボノたんならまだしも、潮の場合は栄養が全部胸に行くから、その作戦は無理ですぞ!...こっちも終わったのでご主人からのご褒美キボンヌ!」

 

「漣!あんた喧嘩売ってんの!?」書類グシャ

 

「あー!!もう!全然作業にならんじゃないかああ!!お前らいい加減にしろ!!」

 

とまあこんな感じでやたら引っ付いてくるわ、色々とスキンシップを要求してくるわで私は朝からほとんど業務に関われないのであった。

 

遊園地に行ったあの日、私と曙はまあ、メガネのおかげもあり、仲直り?を果たした。その後の彼女は元気を取り戻し、戦力も現役並みに復活した、そして何よりよく喋るようになった、きっとあの日、私の本当の気持ちを見て嫌われる恐怖がなくなり、自分らしく話しても大丈夫とわかったからであろう。素直にこれは嬉しい限りだ。

このような曙の変化に対して、姉妹艦である潮や漣には死ぬほど感謝された。そして、曙が何を話したか知らないが、それ以来信じられないほどこの二人の好感度も上がったようだ。

ちなみに曙以外は元々休暇の日のはずなのだが、何故か朝イチから執務室の前でスタン張っていた。曙の情報によれば、昨日の夜からテント張って待ってたらしい。なに?徹夜組?お前らの部屋ここから徒歩5分じゃん。

 

「ご主人、たまにはこういうコミュニケーションも大事ですぞ。我々の幸福にもつながる大事な仕事だと思われ」

 

「私もそう思います!今すごい楽しいですし!」

 

「あんたは私が支えるって言ったでしょ。こいつらのいう通り、たまにはこういうことも大事よ。無理する癖は治らないでしょうしねえ」

 

「.....あーそういえば、聞いてなかったな。私あの時どんなこと願って....バタンッ「失礼するぜ!白露型 2番艦 時雨!ただいま復活したよ!」

 

執務室を勢いよく開け、有事休暇申請書を持った時雨。その後ろからそろっと出てきた白髪の人物はこの鎮守府専属の医師だった。

 

「あ、これはどうも。提督様。いつもお世話になっております。時雨さんの意識が戻られましたのでご報告にきました。」

 

「あーどうも。というかその時雨はどこだ?ここには時雨のコスプレした艦娘しかいなんだが」

 

「なんだあ?全員アホみたいに口開けてこっち見てよぉ。正真正銘目の前にいるのが時雨様だろうが」

 

「いや...えっとぉ......だから誰だお前!?天龍みたいな喋り方して!いやだが見た目は時雨だしなぁ....」

 

「なんか...。口調もそうだけど雰囲気も変わった気がするわね...。まるで別人みたい」

 

「せ、先週倒れた時に頭でも打ってネジでも飛んじゃったのかな.....」

 

「潮、それ何気にひどいですぞ」

 

荒々しい口調をしたこの人物、時雨は曙と同じく伝説の5艦の一人だ。駆逐艦とは思えない高火力と圧倒的な俊敏さは鎮守府トップレベルの実力。曙が例の一件で落ち込んでいた時期はおそらく駆逐艦中で全てにおいてナンバーワンの艦娘だったに違いない。

しかし彼女の強さはそれだけではない。彼女はこのような絶大な実力を持ちながら温和で争いを好まない性格をしており、また常に冷静沈着。その落ち着きと慈母のような優しさは多くの艦娘から曙とはまた違った信頼と尊敬の念をを得ている。彼女なら話してもいい、と他の艦娘の相談役になることも納得である。

そんな彼女が今現在、目の前で全く違う態度で私たちに接してきているのだ。驚くなというほうが無理がある。

 

「はっ散々な言われようだな、別にどーでもいいけどよ。俺はそんなヤワじゃねえよ。頭は打ってねえし、体だってピンピンしてらあ。そんなに気になるんなら、後ろの医者に聞いて見な」

 

「......体は全く問題ありません。異常はどこも見つかりませんでしたし、潮さんの言ったような頭を打っての記憶の欠落や喪失も今の所見られません。彼女には」

 

「ほらな、医者のお墨付きだ、まあイメチェン程度だと思って軽く流してくれ。ってんなこと話しにきたわけじゃねえんだったわ。ほれ、この紙。これ書けば遠征予定だったとしても休めるんだよな、確か。なんか調子でなくてよ、.....あーでも確か今日秘書艦だったか?」

 

ー有事休暇制度

 

略して有休だが、現代の日本で使われる有給とは少し異なる制度で、遠征予定の艦娘個人からの希望があると、おりる特別休暇のことである。簡単に言ってしまえば無条件で休みが取れる制度だ。以前、提督が『休みと言っても私から支給された休みでは急な用事や趣味に時間を避けきれない可能性がある』とのことで制定されたもので、比較的艦娘が増え、ローテーションに余裕ができた頃から、年に一度15日の有休を艦娘全員に付与するようになった。もちろん使わなかった分は翌年に繰り越されるため、業務が比較的忙しい艦娘達などは1年間ためて、2年目の有休支給後に1ヶ月のバカンスを取るケースもよく見られる。ただあまり使わない艦娘も一部いたため、以降3年でその年の有休は消滅してしまうルールを追加し、戦闘好きの艦娘のため演習や出撃に参加することのできる権利も加え、利用の促進を図った。それが功を奏したのか今現材、有休の消化率は全体で80%超えである。

 

またこの制度、単に休みが取れるだけでなく、日頃の頑張りに対しての労いの意味を込めて、鎮守府内の施設に限り、1日につき一つだけ特典をつけて利用することができる。特典の例を挙げると

 

銭湯 マッサージ30分無料サービス

スポーツジム ドリンク飲み放題

本屋 5冊まで全て20%off などなど

 

 

 

先ほど時雨が持っていた有事休暇申請書に判が押されている状態のものを手渡せばこの恩恵を受けることができる。仲間ととって楽しむもよし、一人でとって趣味に浸るのもよし、艦娘が各々自由に楽しんでいる様子は見ていて微笑ましい限りである。

 

「あ、ああ.....もちろんだ。秘書艦も代役を立てたところだ気にしないでくれ。しっかりとリフレッシュして英気を養ってくれ。(時雨は俺から言わないと有休なんて取らないような子だったはずだが....)」

 

「うっしゃ。じゃあとりあえずバッセンでもいって特典使っちゃうかな、じゃあな。あんがと!」バタンッ!

 

再び勢いよく執務室の扉が閉まると、時雨が近くにいないことを確認し、医者がゆっくりと話し始めた。

 

「なんだったんだ本当に、ドッキリか何かか?いやしかし演技には見えなかったし...」

 

「はい、演技ではありません。....その....申し上げにくいんですが、おそらく時雨さんは解離性同一性障害だと思われます。」

 

「解離性....なんだって?」

 

「解離性同一性障害、まあ簡単にいっちゃえば多重人格ってやつね」

 

「ええ...その通り。曙さんはお詳しいんですね。....解離性同一性障害はいわゆる精神病の一つでして過去のトラウマや限界を超える苦痛、精神的ダメージから逃れるため、自分の中にもう一つの人格を形成してしまう病気です。時雨さんの場合もおそらく何らかの原因があり、あのような全く違う人格を作り出したと考えています。ただ..これに対しての対処が思いつかないのが現状です」

 

「その...でもそれって艦娘にはよくあるって聞きました。日々戦いを強要されている私たちにとっては死の恐怖だとかトラウマは日常茶飯事だから、その中で精神疾患になっちゃう子も多いって....」

 

「あー鬱だとか、パニック障害とかですな、ここの鎮守府の新人用学校で嫌という程学びましたぞ。ただ多いからそれに対しての対策もかなり完成されてるとも聞きました。ここの規模の鎮守府の設備で治せないことはないと思われ」

 

「....なるほど、皆さんよくご存知なんですね、流石教育レベルもも高い鎮守府です。そこまでよく知っていらしゃっているなら隠さずにお話ししましょう。確かに艦娘のこのような精神障害は珍しくありません。そして当然、それに対して多くの研究者の元パターン化され対策がマニュアルにされているので、大体のケースでは治療の期間の違いはあれどが完治する子が多いようです」

 

「ふむ...。なるほど、大本営もそういうことはしっかりとしているのだな、悔しいがありがたい限りだ」

 

「はい、おっしゃる通り。我々も頭が上がりません。....ただ、時雨さんの場合、長年の精神障害原因パターンのどれにも引っかからない特異なケースでして」

 

「特異なケース?仲間が傷ついちゃっただとか、敵からみんなを守れなかったとかそういった理由とかじゃないの?」

 

「私も一番初めにその要因が浮かびました。なので少し心苦しくはありますが原因究明のため、疑似的に自信が大破してしまう映像や仲間が沈んでしまう映像を了承の上で見させました。補足としてお伝えしますが、今現在の彼女を時雨2、だとすると私がその映像を見せるといった人物は時雨。つまり本人です」

 

「なるほどね、まだ彼女の中には元の人格も存在してるってことね。で、病室にいるときはまだいつもの時雨だったと」

 

「理解が早くて助かります。映像を見せ、本人が少しでも人格の揺らぎや表情の変化、発汗や震えなどがあればほぼ間違いなく要因はそれと断定して治療に進むのですが、彼女の場合そのような反応は一切なかったのです。また不可解な点が2点ほど挙げられます」

 

「不可解な点?」

 

「はい、1点目は彼女は映像を見ることを了承した際、だれかに話しかけているそぶりを見せていました。おそらくではありますが彼女はもう一つの人格と完全に会話ができていると考えられます。映像を見終わってしばらくすると、『俺に話させろ』と突然言ったかと思うと彼女の人格は入れ替わりました。一般的なケースでは人格は分離しており、入れ替わった際の記憶は欠落しているものなのですが、その後の彼女は映像についての文句やダメ出しをしていたので、記憶も共有されているのが確認できました。」

 

「つまり、他人格でありながらしっかりと私たちの姿も、自分自身の中の他人格の声も聞けているってことね、確かに聞いたことないわそんな話」

 

「そして2点目。これは簡潔です、要因がわからないという点です。本来この病気は辛い、苦しいと言ったネガティブな感情から逃げるツールとして発症し、人格を生成するのですが、彼女に関してはその兆候は一切ないです。むしろお互いの人格同士で話し合い、何か、こう、野望のようなものを後押ししている感じですかね。そういった様子を多々見ます」

 

「うーん、つまり要約すると彼女は何かから逃れる、というよりは作るべくしてそういった新しい人格を生成したってこと?」

 

「まあ、そういうことになるのでしょう。申し訳ないです、このような曖昧な回答で。何度もいうようにこのようなケースは初めてでして、対策方法から考えなくてはいけない段階なのです」

 

「でも心配ね、もしかしたら何かの拍子で別人格、時雨2が暴走して元人格を乗っ取る可能性だって十分あるわ。早めに対策しないと取り返しがつかなくなるかも」

 

「対策ですかあ。でも我々素人じゃ状況悪化させかねませんぞ」

 

「でも...曙ちゃんのいう通り、早めに手を打たないと時雨ちゃんが....」

 

 

「そこでですね、私に少し考えがありまして。あなた方に是非協力してもらいたいのです」

 

そう言って医者は自身のバッグから書類を取り出した。時雨対策用、と書かれたその書類にはある作戦が書かれていた。

 

=続く=




はい、ということで時雨編始まりました。ペースをあげて行こうと思い短めの文章で終わらせようと考えていたら、過去最大の分量になっておりました。笑

前の話のあとがきでも書きましたが日常と、シリアスの比重をどうしようと考えていたのですが、何も全てシリアスにする必要ないじゃんということで、いい感じにシリアスの中に日常の一コマ入れていこうと思います。(あれよく考えたらそれって割と普通じゃ)

あ、ちなみに最初の方の曙が朝ごはん作ってたくだりあったと思うんですが、これは前の話で間宮さんと作ったものとは別の朝食です。番外編の候補として考えています。その際はよかったらご覧ください。

結構今回書き方変えて見たので、感想等ありましたら気軽にお願いします。
あとこんな日常の一コマをみたい、とか、この子を出して欲しい、みたいなのありましたらどしどし意見ください。できるだけ反映させて物語組んでいきます。
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