【完結】私、巨人の母になりました!   作:ネイムレス

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いやー、まさかこんなに伸びないとは思いませんでしたねぇ。


第十一話『奥まで来てる!』

 前回のあらすじ。

 荒野で口笛を吹くと化け物が寄って来るらしい。巨人に乗って次の町へ辿り着くも、時間が空いてしまったのでアルバイトをする事に。体力づくりの為にも奮闘していると、アルバイト仲間の子供達と仲良くなった。その子供達と古い坑道を探索して居たら、何やら不穏な気配を感じる新たな鉱脈を見つけてしまう。

 

 

 一際古い坑道の中で見つけた、新たに現れたと思わしき横穴。とりあえず報告に戻ろうかと思ったが、子供達は中を少し探ってからにしようと提案して来た。一部の子供達――男の子達は一様に、報酬のさらなる増加に目をぎらつかせている。後は、未知への好奇心と冒険心もあるのだろう。

 確かに未知の坑道ならさぞ珍しい物が取れる筈だ。けれど、何があるか分からないから危険すぎると、私と女の子達はその意見に待ったをかける。すると反対された彼らは、それなら男だけで行って来ると言い出して、静止を振り切って勝手に飛び込んでしまった。危険に男も女もあるものか。ああもう、やんちゃなんだから!

 残った女の子達に大人を呼んで来る様に伝えて、私も覚悟を決めて横穴に飛び込んだ。

 

 横穴の中は思ったよりも狭い。子供なら楽に通れるかもしれないが、こっちはこれでも色々と大きいんだぞ。

 苦労しながら狭い道を抜けると、少しだけ広い空間に出る事が出来た。洞窟と言うよりは、人の手が加わった坑道の様に見える。別の古い坑道に繋がっただけだったのだろうか、それなら報酬は残念だが危険は少ないだろう。

 

「あ、ねーちゃんも来たのか! おーい、こっち来てこっち! 凄いもの見つけちゃったんだよ!!」

 

 私のお目当ての子供達は直ぐに見つかった。と言うよりも、慌てて私の方に戻ってきたようだ。一体何を慌てているんだか、子供達は私の手を引っ張って奥に連れて行こうとして来る。なんだなんだ、何なんだ全く。

 

 手を引かれて連れて来られた坑道の奥には、もう完全に人工物だと分かる巨大な扉の様なものがあった。何だこれは、何かの倉庫にでも繋がってしまったのだろうか。

 

「遺跡だよ遺跡! 俺達遺跡を見つけたんだよ! 鉱石なんかよりずっとすげえや!」

 

 なんとこれは遺跡の扉らしい。ずいぶん立派な門構えでいらっしゃること。と言う事は、これはもう専門家のサルベイジャーに任せるべきであろう。こう言う未発見の遺跡には、それを守ってる危険なガーディアンとかが付き物だし。

 

「ええっ!? ここまで来て帰るのかよ! どうせなら中まで調べて行こうぜ! 俺達が遺跡に一番乗りできるんだぜ!?」

 

 等と子供達は口をそろえて言ってくる始末。君達の溢れ出る冒険心は大変素晴らしい物だが、私以下の装備で冒険に挑むとは笑止千万だ。私だってナイフとスタングレネードしか持ってないと言うのに。

 第一、こんなに立派な扉ががっちり閉じていると言うのに、どうやって中に入ろうと言うのだろうか。ほら、取っ手もないし開け様がないじゃないか。私は納得させるためにペタペタと扉を触って見せた。

 そして無情にも開いてしまう未知への扉。なんで!? ただ触っただけなのになんで開いちゃうの!?

 

「俺達が触っても何にも起きなかったのに……、実はねーちゃんってスゲエのか!? 胸は全然ないのに!」

 

 ないない、そんな訳ない、胸も無い。ってやかましいわ!!

 可能性があるとすれば……、あっと気が付いて私は制服の胸ポケットからスマホを取り出した。もしかしたら、スマホ越しに巨人が何かしたのだろうか。そう思って画面を起動すると同時に、着信音と共にチャットツールが起動する。そこに書かれていたのは『奥に居る』との一言。やはりこやつが犯人か。後でお説教です。

 

 一体全体何が居るかは知らないが、やっぱりここは戻っておいた方が良いだろう。私一人じゃこの子達どころか、自分の身すら守れるか怪しい。後でアイス奢ってあげるから、お願いだから外に出ようよ少年達。

 

「やだよ! 戻りたいならねーちゃん一人で戻ってな!!」

 

 なんと言う事か、子供達は開いた扉から遺跡の中に入り込んでしまった。あああああ、もう! 本当にもう! 巨人の教育の為にも、悪ガキは全員とっちめて泣かす!!

 既に見えなくなってしまった子供達を追いかけるべく、私もまた遺跡の中に突入する。

 

 遺跡の中は予想とは全く違って明かりが灯っていた。どうにも、人が通るのに合わせてセンサーで照明が点く様だ。相当に技術力が高い、しかも電力が生きている遺跡。このせいで少年達の暴走が止まらないどころか加速している。これが後戻りのできない青春か。

 こんな生き生きしている遺跡、どんな防衛機構があるか分からないのに、もう既にこんな奥まで来てる! こうなったら可哀想だけど、心を鬼にしてでも止めるしかない!

 

 この世界に来てから散々酷使しているローファーに更に鞭を入れて、私はあの初めてこの世界に来た日の様に全力で走り始めた。うおおおおお! 今回の給料が出たら新しい靴を買ってやるうううううっ!!

 

 大の大人を突き放した走りを繰り出して、すばしっこい子供達を次々と捕まえて行く。一人、二人、三人! 捕まえた先から頭を鉄拳制裁。巨人もスマホ越しに見ていなさい、悪い事した子はこうなるって事を。

 幸いな事にここまではほぼ一本道。ゲンコツを食らって涙目になった子供達は、私が本気で怒っているのを感じてか戻る様に言うと素直に従ってくれた。

 

 残るはあと一人。私に最初に話しかけてくれた、子供達のまとめ役のリーダーの子だ。活動的で一番年長なのもあって、正直捕まえるのは至難だろう。でも、こんな場所で怪我しても良い様な子じゃないのは確かだ。私は自分に活を入れて、更に遺跡の奥に向かって駆け出した。

 

「うげっ!? もう追い付いてきたのかよ!? って、顔こわっ!?」

 

 最後の一人を見つけた! っしゃぁ!! そこ動くなよ、今なら一発で許してやる!!

 やっと追いついた先で、リーダーの子は通路の脇の部屋を物色しようとしていた。私が近づいて行くと部屋に入るのを諦めて、更に奥に向かって駆け出して行く。確かに足が速いが、このタイミングなら逃がしはしない!

 今までずっと最高速で走り続けてきた私は、加速前のリーダーの子に追いつく。その襟首に手を伸ばし、掴んだ!! 

 

「ちょっ、離せって、うわぁっ!!」

 

 リーダーの子がバランスを崩して転びかけてしまった。それを支えようとして襟を掴む手を引いたが、力が足りずに引っ張られてしまう。せめて怪我をさせない様にと、頭を抱き寄せて私は肩から床に倒れ込んだ。

 

 うあー……、いったぁ……。こんなに痛い思いをしたのは、テストで赤点三つ取った時以来かな。あれは痛かった……。主に心が。あと物理的に頭も。

 ちょっと直ぐには動く気になれなくて、ごろりと床に転がり抱えていた子を開放する。

 

「いってててて……。なにす――おい!? 大丈夫か? 怪我したのか……?」

 

 何だいっちょ前に心配してんのか? 困ってた時に声かけてくれたのと言い、やっぱりこの子は優しいなぁ。とりあえず、リーダーの子に怪我はない様で安心したよ。

 どうもこっちに怪我をさせたと思って落ち込んでしまったようなので、ちょっとズルい気もするが利用させてもらおう。ずいぶんとしおらしくなってしまったリーダーの子に、このまま来た道を戻って大人を連れてきてほしいと頼んだ。全身が痛いのは本当だしね。

 

「わかった! 助けを呼んで来るから待ってろよ!」

 

 実に素直に来た道を走り抜けていくリーダーの子。どうせならその素直さ、最初から発揮してほしかったよ。あー、疲れた。もう助けが来るまで、このままごろごろしていたい。

 

 私の胸元でスマホが震える。ああ、そう言えば此処に入れるようにしたのはこの子だったね。取り出して画面を見てみると、此処にいる、此処にいる、と同じメッセージが連投されていた。一体、何が居ると言うのだろうか。

 

 痛む体を何とか引き起こして、立ち上がれるか確認しながらゆっくりと身体を床から離して行く。うん、大丈夫。走れるかは怪しいけど、壁伝いに歩く位は出来る。

 そのまま壁に手を突いて支えながら、一歩ずつ奥に向かって廊下を進む。

 

 暫く進んだ先で、入り口で見かけたよりも更に重厚な扉にぶつかった。まるで何か大切な物を守ると言うよりも、内側の物を二度と日の目に晒すものかと言うような執念すら感じる堅牢さだ。

 この扉にも取っ手や、パネルの様な物は無い。無言のままスマホを取り出して、物は試しと扉の前に翳してみた。

 

 はたして、扉は何の抵抗も無くあっけなく解錠を始めた。何本も扉に通っていた閂の様な物が外れて、内側から外開きに分厚い扉が開いて行く。鬼が出るか蛇が出るか。ここまで来たら、うちの子を信じて顔を拝んでやろうじゃないか。

 

 扉の中に恐る恐る入り込むと、そこは天井の高い倉庫の様な一室だった。恐らく巨人が見せたかった物は、今私の目の前に鎮座している。部屋の奥の壁に供えられた、まるで玉座の様に見える機械に座る巨大な人型の物体。

 なんて事だ、私はこの世界に来て二体目の巨神に、こんな所で出会ってしまった様だ。

 

 

 次回、第十二話『精が出ますね!』に続く

 




ま、仕方のない事ですね。
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