【完結】私、巨人の母になりました!   作:ネイムレス

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推薦の力は凄かったという事か。
改めて以前の小説に推薦をくれた方には感謝の念が堪えません。


第十二話『精が出ますね!』

 前回のあらすじ。

 横穴に男の子達が入ってしまったので追いかけた。追いかけた先で遺跡を見つけるも、暴走した男の子達は遺跡の中にまで入ってしまう。久々に本気を出して走って追いかけ、全員捕まえるも少し体を痛めてしまった。それでもスマホ越しに巨人にせがまれて、遺跡の最奥へと向かう。辿り着いた巨大な扉の先には、部屋を埋め尽くすほどの巨大な人型が鎮座していた。

 

 

 倉庫の様に広く天井の高いその一室には、複雑に機械がより合わさった玉座に座る一体の人型。遠目に見てもその人型の放つ威圧感はすさまじく、やはりその体は立ち上がればゆうに天井へ届くだろう巨体であった。

 スマホ越しの巨人に導かれ、遺跡の奥で見つけてしまった二体目の巨神。その姿はどことなく私の巨人――クロノスよりも単調化されている。全体的にのっぺりとしたデザインで、腕は極端に長いのに足は極端に短い。顔などは赤い大きな単眼が真ん中に一つあるだけで、釣り鐘型の胴体には際立った装飾なども無い。人に程近い私の巨人に比べると、この巨神は何処か玩具の人形のようにも見えた。

 

 そんな風に巨神を観察していると、手に持ったままだったスマホが震え出し着信音が長く奏でられる。この世界に来てからは圏外だったというのに、メッセージ送信の次は電話がかかって来るとは。画面に表示された通話のボタンに指を置き、スライドさせてからスマホを耳に当てた。

 

「『おひさしぶり。そして初めまして、今代の操り人さん』」

 

 聞こえて来た声は、何とも意外な事に女性の声であった。声を聴きながら思わず視線を上げて、鎮座している二体目の巨神の顔を見てしまう。光沢のある丸い単眼が、その奥で光を走らせたように見えた。

 

「『三千年……。いえ、六千年の遥か時の彼方から、私は待っていました』」

 

 スマホからの音声は抑揚は少ないが、人が発している様にも聞こえる合成の音声だった。人の声を加工して作られた合成音声は、元の世界でも企業やサブカルチャーで広く普及されていた。まさか異世界でも似た様な物が聞けるとは思っていなかったが。

 聞くだけならば非常に落ち着いた女性の声色で、目の前の巨神はついに己の名を明かすのだった。

 

「『私の名はヘスティア。十七歳です』」

 

 ……………………いや嘘つけ、さっき六千年って自分で言ってたじゃん。六千十七歳だってか? 鯖読み過ぎだろ。って言うか何でギャグを挟んだ!? 今までのシリアスな空気は何処に行った!!

 

「『あら、もしかして今は伝わってないのかしら。昔流行っていたジョークですのに。これがジェネレーションギャップと言う物なのですね』」

 

 なんか頭痛くなってきた。身体も痛いし頭も痛いとか、良い所が何にも無いじゃないか。

 もう今までの緊張感とか全部吹き飛んで、ゆかに座り込んで足を投げ出す。もー、うちの子はこんな所にまで誘導して、こんなギャグを聞かせたかったのだろうか。

 

「『では、少し真面目なお話をしましょうか。このままだと、あと十年もしない内に世界は滅びます』」

 

 また偉く大きなことを言い始めたな。今のが冗談だったら、うちの子を此処に連れて来てパンチしてもらうぞ。

 割と本気で言った言葉に、電話先の相手はクスクスと嬉しげに笑う。このやろう、どこまで本気なんだか。そして電話の相手は更にとんでもない事を言い始めた。

 

「『本当に冗談だったら私も嬉しかったのだけれど、もうあまり時間が無いから要点だけを話しますね。今の世界の文明が一定の領域を超えた時、私達の姉弟のうちの一人が目を覚まします。その姉弟は過度に文明を栄えさせた人類に対して、直ぐに粛清を始めるでしょう。三千年前、自らを産み育てた文明を滅ぼしたように』」

 

 ちょっとまって、その話ってどこかで聞いた事がある。トカゲのおっさんが初めて会った時に話してくれた、私の巨人――クロノスの過去の話じゃないか。それならもう目覚めてる。それに、今は災厄にならない様に育ててる途中。それが十年後に破滅を迎えるだなんて不吉な事を言ってくれる。

 

「『あら、クロノス? でもこのコードは……。あらあら、あらあらあらあら? なるほど、そう言う事なのね……』」

 

 ああうん、止めてくれないかな、その『全部知ってる系キャラが自分だけ納得してこっちには何にも知らせてくれない』的なムーブは。漫画のキャラがやってると面白かったけど、実際に自分がやられるとすっげームカつくのな。

 

 こっちの反応が面白いのか、電話越しの声は隠しても隠し切れない忍び笑いを零している。スマホを操作して通話を切ってやろうと思ったが、その前に声色が少しだけ悲しげなものに変わった。

 

「『ごめんなさいね。こうして誰かと話すのも何時以来かしら、とにかく久し振りではしゃいでしまったわ。なにせ、三千年ぶりですからね……』」

 

 むう、そんな事を言われたら怒りが引っ込んでしまう。三千年も独りぼっちだったのなら、少しは優しくしておいてやろうか。

 

「『まあ、その殆どはスリープモードで眠っていたから、寂しさとか感じてないんですけどね。ウフフフフッ……!』」

 

 あ、わかったぁ! こいつ喧嘩売ってるんだな! そうなんだろ!?

 がなり立てるが電話の声は調子を変えない。上機嫌なのか、声に弾みが掛かっている。まるで、ようやくと望んでいた物を得た様な、それで居て懐かしい思い出に浸る様な不思議な声色だ。

 

「『今代の操り人は面白い方ですね。貰った情報通り……。そう、この方がお母様なら……、『貴女のクロノス』は健やかに育ってくれるでしょう』」

 

 それに関しては全力で当たるつもりだ。言われずとも、あの子の母親になるって決めたんだ。絶対に災厄になんてさせないし、それが無くたってあの子を放り出すつもりなんてもう欠片も無い。何て言うか、あの子を見ていたら、胸の奥から温かい物が湧き出て来るんだ。これがきっと母性本能って奴なんだろう。

 

「『…………。一方的なお願いになりますが、私の姉弟を探してください。文明の破壊者である姉弟を探す為には、他の姉弟達の持つ情報が不可欠でしょう。三千年この場所で動けなかった私よりも、他の姉弟は文明の破壊者である弟について知っている筈です』」

 

 弟……。ちなみにその姉弟って言うのは後何人居るんだい? それによって、今後の活動が凄い大変な事になりそうなんだけれども。

 

「『私と貴女のクロノスを除いて五体ですね。各地に散らばって居て、私が居場所を知っているのは一人だけ……。此処より東に進んだ地に、あの子の眠る棺――あなた達の言う遺跡があります。巨神を連れた貴女なら、その遺跡に入る事が出来るでしょう』」

 

 結構多いな!? こんなでっかい巨神をあと五体も作ってるとか、古代人はどんだけ暇だったんだよ! 自分達を滅ぼす事になる存在をせこせこと作り上げるとか、ご苦労様です精が出ますね!

 全部で七体の巨神を探し出せと言われれば、ついつい罵倒が出ても仕方がないと思う。おまけに当たりが何処に居るかもわからないと来た。本当に頭が痛いお願いだよ。

 

「『名残惜しいですがそろそろ時間ですね。姉弟の内最初の実験機として生まれた私は、動力炉に欠陥を抱えています。次に眠れば、目覚めるには膨大な時を必要とするでしょう』」

 

 えっ、ちょっ!? それ聞いてない! 何でそんな大事な事を先に言わないんだよ。こう言うのは些細なすれ違いとかから、重大な事件に発展したりするのがお約束だろ。もっと詳細に話を聞かないときっと大変な事になるぞ。

 

「『六千年前の文明を滅ぼしたのはクロノス……。三千年前に再び世界を破壊したのはその子供……。三千年前の文明人達が過去の遺産から再生させた末の弟です』」

 

 トカゲのおっさんは数千年ごとにリセットされているって言ってたけど、そのリセットの全てを私の巨人がしていたわけじゃないのか……。って言うか子供!? 私の子供に子供が居た!? 孫って事!?

 慌てるこちらとは対照的に、電話の声は酷く落ち着いた、けれど優しさを伴った声で語り掛けて来る。しかし、その声にはノイズが混じり、不鮮明になり始めていた。本当に時間が無い様だ。

 

「『文明の破壊者、その名はゼウス。私たち姉弟の末の弟にして、最強の性能を誇る後期完成型です。どうか、この子を止めてあげてください。貴女と、そして貴女のクロノスならば出来る筈です』」

 

 語りたい事を語り切ったのか、電話の先からまるで人間みたいにふうと溜息を吐くのが聞こえた。目の前の巨大な機会が話しているというのに、妙に人間臭い所がある。だからだろうか、その声には疲れの様な物を感じ取る事が出来た。

 

「『時間です。今のうちに謝っておきますね。ごめんなさい。沢山苦労をすると思いますが、これから先を貴女に託します。ああ……、次に目覚める時は……、誰かにおはようって言ってもらいたいですね……』」

 

 それきり、声は聞こえなくなり、目の前の人型の単眼から光が消える。私は、名残惜しさを感じながら通話を切って、スマホを胸ポケットへと戻した。

 もうここには用は無いだろう。眠りの邪魔をしたくないから、さっさと町に帰ろうと踵を返す。

 

 ちくしょう。おはようぐらい、言ってやればよかった。

 

 

 次回、第十三話『モサモサしてる!』に続く。

 




トカゲさんのノルマが二話にわたって途絶えてしまうとは不覚。
でも登場してないから仕方ないよね!
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