【完結】私、巨人の母になりました!   作:ネイムレス

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添削は大事。


第十五話『来ちゃった!』

 前回のあらすじ。

 ジャングルで仮面な二輪車乗りに捕まって、連れて来られたのは巨大な大樹の集落だった。その根元を支える古代の遺跡に案内され、その最奥で出会ったのは第三の巨神。スマホに通話が届きいよいよ会話かと思えば、掛けて来たのは第二の巨神の台風長女。第三の巨神は実に理知的な性格だったが、詳しい話をしようとした所で物騒な音と振動が響いてきた。子供が心配なので、とにかく遺跡の外に向かう。

 

 

 嫌な予感はしていたんだ。ただ、それがどんな形で当たるのかは予想していなかった。何もこんな形で当たらなくてもいいじゃないかと強く思う。

 

「前に言った通りに、来ちゃった! 七つぐらい前だよ!」

 

 遺跡を出て最初に飛び込んで来た光景は、無数の虫人達が地面に転がりぴくぴくと蠢いている姿と粉々にされた槍の様な武器の数々。そして、その中心でこちらにひらひらと手を振る、ちょっと次元の違う事を叫んでいる白衣のカピバラ。そう、あの最初の町に現れたうるさい奴だ。

 その傍らには、巨大なブーメランを肩に掛けて、虫人の返り血を浴びて凄惨な姿になったメイドさんも居る。やっぱり虫人の血って赤じゃなくて緑色なんだ。そんな奇抜な装いになっているのに、彼女は顔色一つ変えずに佇んでいた。

 本当に来ちゃった! できればもう会いたくは無かった。

 

「見つけたぞ、巨神を意のままに操るヒューマンの娘よ。貴様には並々ならぬ学術的好奇心がムクムクと湧き出でて幾星霜。この吾輩に見初められた事を泣いて喜び、我が研究の為の礎となるが良いので吉。そうすれば、この至高の頭脳を持つ我輩も少しぐらいは感謝の念を向けてやらない事も無い、と言う物である。分かりやすく言うと、研究手伝ってくださいマジオナシャス!!」

 

 相変わらずぶっ飛んだ言語センス。しかも短い手足で一々気取ったポーズを決めるので、可愛いんだけどなんかウザイ。カピバラ面なのにドヤ顔してるのが良く分かるせいだろうか。

 そして、そんなカピバラの言葉に反応して、メイドさんがゆっくりとこちらに向かって歩き出した。こちらも変わらず、無表情で高身長で迫力があって怖い。いや、緑に染まってるから前の時より怖い。無表情緑怖い。せめて拭う位しようよ、女性なんだからさぁ!

 

「下がれ、客人!! この雌は強い! それよりも客人の巨神の方を!!」

 

 じりじりと後退っていた私の視界の端から、叫びながらあの案内をしてくれた虫人の戦士が飛び込んで来た。バッタのように地面を跳ねながらメイドさんへと向かい、飛び掛かると同時に手にした剣で斬りかかる。おお、この世界に来て初めて剣で闘う人を見たよ、かっこいい!

 

 つかず離れず、縦横無尽に跳ねながら闘う虫人の戦士。思わず見とれそうになってしまうが、そうだ巨人の姿が見えないではないか。連行された時にはこの集落の傍で、大人しくしてる様に言ったはずなのに。あの子が勝手に言いつけを破るなんて、今までからは考えられないので何があったのだろうか。

 

「ふっふっふっ、ふふふのふ。自分の巨神が居なくなってて不安そうであるな。ならばこの天才たる我輩が教えてやろう、今あの巨神はあそこにおるわ!」

 

 テコテコと近づいてきたカピバラが、こちらに話しかけながらばばっと周囲の森に向けて指先を向ける。そして、それと同時にほぼ反対の森の木々をなぎ倒しながら、私の巨人が姿を現し背中から地面に倒れ込んだ。おい、逆じゃねえか。それでいいのか自称天才。

 指を差したまま固まっているカピバラは放置して、視線を倒れた巨人に向ける。あの子が一方的にやられる所なんて初めて見た。一体何がと困惑していると、なぎ倒された木々の向こうからもう一体巨大な物がのっそりと姿を顕わにする。

 

 それは人型の上半身と方向転換の為の車輪のついた前足、そして馬力を得る為のキャタピラのついた箱型の後ろ足を持つ巨神。カピバラが作ったと言うレプリカの巨神だったはずだ。また作ったのかこのカピバラは!

 

「ぅ我輩の事は博士と呼びたまえ。そう、その通り。前回回収した動力に改造を加えて数を増やし、さらなるパワーアップを施したレプリカ巨神。その名も半人半馬の神獣、『ケイローン』である!! べ、別に二足歩行が出来なくて妥協した訳じゃないんだからね!! 違うんだからね!」

 

 そうか、妥協したのかカピバラ博士。

 でも、いくらパワーアップしたって、一方的に私の巨人に勝てるとは思えないんだけど。もしかして、戦って良いって言ってないから無抵抗でやられてたのか!?

 慌ててスマホ越しに『もう遠慮しないで良いから、そんな奴ぶっ飛ばしちゃえ!』と語り掛ける。しかし、巨人はピクリとも動かずに、レプリカ巨神に頭を掴まれて無理やり吊り上げられてしまった。なんで!? なんで反撃しないの!?

 

「くっくっくっ、クエスチョンエクスクラメーションマークは突然に! 何やら防御系の技を使われた時には驚いたが、それ以降巨神はあんな様子でグロッキー。我輩思いました、これは実はスゲーチャンスなんじゃねー? みたいなー? さあさあおぜうさん、きりきりと神妙にお縄に付くのが科学の発展の為ですぞ――ぷぎゅっ!?」

 

 迂闊に近寄って来たカピバラ博士が何か言って来たけど、とりあえず頭を上から押さえつけて黙らせておく。両手をブンブン振り回してるけど、手足が短くて全く届いていないから脅威にはならないだろう。

 そんな事よりも巨人の事が心配だ。

 

 再び視線を向けた所で、その巨人が投げ飛ばされて虫人達の集落である大樹に投げつけられた。とんでもない轟音と共に背中からぶつかり、地面に倒れ伏すと地震みたいな振動を生み出す。投げ飛ばされた巨人はそのまま立てずにいて、こちらに――私に向けて手を伸ばして来た。

 その姿を見た私は、頭の中が真っ白になって一も二も無く走り出す。あの子が呼んでる。なら、行かなきゃダメだ。レプリカ巨神が暴れていて危ないとかは、もう頭の中から吹き飛んでいた。

 

「ちょっ!? そっちは危険が危ないのである!? おぜうさん、お待ちなさい! おぜうさんに何かあったら、話が終わってしまいますぞ!? じょ、助手くーん、助手君なんとかしてー!!」

 

 背後でカピバラ博士が何か叫んでいるが構いやしない。そのまま巨人の腕まで駆け寄って、差し伸ばされた手の指先にぎゅっと抱き付く。それだけで、涙が零れそうな位胸が締め付けられてしまった。

 ごめんね、一人にしてごめんね。今はもう、傍にいるからね。

 

 すがり付く様に抱き付いていると、巨人がゆっくりと体を起こし始めた。大きな瞳が私の事を見つめていて、そしてそれは直ぐに私の頭上高くへと持ち上がって行く。私の体も少しの浮遊感に包まれて、巨人の肩に乗せられる。途端に、視界一杯に相手のレプリカ巨人の姿が広がった。

 

 よーし、今度こそやっちゃえ! 私の号令に合わせて巨人が腕を振り被り、不用意に近づいてきたレプリカ巨神を殴り飛ばす。先程のお返しとばかりに軽々と巨体が吹き飛んで、周囲の森の木々をなぎ倒して転がって行った。何だかわからないが復活した! ここからが反撃開始だ!

 

「『なんと言う、突然の復活劇! ならばこちらも遠慮はしないのである、ケイローン! 『博士の特性フィリピン爆竹ミサイル』一斉発射!! もう一度防御技を使わせてグロッキーに戻してやるのであーる!』」

 

 何その物騒な爆発物みたいなミサイル。わざわざ拡声器まで取り出してこっちに声を届かせるなんて、流石に紙一重の考える事は紙一重だ。そんな事を考えている間に、距離の開いたレプリカ巨神がその胸を両開きにして、格子棚の様に区分けされた格納庫から無数の投擲物を発射してきた。撃ち出された投擲物は空中で点火して煙を噴き上げ、それぞれが無軌道に煙の尾を引いて飛び回ってから、再び収束して一斉にこちらに向かって来る。無駄に科学力高いなコレ。

 

 迫り来る脅威に対して、巨人は左の掌を差し向けた。左手の装甲が展開して、生まれた溝に光が満ちる。そして掌の前に円盤状の壁が生まれて、飛んできたミサイルを全て受け止めた。受け止めただけで、爆発する事もなくその場に止めている。爆発に備えて身構えていたので、少し拍子抜けしてしまった。

 

「『さあ、これで相手はまたグロッキー。好きなだけ叩いて叩いて、ぶってぶってどちらが上か体で思い知らせてやるのだー! 『わからないなら、ぶってわからせてやる!』というやつであーる!』」

 

 開いた胸元を閉じてから、レプリカ巨神が土砂を撒き上げながら突撃して来る。それを見守りながら、巨人は円状の壁を小さくして行き、やがて掌の上に動きを止めた飛来物だけが残った。まるで時間が止まっているかの様に、そのままの形で無数の爆発物が握り込まれている。

 

 こっちを舐め切っているのか無造作に近づいて来るレプリカ巨神。それに対して、私の巨人は一歩だけ踏み込んで、タイミングを合わせて爆発物を握り込んだ左腕を叩き込んだ。

 あっさりと装甲を突き抜けて、胸板に拳がめり込み肘まで込み突き刺さる。動きを止めたレプリカ巨神から腕を引き抜いた時には、握り込んでいた爆発物は全て返却されていた。そして、一歩二歩と後退ってから背中を向ける。

 

 その瞬間に左腕に灯っていた光の模様が消え去って、展開していた装甲が閉じると同時にレプリカ巨神の中で爆発物が活動を再開した。当然の様に爆発し、レプリカ巨神は内側から一瞬膨れ上がりその上半身を爆散させる。下半身は残っていたが、もう動く様子は微塵も無い。

 

「『なぁにあれぇ……。さっきと全然違う、全然違うのである。おぜうさんが肩に乗ったら強くなるとか、どういう理屈なのかさっぱり理論が分からない! 肩に乗ってるのに戦闘で吹っ飛ばされないおぜうさんもまったく意味が分からない! 分かるのは、此処が退き時だと言う事だけなのであーる! 助手君!』」

 

 レプリカ巨神がやられた途端に、今まで虫人の戦士と戦っていたメイドさんが戦闘を切り上げカピバラ博士を回収する。いつか見たアイアンクロウがカピバラヘッドの後頭部を掴み上げ、ぶらんぶらん振り回しながらおよそ人の物とは思えぬ身体能力で地を駆けて森の中を目指して行く。素人が見ても鮮やかだと分かる、見事な撤退だった。

 

「『動力炉緊急回収装置作動! 正常動作確認、戦闘地域外への射出を確認! 今回は引き分けと言う事にしておいてやろう。だが忘れるな、我輩の頭脳が敗北した訳ではないと言う事を! いずれ第二第三の量産型――イテテテテテテ! 助手君力入れすぎてるから! 割れちゃう、我輩の優秀な頭脳が助手君の愛で割れちゃう!! おぼえてろよー!!』」

 

 カピバラ博士も捨て台詞を忘れない。本当にキャラがぶれない奴だ。正直ちょっとだけ羨ましい。

 それと同時に、博士の言葉に反応して残ったレプリカ巨神の下半身から、大きな金属の塊が内側から装甲を突き破って飛び出して行く。先程のミサイルの様に煙の尾を引いて森の外に向かって飛んでいく二つの塊。それを見送っている間に、カピバラ博士と助手のメイドもまた森の中に消えて行った。

 

 これで唐突な戦闘は終了した様だ。今回は流石に肝が冷えた。やられている巨人の姿は心臓に悪い。

 なんにせよこれでまた話を聞きに戻れる。いや、その前に怪我人を何とかするのが先か。大活躍してくれた巨人の頬をよしよしと撫でながら、これからの事を考えると実に頭が痛かった。

 ああ、何でもいいからもう、お風呂入りたい!

 

 

 次回、第十六話『気持ちいい!』に続く。

 




このカピバラ博士とブーメランメイドさん、好きなんだけどなかなか出番が増やせない。
この二人の謎も何時か書きたい物です。何故メイドなのかとか!
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