【完結】私、巨人の母になりました!   作:ネイムレス

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この物語はフィクションです。
登場する人物はリスペクトされているだけで、実在の人物とは一切の関係は有りません


第十八話『とんがってる!』

 前回のあらすじ。

 女の子には色々悩みがあるんです。新機能のホバー推進を試していたら岩を投げつけられた。巨人が防いで反撃した所、下手人達は土下座でお出迎え。話を聞いてみれば彼等は次の町の漁師で、何でも巨神違いをしたのだとか。その後町に一緒に向かっていると、海の上から海賊船に砲撃された。

 

 

 正直、この時ほど巨人に飛び道具が無いのを残念だと思った事は無い。

 次々と飛んでくる砲弾を、避ける事も無くぼーっと見送る。そのどれもが直前で失速して、ドバンドパンと目前の海面へと落ちて行く。直撃する様な物は巨人が受け止めてくれる筈だが、これはそれ以前の問題だ。

 あいつ等、ノーコンにも程がある。これならトカゲのおっさんが流れ弾で死ぬことも無いだろう。

 

「トカゲじゃないドラゴニュートだ。このままじゃ埒が明かんな。とりあえず、ワシらだけ残って猟師達は避難させた方が良いだろう」

 

 よし生きてたか。相変わらず人の心の中の台詞に反応する奴だ。

 流石に放置して町に向かうのも問題があると言う事で、運んで来てあげた漁師達は掌から下ろし先に街に戻っていてもらう。それから手ごろな岩でも投げてやろうかと思案していると、ずっと続いていた砲撃が不意に止んでしまった。当たらない事に気が付いて、今更ながらに方針を変えたのだろうか。

 

 更に見守っていると、海賊船は舳先をこちらに向けて近づいてきた。今まで停止していたというのに、もう既になかなかのスピードだ。船舶としてはやはり、かなりの優秀さを誇っているらしい。

 

「あやつら、このままだと浅瀬に衝突して座礁するぞ」

 

 トカゲのおっさんが至極どうでも良さそうに呟く。分からんでもないが、流石に海賊旗を掲げているような奴らだし、無策に陸地に近づくなんて事は無いだろう。

 そう思っていた時期が、私にもありました。

 

 結論から言えば、奴らの船は座礁した。そりゃあもう見事にガツンと。タンスの角に小指をぶつける感じでガツンと浅瀬に突っ込んで、何やら甲板の上にわらわらと人影が躍り出て来た。そいつらはひとしきりギャーギャーと叫び合うと、船の錨を下ろしてからそれを伝って浅瀬に降りて来る。

 そうして、巨人の足元にそいつらはやって来た。

 

「おい! お前達、あの町の奴らじゃないな!?」

「あの町は俺達海賊団が縄張りにしてんだ、そんなでっかい奴を連れて暴れようとしたらただじゃ置かねぇぞ!?」

「そーだそーだ!!」×大群

 

 思ったより小さい。背丈は私と同じぐらいだろうか。いや、背ビレも入れれば少しだけ私より高くなる。足が無い分――足の代わりに尾ヒレれで立って居るのでどうしてもその分背が低くなるのだろう。

 そう、目の前に居る連中は、全員が鮫だった。どう考えても水中に適応しただろう姿の癖に、何故か陸地でも元気に活動する。半魚人ならぬ全魚人とも言うべき、鮫その物の姿の亜人であった。

 もしかして砲撃が当たらなかったのは、あの不器用そうな胸ビレで操作していたからなのではなかろうか。

 

「おめぇ等、待ちな。そいつらの相手はお前らじゃ無理だ」

 

 その時、再び甲板上から落ち着いているが良く響く声が聞こえて来た。それと同時に甲板を蹴って、大きな人影が浅瀬に向かって跳躍する。

 そして、ビターンと腹から水面に落ちた。しかも水面は私の膝ぐらいしかないのでほぼ陸地に直撃だろう。痛みを想像したら、思わずうわぁと口から言葉が漏れ出した。

 

 そして、たっぷり時間をかけてから腹打ちした人物が立ち上がり、のっしのっしと肩を怒らせてこちらへやってくる。威厳も何もあったモノじゃないが、醸し出す威圧感だけは相当な物だろう。

 他の鮫人と同じ様に尾ヒレ直立歩行ではあるが、その体格は二回りほどデカい。怒り肩の先にあるのは逞しく発達した胸ビレで、その先には三又に分かれた銛が握られている。一番の特徴は他の鮫人達と違い鮫顔の口の中に鋭い眼光が光っている事だった。まるでこの人だけ被り物をしているかのようだ。もちろん頭頂部には立派な背ビレがあり、他の鮫人達よりもご立派だ。むしろ、俺を見ろと言わんばかりにとんがっている!

 上着だけ制服みたいのを羽織って、その上に更に羽織った赤いマントをひらひらさせる。片手――片ヒレはフックになっていて、これぞ正に海賊船長と言わんばかりの風格である。

 

「そして、俺でも無理だろう。ここは、我らが船長の出番であるとのお言葉だ。お前ら道を開けな!!」

 

 そう言って、でっかい鮫人が道を譲る様に脇に移動する。それに倣って、わらわら居た他の鮫人達も左右に分かれて人垣を作っていた。って言うか、デカいのが船長じゃなかったんかい。

 

 まだ船に誰か残って居たのかと、再び視線を座礁している海賊船に向ける。しかし、その船長とやらは、一向に姿を見せる気配が無い。やっぱりその辺の岩を適当にぶん投げさせようか、なんて考えていたら海賊船からハウリング音が響いてスピーカー越しの声が発せられた。

 

「『ふふふふ……、くっくっくっくっ、はーっはっはっはっ!! 待たせたな! 今そっちに行ってやるぜ!!』」

 

 どことなく、合成音声を思わせる若い男の声。いや、少年の様に聞こえる女性の声だろうか。判然とはしないが、とにかくやたらと元気な事だけは伝わって来る。

 そして、その声の持ち主が姿を現した。いや、最初からそこに居たと言うべきだろう。

 

 艦首が割れ、艦橋が歪み、船尾が形を変えて行く。剥き出しになった内側が曝け出されると、それは腕となり足となり、そして頭となる。船を形作っていたパーツは体の外側に外套の様に張り付いて、内側に引っ込んでいた両手の拳がせり出して来てググッと力を入れて握り込まれる。うん、何かコレ、アニメで見たことある。今のうちに攻撃とかしたらダメなんだろうな、きっと。

 最後に海賊の帽子を模した頭部に埋め込まれた三角形に三つならんだ緑の丸いレンズと、その下の私の巨人に似た顔立ちの両目にギラリと光が灯る。これはおそらく、五つの瞳を表しているのだろう。

 

 まさか海賊船が変形するとは恐れ入った。それも、ほとんど人間とそん色ない程の人型に。そして、直感が正しければこいつは、止めてくれと頼まれていた巨神姉弟の次男に違いない。長女は瞳が一つ、次女は二つ。そしてこやつは帽子のも合わせれば五つの瞳だからだ。私の巨人に似た姿なのも、その予想に拍車を掛けていた。

 

 後期開発機ともなると、やはり与えられる能力が一味違う物になるのだろう。長女は性格がぶっ飛んでいるが、こいつは設定がとんがってる! どうか性格はマトモであってくれ!

 

「『問われる前に言ってやろう! 俺様の名は海賊船兼船長のネプチューン!! この海賊団を仕切る、熱い、海の、漢だぜ!!!』」

 

 一カメ、二カメ、三カメとカメラ目線を決めて、ポーズもばっちりに決め台詞。あー、こいつもダメっぽいなぁ。

 巨人の肩の上でげんなりしていると、突然スマホが着信音を鳴り響かせる。こんな時に掛かって来る様な相手は一人しか思い浮かばないけど、嫌だと思って放置すると絶対に碌な事にはならない気がする。

 シブシブと通話ボタンをスライドさせ、ついでにスピーカーボタンもぽちっとな。

 

「『はーい、アナタのお耳の不協和音。巨神ヘスティア、十七歳です。そろそろ次の町に付いた頃かと思ってお電話してみましたー。あ、間違ってもヘスティアさん十七歳とか言っちゃだめですよ? もし言われちゃったらその時は、焼きます』」

 

 やはり貴様か。お耳の不協和音って、自分の性格自覚してるのかもしかして。あと、焼きますって所だけドス効かせていて怖い。

 まあ、ちょうど良いと言えばちょうど良いか。次男の巨神っぽいのに出会った事を伝えておこう。

 

「『おい、人と話してる時にスピーカー通話するとか、お前のマナーは地獄に落ちるレベルだな。大体、このネプチューン様が――』」

「『あらあら、この声は? あらあらあら? もしかしてもうポセイドンちゃんにお会いしていたのですか? でも今ネプチューンって……。あらあらあらあら、まあまあまあ。もしかしてポセイドンちゃんったら、また?』」

「『へ、ヘスティア!? ヘスティアねーちゃんか!? ちょっまっ、子分達の前でそれ以上言うなあああああ!!』」

 

 あれか。友達が家に遊びに来てる時に、部屋に入って来て色々暴露する年上の家族的なアレか。いわゆる公開処刑って奴だな。哀れな……。

 長女の巨神の暴露攻撃の前に、音を掻き消そうと言うのか水上で地団駄を踏み始めた次男の巨神。そこにはもう、先程までの自信満々な態度も、大勢の部下への沽券も有った物では無い。声色も相まって、大きな子供が暴れているかのようだ。

 

 さて、この収拾をどうやってつければいいのだろう。本当に厄介な十七歳だよ全く。

 

 

 次回、第十九話『透けて見える!』に続く。

 




武器ボスBGMは名曲。
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