いざ投稿する時にはさっぱり忘れている。
前回のあらすじ。
海賊船からの砲撃はノーコンだった。海賊船が座礁船にジョブチェンジ。中から鮫肌な亜人がたっぷりご登場。そして現れる第六の巨神。海賊船の正体は巨神だったと驚いて居たら、何時もの十七歳から電話が。そして始まる長女から次男への精神攻撃。誰かこの収拾を着けてくれ。
子供の喧嘩ってあるじゃないですか。戦い方なんて分からない様な子供同士が、それでも精一杯手足を振り回して勝敗を決め様とする小さな決闘。それのスケールが大きくなると、こんなにも厄介な事になるんだなぁ……。
「『おおおおおおおおおお!! 今すぐその通話を切りやがれ! 切らないなら、切りたくなるようにしてやるからなぁ!!』」
姉の精神攻撃に耐えかねた次男君、何と矛先をスマホを持つ私に変えてざぶんざぶんと浅瀬を突進して向かって来る。表情は変わらないのだが、その声からはとんでもない怒りが伝わっていた。
気持ちはわかるよ。私だってアレはウザイ。
「『ですからねー、ポセイドンちゃんは厨二病? って言うのを患っているってデメテルちゃんが言ってまして、自分の名前を変えて他人になり切ろうとするんですよー。今回はきっと鮫人さん達と意気投合して、海賊ゴッコをしたくなってしまったようですね』」
「『ぎゃああああああああああ!! ブッコロ!!!』」
正直同情しちゃうよこれは。まあ、通話は切らないんだけどね。だって聞きたい事があったし。その為にも、海賊船の巨神には犠牲になってもらうとしよう。
目前に迫って来た海賊船の巨神に対して、私の巨人は何も言わずとも両手を差し伸ばして防ぎに入る。お互いの両手ががっちりと組まれてがっぷり四つ。ぎりぎりと力と力がせめぎ合い、足元の地面が踏ん張った為にぼこんと抉れて行く。
思えば、私の巨人と拮抗する様な力を持った敵って、今回が初めてなのではないだろうか。今までは人型じゃなかったり、同じ巨神でも実力に差が在ったりでまともに組み合った事なんてない。そして、相手は明らかに後期開発された可変型だ。下手をすると性能で負けている可能性がある。
組み合うのは危険だろうか。でも、離れても攻撃手段が無いしな。判断に迷いが生まれてしまう。
「『考え事とは余裕だなぁ、オラァ!』」
その隙を突かれて、押し返すばかりだった海賊巨神が急に後退した。前につんのめった所に、巨人の胴に向けて鋭い膝蹴りが叩き込まれる。肩に捕まっている私にまで、ビリビリとした衝撃が響いてきた。
続いて、下がった頭目がけて肘が振り下ろされるが、それは機敏に反応した巨人が腕を振るって弾き飛ばす。よし、胴体がら空き、右ストレートだ!
「『どわっ!? やるなぁ、コノヤロウ!』」
誰が野郎だコノヤロウ。
胴体に拳を当てられた海賊巨神は、タタラを踏んで浅瀬に後退。そのまま自分から大きく跳躍して、何と水上に立ち上がり水柱を上げて水上スキーさながらに高速移動し始めた。
何をしようとしているのか不安はあるが、これで何とか距離が出来た。今のうちにトカゲのおっさんを避難させて、十七歳の巨神に聞きたい事を聞いてしまおう。
あれ、そう言えばさっき、胴体に思いっきり膝蹴り入れられてなかったっけ。サッと血の気が引いて、手すりを掴みながら慌てて下を覗き込む。
うわわわ、おっさん!? 生きてるかトカゲぇ!?
「トカゲじゃないドラゴニュートだ! こっちは気にするな! 思いっきり暴れて、ワシに巨神同士の戦いを見せてくれ!! 期待しているぞ!」
心配したとうの本人は、なんと遠く離れて見物している鮫人達と一緒に居た。船長っぽいけど船長じゃない大きな鮫人の隣で、なんか勝手な事を言って両手と尻尾をブンブン振っていた。あの野郎楽しんでやがるな。
あれは後でシメるとして、次はスマホの先の十七歳をどうにかしよう。そもそも今襲われてるのは、殆どこれが原因の様な物だ。
「『もしもーし、聞いてますかー? それでですねぇ、ポセイドンちゃんは――』」
悪いが世間話はそこまでだ。というか、あからさまに海賊巨神の怒りを煽るような話ばかりしおって、あからさま過ぎてお前の思惑が透けて見える!
どういうつもりで私達を巨神達と接触させ、あまつさえ今回は戦わせようともする。一体何を考えているんだ。
嘘をついていないとしても、言ってない事が沢山あるんだろう。例えば、クロノスの事についてとか。そういうのを一切合切話してもらおうか。煙に巻いたり、時間切れで逃げたりしな内にな。
はー、一気に言ってやった。こういう喋りまくる奴には、反論させずにこっちも一気に言うに限る。
「『…………。え? なんですって? 良く聞こえませんでしたー』」
ここでその切り替えし!? 難聴系主人公か!? ああああ、分かってはいるのに相手のペースに飲まれてしまう! ツッコミを入れてしまう!
「『俺を無視してんじゃねぇぞオラァ!』」
海上を大きく旋回して、再び正面から急接近して来る海賊巨神。両の手を前に突き出して、両手の五指を全てこちらに向けて来る。あ、なんか嫌な予感。正面、左手の防御技を!
巨人に指示を飛ばした瞬間、相手の向けてきた指先が炎を拭き上げた。巨人が右の掌で私を庇いながら、装甲を展開した左手を前に突き出して光の円壁を掲げる。そしてそこに、殺到する様に無数の弾丸が飛んで来た。
先に壁にぶつかって動きを止められた弾丸に後から来た弾丸がぶつかって、バチュンバチュン火花を飛ばして弾け飛んでいく。マシンガンか! 指が全部マシンガンなのかアレ!?
壮絶な銃撃で足止めをされている所に、更に海賊巨神の両肩に回った艦首部分のパーツから水中に向けてボトボトと細長い魚みたいな物が投下される。それは水の中に落ちると同時に推進を開始して、白い軌跡を海面に刻みながらこちらに向けて突き進んで来る。そうして、巨人の足元の海岸線に突き刺さると同時に大爆発を起こした。
あれは魚雷だ! 飛び道具いっぱいだな羨ましいぞ! 下から熱風が吹き上げて来て熱い熱い!
「『こいつで、トドメぇ!!』」
叫びと共に背中から二連装の砲台が競り上がって来て、こちらに狙いを定めると同時に一斉射。ビックリ箱かお前は。
音速を越えてるはずなのにこっちに迫って来るのが見えてしまった巨大な砲弾が、足元を爆破されて態勢の崩れた巨人の、その展開していた銃弾塗れの円壁に連続して砲弾がぶち当たり更なる大爆発を生み出した。
着弾の寸前で思わず目を瞑ってしまって、続いて襲ってくる振動と轟音に歯を食いしばって必死に耐える。くっそ、手すりを掴んでいて耳を塞げなかった、耳がキーンとして頭もくらくらする。それでも戦況を把握しようと、必死に目を開けた。
とりあえず、自分は大丈夫。巨人は……、両手の分厚い装甲版を掲げて何とか防御した様だ。無事で良かった。
「『はーっはっはっはぁ! どうしたよおぉオラァ! こんなもんでやられるわけねーんだろ、かかって来いよ!』」
水上で挑発的に喚きながら、ザバザバと波を切り八の字に蛇行する海賊巨人。煽りおる。くっそ、こっちに飛び道具が無いからって良い気になりおって。痛む耳と相まって、私の腹の虫はご機嫌斜めだ。
凄い悔しい! せめてこっちも水の上を自在に移動できれば!
と、そこで巨人の瞳が私の方に向けられているのに気が付いた。痛みで顔を顰めていたのが気になったのだろうか、それに対して大丈夫だと示す様にぐっと親指を立てて見せる。
その次の瞬間、巨人の両手両足の装甲が全て同時に展開し、生まれた溝に光が満たされて紋様を浮かび上げた。手にしたままだったスマホの通話画面に割り込んで、巨人からのメッセージが書き込まれる。
そこに書かれていたのは『system cronus』の文字が一つ。
「『お、いよいよ本気になったか? いいぜぇ、歯ごたえのあるやつは大好物だ――ゴッ!?』」
気が付いたら、巨人が宙を飛んでいて、海賊巨神の顔面にドロップキックをぶちかましていた。
下手なビルよりもデカいはずの海賊巨神が木の葉の様に吹き飛んで、海面を石切みたいに二度三度と跳ねる。そこへ更に、海面を走って追い抜いた巨人が先回りして、飛んで来た海賊巨神をサッカーボールみたいに蹴り上げた。
恐らくは、海に足が沈み込む前に次の足を踏み出して、海の上を移動したのだろう。何が何だかわからない。だだ一つ分かるのは、巨人が戦えると言う事だ。
そこからはもう、一方的だった。跳ねあがった体を両手の拳で無造作に叩き落とし、無抵抗の体に向けて殴るわ蹴るわの暴力の嵐。最後にまた思い切り蹴飛ばされて海面を滑って行き、海賊巨神の体は陸地の岩場に叩きつけられる。
どういう材質なのかは分からないけど、今のでも相手の体はへこんだりしない。でも、思わず目を背けたくなるような攻撃の数々に、ついには悲鳴すら止んで動かなくなってしまった。
その光景が怖くなって『もういい! もうやめて! もう十分だから!』と必死に叫び声を上げた。このまま続けさせていたら、何だか巨人が私の知らない別の何かになりそうな気がしたのだ。
動かなくなった海賊巨神にさらに腕を伸ばしていた巨人は、その声を聴いてぴたりと動きを止める。同時に、各部の装甲から走っていた光が消えて、展開していた装甲も元の形状に戻って行った。
その様子を見て、両足がガクガク震えて思わず足場の上に座り込んでしまう。ああ、止まってくれて良かった……。
「勝ったか……」
「負けた……か……」
遠くの方でうちのトカゲとでっかい鮫人が、殆ど同時に呟いて溜息を吐いていた。
次回、第二十話『恥ずかしい!』に続く。
この物語はワイルドアームズをリスペクトしております。