【完結】私、巨人の母になりました!   作:ネイムレス

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モチベーションがあがらなーい。


第二十話『恥ずかしい!』

 前回のあらすじ。

 十七歳のせいで戦闘になった。マシンガンとか魚雷とか砲撃とか、こっちに飛び道具が無い事を良い事に一方的に撃たれまくる事に。なんか巨人が海の上を走れるようになって、最終的に相手をボコボコにした。正直怖かったです。

 

 

 唐突に始まった巨人対巨神のガチバトル。勝敗は私の巨人が勝ち取ったが、正直浸りきれずに高揚感は一切ない。

 岩場に叩きつけられた海賊巨神だが、流石に巨神の姉弟は頑丈だったらしい。あれだけボコボコにされたのに、多少汚れただけで目立った損傷は見かけられない。だが、ダメージ自体はあったのか、あんなに喧しく叫んでいた声は聞こえずに今は気絶でもしているかのように沈黙していた。

 

「『どうやら勝てたようですね、おめでとうございます。無事にシステムクロノスも起動出来た様子で、おねーちゃん一安心です』」

 

 仮にも弟がぶっ飛ばされたのに、それで良いのか長女十七歳。と言うか、まだ繋がっていた事にびっくりだよ。さっきの聞こえない振りではぐらかしてる間に、何時も通り通話を切られると思っていたのに。

 

「『心外ですね。私はそんな鬼畜外道なつもりはないのですが。これでも、嘘は言わないヘスティアおねーちゃんとして、姉弟の間で通っているんですよ?』」

 

 嘘は言わないけど本当の事も言わない、の間違いじゃないのか? 今までの言動を聞いてると無性に胡散臭く感じる。正直、この言動に振り回されて、この先も旅を続けて良い物なのだろうか。

 

「『あらあら、ずいぶん疑われてしまいましたね。しょうがありません、それなら一つだけそちらの質問にお答えしましょう。知りたい事を何でもおっしゃってくださいませ』」

 

 む、これは意外だ。また煙に巻かれるかと思ったのに。だが、何でもかんでもはぐらかすこいつにしては、ずいぶんな譲歩と言えるかもしれない。しかし一つだけか、悩むなぁ。本当に十七歳なのかとか聞いたら、そんな訳ないじゃないですかとかマジトーンで返って来そうだし止めておこう。

 

 うーん、いざ何でも聞けるとなると迷ってしまうな。私達を他の巨神に合わせようとする目的? それとも、何か私達が知っておいた方が良い事を黙ってそうな辺りを突いてみようか。くっ、一つだけと言う縛りが余計に考えをかき乱してくる。

 んんんんんん、そうだ! アレにしよう!

 

「『え? 私の動力について、ですか? 本当にそんな事でいいんですか? まあ、私は全く構いませんけど……』」

 

 よくよく考えればコイツについて一番知りたい事は、『何で動力の欠陥で長い眠りにつくとか言ってたくせに何度も連絡してきているのか』だ。それに、こいつらの動力について知識があれば、もし次に巨神と戦う事になっても有利になるかもしれない。その辺の事をキリキリ答えてもらおうじゃないか。

 

「『そうですね、簡単に言うなら私達は時間を食べて動いています。時粒子動力変換炉。通称、タイムコンバーターによって、理論上は無限の動力を得られるとして作られました。前にも言ったとおり、私はその動力炉の動作試験タイプとして作られています。そしてその試作の動力炉は時粒子の変換効率が悪く、今の世界では活動可能になるまで時間が掛かるのです。それが、大体一週間ぐらいでしょうか。一週間って長いですよね。私にとっては、永き眠りと表現してしまう程に。うふふふ……』」

 

 相変わらず一気に喋る奴だな。そして、時間、時間かぁ……。え、どうやって時間を動力にしてんの? 時の流れを帆に受けて~って奴なのかな。さっぱり原理が分からないが、多分私の頭じゃ詳しい理論を聞いても解らないんだろうな。

 そして、一週間か……。紛らわしい言い方をしやがって、また何千年も眠りにつくかと思うだろあんな言い方じゃ。

 

「『あらあら、あんまり難しい事を考え過ぎると、知恵熱出しちゃいますよ? それに、三千年の長い月日を地の底で過ごしてきたのは本当なのですから……。ついつい、こうして連絡を取ってしまうのです。ごめんなさいね。ご迷惑でしたよね』」

 

 そういう物だろうか。そういう物か。しかしまあ、永久機関で動いているとは恐れ入った。それなら、巨人の燃料切れとかは気にしなくても良いのかな。時間なんて、ありふれた物なんだろうし。

 あと、別に迷惑とかは感じてないから。こっちだって話し相手は幾ら居ても困らないし。だから、そんなに落ち込んだ声出すなよな。

 

「『今私の事を可哀想と思ってしまいましたか? その気持ちを大事にしてくださいね。私って、とっても可哀想な地中暮らしですから。うふふふふ』」

 

 こんな奴を一瞬でも哀れんだ自分が、非常に恥ずかしい! ああああああ、やっぱりコイツの性格は最悪だ! うちの子が真似しない様に注意しなくては!

 

「『…………。さて、それでは約束通り質問にはお答えしましたし、今回はこれで失礼させていただきますね。また、次の巨神に出会いそうな頃に連絡させていただきます』」

 

 む、確かに約束は守ってくれたしな。次辺りには何で巨神に会わせるのかでも聞かせてくれ。って言うか聞き出してやる。だからまたかけて来いよな。こっちからかけても繋がらないんだし。

 

「『うふふふ、そうですね、考えておきます。では、まだまだ苦労すると思いますが、挫けないでくださいね? 陰ながら応援しています。もちろん、クロノスちゃんの教育が上手く行く事も。頑張ってくださいね、お母さん?』」

 

 おう、頑張ってお母さんするぞ。それだけは最後まで頑張ろう。

 とりあえずは満足して、私達は通話を終えた。まだまだ分からないことだらけだが、今はこれで良しとしておこう。役目を終えたスマホを胸元に戻して、ふうっと大きく溜息を吐く。色々疲れたよ全く。

 

 それから後。

 巨人の肩から下ろしてもらって、下の連中と合流する。トカゲのおっさんは何やら、船長っぽいのに船長じゃない鮫人と話し合いをしていた様だ。余程熱中しているのか、こちらに気が付く様子が全くない。

 おーい、トカゲのおっさん、こっちは話しついたぞー!

 

「トカゲじゃないドラゴニュートだ。おお、そっちも話が付いたか。ワシも今水中の遺跡の話を……」

 

 あん? どうしたんだよ、鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔して。私の顔に何かついているのか? 別に怪我もしてないし、むしろ何だか体が軽くて妙にスッキリしてるぐらいなんだが。

 

「おまえさん、その髪はどうした? ずいぶん短くなっとるようだが」

 

 は? 髪? 言われて後頭部に手を伸ばすと、ちゃんと何時も通りの長い髪が――無い。待て待て落ち着け。とりあえず、スマホと巨人の視覚をリンクさせて、自分の姿を映させてみよう。

 えええええ!? 髪が、髪が無くなってる!? 背中まであったのに、ショートになってるぅ!?

 

「ふむ、砲撃に巻き込まれて千切れたか……?」

 

 大声を上げて狼狽えていると、大柄な鮫人がぽつりと呟く。砲撃ってさっきの戦いの時のか。と言う事は、下手人はアイツか! 岩場に叩きつけられて、未だに目を覚ましていない海賊巨神!

 キッと睨みを入れると、下手人に向かって駆け出した。そして、投げ出されている足目がけて飛び蹴り! もちろんそれだけじゃ気は済まない。げしげしげしと連続で踏みつけてやる。

 

「『う……お、おお? 何で俺、陸の上に……? って、あああっ! てめえ! 俺の動力を奪いやがったな! もういっぺん勝負しろやコラァ!!』」

 

 目を覚ましたか、乙女の髪の仇め! この髪を見ろ! お前の砲撃で自慢の髪がこんなに短くなって! とにかくもう、悔い改めろ!

 

「『な、なんだ? 髪? そんなもん砲撃で焦げたり千切れたりしてたら、お前の頭は今頃ミンチになってんだろうが。操り人ならお前の巨神が守ってんだから、かすり傷一つ負ってない筈だろうが』」

 

 …………。それもそうか。そもそも私の巨人が守ってくれたんだし、髪の先も焦げたり千切れた様にはなってないみたいだしな。じゃあ、この髪はいったい……。

 

「『そんなもん俺が知るかよ。それより勝負だ勝負! 今度は負けねぇから――』」

「そこまでだ」

 

 そんなもんって言われた。自慢の髪だったのにそんなもんって……。

 さっきの戦いの決着に不満があるのか海賊巨神が騒ぐが、それを落ち着いた声色で大柄な鮫人が諌めた。部下の筈の鮫人の言葉の筈だが、それでぴたりと海賊巨神は口を閉ざしてしまう。なんだろう、この二人の関係が良く分からない。

 

「どんな形であれ、お前は決闘で負けた。それを後からぐだぐだと難癖をつけるのは、海の男としては失格だ。それは理解しているな、船長?」

 

 問い掛けに対して返事は無い。沈黙は肯定と受け取ったようで、大柄な鮫人は言葉を続ける。何だかこのやり取りが、私にはすごく気になってしまう。

 この二人は、私に無い物を持っている様な気がするから。

 

「俺はお前に、船の仲間達の事を良く見られる様に、その生き様に責任を持たせたくて船長を任せた。だからこそ、その責任から逃げて欲しくはない。……解るか?」

「『わかったよ……。ああ、今回は俺の負けだ。認めるよ……』」

 

 これは親子の会話だ。親が子に、自身の背中を見せる。伝えたい思いを真っ直ぐにぶつける。そんな父と子の対話なんだ。私にはそれがとても眩しい物に見えて、凄く……悔しい。

 

「どうだろう今回の一件の落とし前、この俺に取らせてはもらえないだろうか?」

 

 大柄な鮫人は続けて、今度は私に向かって言葉を投げかけて来た。落ち着いているのに力強くて、何かを背負っているのが伝わって来る言葉に思わず気圧される。

 しばらく頭の中でぐるぐると言葉をせめぎ合わせ、なんとかこくりと頷くのが精いっぱいだった。

 

 私は巨人の力で戦いには勝てたけれど、親としての度量では完全に負けたのだ。そんな敗北感で、胸の中が占領されてしまった。

 

 

 次回、第二十一話『ピクピクしてる!』に続く。

 




とにかく最後まで走るんだ。
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