前回のあらすじ。
航空機を撃墜すると言う謎の光の発射地点を目指していると、巨人と比べても巨大な山の上に新たな巨神を発見する。滅多矢鱈にビームを乱射してくるそいつに対処する為、海でも使った凄いパワーを使って一気に接近戦を仕掛けるも、スマホの向こうの腹黒巨神の計画通りになってうやむやになってしまう。そして私は、巨人の力を使った反動とやらで、身体が小さく縮んでしまった。
気分は最悪だと言うのに、物事は刻一刻と勝手に進んで行く。今のこの状況だってそうだろう。
「『はーっはっはっはっ! 我が都市が誇る最大戦力を見て、その威光に恐れ戦きなさい! いかに巨大な兵器を用い様とも、三十体もの量産型ケイローンには敵うまい! 囲んで棒でたたかれる前に、平伏して土下座でもするが良いわ!!』」
なんか拡声器越しに、とんでもないこと言ってる女の人の声が聞こえてきている。なんとなくだが、高圧的な態度なのに凄く小心者そうなイメージがある声だな。
確かに、地平線の果てを疑似四足の巨神もどきがぞろぞろと埋め尽くしている様は壮観の一言だろう。カピバラ博士の作った人を動力源としたレプリカ巨神が、何時の間にやらこんなにも量産されていたとは驚きだ。
まさか、あの腹黒巨神に行くように促された旅先で、こんなにも大歓迎されるだなんて思いもしなかったさ。
あの山頂での巨神同士の戦闘の後で、自分の身に起きた現象に戦慄していた私に、スマホの向こうの腹黒巨神は変わらない声色で一つの提案をしてきた。それは、動揺していた私を正気に戻すには充分な威力を持ち、その言葉に突き動かされて私は今此処に居る。
「『全ての巨神に出会えば、ゼウスちゃんの居場所は自ずと解るでしょう。そうすれば、貴女は元の居場所に帰り付く事が出来るかもしれませんよ。これ以上〈時間〉を浪費する前に、次の巨神を目指す事をお勧めします』」
何故そんな事を知っているのかとか、その他もろもろの疑問なんぞ知った事か。帰れるというその一言が、私の今の行動原理だ。その為にこうして、口車に乗って遠路はるばる地の果ての大都市とやらまで来たのだから。
「……まさか市長がここまで短絡的だとは思わなかったな。すまんな、到着を連絡したのが完全に仇になってしまった」
意外な事に、腹黒巨神の指定した大都市の場所はトカゲのおっさんが知っていた。何でもおっさんに資金を提供していたスポンサーとやらが、この大都市自体だったのだとか。そして、馴染みである事を利用してPDAを介して巨人で近づく事を連絡しておいてくれたそうなのだが、その結果が現状の大量の量産型との対峙である。
「ワシだってこの状況は予想外だよ。調査に出ている間に、ここまで防衛力が備わっているなんてなぁ。それから、トカゲじゃないドラゴニュートだ」
もうそれは良いよ。テンプレとかしている場合じゃないだろう。
各地から発掘された発掘物を集めて、他の町や村よりもはるかに発展した巨大工業都市。そんなものと、何が悲しくて敵対なんぞしなければならないのだろうか。なんとも、頭が痛い問題が発生してしまった物だ。
「『はっ、反応がない……。やっぱり、稼働状態の巨神相手に三十体じゃ少なすぎたかしら……。でもでも、諦めちゃだめよ。ここで諦めたら、一体誰がこの都市を守ると言うの? 市長であるこの私が――あっ、マイクのスイッチ切るの忘れて!?』」
ガガピーとか言って放送が途中で沈黙し、それを合図にしたかの様に都市との間に立ちはだかる巨神もどき達が動き始めた。なんか色んな意味であれを相手に戦うとか嫌なんだけど、相手側はずんずん進撃してきてやる気の様だ。
今回の数を揃えて来たレプリカ巨神。今までと違うのは数だけでは無く、その人型の上半身には巨体にふさわしい大きな弓矢が装備されていた。背中には矢筒まで背負っており、あれらを一斉に連射でもされたらそれだけで街一つ滅ぼしてしまえるだろう。
私の巨人だって何発も直撃すれば壊れてしまうかもしれない。ああ、こんなにも多勢に無勢が厄介だとは思わなかった。せめて、巨人の武装に集団戦に使える様な物があれば良かったのに。なんて、嘆いたって現状は変わりはしない。
「お、おい!? 巨神の背中のコンテナが勝手に開いているぞ! そっちで何かしたのか!?」
今にも敵の集団がつがえた矢を撃ち放とうとしていたそんな時に、腰のあたりに居るトカゲのおっさんが俄かに騒ぎ始めた。言葉に釣られる様に巨人の肩から背後を見てみれば、そこには貰い物のコンテナの中から徐々に姿を表す二つの物体があった。
それは、球体にカメラのレンズが付いた浮遊する機械。姿勢制御の為か下部に何本かのトゲが生えていて、上部には二本の触角の様なアンテナが生えている。大きさが下手な小屋よりデカく無ければ、案外可愛いデザインかも知れない。カメラのレンズが赤と青の光を発して、二体の差異としてそれぞれを彩っていた。
そして、遅ればせながらスマホに通知が届き、見てみればそこには何時もの様に技名らしき物が表示されている。自律型戦闘支援ユニット、ツインデバイス。それを私が読み上げたと同時に、コンテナからせり出した二体の金属の塊が勢い良く発進した。慣性の法則なんかをどこかに置き去りにしたような、急加速とコーナーリングでの飛翔である。
「今のは、三番目の巨神が扱っていた支援装置と同じ物か。お前さんの巨神も同じ物を扱えるとは、いやはやいい加減予想外の押し売りの様だわい」
ああ、通りで見覚えがある気がすると思った。三番目に出会った巨神、デメテルが荒れ地を熱帯雨林に作り替える為に使っていた自律ユニットにそっくりなんだ。カメラアイの色が赤と青になっている、と言う違いはあるみたいだけれど。
だとすれば、後はどうしてこれを発進させたかだけれども、その答えは直ぐに分かった。中空に飛んでいった二つの球体が、突然とんぼ返りしかと思えば地上に居るレプリカ巨神を襲撃し始めたからだ。
二つの球体それぞれが時に交差し、時に並行してレプリカ巨神の群れの間を飛び回り、無造作にその身を巨神達の上半身に叩きつけて攻撃して行く。余程の勢いがあるのか、レプリカ巨神の方はまるでぼろきれの様に簡単に引き裂かれ、弓を持つ腕や前足を吹き飛ばされる。なるほど、戦闘支援と言うのはこう言う事なのだな。
襲撃されているレプリカ巨神も何とか反撃しようとしている様子だけれど、二つの球体があまりにも早く突飛に動く物だから同士打ちを避けて弓を射る事も出来ないようだ。球体の方は人を組み込まれた動力の在る後ろ足部分を、わざわざ避けて攻撃する余裕まであると言うのに。
やっぱり、こんな事までできるなんて私の巨人は凄いんだな。時間を食べられているなんて聞いた時はちょっと怖くもなったけど、私はこの子を憎んだり怖がったりはしたくない。例え帰る方法を探すとしても、最後まで一緒に居たいと思うよ。もうこの子は怖いけど頼もしい、私の可愛い大きな大きな子供なのだから。
それにしても力の差が歴然過ぎて、これはもう蹂躙と言っても過言ではないだろう。えっと、あんまりやり過ぎない様に私の巨人に言った方が良いんだろうか。
「いや、ここは市長の心を折る為にも徹底的にやった方が良いだろう。ワシは降りて離れておくから、お前さんも一緒に暴れて一方的にとっちめてやると良い」
うわぁ……。こんな対応をしてきた相手に対して必要な処置なんだろうけど、何て言うかトカゲのおっさん発想が狡いというかいやらしい! こんな擦れた大人の影響は受けて欲しくないなぁと思いつつ、腰の足場からおっさんを下ろさせて私は巨人を進ませる。
今はとにかく、徹底的に暴れさせたい気分だったから。
次回、『優しくして!』に続く。
三十話ぐらいで終わりそうかなぁと言った所。
最後まで頑張りましょう。