【完結】私、巨人の母になりました!   作:ネイムレス

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理由が無いなら作ればいいんだよ!


第五話『ご立派ですね!』

 前回のあらすじ。

 巨人を遺跡から外に出す為に遺跡の天井を破壊した。その過程で、巨人自体の思考力はそれほど高くない事が判明する。無事に表に出て夕闇空の景色を楽しんでいたら、滅茶苦茶デカい肉食ミミズに襲われた。私達を盛る為に苦戦もしたけれど、本気を出した巨人の力でミミズは哀れ爆散。必殺技まで叩き込まれて砂になる。

 改めて、この巨人は放置したらヤバいと思いました。

 

 

 遺跡の外に出たのは良いが、襲われたりなんだりで色々疲れてしまった。すっかりと陽も暮れてしまったので、結局今夜はその場でキャンプをする事になった。

 巨人を体育座りに座らせて、その足の間に竜人が持っていた一人用のテントを立てる。後はその辺で拾って来た枯草と小枝で、竜人があっと言う間に焚火を作ってしまった。更には水筒と小さなポットを取り出し、焚火を使ってお茶の用意までしてくれる。なんと言う頼もしさだろう。

 

「これは、恐らく風化したのだろうな」

 

 焚火の熱に当たりながら、砂になった肉食ミミズの成れの果てを調べていた竜人が言う。私は分けて貰った粘土みたいな携帯食料を無理やりお茶で流し込んで、その後口に顔を顰めながら風化したとはどういう事かと問い返した。

 

「ふっ、やはり口に合わんか。不味いからなその食料は。風化と言うのはまあ、生き物の死骸や岩などが風雨にさらされて少しずつ削れて行く事だ。あのミミズは体中の水分が無くなって、ミイラを通り越して文字通り分解されたのだろう」

 

 それをこの巨人がやったって? 言われて上を見上げれば、自分の足の間を覗き込んでいる巨人と目が合う。気のせいかその視線は、私が持った携帯食料に注がれている様な気がする。何だろうお腹空いたのかな。

 

 そう言えばこの子は、燃料とか補給しなくてもいいんだろうか。その辺りの情報、お得意の資料には書いてなかったのかなトカゲさんや。

 

「トカゲじゃないドラゴニュートだ。あの遺跡で見つけた資料には特に具体的な事は書いていなかったのだが、周囲の村ではちと面白いお伽噺があってな。何でも、この巨神は時間を食べて動いているらしい」

 

 フーン、ソウナンダスゴイネ。私は興味を無くして手を向けて来た巨人の、そのでっかい指先をよしよしと撫でていた。なんだよ時間を食べるって。眉唾も良い所のお伽噺じゃないか。

 

「確かに、見えない物を食べるなんてのは理解できん物だがな。ほれ、干し肉が炙れたからこれも食うと良い」

 

 どうせ食べるならこういう分かりやすい物の方が良い。かぶりついた干し肉は炙っても滅茶苦茶固くて、おまけに塩辛かったが空腹の体には有り難い物だった。何だか貰ってばっかりなので、何時かこの借りは返さないといけないな。

 味は兎も角、携帯食料と干し肉でお腹は一杯になった。お茶もしっかり飲み干して、私はそのままゴロンと横になる。あー、凄い疲れたなぁ。これだけ疲れてたらベッドじゃなくてもぐっすり眠れそうだ。

 

「なんだ、あれっぽっちでもう満腹になったのか。見た目通りの貧相な女子だ。もうちっと肉を付けんと、この荒野では生き残れんぞ」

 

 それはアレか、私の胸を見て言ったのか。セクハラばっかりしやがってトカゲコノヤロウ。それを言ったら戦争だろうが!!

 決めた。こいつはもう私の中ではトカゲのおっさんだ。絶対に呼び方は変えてやらん。

 

 暫く、ぼーっと星空と覗き込んで来る巨人の顔を見上げていると、私はふとポケットに入れたままのスマホの存在を思い出した。横になったままでごそごそと取り出して画面を付ける。なんと言う事だ、電源をつけっぱなしにしていたのでもうバッテリーが半分も無い。

 念の為に試したが、ネットも位置情報も機能はしていない。完全な圏外だ。試験の為に幾つかの辞書ツールを入れてはいるが、バッテリーが切れればいずれはこのスマホも無用の長物と化すだろう。

 

「ん? おお、お前さんもPDAを持っておるのか。それもそんなに小型の物を。それはあまり人に見せるなよ、この世界では高級品だぞ」

 

 寝転がりながらスマホを見ていた私に、トカゲのおっさんがやや興奮気味に語り掛けて来た。なんだよ、物珍しいのか? と言うかPDAってなんだ。PADの間違いじゃないのか? タブレットPCとかはそう呼ぶけど。なんとなく気になった私は、詳しく話を聞いてみる事にした。

 なんでも、PDA――携帯型情報端末は遺跡潜りの必需品らしい。データの吸出しやら、機械類の操作にも使える情報ツールをこの世界では共通してそう呼んでいるそうだ。そしてバッテリーが非常に貴重品なので、消耗を押さえるべくデータ管理は紙媒体に書き移して行っているらしい。

 

 話を聞く限り、やはりスマホの充電は難しい様だな。――と、手を伸ばして持って居たスマホが不意に、ひょいっと持ち上げられた。視線で追うと、なんと巨人の指先からなんか更に細い機械のアームが出て来て、私のスマホを掴んでいる。そして、返せと言う間も無く、巨人はそのスマホをぱくっと口の中に入れてしまった。

 

 もぐもぐ、ごっくん。

 

 いや、ごっくんじゃねぇよ! 私のスマホがああああああ!? もうとにかく驚いて跳ね起きた私は、文句を言う為に巨人の顔を睨みつける。そんな私の目の前に再び巨人が指先を近づけて来て、その指先がぱかんと蓋を開けるみたいにして装甲版を開く。

 はたして、その開いた中に充電ケーブルを差された私のスマホが収まっていたのだった。

 

「何とも面妖な……。おい、何か変化が無いか調べてみい」

 

 トカゲのおっさんに促されて、私は恐る恐るスマホを手に取る。画面を付けてみると表示は変わらず、ただバッテリーの残りを示す数値が充電中に切り替わっていた。なんと、この子はスマホの充電も出来てしまえるようだ。

 

「なんとなんと!? ワシのは!? ワシのPDAはバッテリーを回復できんのか!?」

 

 充電ができる事を伝えたら、おっさん大ハッスル。そんなにこの世界ではバッテリーは貴重品なのだろうか、リッュクの中から自分のPDAを取り出して巨人に直接交渉し始めた。トカゲのおっさんのは、本体にキーボードが付いたノートパソコンみたいなのだな。あのおっさんの太い指でキーが押せるのだろうか。

 

 無論、巨人は私の話しか聞かないので交渉は失敗。尻尾を垂れさせて項垂れているのを見かねた私が、充電してやってくれと頼むとスマホから軽快な着信音が響く。再びスマホを覗き込んでみると、見た事の無い様なチャットツールが起動して、そこに一言だけ『いや』と書かれていた。

 え、もしかして返事したの? チャットで? また響く着信音と、書かれた文字は『はい』。やっぱり巨人の返答に間違いは無い様だ。

 凄い、この子スマホ越しに会話できるようにしたんだ。何て言うご都合展開!

 

 その後、どうしてもダメかなって続けてお願いしてみたら、開いた指先のハッチからしぶしぶといった感じで電源ケーブルが飛び出して来た。規格が合うのかなとも思ったが、トカゲのおっさんがイソイソと試してみると無事に装着できた。おっさんは今、焚火の周りで嬉しそうに小躍りしている。本気で嬉しかったんだな、アレ。

 

 いやあ、私の子は本当にすごいな。何て言うか、ビックリ箱みたいに色んな機能がある。もっとこの子の事を色々知って行かなきゃいけないな。

 

 知ると言えば、この子には名前とかは付いてなかったのだろうか。もしかして、名付け親にもなった方が良いのかと一瞬悩んだが、とりあえずせっかく会話できるようになったのだから尋ねてみる事にした。

 そして、チャットに表示される膨大な何か分からないごちゃごちゃした文字の羅列。形式番号? 試作性能検証機? こんな数字とアルファベットの組み合わせがこの子の名前なのか。何だか釈然としないな。

 

 少し憮然としながら文字列を追っていると、最後の方に気になる文字を見つけた。これは英語かな? システムクロノス……ああ、駄目だ辞書が無いと分からん。ああ、でも、これが良いかもしれない。

 今日からお前の名前は、『クロノス』だ! なんたら神話の神様の名前だったっけ。よっ、ご立派ですね!

 

 って、あれ? そう言えば何でこの世界……、日本語が普通に通じて英語まであるんだ……?

 

 

 次回、第六話『乱暴にしないで!』に続く。




いやー、本当に注目されるのは大変ですねぇ。
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