こっちでも感想が貰えるような物語を頑張って書こうと思います!
前回のあらすじ。
野営して微妙な味の携帯食料と干し肉を食べた。スマホの存在を思い出して眺めていたら、巨人にスマホを食べられてしまう。何やかんやあって、スマホが充電できるのが分かり、更には巨人とある程度の意志疎通ができる様になった。トカゲのおっさんはバッテリーが充電できると知って小躍りする。ついでに巨人の名前がクロノスに決定。
だが、今更ながらに日本語が通じている事に気が付いて私は驚愕した。
悩んだ結果。『別に日本語が通じるんだったら、気にしなくても良いんじゃね?』と言う事になった。私は自慢じゃないが頭は良い方じゃない。むしろ知っている言語で会話ができるのなら喜ぶべきだろう。トカゲのおっさんに聞いても役に立たなかったしな。
「昔から使われてきた言語だったから、別段気にした事は無かったな。これがお前さんの世界の言葉だと言うなら、異世界から伝わってきたのがそのまま定着したんじゃないのか?」
そんなご都合主義な考察で良いのか。本当に考古学者なのかこのトカゲは。まったく、いい加減だなぁ。
そんな訳で私達は今、元遺跡の穴傍からキャンプを撤収し、巨人に乗りながらトカゲのおっさんに指示された方向に進んでいた。何でも、この方向に一番近い町があるんだそうだ。そこで食料品や、生活に必要な物を買いに行くらしい。
とにかく次の方針を決めるにしても、今は持っている物が少なすぎる。とりあえず、日差しから身を守る為に帯状の長い布を貰ったので、頭を包んだ後に埃避けとして首にもマフラーみたいに巻いている程度だ。
どうにか他にも色々と揃えたい。乙女には沢山必要な物があるのだよ。あと、お風呂!!
「町に近づいたら、このデカ物は隠しておかんとなぁ」
そう言えばその問題もあったか。こんなデカいのをどう隠せばいいんだ。と、思わず頭を掻きむしりたくなったのだが……、なんとその解決方法は、巨人が自ら示してくれた。巨人の目線で町が見えて来た頃、手ごろな岩場に身を潜めて巨人はまず穴を掘った。両足が膝まで入る位の穴に身を収めると、巨人の両手両足が縮んで頭も胴体に埋まって行く。なんと言うか土偶みたいな形になって、そしてそのまま自身を振動させて地中に潜って行った。今は辛うじて頭が見える程度。これで直ぐには見つからないし、少なくとも巨人には見えないはずだ。
これから巨人にはお留守番をしてもらう事になるのだが、淋しくなって勝手に着いて来るなんて心配はいらない。移動中に偶々発見した事なのだが、昨夜スマホを食べられた後から巨人の視覚とスマホのカメラが連動しているのが発覚したのだ。
スマホをなんとなく弄って居たら、撮影した覚えのない私の顔写真が保存されているのを発見。巨人に何か知っているのか、もしかしてカメラを勝手に使えるのか尋ねれば、例のチャットツールで帰ってきた返事は二度とも短い肯定。なんとスマホを遠隔で操り盗み見をしていたのだ、悪い子め。
ちなみに巨人の見た物をスマホに映し出す事も出来るので、巨人の最大望遠した視覚での映像も色々と楽しめた。動画も静止画も思いのままだ。だから許します。
今回はそれを利用させてもらい、制服の胸ポケットに入れたスマホで、巨人も私達と一緒に町を見て回る事が出来る。これで退屈だからと、その辺を歩き回る事も無いだろう。
さあいよいよ異世界の町を散策だ!! と勢い込んでやって来たは良いものの……。到着した町はなんと言うか、想像していた異世界の物とは違っていた。
立ち並ぶ建物は四角い豆腐建築で、大きさも向きもまちまちで統一性が無い。色も白一辺倒で飾り気が無く、実に実用的と言うべきか殺風景と言うべきか。舗装もされていない荒れ地まんまの地面の上の建物達を、申し訳程度の木製の柵がぐるっと一周囲っているだけ。そして町の近くには、大きく積み上げられたガラクタの山みたいなのがあった。なんでもサルベイジャー達が拾って来たは良いが値が付かなかったからと不法投棄した物なんだそうだ。
ガラクタ塗れのサルベイジャーの屯する補給地点。それが私達の辿り着いた町だった。
木製のログハウス風の建物が立ち並ぶ、中世の田舎町みたいなのを想像していたのだが、私の期待からはかなりかけ離れた様相だ。その事が顔に出ていたのか、トカゲのおっさんには笑われてしまった。
「ご期待に沿えなくて悪いが、この辺りの町はみんなこんな様相だぞ。周囲に建築に使える木材が生えないから、建築材は大抵石か土レンガだな。外壁は陽の光を弾く様に白く塗るのが主流だ。蒸し焼きになりたいなら話は別だが」
うん蓄を語ってくれるのは良いが、ドヤ顔で言って来るのがムカつく。だからお礼はきちんと言っておこう。ありがとう、トカゲのおっさん。
「トカゲじゃないドラゴニュートだ。さて、まずはお前さんの格好を何とかしよう。ワシのくれてやった布切れだけでは心もとないだろう」
ずいぶん気前が良い話だ。あまり貰ってばかりでは気が引けるのだが。欲しい物とか色々あるし……。なんて言ったら、小娘が遠慮をするなと言われてしまった。何でもスポンサーが居るから懐事情は苦しくないらしい。そこまで言うなら、遠慮なんてかなぐり捨てる事にしよう。
まず服装をどうにかしようと服屋に行ったのだが、何とも悲しい事に私の今着ている制服以上に丈夫で長持ちするような服は無いと言われてしまった。流石は三年間の使用に耐える前提の量産品だ。仕方ないので似たデザインのシャツと、肌着類を幾つか揃える程度にしておいた。
次に行ったのは、武器防具屋と言う名前の雑貨店みたいなお店で、荷物を入れる為の背嚢と雨風と砂も防げる外套。それから腰に巻くポケットの沢山付いたツールベルトに、でっかい四角レンズが二つ付いた防塵ゴーグル。先の巻き布も合わせて装備すると、ちょっと着ぶくれた感がある。日差しが強いのにこんなに着込む必要があるのは、直射日光を防いだ方が結果的に涼しくなるからなんだそうだ。
「それから、こっちの刃物と手投げ弾もいくつか持っておけ」
トカゲのおっさんがそう言って、鞘に収まったナイフと取っ手が付いたスチール缶みたいな物を二つ手渡してきた。手投げ弾ってあれか、グレネードって奴か!? んな物騒な物はあんまり持ちたくないんだけど……。
「そいつは閃光発音筒と言ってな、馬鹿デカい音と光で外敵から身を守る為の必需品だ。街中では間違っても安全ピンを外すなよ。もし外しちまったら五秒以内に投げ捨てて、目と耳を塞いで蹲れ」
な、なんか想像してた異世界と違う。剣と魔法の臭いが全くしない、爆薬と硝煙の香りがしてくるようだ。ファンタジーじゃなくてミリタリーじゃないかコレ。
ナイフの鞘には、円筒形をした金属のヤスリみたいのも一緒にくっついていた。何でもナイフの背のギザギザに擦り付けると火花が出るので、火付けの道具として使えるんだそうだ。
試しに目の前で火花出された時は、金属のこすれる音に思わず耳を塞いでしまった。ちょっ、まだ買ってないのにそんな強くやるなよ。やめろよ、やめっ、乱暴にしないで! 店のおじさん凄い顔で睨んでるから!
くそう、絶対面白がってやがるなこのトカゲ。悔しいので自分でも、色々と出来る様にならなくっちゃな。
その後は寝そべる時に使うシートとか、折り畳み式の穴掘りの道具とかもまとめて買って背嚢に詰め込んだ。それなりの重さになったけど、自分の命を支える重さだと言われたら耐えられそうな気がしてきた。後はそのうち慣れて行くだろうとの、先達からの訓示だ。
食料品や水はかさ張るし重たいので明日の出発前に買う事にして、とりあえずは腹ごしらえをしようと言う事になった。そう言えば陽はもう既に中天を過ぎている。遅めの昼食として、そろそろ携帯食料以外の物も食べてみたい。レストランなんて気の利いた物は無いので、ここは定番の酒場に行こうと言う事になった。
それにしても、この街に入ってから常々思っていた事がある。この街の住人はなんと言うか……、トカゲのおっさんみたいのが沢山居るな。
「うん? この街にはドラゴニュートはそんなに居ない筈だが。亜人は確かに多いが、ヒューマンもそれなりに居るだろうに。確かに荒野の町では、体の強い亜人の方が住みやすいがな」
いや、そういう意味じゃなくてな……。首から上がモロ動物って言う亜人が多い気がするんだよな。私が知ってる亜人って、尻尾が生えててケモノ耳とか生えてても基本は人間って言うか。この世界の亜人はケモ度が高くないかな。いや、犬とか猫の人達は可愛かったんだけど、爬虫類系はなかなかインパクトがあって……。
「ふっ、心配するな。亜人から見れば、ヒューマンの顔もそのように見えるのだからな」
そんなもんか。人間だって猿だもんな。あんまりじろじろ見るのはやめておこう。田舎者丸出しでキョロキョロしてたら、因縁吹っかけられたりするものだしね。
なんて話をしていたら、目的の酒場に付いた。
昼過ぎだと言うのに喧噪も人の出入りも無い。ここホントに大丈夫なの? とんでもないゲテモノ料理とか出てこないよね? 冷やした人食いアメーバのヌメヌメ細胞とか。
「なんじゃそりゃ。心配せんでも、ここの飯は他の所よりだいぶマシだぞ」
おい、美味いって言えよ。言ってくださいお願いします。マシって何なのさ!?
そんなこんなで私達は酒場の戸を開けて、日差しから逃げ込む様に薄暗い店内へと入り込む。中はうっとするくらいのお酒の臭いと、濃密な煙が充満していた。
なにこれ、タバコの煙? 分煙しろとは言わないけど、少しは換気しなさいよね。煙たいなぁ。
「……おい、悪いが今この店は貸し切りでな……。飯が食いてえならどこか他所へ行ってくんな……」
私が煙たさに顔を顰めながら口元に巻いた布を下ろしていると、店の中で先に座っていた人達のうちの一人がそう言って来た。客席に座ってるって事はお客さんなのだろうか。店主でもないのに出て行けなんてずいぶんな言い草である。
もしかしてこの店に活気が無かったのは、この人達のせいだろうか。せめてどんな奴らだか顔を見てやろうと、薄暗い店内で目を凝らした。
「聞こえなかったのか? 俺達は今――」
何だか見覚えのある鉄仮面を被った人が、もう一度口を開きかけてその言葉を止めてしまう。
そして、薄暗闇に目が慣れて来て店の全体が見渡せるようになった。そしてその時になって漸くと、店中の席に誰かが座っているのに気が付く。
店内には、世紀末な格好のモヒカン達がひしめいていたのだった。
「お、お前はあの時の嬢ちゃんか!?」
モヒカン達に兄貴と呼ばれていた鉄仮面の人が、私の顔を驚いた眼で見つめている。周りのモヒカン達も色めきだって、がたがたと座っていた椅子から腰を上げていた。
トカゲのおっさんは怪訝そうな顔をして私の顔を見ている。やめてくれ、そんな目で見るなよ。
どうやら私はこの街に来て、したくも無かった再会をする羽目になってしまったようだ。
次回、第七話『もう好きにして!』に続く。
こう言う町の風景とかお買い物シーンとか、割と好きです。
書くのも読むのも。