はい、パクリです!!
前回のあらすじ。
巨人にお留守番してもらいながら、荒野の町に立ち寄りお買い物。制服姿はそのままだけど、いろいろ買いそろえて少しはこの世界っぽい格好になれたと思う。その後お腹を満たす為に酒場を探して入り込む。静まり返った店内では、記憶に新しいモヒカンと鉄仮面が待ち受けていました。
これは、どういう状況だろうか。
「そうかそうか! 生きてたのか、めでてえなぁ!!」
「ヒャッハー!! お祝いだぁ!!」×うじゃうじゃ
つい先ほどまではお通夜もかくやと言った雰囲気だった酒場の中は、今は男どもが酒杯を交わし笑い声を上げる大宴会の様相を顕わにしていた。本当に何なんだこの状況は。
私の顔を確認した鉄仮面は、開口一番宴会の開始を宣言した。襲われるとばかり思っていた私はその時点で面食らってしまい、トカゲのおっさんも怪訝そうな顔で状況を見守るばかり。そして、薄暗かった店内には窓を開け放って陽の光が取り入れられ、なんかでっかいミュージックプレイヤー――ジュークボックスって言うらしい――から音楽が流れ出す。そうして、あれよあれよと言う間に乱痴気騒ぎが始まってしまったのだ。ああうん、もういいよ、もう好きにして!
「はっはっはぁ! どうした、ここは俺らのおごりだぞ。食え食え、どんどん食え! そっちのトカゲの旦那も遠慮すんなよ!」
「ああ、馳走になっておるよ。あと、トカゲじゃないドラゴニュートだ」
あ、それ私以外にも言うんだ……。やっぱりトカゲに見えるよね。
今はカウンター席にトカゲのおっさんと並んで座り、私の隣に移って来た鉄仮面さんのおごりで食事を取っていた。私はお酒を飲めないのでジュースだが、他の二人はジョッキで良く分からないお酒を飲んでいた。お酒もジュースも両方サボテンから作られているらしい。サボテンみたいな物って言ってたから、サボテンで良いんだろう。
食べ物の方は警戒していた印象と違い、堅焼きにした目玉焼きとちょっと固いソーセージにパンが付いてきた。衛生的に良く火を通さないとイケナイらしい。半熟卵などもっての外だ。パンはビックリした事にしょっぱかったので、薬味無しでも普通にオカズが食べられた。逞しい筋肉で小さなフライパンを振るう酒場の店主さん、グッジョブ。
お腹一杯になって満足していると、余裕が出て来て店内の様子が目に入って来た。そして、何故か見慣れたものが店の奥に飾られているのに気が付く。私が投げ捨てた筈の学校の鞄だ。何故か花輪が掛けられて、手前でお線香が焚かれていたが。って言うか線香あるのか。
「ん? ああ、あん時に嬢ちゃんが投げ捨てて行った奴だな。こいつを届ける為に追いかけたのに、嬢ちゃん悲鳴上げながら走って行くからよぉ。おまけに行き先が、あの『時食いの巨神』の遺跡だしよ。慌てて全員で追いかけちまったぜ」
そして最後に、怖がらせちまって悪かったなと謝って来る鉄仮面さん。人は見かけによらないというかなんと言うか。こちらこそ見かけで判断してしまってすみませんでした!
そんな訳で私の手元に鞄が帰って来た。でも、何で花輪と線香が備えてあったのだろうか。
「ああ、言ってなかったが葬式してたんだよ。嬢ちゃんの。俺たちゃてっきり嬢ちゃんが巨神にやられたと思ってたんでな。見捨てて逃げちまったのが後ろ暗くて、せめて弔い位はしてやらにゃあ、ってな?」
なんと言うかまあ本当に、良い人達なんだなぁ……。私が生きていたのが嬉しかったのか鉄仮面さんは、巨神にやられなくてよかったなとバシバシ背中を叩いてきた。
どうも、このサルベイジャー集団の鉄仮面と愉快なモヒカン達は、巨人の事を良く無いモノだと認識しているらしい。この辺りに伝わるお伽噺のせいなのか、『時食いの巨神』は近寄るのも禁忌と思っている様だ。この辺りでは大体共通の認識の様だが、中にはトカゲのおっさんみたいに好んで発掘に行くやつもいるらしい。でも、その誰もが奥の大部屋に鎮座する巨神には、発掘どころか調査も出来なかったのだとか。
殴っても切っても突いても、ヤケクソになって爆破しても、傷どころか汚れすら付かないそれを、まるで時間が止まっている様だと表現したサルベイジャーも居たんだそうだ。確かに不気味な話には違いない。
すいません、私その巨神とやらの母親になってるんですよ。この情報は、この人達には隠しておいた方が良いかもしれないな。そんなに巨人の事を恐れているなら、今町の傍まで来てますとかわざわざ知らせない方が良いだろう。
それに、申し訳ないけどこの人達からうわさが広がるのもやっぱり怖い。ちらりと隣のトカゲのおっさんの顔を盗み見たが、おっさんも自分からは巨人の話はしないようだった。多分似た様な事を思っているのだろう。
「ワシはこの小娘を保護してこの街に連れて来ただけだ。先行きに難儀して居る様なので、暫くは面倒を見ようと思っておる」
「そうか、何だったらこっちでも世話しようかとも思ったが、こんな野郎だらけの所に放り込むよりはそっちの方がマシだろうな。良かったな嬢ちゃん、荒野で行き倒れないなんてお前さんかなり運が良いぜ」
むう、この鉄仮面さん良い人過ぎて嘘ついてるのが辛い。ちなみに巨人が動いた事は特に誰かに知らせる様な事はしていないらしい。どうせ言っても誰も信じないし、あの遺跡から出て来なければ気にしなくても良いだろうって。
ごめんなさい、思いっきり巨人外に出ちゃってるんですよ。あー、変な汗出て来た。トカゲのおっさんは凄い涼しい顔して酒飲んでるし。なんかムカつくな。
そうこうしている間に、私の目の前にデザートのアイスのせパンケーキが置かれた。二段重ねの分厚いパンケーキに、真っ白な半球状のバニラアイスの乗った素敵な小島だ。こんな荒野の異世界で甘い物が食べられるなんて、なんて幸せなんだろうと私はナイフとフォークで小島を切り崩しに掛かった。
そんな時だ。店の外から突然一人のモヒカンが、息せき切って扉を跳ね開けて入って来たのは。彼はそのままの勢いで、カウンターから振り返った鉄仮面さんにあらん限りの声で叫ぶ。
「ヒャッハー! 兄貴てえへんだぁ! 町の外に巨神がぁ!! 巨神の奴が街外れまで迫って来やがったあ!!」
「ああ!? どうした、落ち着いて説明しやがれ! 巨神がまさか遺跡の外に出やがったのかぁ!?」
うん、美味しい。アイスを吸ったふわふわの生地が甘くて幸せ。何も考えたくない。くっそ、せめてアイスだけでも!
大急ぎでアイスを口に詰め込んで、もぐもぐもぐもぐと咀嚼し飲み下す。そして痛む頭を押さえながら、酒場の店主に後で食べに来るから残しといて叫んで店の外に飛び出した。
今このタイミングで巨神だ何だと言うならば、まず間違いなくうちの巨人だろうと私の頭には浮かび上がったのだ。スマホのカメラでこっちの様子は伝わっていたはずなのに、もしかして宴会に参加したくなってしまったんだろうか。
なんにせよ、大騒ぎになる前に言い聞かせて、身を隠させないといけない。胸ポケットからスマホを取り出して、電源ボタンを押して画面を表示させた。そして同時に、スマホの画面に一枚の静止画が拡大されて表示される。どうやらまたスマホを勝手に動かしている様だ。叱ってやろうかと口を開き掛けたが、その画像を見て私の動きは止まってしまう。
そこには、町を外から眺めた風景と共に、スクラップ置き場から起き上がる見た事も無い巨大な人型の何かが映っていた。
巨大な、しかし私の巨人――クロノスとはかけ離れたシルエットの新たな巨人。恐らくこのスマホに映っている映像は、私に見せる為に撮影してくれたものなのだろう。町に来たのが私の巨人ではないと分かって安堵すると、今度はこの人型は何なのかと疑問がわき上がる。
「おい、小娘! ワシを勝手に置いて行くんじゃあない! 一人で出歩いておると連れ攫われちまうぞ! この辺りじゃただでさえ、お前さんぐらいの年の娘が攫われる事が多いと言うのに」
誘拐とか普通にあるのかよこの世界。こわっ!
背後からトカゲのおっさんが追い付いてきたので、とりあえずスマホの静止画を見せる。なんじゃこりゃとかぶつくさ言っていたが、映っている物が私の巨人ではないと気が付くと目を輝かせた。ああ、そう言えばこのおっさんは、巨人とか巨神みたいな昔の遺物が大好物なんだっけ。
「『あー! あー! 聞こえているかな、この町に住むゴミ虫の諸君!! ただいまマイクのテスト中! テストや実験とはなんてすばらしい響きなのだろうか、我輩興奮を隠しきれないでついつい声が大きくなってしまいます。あっあっ、助手君痛い痛い。話を脱線させてごめんなさい、やめてっ、乱暴にしないで! あ、これ前回のだ!』」
とりあえず、どうしようかと相談しようとした所で、町の中に機械越しに出したくぐもった大音声が響き渡った。なんと言うか、反応に困ってしまう様な、凄く世界観の違う騒がしい声であった。
次回、第八話『こんなの初めて!』に続く。
次の話は噂のアイツが世界に初登場!!