【完結】私、巨人の母になりました!   作:ネイムレス

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ここに書く事が思い浮かばなくて小一時間悩む。
そんな奴はきっと私だけでしょう。


第九話『激し過ぎるよこんなの!』

 前回のあらすじ。

 突如現れたカピバラ顔の亜人とブーメラン使いのメイドさん。独特過ぎる言動に戸惑いつつも、理不尽な状況に抗う為に逃走劇を繰り広げた。奴等は人体実験の為に、高校生ぐらいの女の子を集めているらしい。巨神もどきを巨人が倒したのはいいけれど、親切にしてくれた鉄仮面さんに嘘を吐いてたことがばれました。

 

 

 あれー? どうしてこんな事になっているんだろう。

 

「ヒャッハー!! 酒だぁ! 酒を持って来やがれぇ!!」

「宴会の続きだぜぇ! ヒャッハー!!」×凄い沢山

 

 私の周りでは今、鉄仮面と愉快なモヒカン達が再びの酒宴で踊り狂っている。『俺は嘘がでぇきれぇなんだ! そこに座れ!』みたいに、てっきり圧迫面接みたいな感じで責められると思っていたのに。状況の推移が激し過ぎるよこんなの!

 

 あれから事情を説明する為に、私達はあの酒場へと戻って来ていた。途中、家屋の残骸に挟まれて動けなくなっていたトカゲのおっさんを回収し、巨人はまた岩場に隠れに戻ってもらっている。

 中で待っていたモヒカン達はしきりに私達の事を心配してくれて、酒場の店主さんは残して行ったパンケーキを温め直して出してくれた。その優しさにいたたまれなくなって、私は嘘を吐いていた事を謝罪して巨人の事を全て話したのだ。

 罵倒されたり、怒鳴られたりするだろうと思ってビクビクしながら。それでも包み隠さずに、今日までにあった事を全部ぶちまけた。巨人を災厄にしないために育てる事、そして私が違う世界から来たことも。

 

 そうしたら、何故か宴会が始まったのだ。訳が分からないよ。

 

「まあ、嬢ちゃんが無事に帰って来られたんだから、それで良いじゃねぇか」

 

 そんなんで良いのだろうか。本人達が納得してるなら良いんだけど。あれ、おかしいな。このパンケーキちょっとショッパイよ。店主さん、今度はシロップたっぷり掛けてくれたのになぁ。

 

「それじゃあ、特に行く当てもねぇのか。あんなデカいのを抱えてるわりに、ずいぶん行き当たりばったりだな」

「ワシとしては観察と調査が出来れば良いからな。しかし、あのデカいのを連れて動き回るのも難儀ではある。どこぞに良い隠れ場でもあればよいのだがな」

 

 私が鼻を鳴らしながらパンケーキに齧りついていると、私の頭越しにトカゲのおっさんと鉄仮面さんが難しそうな話をしていた。二人とも背が高いからって、ちょっと失礼な状況じゃないですかねぇ。

 ちょっと不貞腐れていたら、二人に同時に頭に手を置かれた。やめろぉ! セクハラで訴えるぞ! 子供扱いされるのが悔しいのに、ちょっとうれしいのが余計に悔しい。

 

 結局その日は夜遅くまで宴会が続いた様だった。私は途中で酒場の二階の部屋で寝る様に言われて追い出されてしまったが、鉄仮面さんとトカゲのおっさんはずっと相談事を続けていたみたいだった。

 二階の個室は安宿らしく家具もベッドだけの質素な物だったが、シーツだけは天日で干されていたのか真っ白でふかふかだ。私は荷物と装備を部屋の隅に投げ捨てて、服を脱ぐのもそこそこに顔からダイブした。

 最後の力を振り絞って、制服の上着とスカートをベッドの上でもぞもぞと脱いだけれど、それをどうにかする前に私は枕から顔を上げられなくなってしまった。

 一人になった私は、それからだいぶ遅くまで声を押し殺しながら泣いた。怖さと不安と怒りと、色々な感情が混ざり合って。でも周りに気が付かれたくも無かったから、必死に声を我慢して泣いたのだ。

 

 次の日の朝、制服が皺になってしまってちょっと後悔した。次からはきっちり畳むかハンガーにかけてから寝よう。

 

 制服に入れっぱなしだったスマホを手に取って、巨人に向けておはようとあいさつをする。巨人は起きていたのか、直ぐにチャットツールでおはようと挨拶を返して来た。うんうん、挨拶は大事だよね。

 身支度を終えて一回に降りて来ると、昨日の騒動が嘘みたいに酒場の中はもぬけの殻で、椅子が全てテーブルの上に逆様に乗せてあった。カウンター席だけが元のままで、そこには皿を洗っている店主さんが居た。挨拶してから話を聞けば、掃除と洗い物を終らせたらこれから就寝するのだそうだ。そして朝から出かけるサルベイジャー目当ての屋台が出ているので、朝食はそこで食べられるとアドバイスも貰った。うん、凄い寡黙な人だけどやっぱりいい人だな。

 

 店の外に出で陽にあたりながらうーんと伸びをしていると、横合いから見知った奴に声を掛けられる。毎度おなじみのトカゲのおっさんだ。両手には、何やら紙に包まれたホットドッグみたいのを持っていた。

 

「トカゲじゃないドラゴニュートだ。ほれ、お前さんの分も買って来てやったぞ」

 

 何時もの台詞と共に、袋の一つを手渡してくれる。トウモロコシの粉で作ったクレープに焼いたソーセージをチリソースと一緒に包んだ物だった。ソースがピリッとしていて、美味しい上に目が覚める。

 

 って言うか、この世界って荒野なのに凄い食べ物がまともだなぁ。この町には畑みたいな物は見えないのに、一体この食料は何処から調達しているのだろうか。

 

「ああ、そりゃトレーダーが運んでくるんだよ。サルベイジャーが遺跡を荒らして遺物を発掘し、見つけた遺物をトレーダーが買い上げる。それから他所の町に売りに行って、その帰り道に食べ物を買い付けて来る。そんな風に、持ちつ持たれつやっておるのだ」

 

 ふーん。遺物ってそんなに沢山見つかるもんなのか? 巨人が居た遺跡は取り尽くされたって感じだったけど、何時かは他の遺跡も取り尽しちまうんじゃないか?

 

「そうなったらそうなったで、他の商いが生まれて行くものさ。少なくとも、今日明日で全ての遺物が取り尽くされるわけではあるまいて」

 

 刹那的な世界なんだな。まあ、私が心配しても仕方ないか。金山とかも取り尽しちまったらそれまでだしな。無いなら他の物を探すのは普通の事だよな。

 

 他の物か……。私は巨人と出会わなかったら、一体何をしていたんだろうな。

 

 その後は、トカゲのおっさんと二人で宿を引き上げて、後回しにしていた食料品と水の買い付けに行った。日持ちする携帯食料や干し肉、干し野菜や豆の缶詰とかも色々と。水はどうするのかと思ったら、デカいドラム缶で購入してトカゲのおっさんが背負う。改めて亜人って、私と体のつくりが違うんだと見せ付けられてしまった。

 

 背嚢と鞄まで持つとかなりの重量だが、まったく歩けないわけではない。巨人の所まで行けば乗って移動できるので、それまでの距離の辛抱だろう。この町に来る時は結構歩いたが、今回は開き直って町の近くまで来てもらうのでそれまでの辛抱である。

 

「おう、俺達は先に出るぜ。嬢ちゃんもトカゲの旦那も達者でな!」

「ヒャッハー!! お元気でぇ!!」×凄いいっぱい

 

 町から出る際には、鉄仮面と愉快なモヒカン達が仕事場への出発ついでに見送りに来てくれた。鉄仮面さんはあの時の大型二輪車で、モヒカン達はホロ付きのトラックを数台に乗り込んで出発していく。最近見つかった実入りの良い遺跡に、全員で遠征しに行くのだそうだ。

 

 それから私達も町を出て、荷物の重さにぜーぜー言いながら巨人の元に向かった。町から十分離れた所でスマホで巨人に迎えに来てもらい、何時もの様に肩の上に乗せてもらう。トカゲのおっさんは掌に載せて貰って、一緒に乗せたドラム缶や荷物類が落ちない様に見張るそうだ。巨人用の背負い袋とかがあれば、この子も楽になるのになぁ。

 

 そうして、巨人がトカゲのおっさんの指示した方向に向けて歩みを進めて行く。正確には、おっさんの話を聞いた私が巨人に頼むのだが。この子は絶対に、その辺りの融通を利かせてはくれなかった。

 

 昨日は結局よしよししてあげられなかったから、私は肩に乗ったままで巨人の角に捕まって立ち上がる。そうして、手を伸ばして巨人の頬に触れて撫で撫でして上げた。昨日は偉かったね、助けてくれてありがとうね、って。

 すると、巨人の歩みが少しだけ早くなった。急な速度の変化に、掌の上でトカゲのおっさんがよろけて大慌てだ。

 やっぱりこの子はただの機械の塊じゃない。意志があって、そして私の行動に反応を示してくれる。なら、絶対に世界を破壊するような災厄になんてさせられない。

 

 その為にも私も強くなろう。少なくとも、泣き虫は卒業しなくちゃいけないかもしれない。そんな事を考えながら、私は荒野の果てを見つめるのだった。

 

 

 次回、第十話『そんなに入らない!』に続く。

 




涙が出ちゃう、女の子だもん。
多分女の子……。うん、言動が怪しいけど女の子の筈。
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