皆様どうお過ごしでしょうか
自分は引き続き頭痛と目の奥の重みに苦しんでます
いつの頃からだろうか。とうに朽ち果て、栄華も未来も失われたこの世界で、それを受け入れない者達が施す、ハリボテ同然の無意味に等しい延命を
そんな消極的な生き方を変えたのは、偶々見つけた古いゲームの
『好きに生き、理不尽に死ぬ。それが私だ』
それを聞いた途端、自分は大河に流れる落ち葉から、その流れに刃向かって泳ぐ魚になった。この世界で『生きる者』も『生かされる者』も、どうせ最期は『理不尽に死ぬ』。ならば自分も、『彼』のように『好きに生き』てやろうじゃないかと発起し、その過程で糧となる財を得るために多くの罪を成し、『死にたくない』と喚く数多の人間を『理不尽に』殺してきた。
そうして破滅を待って過ごすある日、『彼女』との出会いでまた人生が一変する。
『確かに人類は金の奴隷と成り果て、狭い
『彼女』が提示した金額は、それまで自分が『好きに生き』て稼いできた額など、たやすく埋もれてしまう程に圧倒的だった。そして差し出す条件は、「共にあるDMMO-RPG――『ユグドラシル』をプレイし続け、その終焉と共に心中すること」。『彼女』に縛られる程度を『理不尽』と感じなくなってしまったのは、果たしてその程度をそう感じないほど『理不尽』に生きてきたからか、あるいはそこまで麻痺してしまったのか。それは最早、自分でさえも分からない。
『タワー』最上層にして、原則メンバー以外立ち入り禁止の『
「まさか客寄せ感覚で
「だから『自然領域』で『レクシィ』か『インドミナス』、『イビルジョー』には遇わせとくべきだったんですよ。配分弄ってムシ達とばっか遭遇しやすくしたのは失敗だ・・・」
「まあ、どうせ1番割を食らわない貴女には関係ないことでしょ?この分だと次の妖魔、超人軍団も、原作の『メタルエンパイア』よろしく大した見せ場もなく親玉やられて退場しそうだけど」
対角線上の席――空白を含め数は幾つか多いが、先に立った者の席を時計の『6』とすれば『12』に位置し、周囲に蛇のようにも見える触手を無数に這わせる、一際巨体の存在が声をかけると、斜め左にいる右肩にキャノン砲らしき長物を備えた仲間が、触手の巨体が下した采配を「なめ過ぎた行為だった」と
「確かに
「そこは理解してるけど……ねえ、やっぱり譲れなかったのは、この中で最初に『姫』と会ったからなの?」
便乗したメンバーの隣に座る仲間が、その配備を疑問視する声が上がる。本来なら指摘通り『自然領域』の次に相手する予定だったのは、『魔法の存在しないダークファンタジー』な作品がベースの『妖魔領域』で、領域の名にもなった『妖魔』と呼ばれるモンスターを中心とした妖怪や悪魔の軍団と、そこに間借りすることになった異形の
『それもあるっちゃあるんですが、やっぱり真っ先に登場して、かっこよく決めたいのも強いですね。仮にもストーリーでラスボス務めた身ですし、ある意味
「おいおい、俺の領域はハズレ扱いかよ……」
「いくら『ゆで理論』がぶっ飛び過ぎて万能だからって、ただのかつて存在した世界の名所巡りじゃ面白くなさそうなんて考えて一括させちゃもらいましたけど、『お嬢』の信頼厚いからってそりゃないですよ、『黒』さん」
地声ではなく、ボイスパッチで機械じみた
「あなたの活躍、期待してるわ。せいぜい
『フッ、了解した。「薔薇園の姫」』
直後『黒い鳥』が
「さあ、見せてもらいましょう。『アインズ・ウール・ゴウン』の猛者達。私達の望んているような余興に相応しい人物かどうか……あなた達の強さを確かめさせてもらうわ」
『まだよ、私はまだ戦える!!』
EXUSIA撃破後に休息をはさみ、誘導ラインに沿って移動した『アインズ・ウール・ゴウン』の攻略組面々が辿り着いたのは、水が干上がり、無数の大型船が放棄された港跡。再ログインからのボーナスで全快し、さらなるボーナスボスとして現れた、赤く発光する大きな単眼の側面から2本の脚が生えた不気味な機械軍団――『To-605』シリーズを相手に1戦したものの、事前に警戒していたために、然程消耗なく武装の異なる3体を片付けると、総員が回復されると同時に、『
あまりの厚遇ぶりに気味悪ささえ感じてきたが、ここで撤退したことを虚仮にされるだけでなく、それのせいで1500人大侵攻を退けたことを始め、過去の栄光に傷をつけるような真似はできないと奮起し、進んだ先の巨大な要塞らしき施設の外壁で待ち構えていた相手――左肩にハートを
『ここが!この戦場が!!私の魂の場所よ!!!』
「(『この戦場が魂の場所』……か。だとしたら俺の魂の場所は、それこそあのクソッタレな
限界を無視してなお挑み来る相手――マグノリア・カーチスの放った一言を聞き、モモンガはやられないよう注意しつつも、思わずその叫びに共感していた。幼くして両親を失い、小卒の身で世に出てから大分経ったものの、そうした経歴自体は貧困層の住人には珍しくないし、似たような境遇のウルベルトに至っては、「遺体の回収すら困難」と言われるほど劣悪な仕事場で両親を揃って亡くし、実際遺骨さえも返ってこず、見舞金も極僅かだったのだから、彼に比べれば、死に目に会えた分まだマシだったのだろう。そうした下手をすれば生きることすら苦痛となりかねないような
対して『ユグドラシル』において、彼等と共に成してきた栄光は輝かしく、その舞台が間もなく失われることは未練がましく、できるなら今からでも同志を集めて覆してやりたくさえある。
その一方残った仲間と共に、自身を含めても僅か5人で7倍近い主なき空席を眺めることは苦痛であったのも事実だが、こうして半分以上の仲間が帰ってきたことに「今更のこのこ帰ってきたところで」と恨むどころか、「わざわざ自分のために動いてくれた、仲間からの最後のサプライズ」と歓喜してしまった辺り、「何と自分は単純か」と呆れ、同時に「やはり自分はこの
「たっちさん!合わせて!」
「今度こそこれで!」
マグノリアが狙いを定め、残った右腕に構えたレーザーライフルをチャージしながら接近したのは、後方で控えていた
『好きなように生きて、好きなように死ぬ。誰のためでもなく。それが、俺らのやり方だったな』
『ありがとう、ファットマン……あなたは、優しいわね…私は、選ばれなかった。でも……さよなら、これで、よかったのよ……』
限界を迎えたマグノリアの機体が沈黙、崩壊するとともに、割り込むようにして『
『ちょっと虎の威を借るつもりで名指ししたら、まさか当人達がここまで攻め込んできたのは正直予想外だったわ。今この段階で、乗り込んできた1200人中、400人近くが攻略から
そうして『
「いやー長かったもんだぜ。あんまりにも出番なかったもんだから、ちょいちょい道中で発散してやろうかと何度思ったことか……」
「ウルベルトさん、さっきの挑発もあって結構鬱憤溜まってきた感じ?でもやっとここまできた、って感じがするわねー」
「権利を買い取るなんて、おそらく噂通りアーコロジーの支配層か、或いは極めて近い立場の者なんだろうなぁ。しかし、攻略が半分も進んでいないのに3分の1が脱落するとは、そこまでして最後を飾るイベントをやりたかっただけあって、彼らはちょっと凝り過ぎたみたいだね」
「だとしたら連中がこんな真似したのも、それこそ
対
「まぁ何はともあれ、1人だけではあるもののやっと
「え?あ、まさかここで俺に振りますか。と……、そうですね。武人建御雷さんが弐式炎雷さんとグランディス・ブラックさんと共に呼び掛けてくれたおかげで、ここまで集まったメンバーで進めてこれましたけど、下手したらもっと少人数で相手しなきゃならなかったどころか、そもそも挑むこともできなかったでしょうから、そこは感謝してますよ。では、行きましょうか!」
直後話を振られるとは思わず、思わず何か言わねばと焦りながらも即座にモモンガが激励を放ち、各員がそれぞれに時の声を挙げて進む。
向かった先はマグノリアが守っていた要塞の深部ではなく、そこから比較的離れた広い砂漠地帯。遠方に目立つ複数の甲板らしきプレート状の装飾が残る、巨大な要塞らしき残骸を『アインズ・ウール・ゴウン』の面々が眺めていると、EXUSIAなどを相手していた時までと一転して、不気味な程に雲1つなく晴れ渡る空に、突如空気を切り裂くジェット音が響き渡る。
『J、調子はどう?』
『良好だ』
直後『
「あれが
「どうやらまた
「巌流島で宮本武蔵が遅刻したみたいな感じか、それもありそうだね。ひとまず始まるまで余裕がありそうだから、今のうちに
「あ、じゃあお願いしますね朱雀さん」
登場演出を素直に評するタブラの後方では、先の会話から、おそらく戦闘準備前にもうしばらく『
『NPCの戦闘データを統合し、作り上げたオペレーション。無数の修羅場を渡り歩いたあなたの
『貴様が欲するのは、
そうして戦闘準備を進める中、面倒になってきたのか「……なぁ、あれ撃ち落としてクリアとかできるんじゃね?」と言い出したペロロンチーノの冗談に、モモンガが「いや、ここは素直に聞いててあげましょうよ」と宥める様を無視し、予想通り2人のやり取りが続く。
やがてジェットエンジンがパージされ、機体が前後に分離すると、そこから何かが落下する。未だ続く会話から察するに、それこそが本体たる
『その恩恵をもらえなかったがために、凶行に走っていたと?』
『腐敗したぬるま湯を詰め込んだが如き、あの狭くおぞましい世界の中に、我々の生きる場は存在しない。好きに生き、理不尽に死ぬ。それが私だ、地位や後ろ盾の有無ではない。戦いはいい、我等にはそれが必要なんだ……』
『
「ようやっと開始か、ってもそっちが長話してる間に、こっちはもう準備万端なんだよ……『
迫り来る相手に向け、真っ先に攻撃を仕掛けたのは、これまで温存されてきた『アインズ・ウール・ゴウン』の最終兵器こと、ウルベルト。『ワールド・ディザスター』は対
「やはり何かしら対策済みでしたか。しかも散布してるあれ、ペロロンさんのと違って、ダメージ付与効果も有してるみたいですよ」
ペロロンチーノも外見上は似たような、金色の粒子を放出する課金エフェクトをアバターに取り入れていたが、ぷにっと萌えが所有スキルで見破ったように、相手から放出される『コジマ粒子』は、自身へのダメージ遮断だけでなく、周囲への妨害や牽制にも使える、攻防自在の装備となっている。
「となると有効打を当てるには、まずあれを剥がす必要があるか。試しに殴ってみたら、どうにかならないかな?」
「久々にそれ聞きましたが、変わってない様で何となく安心しますわ。ただそれだったらやまいこさんは
かつても攻略が難航すると、やまいこは「取り敢えず殴ってみよう」と語っていた。とはいえ、
実際彼がダメージ覚悟で球状のシールド――プライマルアーマーに飛び込み、風切り音と共に突き出したレイピアが右の肘に刺さると、『N-WGIX/v』は動きを止める。しかし直後プライマルアーマーを形成する『コジマ粒子』の濃度が段々と上昇していき、見る間に変化する色を警戒して紅白鰐合戦が一気に距離を取ると同時に爆発、霧散する。同時に周囲は高濃度の『コジマ粒子』に汚染され、一時的なダメージ
「なるほど、
「よっしゃー!フルボッコじゃー!」
「『アインズ・ウール・ゴウン』の名を勝手に使ったこと思い知れー!」
「恨みはないどころか、最後にこうした粋な
「ここまで大規模なワンサイドだとついつい躊躇しちゃいそうになるけど、それで手ぇ抜いたって思われるのも心外だしなぁ……」
確認と共に紅白鰐合戦が再度切りかかると、それに便乗するかの如く、弐式炎雷、武人建御雷、獣王メコン川等近接系アタッカー達が雪崩込む様に『N-WGIX/v』へと襲い掛かり、タブラやモモンガ、ウィッシュⅢ等後方支援担当のメンバーも、遠方から集中攻撃を仕掛けていく。やがてしばらくすると、再度プライマルアーマーを生成、浮遊した『N-WGIX/v』が動き出し、両手に備えたショートライフルをランダムに狙いを変えながら発砲しつつ、不規則に移動を繰り返す。
「うおっとぉ!?こりゃあやっかいだなぁ、狙いが不特定多数じゃ茶釜さんも防げないだろうに」
「種族のせいで取り回しも大分前と違うから、結構キツイよぉ!だから前衛の人達は悪いけど、自力で何とかしてね!」
より高い素の
「どっひょいやぁ!」
何度目かの攻撃で、シャドウ・ウィドゥが手首から放出する粘着糸を『N-WGIX/v』の機体に付着させ、それをメジャーや掃除機のコードを巻き取るかのように回収することで急接近し、勢いのまま体当たりを放つ。そして放出の体勢になると、今度はその射程外にいた武人建御雷の鎧に放ち、同様に回収して離脱する。
「建御雷さん受け止めてぇ!!」
「悪いが余裕ない!このチャンスを逃すわけにはいかないんでね!」
「うっそおおおおお!」
そのまま抱き留めてもらいたかったのだろうが、願われた武人建御雷の方も動きを止める『N-WGIX/v』へと駆け出してしまい、結果シャドウ・ウィドゥはすれ違った途端、切り離すタイミングを失い、引きずられながら戻る羽目になった。
(((((アっ、アホだ……アホがおる……)))))
まさかの緊迫の場で見せた
『嘘、こんなことが……なぁんて、言うと思った?これくらい、想定の範囲内よ』
『ジェネレータ出力再上昇。オペレーション、パターン2。見せてみろ、貴様等の力を……』
『
「おぉ!?あの野郎『
「さっきみたく濃度は高くない感じですから、後方系の人は先程より距離を取って援護射撃を!近接系は引き続き
接近を封じるかの如くダメージフィールドを生成してきた『N-WGIX/v』に対し、悪態を吐く弐式炎雷に続き、ぷにっと萌えがとっさに指示を出す。しかし『N-WGIX/v』のパターン変更はこればかりではなく、時折手にした武器をショートライフルからレーザーブレードに持ち替え、急接近から薙ぎ払ってくるかと思いきやライフルでの乱れ撃ちを放ったり、逆に遠方からライフルを構えた先の敵にレーザーでの刺突を放ったりと、よりタイミングの把握が複雑な機動を繰り返す。
「この野郎、好き勝手動き回りやがって……!」
「コイツある意味弐式炎雷さん以上の
小刻みかつ自在に動き回り、暴れるように手当たり次第攻撃を放つ『N-WGIX/v』に対し、武人建御雷が『五大明王コンボ』を発動させようにも、その動きを予測しなくては、到底当てられるような状況ではない。しかもグランディス・ブラックへと急接近したと思いきや、目の前で
「まさかサービス最終日でこんな逸材に会うとは……装備やビルド次第では、『ワールドチャンピオン』に君臨できたかもしれませんよコイツ」
「そこまでの才能持ちだったんですか!?だとしたら何で今まで無名だったんだか……」
かつて『ワールドチャンピオン』の
とは言えそのたっち・みーを始め、やはり数だけでなく個々が猛者にして、なおかつ各員の連携にも優れた『アインズ・ウール・ゴウン』をたった1人で相手し続けるのは難しかった様で、段々と動きにキレがなくなっていき、機体の各所からは、煙や火花も上がっているのが見える。
「もうそろそろ限界のようだな。ここまでくればコイツで終わるはず!『
最後に決めたのは、元より消耗の少なさに加え、死獣天朱雀からの
『……認めたくないものね、「
倒された『N-WGIX/v』の代わりとばかりに、『
『本当はもっとまとめて呼び寄せて、さっきまでみたいなランダムレイド式で再度選別するつもりだったけど、もういいわ。この先からは、特別に私達が直々に相手してあげる。まぁ、配下のNPCを引き連れてくるのはいるみたいだけど。引き続き活躍を期待しているわ。かつて「
『
「権利と義務ね……勝手なこと言ってくれるよ。まあ、せっかくここまで来て、『
「そりゃあ元々ネタに名前使われたことにこっちがマジになっただけっても、こうして活躍して、折角名指しされたんですし、ここは進んでいくのが礼儀ってもんでしょうに」
身勝手極まりない相手方の宣告に、理不尽と
「諸君!恐れ多くも我等『アインズ・ウール・ゴウン』の名を宣伝に使った、愚か者の1人を仕留めることに成功した!これより先は奴等も本格的な手を打ってくるだろう。しかし私は信じている。必ずや『
「「「「「おぉ~~~!!」」」」」
「では向かわん!いざ次の
号令へのときの声に満足しつつ、足を進めるモモンガを先頭に、
それに呼応するかの如く、上空に現れた召喚魔法陣から、ゆっくりと地上に降ろされ、着地と同時に
『
ログアウトを強要するかのようなこの仕様に耐えられたプレイヤーはごく僅かで、後の世に悪い意味で『
後半戦のイメージBGMはMechanized Memoriesで
意外と苦労したのがどうやって倒させるかや、戦闘中の『アインズ・ウール・ゴウン』の面々のやり取りでした
おかげでだいぶ長引くとともに難航で時間かかりましたが、一応月内に何とか次に進ませることができました