至高の夢は終わらない   作:ゲオザーグ

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()やべぇ出したいキャラが増え過ぎてドンドン収集着かなくなってきた


大帝の庭

 末席とは言えギルドランク1桁台に位置したことのある『アインズ・ウール・ゴウン』でさえも、『古世界からの使者達』が始まるまでに活動的(アクティブ)メンバーが8分の1になってしまったように、『ユグドラシル』最盛期は無数にあった集団(クラン)やギルドも、人気の衰退やプレイヤーの引退に伴い、――ギルド長やその権限を引き継いだ代理が解散を宣言したり、活動的(アクティブ)メンバーがいなくなった拠点(ギルドホーム)が貯蓄切れで消滅など、経緯こそ異なれど――大半が姿を消していた。そうした中、残されたあぶれ者達が古傷の舐め合いとばかりに集結し、新たに寄せ集めの集団(クラン)やギルドを立ち上げる流れも、後先短さを感じさせる『ユグドラシル』では珍しい光景ではなかった。

 

 

 

 

 

 

「ぬおぉぉわああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 『傭兵領域』にて、残るプレイヤーを足止め――またはそのまま殲滅すべく、スピリット・オブ・マザーウィルの放つ無数のミサイルと破滅の魔獣(デスザウラー)の放出する分散荷電粒子砲が各地を蹂躙する中、沿岸区でそれに巻き込まれる1人のプレイヤー。

 機械(ロボット)系キャラの外装(スキン)や種族を取得したプレイヤー達が集まってできたギルド『ロボット三原則撤廃活動会』リーダーで、自身も青い脚とトラックの前面(フロント)を模した胸部を始め、赤い上半身にマスクが特徴のキャラ外装(スキン)をまとったプレイヤー、『ファイヤーパターン』は、何とか死亡こそ免れたものの、ダメージが大き過ぎて身動きできずにいた。

 

「うぅ……さっきから急に攻撃が激しくなったが、一体何があったんだ……?」

 

「おぉーい!大丈夫かーー!」

 

 そこに駆け付けたのは、奇遇にもこの惨劇の主犯の片割れたる破滅の魔獣(デスザウラー)のキャラ外装(スキン)に身を包んだ仲間(ギルメン)『ヘル・バーナー』。他にも長い顎鬚を持ち、先が長い帽子を被った老人の『高性能じいちゃん』、手にした散弾銃(ショットガン)を始め、ジャケットのあちこちに仕込んだ拳銃や背負った突撃銃(アサルトライフル)で武装した『殺戮者(スロウサー)』、黒いゴシック衣装を身に纏い、同じく黒い包帯で目を隠した『B52』に、シルクハットと一体化したような頭を始め、各所から蒸気を噴き上げる巨躯の『チェルノ・アルファ』と、様々な仲間(メンバー)達が集まる。

 

「皆無事……とは言えんだろうが、何とか集まれたか。ひとまず攻撃が止むまで「「「「「「「「ギャアアアアアァァァァァァァ!!!!」」」」」」」」

 

 何とか戦況を立て直そうと作戦会議を始めようとするも、それすら許さんとばかりに始めた矢先攻撃が始まり、一纏まりになっていたのが災いし、見事壊滅。已む無く復活(リスポーン)を待つことになった。

 

 

 

 

 

 

 また別の廃墟区域では、『自然領域』で多くのプレイヤーが晒す羽目となった『スケキヨ』状態で1人のプレイヤーが頭から瓦礫に刺さっていた。その際気絶(スタン)状態にかかり身動き取れずにいたようだが、しばらくすると解除されたようで、ゴソゴソと体を動かし、何とか地に足を付けると同時に抜け出そうとした――ところに追撃が入ったものの、埋まっていた場所からさほど遠くない地点で復活(リスポーン)する。

 

「うぅ~む、皆で記念にと挑んだはいいが、これうちとは相性悪過ぎたな……元々集った前提(コンセプト)からして近接前衛特化仕様になったとはしょうがないんだが……」

 

 周囲の敵は全域(マップ)攻撃が始まってから、出番を終えたとばかりに姿を消したこともあって、開き直ってその場に胡坐(あぐら)をかき、左手に持っていた片手戦斧(トマホーク)とつながった鋼球鎖(フレイル)の鎖から離した右手顎に当て考え込んでいるのは、特定作品のキャラ外装(スキン)装着者で結成した集団(クラン)、『柱合会議(ちゅうごうかいぎ)』を中心に他作品のキャラ外装(スキン)装着者を始め、刃物系武器を主体に戦う――中には弓矢など非火器系の飛び道具や、彼の持つ鋼球鎖(フレイル)のように、「刃物」とは呼ばないような武器を使う者も多くいるが――プレイヤー達が同好会的なノリで集まってできたギルド『刀刃会(ブレイズ)』のリーダーで、黒い詰襟の上にすでに廃れた宗教の一節が染め抜かれた羽織を着た『百鬼裂滅(ひゃっきれつめつ)』。前身となった『柱合会議(ちゅうごうかいぎ)』の頃からリーダーを務めてきたが、元々皆が皆思い思いに趣味嗜好を優先した構想(ビルド)で、今回の様な対プレイヤー戦――それも相手の拠点(ギルドホーム)に攻め込むような形を考慮していないギルドだったために、当初は難色を示していたものの、「折角誘われたのだから」と宣戦布告に乗った仲間達に押し切られ、こうして参加する羽目になった。

 結果序盤は、居合わせた他のプレイヤーとの場当たり的な連携と人海戦術で、階層守護者(フロアボス)遊撃守護者(エンカウントボス)級NPC達の撃破に貢献したものの、『傭兵領域(ここ)』に来てからは階層守護者(フロアボス)担当の捜索で分断され、予想通り遠方からの攻撃で大分不利を強いられる有様。極め付けは追い打ちとばかりに先程からの大規模攻撃で、最早合流どころか移動すらままならない状態とあって、いっそここに来るまで脱落した他のプレイヤー達の様にリタイアしてしまおうかとも思うが、流石に無言で勝手に去るのはギルドリーダー以前に社会人としてどうかとの考えが、辛うじてこの電脳世界に留める。

 

「せめて誰かと連絡するくらいの余裕はほしいと……あぁまたか」

 

 そして思考中に何度目か数えるのも億劫な死亡通知(キルログ)復活(リスポーン)待機画面に視界が切り替わったのに気づき、「せめて現状か何か連絡してくれ」と『暁の君臨者(主催者)』に愚痴りながら、とりあえずトイレがてら席を立つついでに、何か摘まもうと一時的にログアウトする。

 

 

 

 

 

 こうした『アインズ・ウール・ゴウン』以外のプレイヤーの現状も当然『暁の君臨者(エオ・ラグナンテス・クリプター)』側は認識しており、招き入れた『剣戟乱舞』の面々共々、仲間の奮闘の傍ら、円卓中央の3Dディスプレイに映し出される彼等の姿にちょくちょく目を向けていたが、そうした中、ガルバトロンが唐突に――表情に変化のないアバターからでもわかる――喜気を滲ませ、それに隣の戦艦棲姫が気付く。

 

「お父ちゃんどうかした?」

 

「あぁ、『傭兵領域()』に取り残されていた連中を見ていたが、思いもしなかった奴がいてな」

 

 答えながらガルバトロンが指さす先には、爆発に巻き込まれるファイヤーパターンの姿。彼のキャラ外装(スキン)は、シリーズこそ異なれど、自身の――アバターの元となったキャラの――宿敵とも呼べる人物『コンボイ』のもの。どんな意図で使っていてここに来たかは不明だが、折角の発見を偶然で流すにはもったいないと感じ、それを無碍にすまいとばかりにビオランテに身を乗り出し詰め寄る。

 

「なぁ折角だ、コイツ等も俺の階層(ところ)に呼んでくれ。どうせ『アインズ・ウール・ゴウン(アイツ等)』だけじゃこの先頭数が足りなくなるだろうし、余計攻略が遅れるぞ」

 

「……そうね。少なくともこれまでの活躍を見る限りだと、数や外装(スキン)の効果に頼り切りな連中はいないみたいだし、こっちの嫌がらせに耐えた根性を讃えて、ってことで特別に合流させましょうか。尤も飛ばした先でもめ事起こしても知らないわよ?」

 

 即座に操作画面(コンソール)から通知(ログ)を見直し、現存プレイヤー達の能力値(ステータス)から装備、活動履歴を確認し、彼の指摘通り『アインズ・ウール・ゴウン』ではこの先荷が重くなるが、かと言って残る面々に手を抜かせる気もないことから、すでに相手をして負けたN-WGIX/vや、今現在彼等と対峙しているイースレイ、ザ・マンに申し訳ないと思いつつも、根負けする形要望を受け入れる。

 

 

 

 

 

 

「ん?何だここ?」

 

 イースレイを倒し、転移門(ゲート)をくぐった『アインズ・ウール・ゴウン』の面々が着いた先は、無人の大型バス内。しかも外を見るに、高架橋(ハイウェイ)を走行中のようだ。

 

「車の中?にしては大分広いような……」

 

 見渡すシャドウ・ウィドゥの言う通り、現実(リアル)よりも明らかに大柄な体躯の異形種が複数いるにも関わらず、車内は充分にすれ違える程移動がスムーズに行えそうな広さをしている。おそらく大柄なアバターでも、狭いところを通れるようになるなどの機能を持っていた空間調整が働いているのだろう。そんな車内を次は一体何がくるのかとしばらく眺めていたところに、何やらガチャガチャと金属が擦れ、ぶつかる音がする。

 

「何か変な音がドワァ!?

 

 その音と新たな刺客(NPC)の気配を察知した弐式炎雷が指摘する前に、バスの後方が何かに薙ぎ払われるように消し飛ぶ。代わりに姿を見せたのは、鉤爪の付いた長い腕に、車のフロントガラスを思わせる肩、背中からは指先よりも巨大な爪が覗く巨大なロボットが、唸り声を上げながら、細い脚先に付いたかかとの車輪でローラースケートよろしく追いかけてくる。

 

「何だありゃ!?自動人形(オートマトン)か!?」

 

 驚きの余り声を荒げるウルベルトだが、直後ロボットは体をかがめたと思いきや、一気に跳躍してバスの前へと躍り出ると同時に、背中から伸ばした爪が先端に付いたアームと腕で前方も破壊する。

 

「ドワタタタ……皆さん大丈夫ですかぁ!?」

 

「何とか……!しかし『ボーンクラッシャー』、レベル150、ね……プレイヤーじゃないみたいだけど、とにかくコイツ倒さなきゃ進まないみたいですよ!」

 

 車輪を失い、通気のいい箱と化した車体は、地面との接触で火花を巻き上げながらクルクルと回転し、時折他の車とぶつかって弾む。その過程で何人かは吹き飛ばされたものの、うまいこと常時発動技能(パッシブスキル)の『自動浮遊(ナチュラルフライ)』で路面に投げ出されずに済んだペロロンチーノが、路面に伏せている面々に声をかけると、真っ先に返答したのはぷにっと萌え。しかも偶然ではあったものの、正面から顔を拝んだ僅かな間に、――名前とレベルだけだが――相手の情報を入手している。

 

「さっきの様子からして、おそらく当たればダメージや吹き飛ばし(ノックバック)効果のあるヤクモノ系仕掛け(ギミック)だと思うが、この付近は車が多い。なるべく少ないところに誘導して……何だ?」

 

 得意の支援(バフ)も満足にかけられないとあって、このまま路上で戦うのは不安要素が多いと、移動を提案する死獣天朱雀だが、いつものスピードが嘘のように足を止め、上空を見上げる弐式炎雷の姿を見て、同様に上を向く。

 

「「「「「「「「「「ぬぅおおわぁぁぁああああああぁぁぁあああああああぁぁぁあああああぁぁあああああああああああ!!!!!!」」」」」」」」」」

 

 直後絶叫と共に落下し、路面に上がる土煙から積み重なって姿を見せたのは、『傭兵領域』に取り残されていた、数百人ものプレイヤー達。当初の人数からすれば3~4割程度とだいぶ減ったが、それでも戦力としては頼りにできそうだ。

 

「ちょっ!?誰だ顔面騎乗してんの!?はよ降りろ垢BANされる!」

 

「無茶言わないでよ!上に何人乗ってっと思ってんの!?」

 

「それはこっちも同じなんだがね!多分もっと多いと思うぞ!」

 

 

 

 

 

 

 ――尤も崩れた人間ピラミッドからの復帰には、もうしばらくかかりそうだが。




()金曜ロードショーで放送されてるの見ながら(劇場で見れなかったんで今回が初)仕上げてましたが、ちょくちょく『レディ・プレイヤー1』意識してこの作品仕上げてます

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