RPGでレベルが低い内は先に進まない。
一度某大作RPGでとにかく「先に進もう」ととにかくストーリーを進行させた。
そして敵のアジトに飛空挺で突っ込んだ。
飛空挺は不時着し、敵のアジトをクリアしないと先には進めないし元の場所には戻れない。
敵のアジトは経験値はほとんど入って来なかった。
そしてその敵のアジトのボスは、その時の俺のレベルでは倒せなかった。
ボスに会う前に俺がしたセーブを俗に『詰みセーブ』と言うらしい。
『詰みセーブ』とは「そこでセーブを行うとにっちもさっちも行かなくなるセーブの事」でそれまでのプレイデータは捨てて改めてゲームを始めないと打開策はない状態の事を言う。
それ以来俺はRPGをプレイする時、状況が詰まないように充分レベルを上げるようになった。
友人は「『石橋を叩いて渡る』どころか、叩きすぎて石橋割るんじゃねーか?」と言ったが、状況が詰んで一からやり直しの悲しさを知らないからそんな事がいえるんだ。
「あなたは異世界に転生します」
「VRMMOの世界に?」
「VRMMO?あぁ、違います。
だいたいVR対応のゲームは少ないけどありますよね。
でもVRMMOなんてどこにあるんですか?
こないだ転生させた人も『フルダイブ型のVRMMO』」とか言ってましたけど・・・そんなものがどこにあるんですか?
だいたいフルダイブ型のゲームなんて物を私は知りません」
「夢がないな。
VRゴーグル付けて出来るゲームの事言ってんじゃねーんだよ。
『VRゴーグル対応のAVは凄い』って話でもない。
『フルダイブ型のVRMMOが近未来に登場したら夢があるな、それでその世界に転生して無双出来たら夢があるな』って話じゃねーか。
パセリみたいな添え物以下の人生歩んできたヲタクが見る夢にケチつけんじゃねーよ」
「はぁ・・・なんだかわからないですが。
とにかくあなたが転生する異世界はゲームの世界ですがVRMMOの世界ではありません。
エロゲの世界です」
「はぁ!?」
「エロゲをバカにしてますね?
エロゲから派生して劇場版アニメになったものもあるんですよ!?」
「いや、エロゲが玉石混淆なのは知ってるよ。
でも九割玉じゃなくて石でしょ?
しかもバグまみれでOSによっては全く動作しない物も当たり前にある」
「詳しいですね、もしかしてエロゲマニアですか?」
「うるせーな!俺もゲームヲタクだし、話題になったエロゲくらいは嗜むよ。
『フェイト』とか『マブラブ』とか『AIR』くらいはな」
「どれも家庭用ゲーム版出てるじゃないですか。
どうしてわざわざエロゲ版をプレイしたんですか?
おっぱいが見たかったからですか?
エッチだからですか?」
「うるせーな!
俺がエロいのもあるけどエロ表現だけじゃなくて、それ以上に家庭用ゲーム版の表現規制に物足りなさを感じてるんだよ。
有り得ないだろ?血がダメだからって緑色の体液とか。
そっちの方がグロいだろ」
「はいはい、そういう事にしときましょうか?
とにかく貴方はそのエロゲの世界に転生します」
「エロゲの世界ってやっぱりハーレムなのか?」
「言っている意味がわかりません。
貴方が今までいた世界でもハーレムを作っている人はいます。
ですが逆に貴方のような童貞もまた存在します。
エロゲの世界でも同様です。
ハーレムを作っている者もいます、エロゲの世界ですからね。
ただ貴方のような童貞はエロゲの世界にも存在します。
逆に弱肉強食、強者のハーレムが認められている世界では弱者は悉くが貴方のように童貞です」
「その『貴方のように』ってのを『童貞』の枕詞みたいにつけるのはやめようぜ。
まるで『あおによし』と『奈良』みたいに『童貞』と『俺』がセットに思えちまう。
ていうか見たんか!
何で俺が童貞って決めつけるんだよ?」
「それが残念ながら見てないんですよ。
貴方がエッチするところを。
貴方が童貞じゃなければ見てるはずなんですけどね」
「アンタ、人がエッチしてるところ覗いてるのか!?
犯罪じゃねーか!
いや、まあ童貞だけどもさ!
決めつける事ねーじゃん!」
「貴方が思う以上に貴方は童貞丸出しですよ?
とにかくエロゲの世界に転生したからって童貞が童貞卒業出来る可能性は0.04%です。
貴方が元いた世界よりも童貞卒業出来る可能性は低いでしょう。
理由はハーレムが一般的に認められているからです。
モテる男の人は更にモテてハーレムを形成します。
その分、女性はそのモテる男の人に集中します。
貴方のような童貞は更にモテなくなり童貞を拗らせる世界です」
「いちいち『貴方のような』って言わないでくれよ。
でも日本でも童貞だった俺は漏れなく異世界でも童貞なのか・・・」
「わかりませんよ?童貞卒業の可能性は『ゼロではない』のです」
「限りなくゼロに近いけどな。
それより何で俺はエロゲの世界に転生しないといけないんだよ?
そしてアンタは一体誰なんだよ!?」
「人形や物のような無機物でも思念が宿る事で生を得る事があります。
エロゲも同じです。
多くのエロゲプレイヤーの思念を集めたエロゲの世界は実体化します。
実体化された世界は自治されなくてはなりません。
是非はともかくアメリカが『世界の警察』と言われているのは貴方のいた世界にも自治する存在が必要だったからです。
貴方は悪を取り締まる存在『勇者』としてエロゲ世界に転生するのです。
私はこのエロゲの世界の女神のような存在です」
「つまりアンタはアリスソフトのアリスちゃんみたいなもんなんだな?」
「詳しいですね。
やっぱりエロゲ好きなんですか?」
「詳しくなくても『ランス』も知らないゲームヲタクはいねーよ!
アリスちゃんはゲームヲタクの一般常識みたいなもんだ!」
「私はアリスちゃんよりエウシュリーちゃんに近い存在です」
「わかる自分が恨めしい・・・」
「私は産まれたばかりの女神でまだ名前はありません」
「産まれたばかりの割にはエロゲに詳しそうだが・・・」
「女神として産まれて間がないというだけです。
『学問の神』と言われている菅原道真だって、人間時代色々見聞を広めていたでしょう?
私は女神になる前、エロゲのマスコットキャラクターでした。
名前がないのは名前はプレイヤーがつけるからです。
私の名前は貴方に付けてもらう事になっています。
貴方はこのゲーム『ゲルマーニア』の世界の中で勇者として転生するのです」
「何で北欧神話なんだよ?
いや、エロゲは北欧神話多いけどさ。
ワルキューレが悪堕ちするヤツはだいたい北欧神話が題材だよな」
「へぇ・・・『ゲルマーニア』と聞いてドイツじゃなくて北欧神話だってわかるとは」
「当たり前だろ?
『フェイト』とか『シュタゲ』とかヲタクの北欧神話好きをなめるなよ?
ドイツ人達、ゲルマン民族の北欧神話信仰くらいわかってるよ。
だいたい『ゲルマン民族大移動』なんて中学の歴史の授業でならうんだぜ?
しかし『ゲルマーニア』かよ。
確かに思念を集めてそうだけど、プラスの思念じゃねーだろ?」
『ゲルマーニア』の評価は『惜しい!』ってもんだった。
バグまみれ、フリーズまみれでまともにゲームにならなかった『ゲルマーニア』は「もう少しまともにプレイ出来れば良作だっただろうに」という評価だった。
『ゲルマーニア』はとにかくテストプレイが不足していた。
『ゲルマーニア』で頻発していたのはバグとフリーズだけではない。
『詰みセーブ』が頻発していたのだ。
「『呪いの人形』『心霊写真』『心霊スポット』・・・プラスの思念よりマイナスの思念の方が色々と宿りやすいのです。
『数時間のプレイがパーだ!』
『また最初からプレイし直さなくちゃいけない!』
そんな血の涙を流したプレイヤーのマイナスの思念が私を女神として目覚めさせて、このゲームの世界を産んだのです」
「そうやって目覚めたヤツが女神なのか?
怨霊じゃねーのか?」
「『失礼な!』と言いたいところですが、確かにこの世界にマイナスの感情が溢れているのは事実です。
そういった負の感情は怨霊だけでなく、モンスターや魔王も産み出しました。
なのでそれを討伐する存在として貴方という勇者が必要なのです。
貴方は勇者として召喚されたのです」
「死んでもないのにエロゲの世界に転生とか迷惑にもほどがあるだろ・・・。
普通転生するヤツは通り魔に殺されたり、交通事故に遭うんじゃねーのかよ?」
「確かに迷惑な話だと思います。
貴方は普通にベッドで寝ていただけで死んだ訳でもありません。
『起きたらエロゲの世界に転生していた』・・・訳がわからないでしょう。
『俺の人生を返せ!』と言いたくなると思います。
ですがそんな悪い話ばかりじゃありません」
「ほう・・・一応話を聞こうか」
「勇者は・・・モテます。
それに勇者がハーレムを形成出来る可能性は勇者以外の職業より840%増です。
貴方のような負け組の陰キャな童貞のモブでも『勇者』というだけで一目おかれます」
「もしかしなくても喧嘩売ってるんだよな?
『高価買い取り』すんぞ?
女は殴らない主義だけど『殴られたい』って意思表示してる女殴らないほど非人道的じゃねーぞ?
俺の必殺『男女平等パンチ』を喰らいたいんだよな?
つーか、大さをアピールするために100%を超えて表現するのって俺大嫌いなんだよ。
普通に『○倍』って言えば良いじゃねーか。
小賢しいんだよ!」
「でも本当に貴方が童貞を捨てる唯一のチャンスが来たんですよ?」
「まだ言うか。
まあ良いや。
童貞捨てたくない訳じゃないけど『功名心』っつーか、チヤホヤされたい気持ちがないって言ったら嘘になっちまう。
大作RPGの世界の勇者じゃなくてバグまみれフリーズまみれのクソゲーエロゲRPGの勇者ってのがしまらないって言うか俺にはお似合いだけど。
・・・で、あるんだろ?」
「何がですか?」
「とぼけてるんじゃねえよ!
勇者に目覚めたヤツが使える力だよ!
『ギガデイン』みたいな魔法が使えるのか?
勇者じゃないと装備出来ない伝説の剣とか鎧とかあんのか?
勇者だけ沢山ペルソナが使えるとか色々あるだろう?」
「あるというかないというか・・・
というかペルソナって何ですか?」
「知らなきゃ良いんだよ。
つーか煮えきらないな」
「まああるんですけどね。
でも『初回プレイ』は普通にプレイするしかないですね」
「『初回プレイ』!?
死んでも二回目のプレイがあんの!?」
「ありますよー。
最初からの挑戦ですが、能力は引き継がれます。
『死んでも終わりじゃない、続きがある』というのが勇者スキルの特徴です」
「『強くてニューゲーム』みたいなもんか」
「『強くてニューゲーム』ではありませんが、非常に似ていますね。
『リスタート』や『死に戻り』でもありません。
ステータスや持ち物は死んだ時の物です。
周回特典は・・・ややこしいので経験してもらうのが早いですね。
とにかく初回プレイは普通にプレイするしかないです」
「まあ、ここまで来て『だが断る、勇者なんて冗談じゃない』なんて言ってももう転生は決まってるんだししょうがないだろ?
やるしかねーじゃん」
「話が早くて助かります。
では貴方を転生させます」
目の前が眩しくなり、俺は思わず目を閉じた。
もう一度目を開けた時、俺は一糸纏わぬ姿で草原に倒れていた。
女は「死んだ時の財産、装備は引き継がれる」とか言っていた。
しかし最初は全裸で無一文なのか。
地平線が見える。
高い建物は見渡す限りない。
俺が住んでいた東京にはこんな見渡す限りの空き地はない。
祖父が子供の頃には東京にも空き地があったらしい。
そこで子供達は日が暮れるまで野球をしたという。
「こんだけ空き地があれば野球はこの世界で空前のブームになるかもな」俺は漠然と思った。
祖父の子供の頃は「何もないけど野球をするだけの空き地はいくらでもある時代」で、今の日本は「何でもあるけど野球をするだけの空き地はどこにもない時代」なのだ。
異世界転生モノの定番として日本のものを異世界に伝えるというものがあるが、 技術もなく料理も出来ない俺が伝えられるモノというと、子供の頃から少年野球をやっていて、今も年に数回プロ野球観戦している数少ない趣味の一つ『野球』しかないだろう。
しかしバットもグローブもボールも作り方はわからない。
道具さえあれば野球を広める事も出来るかも知れないがその道具は異世界にはなく作り方も知らない。
それ以前に異世界人とコミュニケーションを取れるかわからない。
とりあえず着るものだ。
『ターミネーター』で未来から転位してきた男は素裸だった。
テレビで『ターミネーター』を見た時、男の股間にはモザイクがかかっていた。
しかし、俺が学生時代の貧乏旅行で台湾に行く国際線の旅客機内で見た『ターミネーター』ではポロンと・・・いや、「ポロン」なんて可愛い擬態語は相応しくないな「ヴォルォォォォォォォン!!!!!!!」と股間が丸出しだった。
ちなみに皮がむけてるか、皮が剥けてないかは股間の大きさとは全く関係ないという。
股間の大きさ世界一でギネス記録を持っている男は包茎だ。
帰国子女に聞くと欧米人に包茎は凄く多いらしい。
欧米人は包茎の事を「ナチュラルぺニス」と言い「包茎である事はナチュラル(普通)な事」と恥ずかしがりもしないらしい。
しかし包茎でありながらムチャクチャ股間はデカいという。
「ズルムケだとカリクビが大きく育つ」と言うが、真偽のほどは疑わしい。
「30歳までカリクビは育つ」なんて言うのは「包茎手術の金額が出せない十代じゃなく、自分である程度の金額が出せる20代を見据えた発言」だろう。
十代半ばで身体の成長が止まっている者も多いのに、股間だけ30まで美容整形外科の都合に良いように成長を続ける理由があるわけがない。
だいたい成長こそ「個人差がある」としか言えないはずだ。
背丈ですら20代まで成長する者やほとんど成長しない者もいる。
股間の大きさに個人差があるように「そんなものは一概には言えない」というのが普通だろう。
海外の人に「包茎手術はするべきか?」と聞いたら「プロの人の鼻先に股間を持っていく機会が多けりゃ包茎手術するべきかもね。
素人の女性は男が思うほど包茎を気にしないよ。
包茎はやっぱり臭いや汚れはたまりやすい。
なめてもらうなら手術するのはマナーかもね」との事だ。
「包茎は恥に非ず」だとしても、素裸を晒して民衆に俺の皮が被った股間を見せたいかと言われると断じて否だ。
街の中心の人集りの中に素裸で登場しなくてある意味ラッキーだった。
俺に「裸で何が悪い!」と開き直る元国民的アイドルのような度胸はないのだ。
俺のステータスは高いんだろうか?
低いんだろうか?
ステータスは自分で確認出来るんだろうか?
そう思っていると空中にステータス画面が開いた。
名前:未登録
性別:男
年齢:16歳
レベル:1
力:3
身の守り:3
素早さ:5
かしこさ:2
魔力:1
運の良さ:1
HP:8
MP:4
パーソナリティ:粗チン
称号:裸の勇者
職業:無職
頭装備:なし
身体装備:なし
足装備:なし
右手装備:なし
左手装備:なし
アクセサリー装備:なし
なんか「太宰治の『人間失格』って感じのステータスだな」俺はボソッと呟く。
どこからともなく「名前を登録しました、あなたは『ダザイ オサム』です」という電子音が聞こえた。
ちょっと待て!
誰が『太宰治』だ?
これ登録変更出来るよね?
日本にいた時の俺のステータスは関係ないらしい。
その証拠に年齢が全然違う。
俺は高校を卒業して、三流大学を卒業して、うだつのあがらないサラリーマンだった。
なのにゲーム内での年齢は16歳だ。
しかし見た目とか身体的特徴は日本にいた時より若返ってはいるようだが、鏡などは見ていないから自分の顔を見た訳ではないけれど、手足を見ると見慣れた自分の手足だし外見は大きく変わっていない。
変わらないからこその『粗チン』なんだろう。
しかしこのステータスはどうなんだろう?
高くはないよな。
しかしダビスタでも大事なのは初期パラメーターじゃなくて成長率だ。
それに急激にパラメーターが伸びても成長がすぐに止まるんでは意味がない。
なので初期パラメーターが低くても絶望する必要はない。
しかしパーソナリティって何だよ?
それ以上に『租チン』って何だよ!
まあ租チンだけどさ。
つーかエロゲはモザイクかかってるけど股間デカすぎるんだよ。
それより装備だ。
この格好では戦えない。
それ以上に全裸で街には入れない。
いきなり草原に放り出されてどこに街があるかわからないがとにかく最初にすべき事は生活の拠点を作る事と着るものを身に付ける事だ。
言ってみれば『衣食住』が重要だ。
『食』が抜けているが、とりあえず丸腰では狩りを行う事も出来ず『衣』の方が優先される・・・という事だ。
俺は腰まで伸びた雑草で腰みのを作り、落ちている手頃な木の棒を装備した。
頭装備:なし
身体装備:なし→粗末な腰みの
足装備:なし
右手装備:なし→木の棒
左手装備:なし→木の棒
アクセサリー装備:なし
力:3→6
身の守り:3→6
称号:『裸の勇者』は『原始人の勇者』へと変化した
自分のステータスを確認する。
とりあえずパラメーターは申し訳程度に上昇している。しかし『身の守り』が倍になるとは嬉しい誤算だった。
これなら股間が多少というかかなりチクチクして痛痒いのは我慢しよう。
後でわかった事だが『身の守り』が上昇したのは両手に装備した『木の棒』の影響だ。
木の棒で敵の攻撃を受け止めるためだ。
『粗末な腰みの』にパラメーター変化はない。
あるのは称号の変化のみだ。
とりあえず街を目指そう。
そして街のそばでレベル上げと服を買う資金を得るためにモンスターと戦わなくてはならない。
しかしここが『始まりの街』の近くだとは限らない。
エロゲのRPGは理不尽に難しいのが常だ。
しかもある意味自由度が高いとも言えるのだが、何処へでも行けてしまう。
攻略サイトを見て初めて「そこは低レベルでは来てはいけないところだ」と知る。
それはどこにもヒントはない。
「こんなの攻略サイト見ずにクリア出来るのかよ」と誰もが思うが、エロゲというのはそういう物なのだ。
エロゲマニアにはゲームマニアが多い。
そのゲームをする層に沿ってゲームの難易度を定めると自然とエロゲは難易度の高くなる。
その難易度は上がるところまで上がってしまっていて多少頭を捻っただけではクリア出来ない。
結果『攻略サイト不可欠』のゲームが出来上がる。
しかし逆に「これ本当にゲームか?
簡単すぎるし選択肢も見当たらない。
こりゃ読み物じゃねーか?」
というゲームもエロゲには存在する。
『凄く簡単』と『凄く難しい』はあっても、その間の丁度良いは存在しない。
エロゲとはそういった極端な物と言える。
他のゲームはどうでも良い。
『ゲルマーニア』の難易度はどうだろうか?
『ゲルマーニア』は噂しか聞いた事はないが、チュートリアル中にゲームオーバーになるほど難易度は高かったという。
しかもここが『始まりの街のすぐそば』だとは限らない。
つまり「難易度の高いゲームの世界で裸の男がラストダンジョン付近に来てしまった可能性もある」という事だ。
俺は『ゲルマーニア』というゲームを知らない。
だからモンスターを見てもそれが強いモンスターかそうでないかはわからない。
慎重に立ち回らねば。
「死んでも最初からやり直しが出来る」と言っても勇者が命を軽視するような世界はろくでもないだろう。
そして「死んでもやり直しがきく」とは言われたが「死の苦しみがカットされる」とは一言も言われていない。
もしかしたら『死の苦しみ』は二度と味わいたく無い物かもしれない。
しかし腰の高さまで雑草が伸びているのは正直よろしくない。
腰みのしか着用していない俺が腰まで雑草に隠れていると全裸にしか見えない、という話ではない。
これだけモンスターが身を隠す場所があると狩りには向かない場所と判断せざるを得ない、という事だ。
雑草を凪ぎ払おうにも刃物はない。
俺が両手に装備しているのは『木の棒』だ。
雑草の中からモンスターが現れたら戦うしかない。
おそらく俺の『素早さ』では逃げられないだろう。
これは雑草の中にいるのは得策ではない。
雑草の中に隠れていられるのは人間のようにあまり嗅覚が鋭くない者が敵の場合だ。
雑草は嗅覚の鋭いモンスターにはカモフラージュにならないだろう。
それどころか敵の姿が隠れてしまう、俺にとって一方的に不利な地形だ。
敵に遭う前にこの雑草のブッシュから出なくてはいけない。
しかし悪い予感というのは当たってしまうものだ。
雑草の中からモンスターが現れた。
幸い現れたモンスターは鼻があまり良くないようだ。
・・・というか鼻はないのか?
現れたモンスターは『ワイルドストロベリー』と言うらしい。
メッセージに『ワイルドストロベリーが現れた!』と書かれている。
メッセージとは何だ?と思うだろうが、メッセージはメッセージだ。
ゲームで敵が現れるとメッセージも表示される。
つまり、この世界では敵モンスターが現れるとメッセージが表示されるらしい。
『メッセージが表示されてたら敵が現れたって事で不意討ち食らわないじゃん』と思ったが後から『不意討ちだ!』『バックアタックだ!』というのもメッセージで表示されるのでもっと早く前もって表示されるんでなければ不意討ち防止の意味はないと気付く。
メッセージがある事が『ゲームの世界だなあ』と思うくらいでエンカウントした瞬間に敵の名前がわかる以外に特に利便性は今のところはない。
『ワイルドストロベリー』って和訳すると『野いちご』の事じゃん。
しかしこの世界では植物モンスターの事らしい。
見た目からも大きさからもそんなに強いモンスターではないだろう。
最弱かどうかはわからないが。
つまり『最初にエンカウントするモンスターとしては当たり』である可能性が高い。
しかもワイルドストロベリーは俺の存在に気付いていない。
後からタコ殴りにしてダメージを受けずに経験値を獲れるかも知れない。
それに『ワイルドストロベリー』は食べれそうだ。
食糧に出来るもしくは売れるかも知れない。
俺は『ワイルドストロベリー』に木の棒で殴りかかった。
『ワイルドストロベリー』はハエトリグサやウツボカズラみたいに食虫植物のような毒々しさがある。
きっと虫を襲いエサにしているのだろう。
だがきっと人間はエサにしていないはずだ。
襲いかからない限り人間には攻撃してこないに違いない。
だから人間に気付たら逃げるのかも知れない。
だが『ワイルドストロベリー』は俺に気付いていない。
勝負は一瞬で決まると思っていた。
「堅いな!」俺は驚きの声をあげた。
モンスターとは言え所詮は植物、一発殴ればクタッと倒れると皮算用していた。
だが実際は両手に持った『木の棒』で猛烈にラッシュをかけて殴り続けている。
そういう作戦なのではない。
殴るのを止めると『ワイルドストロベリー』の反撃がきそうなのだ。
そしてその反撃で俺は簡単に死んでしまいそうなのだ。
どんな頑丈な人間でもこんな風に両手に持った木の棒で思いっきり何度も殴られれば死ぬだろう。
何度も殴られてもフラつきもせずに立っている『ワイルドストロベリー』を見て「コイツ強い!」と思うのは当たり前だ。
それは『ワイルドストロベリー』の固さを見れば、おそらくその通りだろう。
やっぱりだ。
エロゲの高難易度はデフォだ。
こんな雑魚そうなモンスターでも恐らく一撃で俺を屠れるだろう。
もう敵モンスターがこちらに気付いていないようなチャンスは来ないだろう。
俺は『ワイルドストロベリー』を殴りつけた。
思いっきり殴り過ぎたのか『木の棒』は折れた。
折れた『木の棒』の先を『ワイルドストロベリー』の頭のような実に突き刺した。
それまでビクともせず攻撃をいなしていた『ワイルドストロベリー』は実に木の棒を突き刺されると初めて『ピギャーーーーー!』と鳴き声をあげた。
「弱点?急所?
人間で言う頭や心臓みたいなモンか?」俺は突き刺した『木の棒』を引き抜き、もう一度折れた『木の棒』を『ワイルドストロベリー』の実に刺した。
堅いと思っていた『ワイルドストロベリー』だが実は驚くほど柔らかかった。
『ワイルドストロベリー』はピクピクと痙攣するとシナシナと崩れ落ち動かなくなった。
「勝った・・・のか?」
「ダザイはレベルアップした。
レベル:1→4
力:5→15
身の守り:4→16
素早さ:5→12
かしこさ:2→4
魔力:1→12
運の良さ:1→10
HP:8→26
MP:4→12
レベルアップ前の力や身の守りが下がっているのは『木の棒』が壊れて装備していないからだろう。
『木の棒』を装備すると力だけでなく、身の守りも上がる事を知った。
そしてモンスターを攻撃する時は弱点を狙う事を覚えた。
そりゃそうだ。
ゼルダだって『ゴーマの目を狙え』ってヒントあるもんな。
弱点以外に攻撃しても全くダメージが通らないのがゲームだ。
これから敵と戦う時はダメージを探るようにしよう。
俺は考えながら倒れている『ワイルドストロベリー』の実を口に含んだ。
甘い・・・そして美味い!
味は熟したクランベリーを十倍美味しくしたような感じだ。
そう歓喜するも束の間、俺は痙攣して倒れた。
『ワイルドストロベリー』の葉は美味くないが食べれる。
しかし『ワイルドストロベリー』の実は美味いが毒があり食べれない。
美味い物が毒が無いわけではない。
フグの肝は美味いが猛毒がある。
『ワイルドストロベリー』の実は美味いが致死性の猛毒があるのだ。
俺は薄れ行く意識の中で「今度から食べれる物かどうか確かめてから口に入れよう」と誓うのだった。