真・恋影外伝 【短編集】   作:Tukigami

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どうも、てぃあの憂鬱こと月神です。
TINAMIに投稿していた物を少しいじって再投稿です。



自由の意味 【単話】

「まだやるのか……?」

 

「くっ、黙れッ!」

 

「・・・・・・」

 

 

とある外史。いや、正確には外史だった世界。

要たる主人公を失い、崩壊を始め、全ての生命は滅んだ。

全てが砂と化し後は消失を待つだけ。

 

そんな壊滅した世界で ”青年” と ”男” は戦っていた。

 

 

「……何故だ……この俺が……ハァハァ……貴様ごときに……」

 

「────最終勧告だ。大人しく投降しろ」

 

 

戦闘開始から数時間。疲弊し切っているのか肩で息をする青年に対し男は既に何度目かの投降勧告を言い渡す。

青年を見る男の目には蔑みと哀れみが浮かんでいた。

 

 

「卑弥呼も貂蝉もお前の投降を望んでいる 」

 

「巫山戯るなッ!誰が貴様などに……」

 

 

青年は拒絶する。

 

青年の説得という役目において男は最悪手と言えた。

本来なら師である卑弥呼や古くから青年を知っている貂蝉が事にあたるのが最善だった。しかし、彼らは弟子を持つような存在であるが故に、古くから管理者を務めているが故に、自身にそれぞれの役目が存在する。

管理者にとって何より優先すべきは自身の役目。

外史の破壊を繰り返す青年に対して自身の役目を放り出してまで説得に向かうことはできるはずもなかった。

 

青年は反抗的な態度を崩さない。

青年の眼は男に対し憎しみの色に染まっていた。

 

一方で男の目は何処までも暗い。

青年のことなど最早どうでもいいように。

 

 

やがて時間がやって来る。

 

もう崩壊へのカウントダウンは始まっているのだ。

男は投降勧告を無視した青年に残念そうな目を向ける。

 

 

「……残念だ。……"龍絶" 」

 

 

瞬間、男は手の中に刀身の黒い日本刀を顕現させる。

青年は咄嗟に警戒態勢をとるが、次の瞬間には男の姿は消えている。男は凄まじい速さで青年の背後に転移して、その刀でもって青年の背中を切りつける。

 

 

「ぐぁッ!貴様ァ!」

 

 

青年は一瞬顔を苦痛に歪めるも、直ぐに振り向いて男に対し殴り掛かる。しかし、男はその拳を受け止め、続いて腹部を切り裂く。そして、そのまま青年の体を蹴飛ばす。

 

青年は軽く吹き飛んだ後、地面を転がる。しかし、青年はそれでも地面に爪を立て勢いを殺し、身体の至る所から血を流しながら立ち上がろうとする。しかし、上手く立てないのか膝を付く形になる。

 

 

「パートナーと同じ道を歩むか 」

 

「ぐ……ハァ…… やはり、貴様が于吉を……ガハッ」

 

 

吐血し、切り裂かれた腹部を抑えながらも青年は彼を睨みつける。実質的に仲間を殺さた事を知り先程よりも憎悪の色が濃くなっていた。

そんな青年を見つめながら男は自らの刀に気を篭める。

 

青年は男が刀に気を込める一瞬の隙を見出し、最後の力を振り絞って蹴りを繰り出す。しかし、男は片手でそれを軽く受け止めると、切り裂かれた腹部を躊躇なく蹴り飛ばす。

 

「 ────ッ!…… ァァァ…… 」

 

 

切り裂かれた箇所を蹴られた事で、全身に走る激痛に青年はたまらず表情を歪め、言葉にならない声を出す。

そんな青年の姿を見つつ男は再度刀に気を込め始める。

 

 

「一つ教えようか、于吉を消したのは俺じゃなく管輅だ。かつての師としての責任だと言っていた。于吉は最後までお前の事を案じていたそうだ」

 

 

気を込めた事により黒いオーラを発している刃を手にジワジワと歩み寄る。その姿はまるで大鎌を持った死神の様だった。

 

 

「……クソが……」

 

「長年付き添ったパートナーなんだろ?かつてお前達の師だった卑弥呼や管輅の願いだ、魂を縛ったりはしてない。あっちで再会するといい 」

 

 

男はその刃を一度鞘に戻し、動けない青年に対し、居合の構えをとる。

 

 

 

 

「クソが、クソが、クソが、クソが!」

 

 

 

「サヨナラだ、左慈。来世では自由になれる事を願ってるよ 」

 

「────北郷一刀ォ!────」

 

 

青年は男の名を叫ぶ。

 

男は目を閉じ、刀に手を添えると

 

 

 

《ヒュン》

 

 

 

一閃した。それと同時に青年の視界は断絶される。

その直後、風を切る音と共に男の後方で何かが落ちる音がする。

 

 

男は横たわり動かない青年を見て無機質な声で問いかける。

 

 

 

「なぁ、左慈。これがお前の目指した ”自由” なのか? 」

 

 

 

その言葉と共に男は青年を残して消えていく。

 

それと同時に存在していた世界は崩壊していく。

 

男にとって馴染みのある世界が塵となって消えていく。

その日、一つの外史が終端を迎えた。

 

 

 

 




Twitter→@moutokukarin

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