ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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in~アグレアス

それから数日が経ったゲーム当日――。

 

『島が浮いてる』

 

「浮いてますねぇ~」

 

俺は空中都市に続いているゴンドラのなかから上空に浮かぶ島を眺めていた。横ではユーが窓の外を見ながらメモを見せてきた。逆側の隣にいるリエも浮かんでいる島を眺めていた。

 

四つに別れて乗ったら、人数的に俺とユーとリエが残りのゴンドラに乗ることになった。

 

空に浮かぶ島―――空中都市アグレアス。島を浮かばせている動力は、ルリエルたちの親にあたる旧魔王時代に作られたものだそうだ。ルリエルたちはまったく興味がなかったらしく、作られた理由は知らないようだった。

 

空中に浮かぶ島はそう見ることがないから珍しい。都市から地上に水が滝のように落ちていく。ひとつやふたつじゃなく、たくさん滝のように水が下に落ちていく。幻想的な光景だ。

 

アガレス領にある空中都市。空に浮かぶ島の上に都市を造ったようだ。この辺一帯の空の流通を取り仕切るところでもあるらしい。さらに観光地でもある。

 

都市への入り方は大きく分けて三つ。ひとつは魔方陣でのジャンプ。これはVIPクラスか、特別な行事のときしか行き来できない。重要な場所であり、世界遺産でもあるのでなるべく魔力での移動は許可しないようだ。……不審者の侵入を許さないためだろうな。

 

ふたつめに飛行船などの空の乗り物だ。こちらがジャンプよりメジャー。三つめは俺たちのように下の乗り場から、都市から伸びるロープを伝ってゴンドラで上がっていく方法。

 

俺たちはこの三つめの手段を選んだ。ゴンドラからの眺めを知っているリアスが一言漏らしたことから、伝染するように皆が次々に「乗りたい!」と言い出したためだ。

 

ここにいない飛段と角都は、俺の領地を一割ほど分けたところに引越しをしたカテレア・レヴィアタンとクルゼレイ・アスモデウス、その二人のメイドをさせている元ディオドラ眷属の十三人の監視役として、別のルートから会場入りをしている。

 

それから少しして、ゴンドラは空中都市に辿り着いた――。

 

                    D×D

 

ゴンドラから降りると、入り待ちのファンとマスコミの大群が出迎えてくれた。ゴンドラから出た早々にラッシュと歓声に包まれ、数メートル先を歩いていたイッセーたちと同じく多数のスタッフとボディガードの誘導のもと、表に用意されていたリムジンに乗り込んだ。

 

三台あるリムジンの一番後ろに乗った俺とユーとリエ。

 

「あ、奇遇ね」

 

リムジンのなかに乗り込むと黒歌たちが先に乗っていた。

 

「黒歌、白音のもとにいなくてもいいのか?」

 

俺の問いに「だいじょぶでしょ」と黒歌は軽く一言。

 

マリアと冴子に顔を向けると二人も同じような表情をしている。

 

「……そうか、それならいい」

 

俺は背もたれに背を預けて車窓から後ろを見ると、マスコミのものと思う車が追跡してきていた。

 

「……まるで、幾年前のパパラッチみたいだな」

 

俺はつぶやいた。

 

同車している女子たちはイッセーたちの試合や、食事のことなど色々な話題を楽しそうに話し合っていた。

 

そんな風にしていると、リムジンは都市部を走り、会場となる巨大なドームを目前にしていた。

 

                    D×D

 

空中都市に数多(あまた)存在する娯楽施設。そのなかで各種競技、アーティストの公演を主にした巨大なドーム会場があった。

 

アグレアス・ドーム。俺たちはそのドーム会場の横にある高層高級ホテルに移動していた。

……豪華絢爛(ごうかけんらん)な造りだ。広いロビーにきらびやかなフロア。天井には巨大なシャンデリアが吊ってある。俺の家はここまで豪華ではないほうだが、それでも豪華な家だとは思う。……ケタが違うと言った方がわかりやすいかな?

 

ボーイに連れられて、俺たちの専用ルームまで案内される。イッセーたちとは別のルームになるが、出入りぐらいはできそうだ。

 

通路を進んでいるときだった。

 

通路の向こう側から、不穏な雰囲気と冷たいオーラを放ちながら歩いてくる集団があった。

 

顔が見えないぐらいにフードを深く被り、足元すら見えないほど長いローブを着込んだ不気味で不穏な雰囲気の集団。

 

その集団の中央には司祭の服らしきものを着込んだ――骸骨。

 

骸骨が祭服に身を包んでいる。頭部には司祭が被る帽子。手には杖も携えている。

 

俺は嫌な記憶を思い出して瞬時に両目を輪廻眼に変える。すると、骸骨司祭は俺たちを眼前にして足を止めた。

 

目玉のない眼孔の奥を光らせる。

 

《これはこれは紅髪のグレモリーではないか。そして、堕天使の総督にうちはイタチ》

 

その声は口から発せられたものではない。俺たちが直接脳に伝えるように、いまのも同じ類のモノ…。

 

骸骨司祭の声を聞き、アザゼルは皮肉そうに笑んだ。

 

「これは、冥界下層――地獄の底こと冥府に住まう、死を司る神ハーデス殿。(グリム)(リッパー)をそんなに引き連れて上に上がってきましたか。しかし、悪魔と堕天使を何よりも嫌うあなたが来るとはな」

 

――そう、冥府の神ハーデス。懐かしさと共に苦い思い出のある人物だ。

 

《ファファファ……、言うてくれるものだな、カラスめが。最近上では何かとうるさいのでな、視察をとな》

 

「骸骨ジジイ、ギリシャ側のなかであんただけが勢力間の協定に否定的なようだな」

 

《だとしたらどうする?この年寄りもロキのように屠るか?》

 

そのやり取りの直後、ハーデスを囲むローブの集団が殺意を放ってきた。

 

俺は手元に『(トゥル)(ー・ア)(クティ)(ング)』による光を集中させながらイッセーたちの前に立つ。

 

「……もう一度狩られたいようだな」

 

手元の光は治まっており、大きく複雑な形をした大鎌が出現している。

 

「『封印のデスサイズ』。存在ごと鎌に封印してやろうか?」

 

すると、アザゼルは頭を振り、嘆息しながら俺を手で制してきた。

 

「オーディンのエロジジイのように寛容になれって話だ。黒い噂が絶えないんだよ、あんたの周囲は」

 

《ファファファ……、カラスとコウモリの群れが上でピーチクと鳴いておるとな、私も防音対策をしたくもなる》

 

俺は大鎌を霧散させて臨戦状態を解いた。

 

ハーデスが視線を――イッセーに移した。

 

(ウェル)(シュ・ド)(ラゴン)か。(バニシ)(ング・ド)(ラゴン)と共に地獄の底で暴れまわっていた頃が懐かしい限りだ……》

 

ドライグとアルビオン……何やってんだよ、冥府に赴いてまで…。

 

《まあ良いわ。今日は楽しみとさせてもらおうか。せいぜい死なぬようにな。今宵は貴様たちの魂を連れにきたわけではないんでな》

 

それだけ言い残し、ハーデスは俺たちの横を通り過ぎていった。

 

俺は輪廻眼をもとの瞳に戻して、息を吐いた。久方ぶりに興奮気味だったな…。

 

見れば他の周りの皆は緊張していたようで、張り詰めていたものを解いた。

 

「……北欧時代に先輩のヴァルキリーからハーデスさまの話を聞いてはいましたが……魂をつかまれているような感覚は生きた心地がしませんね」

 

と、ロスヴァイセがつぶやいた。

 

「……こ、怖……。すごいプレッシャーだったんですけど、あの骸骨さん……」

 

イッセーが言うとアザゼルも堅苦しかったのか、首をコキコキと鳴らしていた。

 

「そりゃな。各勢力の主要陣のなかでもトップクラスの実力者だからな」

 

「……先生よりも強いんですか?」

 

「俺より強いよ、あの骸骨ジジイは……。リュースケ以外は絶対に敵対するなよ、おまえら。ハーデス自身もそうだが、奴の周囲にいる(グリム)(リッパー)どもは不気味だ」

 

「悪い神さまってことか……」

 

イッセーがつぶやいた言葉に俺は首を横に振って言う。

 

「いや、別に悪い神ってことじゃない。確かに死を司る神だが、人間には平常通りに接するし、冥府には必要な存在だ。まぁ、俺はケンカをした間柄だから仲は悪い方だけどね」

 

俺の境遇を混ぜて話したあと、今度は豪快な笑い声が通路に響き渡った。

 

「デハハハハハ!来たぞ、アザゼルゥッ!!」

 

「こちらも来たぞ、アザゼルめが!ガハハハハハ!!」

 

体格の良いひげ面の中年の男二人が駆け寄って、アザゼルにまとわりついた。

 

アザゼルも半眼で嘆息した。

 

「……来たな、ゼウスのオヤジにポセイドンのオヤジ……。こっちは相変わらずの暑苦しさ全開だな。ハーデスの野郎もこの二人ぐらい豪快でわかりやすかったらいいのによ」

 

また懐かしい人物が現れた。……ゼウスとポセイドンだ。

 

「嫁を取らんのか、アザ坊!いつまでも独り身も寂しかろう!!」

 

「紹介してやらんでもないぞ!海の女はいいのがたくさんだぁぁぁぁっ!!ガハハハハハハハハッ!!!」

 

「あー、余計な心配しなくていいって……」

 

珍しく堕天使の総督さんが押されている……。いつ以来だろうか?

 

上半身裸――ポセイドンが俺に気がついて…すごい勢いでまとわりついてきた!

 

「久しぶりだ、龍の息子が!ガハハハハハハ!!」

 

「ひ、久しぶりです、ポセイドンのおじさん」

 

……俺は少し引き気味に返した。いまだに名前を間違って覚えているんだなぁ……と半分呆れていた。

 

「デハハハハハハ!!龍坊!そろそろ女を(めと)る時期になっているのではないか!!」

 

今度はゼウスが俺にまとわりついてきた……。

 

「龍の息子!おまえを待っている海の女がたくさんいるぞ!!ガハハハハハハハ!!!」

 

俺は苦笑いから引き()りの笑いへ表情を徐々に変える…。だって、後方からとんでもない殺気が俺を目がけて照射されているんだもん!ものすごく怖い!!

 

「あ、あぁ……少し考えておくよ…」

 

いろいろと世話になったギリシャの神々に失礼なことはできないが、そう答えて最小限に回避することを選んだ。そして俺は後々後悔するのだった……。

 

「来たぞ、おまえたち」

 

今度は聞き覚えのある声。振り返ると、そこには小さいサイズのタンニーンが宙に浮いていた。

 

「その声、タンニーンのおっさんか!ちっちゃくなっちゃって!」

 

「ハハハ、元のままだと何かと不便でな。こういう行事のときはたいていこの格好だ」

 

タンニーンがイッセーたちを見渡すように言う。

 

「相手は若手最強と称される男だが、おまえたちが劣っているとは思っていない。存分にぶつかってこい!」

 

「もちろんさ!俺たちの勝利を見届けてくれよ!!」

 

自信満々に返すイッセー。若干テンションが上がっているな…。

 

「あっ!オーディンさま!」

 

ロスヴァイセが素っ頓狂な声をあげる。ロスヴァイセが指を向けた方向には――オーディンの爺さんがいた。

 

オーディンの爺さんはロスヴァイセの姿を確認するや、「これはマズい!」と叫んでその場から走り去っていく…。

 

それを見てロスヴァイセが吼えた。

 

「ここで会ったが百年目!まてぇぇぇぇぇっ、このクソジジイィィィィィッ!!その隣にいる新しいヴァルキリーはなんなのよぉぉぉぉぉっ!」

 

ヴァルキリーの鎧姿と化したロスヴァイセは、逃げ去るオーディンの爺さんを追いかけていってしまった…。

 

「……イッセー、祐奈、ゼノヴィア、お願い、ロスヴァイセを止めてきて」

 

嘆息しながらリアスがそう言った。

 

「理子りんも行くー!」

 

「あー、あー」とオーディンの爺さんの声に変声する理子。どうやら、オーディンの爺さんの声でロスヴァイセを釣る寸法のようだ。

 

俺も連れ戻しに参加したいが……まだ二人にいじられている状態なので行けないです。

 

…試合目前だが、ホテルは予想以上の賑わいを見せていた――。

 

                    D×D

 

専用の部屋に通された俺たち。

 

案内係のボーイが「特別待合室でお待ちください」と言葉にしたことで、ここがVIPの一室だとわかった。

 

俺たちは要人として案内されていることになる。まぁ、毎回のことだからあまり気にはしないが…。

 

通された部屋はかなり広い。ふかふかのソファがそれぞれ並んでおり、本棚にはさまざまな系統の文庫本が並んでいる。テーブルが二式あり、お茶や菓子などが備えつけられている。

 

入場時間まで六時間弱あるので、ゆっくりとソファに腰を下ろして本棚に並べてあった推理小説を一冊借りて読む。

 

それから、十分ほど経った頃だろうか?

 

「遠山龍介さんはいますか?」

 

ドアが開く音と共にスタッフの人と思われる男性が立っていた。

 

「あ、俺です。何でしょうか?」

 

ソファから腰を上げて立ち上がった俺を見て、スタッフの男性は何かのメモを一瞥して「こちらへ」と案内される。

 

「あ、悪いけど、この本もとの場所に戻しておいてくれ」

 

俺は出口の近くに立っていたエールに本を手渡して、待合室を出てスタッフについて行った――。

 

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