鎧姿のイッセーはリアスと一緒に、団体戦のフィールドとなる広大な平地に降り立つ。
先ほどまで漏れていた
実況がマイクを震わせる。
『さあ、バアルVSグレモリーの若手頂上決定戦も最終局面となりました!サイラオーグ選手によってもたらされた提案により、団体戦となった最終試合!!バアル側は「
『ずむずむいやーん!』
『おっぱい!』
イッセーの紹介に子供たちも観客席から応援する。
『さて、最終試合を始めようと思います』
『……では、開始してください!!』
ついに最終試合が始まった。イッセーとサイラオーグの『
サイラオーグは小さく笑う。
『リアス、先に言っておくことがある』
サイラオーグが真っ直ぐに言う。
『おまえの眷属は素晴らしい。妬ましくなるほど、おまえを想っている。それゆえに強敵ばかりだった』
確かにサイラオーグの言う通り、リアスの眷属は優秀な力の持ち主が多い。
『こちらは俺とそちらの「
サイラオーグがイッセー前に立つ。
『兵藤一誠。ついに、だな』
『恨みはありません。妬みもありません。これはゲームですから』
イッセーはサイラオーグに向けて指を突きつけた。
『――けど、仲間の仇を取らせてもらいます。俺の大事な仲間を屠ってきたあなたを無心で殴れるほど、俺は大人じゃないんですよ……ッ!!』
イッセーの台詞を耳にして、サイラオーグは心底打ち震えている様子だ。
『極限とも言える台詞だ……ッ!!だろうな。おまえは少なくとも仲間の敗北に耐えられる男ではない。よくぞ、ここまで耐えた。爆発させろ。あぁ、それでいい。それでこそ、決着と思える始まりに相応しいッ!!』
ゴオオオオォォォォォッ!!
イッセーは背中のブーストを最大にまでふかし、真正面からサイラオーグに向かう!!
サイラオーグも全身に莫大な闘気をまとわせ、地面をけって飛び込む!
真正面からお互いの拳が交差し、クロスカウンターの領域でお互いの顔面に拳が直撃した!!
ゴォォォォン!!
サイラオーグの拳がイッセーの兜を破壊した。
『
イッセーも負けじとインパクトの瞬間、拳の勢いが増した。
パァァァァアアァンッッ!!!
辺り一帯に乾いた音が木霊した。
サイラオーグの鼻から血が噴出し、口の端から血が流れていった。
よろりと、その体も少しよろめいた。
『いまの一発は倒れていった仲間があなたに届かなかった一発です』
イッセーがそう言うと、サイラオーグは口元を拭う。
『練り上げられた拳だ……ッ!気迫が体に入り込んでくるようだ。悪魔になって少ない月日のなか、どれだけ自分をいじめ抜いた!?生半可な想いで鍛えられたものではない!クイーシャに見せた新しい能力を見せないので、舐められたものかと若干感じたが、杞憂のようだ。その形態の
確かに、イッセーは初期の
そう回想し終えたあたりから、イッセーとサイラオーグの殴り合いが始まった。近距離での拳と蹴りのぶつけ合いだ。
イッセーの戦闘はほとんどが実戦で鍛えあげられている。俺の剛拳の一部を真似ようしていたが、ひとつも会得することができなかった。……
『実戦で練られた攻撃か!余念が無い分、的確にこちらの中心点を狙ってくる!!』
笑って言うサイラオーグ。
何度かの近距離戦を終えたイッセーは、一定の距離を保った。
ふと、リアスとサイラオーグの『
そこにあったのは――イッセーと歳が変わらない少年の顔がある。
だが、すぐにそれは変貌し始めた。
ボコッ!ベキッ!!
体中から快音を起こし、少年の体が盛り上がっていく。
ガゴォォォォォォォォォォォオオオオオンッ!
そこに姿を現したのは、巨大な一匹の獅子だ。額に宝玉が存在している。
たてがみを雄大になびかせて、リアスの前に立つ。
『おおおっと!バアルチームの謎の「
実況も驚いている…当然と言えば当然だな、俺もオーラは感じていたが…まさか、ね。
「まさか、ネメアの獅子か!?いや、あの宝玉はまさか……!!」
隣のアザゼルは何かを得心して、驚きの声音を出す。実況者が訊ねる。
『と、言いますと?』
「……もともとはギリシャ神話に出てくる元祖ヘラクレスの試練の相手なんだが……。聖書に記されし神があの獅子の一匹を
『いや、残念ながら所有者は死んでいる。俺が「
なるほど…、所有者の死後
『俺が眷属にしたのはそのときだ。獅子を司る母の血筋が呼んだ縁だと思ってな』
「……所有者抜きで単独で意志を持って動く
隣でアザゼルがすごい笑顔で語っていた。顔の輝きかたが例のときのようだった。
『所有者無しの状態のせいか、力がとても不安定でな。このゲームまで、とてもじゃないが出せる代物ではなかった。敵味方見境無しの暴走状態になっては勝負どころではなくなるからな。今回、出せるとしたら俺と組めるこのような最終試合だけだった。いざというとき、こいつを止められるのは俺だけだからな』
サイラオーグがそう話す。それがギリギリまで出せなかった理由ね…。ダイス・フィギュアのルールでは、数字が最大のサイラオーグと共に出場ができないから出しにくい眷属だったというわけだな。
『……どちらにしても、私の相手はその
イッセーとリアス、双方が相手に向かっていく。
イッセーはサイラオーグと拳の打ち合いになり、殴られては殴り、倒されては立ち上がってまた殴りあう。
攻防を繰り返している二人を見て、俺はある変化に気がついた。
――サイラオーグの右の拳打が左の拳打に比べてゼロコマ単位で遅れて届いている。威力はわからないが、眼を通して見ているので左右の拳打の軌跡を見ていればわかる。
『俺の仲間はッ!』
繰り出されるサイラオーグの右の拳。ストレートが伸びきった瞬間を狙って、イッセーは右腕に拳打を放った!!
『
増大した一撃が右腕の勢いを奪い、サイラオーグの体を少しだけよろめかした。
ここぞと言わんばかりに、イッセーは内の駒を変更させて、同時に赤龍帝の力を爆発させた!!
『
『
赤いオーラが膨れあがり、イッセーの体が肉厚の鎧に包まれる。そして、その極大の拳でサイラオーグにアッパーをかました!!
ゴバァァァァアァンッ!
ど派手な爆発音を鳴り響かせて、サイラオーグの体が宙高く投げ出された。
『弱点のないあんたに弱点を作ったッ!その右腕のことだッ!!』
やはり、イッセーも気がついていたようだ…。
イッセーは宙に投げ出されたサイラオーグを追撃しようと、再び内の駒を変化させた。
『
『
鎧が通常の厚さに戻り、背中にバックパック、両肩にキャノンが形成されていく。
静かに鳴動させるトリアイナ版の『
『ドラゴンブラスタァァァァァァァァッ!』
ズバァァァァァァンッ!!
放射された絶大なオーラ。サイラオーグは空中で体勢を立て直し、翼を展開するが――。
『くっ……!!』
右のドラゴンブラスターに巻き込まれていった。左のほうは絶妙な差で外したようだ。キャノンが役目を果たして赤い光となり霧散していく。
空中で煙を立ち上げながら、地にゆっくりと下りていくサイラオーグ。
イッセーは肩で息をしている状態だ。
サイラオーグは例の闘気をまとっといたために、イッセーの攻撃は通ったのだが……決定打となるものにはなっていない。俺の半身
満足そうな笑みを浮かべているサイラオーグ。
『――強い。これほどのものか……ッ!』
イッセーの攻撃に満足している。……さぁて、お次はどんな攻防戦を見せてくれるやら。
俺が両者の次の一手を考察していたとき、『キャッ!』という悲鳴が上がった。
それがすぐにリアスの悲鳴だと気づき、そちらの映像へ目を向けると――。
ひざをついている血染めのリアス。獅子はダメージを負いながらも、リアスの前に立ちふさがっている。
『リアス・グレモリーはこのままいけば失血でリタイヤとなるだろう』
おっ!獅子が話し出したぞ?
『助けたければ、フェニックスの涙を使用するしかない』
……ふむふむ、わざとだな?リアスを屠るだけの強さを持っているのは間違いない。だが、それをしないのは……フェアな戦いをしたいからだろう。
『……「余計な事を」と言えば、俺の「
『わかっております。申し訳ございません、主を思ってこその行動でございます』
イッセーは攻撃を再開しない獅子とサイラオーグを警戒しながらもリアスに近づき、リアスのポケットから小瓶を取り出した。
『部長、これを使います』
『……情けないわ。私が……あなたの枷になるなんて……』
リアスは悔しそうにしている。『
イッセーは小瓶の涙をリアスに振りかけた。途端に煙を立ててケガが治癒していく。
これで涙に関してイーブンとなった。……さて、双方はどう出るかな?
すると、獅子がサイラオーグに向けて叫んだ!
『サイラオーグさま!私を!私を身にまとってください!!あの
そう言う獅子にサイラオーグの怒号が飛ぶ!
『黙れッ!あれは……あの力は冥界の危機に関してのときのみに使うと決めたものだ!この男の前であれを使って何になる!?俺はこの体のみでこの男と戦うのだ!』
いまのイッセーと互角に近い戦いを見せているサイラオーグが…さらに強くなるのか?……もし、俺がイッセーの立場にいたら…望んでいるだろうな、獅子を身にまとうサイラオーグを。
『――獅子の力を使ってください』
イッセーのその一言に俺は口のはしを釣り上げた。
――そうこなくては、なっ。
俺に似てきたイッセー、バカな兄弟だと自負しているさ。
『それを使ったサイラオーグさんを超えなければ意味が無いんです。今日、この日まで
イッセーの心からの叫び。その言葉にリアスも呆れ顔でイッセーに顔を寄せていた。
一泊あけて、サイラオーグが不気味な笑みを放つ。
『……すまなかった。心のどこかでゲームなのだと、二度めがあるのだと、そんな甘い考えを頭に思い描いていたようだ。なんて、愚かな考えだろうか……ッ』
ドゥッ!
サイラオーグの体に気迫がみなぎっていく!
『このような戦いを終生一度あるかないかと想像すらできなかった自分があまりに腹立たしいッッ。レグルスゥゥゥゥッ!!』
『ハッ!!』
獅子を呼ぶ、主。主に応える獅子!
巨体の獅子が全身を金色に輝かせ、光の奔流と化してサイラオーグに向かう。
『よし、ではいこうか。俺は今日この場を死戦と断定するッ!殺しても恨むなよ、兵藤一誠ッ!!』
黄金の光を全身に浴びるサイラオーグは高らかに叫んだ。
『我が獅子よッ!ネメアの王よッ!!獅子王と呼ばれた
ドォォォォォォオオオオッ!!!
フィールド全体が震えだす。
周囲の風景を吹き飛ばし、サイラオーグと獅子が弾けた。
『
まばゆい閃光が辺り一面に広がり、イッセーとリアスはその神々しい光を腕でさえぎる。
映像越しの俺も目を細めた。
……閃光が止んだとき、映像に現れたのは金色の姿をした獅子の
頭部の兜にはたてがみを思わせる金毛がなびく。
胸に獅子の顔と思われるものがあり、意志を持っているかのように目を輝かせた。
『――
イッセーに一歩一歩近づくサイラオーグはそう口にした。映像越しでもわかる…鎧に闘気をまとわせて歩む姿は圧倒的な存在感を生みだしている…!
『…主、あの者は直接攻撃重視の究極に近い形をとっておる。力の権化である鎧を着込み、それで直接殴る。……主自身もわかるであろう、鎧に身を包んだことがあるのだから』
ムラクモがそう言う。
……あぁ、わかっている。俺自身、鎧を身にまとって戦ってきたんだからさ。
肉薄する距離でサイラオーグがイッセーに言う。
『さあ、一発打ってみろ』
イッセーはサイラオーグの言葉通りに内の駒を変更させる。
『
『
分厚くなる鎧、何倍にも膨れ上がった腕。
巨大な拳を振り上げ、一気にぶち抜いたイッセー。肘の撃鉄を鳴らし、その勢いで拳打の威力を上げ――。
ガンッ!!
イッセーの巨大な拳は――サイラオーグの左手に軽々と止められてしまった。
その光景にフィールドにいたリアスたちだけでなく、ここにいるアザゼルと俺も驚いていた。
イッセーはもう一度撃鉄を撃って、威力を底上げして放つが――。
バシュンッ!!
撃鉄が撃たれ、威力を増した拳を放つ――。
ガゴォォンッ!!
イッセーの巨大な拳はサイラオーグの掌底の威力に負け、無残に破壊されていく。
……サイラオーグと獅子の鎧…第三形態の
『――これで限界か』
サイラオーグがそうつぶやく。
ガギャァァァァァアンッ!
サイラオーグの拳が分厚いイッセーの腹部に撃ち込まれ、難なく鎧を砕かれていく。
その拳は鎧の内部まで届いており、イッセーの体を破壊していった。
『ごぶっ!!』
イッセーはマスク越しに口から大量の血を吐き出し――地面に突っ伏してしまった。
ピクリとも動かないイッセー、どうやら意識を持っていかれたようだ。
『……イッセー…しっかりして……ッ!!』
そのイッセーを抱え起こして顔を覗かせている。
サイラオーグは仁王立ちして様子をうかがっているようだ。
『……だ、だいじょうぶでしょうか!?』
実況も言葉が出ないようだ。ただ、イッセーはまだリタイヤの光には包まれていない。
ちょうどそのときだった。内にいるムラクモが話しかけてきた。
『……主、ドライグから要請があった』
…はて?要請ってなんだ、ムラクモ。
『どうも、先ほどの一撃で赤龍帝の意識が
…おいおい、まさか――。
『主の考えている通りぞ。ドライグから「相棒の意識が深奥に吹き飛ばされた。歴代の所有者の意識が強すぎてなかに入り込めん!相棒を助けてくれ!!」だそうだ。行くのだろう?』
…当たり前だ。俺の大事な家族だぞ?危険にさらしておくほど俺はできてないんだよ!!
『うむ、わかっておるぞ。意識を連れて行くからの…精神を集中させろ』
俺は試合が硬直しているなか、そっと目を瞑って精神を集中させる。すると、気が遠くなっていき…そのまま意識を飛ばした。