ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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歴代赤龍帝vs現赤龍帝

「――ここは…」

 

俺は目を開くと、白い空間が広がるなかでたたずんでいた。

 

目の前には濃い意識を漏らしている大きな扉がそびえ立っていた。

 

『――ここは相棒のなかだ』

 

声のするほうを見ると――赤い龍がこっちに近づいてくる…ドライグだ。

 

『――ドライグ、そこのなかに赤龍帝がいるのかの?』

 

今度は頭を二つ持つドラゴンがドライグに話しかけながら近づいてきた――ティアマットだ。その背にはエルシャが乗っていて、盛大にジャンプして下り立った。

 

「……すごく濃いわね。ドライグ、ここを開けるために私たちを呼んだのね?」

 

エルシャがそうドライグに尋ねた。

 

『あぁ、そのために要請を出した。――もう幾人か来てくれるはずだ』

 

幾人?ドライグは俺たち以外にも数人に要請したってことか?

 

ちょうどそのとき、後方から複数の気配を感じ取った。

 

俺はそちらに振り向くと、複数の影が現れ、徐々に大きくなっていく。

 

『シャハハハハハハハ!!いきなり呼び出されたと思えば、こういうことかよ!』

 

『仕方がありません。緊急事態なのですよ?笑いどころではありません』

 

ぞろぞろと歩いてきたのは――守鶴たち九体と奏だ。

 

「リュースケ、イッセーの身に何か起きたの?」

 

「見ての通りだ。ここに入ろうとしているが、歴代たちの意識が濃すぎて阻まれている」

 

「――ふーん、そういうことね」

 

上空から声が――そこに飛んでいたのは…花楓とアースだ。

 

「私たちも呼ばれたのだが…なるほど」

 

そう言って着地したアース。

 

……花楓がどうやって来たかはわからんが、この際は問わないでおこう。

 

『主よ、ここにいる全員の力で扉を開く。物理的ではなくオーラを飛ばしておこなう』

 

俺の後ろで待機していたムラクモが八つの頭を動かしながらそう言う。

 

『……すまんな、相棒のために集まってくれて――』

 

『貸し一つじゃ。ドライグ、今度、ゆっくりデートしてもらうぞ』

 

『あぁ、了解した。ティアマット…魂的にな』

 

二体の会話を聞き届けた俺は半身二面の須佐之乎(すさのお)を具現化させた。

 

『チャクラのやり取りか。おもしろい!』

 

九喇嘛(クラマ)たちもやる気のようで、九体とも自身のチャクラを上半身として具現化させた。

 

「私だってできる!」

 

奏も負けじと両手を合わせて上半身のチャクラを具現化させた。

 

「そうね、私だってできるわ」

 

エルシャも体から大出力のオーラを解き放った。

 

『ふむ。私も負けてはいられないな』

 

邪龍の姿となったアースも、黒いオーラを解き放っていた。

 

『妾もだな』

 

ティアマットは青いオーラを解き放つ。

 

『感謝する。相棒、おまえを想ってくれているものが集まってくれたっ!!帰ってこいッ!相棒ッッ!!』

 

ドライグも赤いオーラを解き放った。

 

「まずは私からッ!」

 

宙を飛んでいた花楓が白い光翼を出現させ、黄金と白の光が輝きを強めた。

 

Half(ハーフ) Dimension(ディメンション)!!!!』

 

機械の音声と共に扉をおおっていた黒いオーラが大きく半減する!!

 

「いまよ!扉をこじ開けてッ!!」

 

花楓のかけ声を合図に、全員がオーラやチャクラの半身を扉にぶつけてこじ開けようとする。

 

Divide(デイバイト)!!』

 

花楓の半減の力によって黒いオーラが減少するが、こちらも増加することで侵入を拒んでくる。

 

ギギギィ……。

 

少し開くと、なかから怨念のようなオーラが半身にまとわりつきだす。

 

『――主よ、我らでは限界だ。行ってくれ』

 

ムラクモの言葉に俺は小さくうなずき、須佐之乎(すさのお)を制御しながら扉に近づいていく。

 

『……主、我の力を少しだけ分けてある。使ってくれ』

 

……ありがたい。

 

「――皆、無事でいてくれ」

 

俺はそう言い残して扉のなかへ飛び込んでいった。

 

                    D×D

 

…………。

 

気づくと、そこは白い世界だった。

 

…覚えがある。ここは(セイクリッ)(ド・ギア)の内部だ。歴代の先輩たちを説得しにきたときによく訪れていた。

 

いまそこに俺がいる。

 

……周囲を見渡せば、歴代の先輩の姿。以前のように無表情なのかなと思ったが――。

 

何やら、黒いオーラを立ちのぼらせて、怨恨めいた顔つきになっていた。

 

(ジャガーノー)(ト・ドライブ)……』

 

『……(ジャガーノー)(ト・ドライブ)だ』

 

『あの男を倒すには(ジャガーノー)(ト・ドライブ)しかない』

 

そんな不気味なことを口にしていく。

 

(ジャガーノー)(ト・ドライブ)!?どういうこった!!

 

白い世界の上空に映像が映し出される。そこには――俺がいた!!部長に抱きかかえられた俺!鎧を破壊されて、口から大量の血を吐き出していた。

 

(ジャガーノー)(ト・ドライブ)

 

(ジャガーノー)(ト・ドライブ)しかないだろう』

 

『そう、それしかない』

 

『あの男はそれを求めている』

 

歴代の先輩たちが椅子から立ち上がり、黒いオーラをまとわせながら、不気味な笑みを見せていく。

 

――っ!!俺の体にも黒いオーラが出現していた!それが体を覆っていく!と、同じくして内側からどす黒い感情がうごめきだしていた。

 

……なんだ、これ……。恨み……辛み……憎しみが……俺の中で高まっていく。

 

……あの男を……サイラオーグさんを……倒したい……っ!!力が欲しい……!サイラオーグさんを消滅させたいと……この世から、消し去りたいと……。俺は……!!

 

心までも力に飲み込まれそうなときだった。

 

映像の奥から子供たちの泣き声が届く。子供たちの泣き声。

 

『おっぱいドラゴンが死んじゃったーっ!』

 

『やだよーっ!』

 

『立ってよーっ!』

 

……悲痛な叫びが聞こえる。

 

ゴメンよ、俺はもう……。

 

意識も黒いものに支配されそうなとき、一人の声が白い世界に響き渡った。

 

『泣いちゃダメ――ッ!』

 

子供の声……?

 

映像が移り変わり、とある一人の帽子を被った子供が映しだされた。

 

……あの子供に見覚えがあるぞ…。

 

その子は――リレンクスは、観客席でむせび泣く子供たちに向かって叫んだ。

 

『おっぱいドラゴンが言ってたんだ!男は泣いちゃダメだって!転んでも何度でも立ち上がって女の子を守れるぐらい強くならなくちゃいけないんだよ!』

 

――っ!!

 

それは俺が泣いているリレンクスに言い聞かせた言葉だった。

 

その一声を聞いて、他の子供たちも立ち上がる。

 

『おっぱいドラゴンが負けるもんかッ!おっぱい!おっぱい!』

 

『おっぱい!立ってよォ!おっぱいドラゴンっ!』

 

『おっぱい!』

 

『おっぱいドラゴン!』

 

『ちちりゅーてーっ!』

 

俺を呼ぶ必死な声。……皆、俺は……。

 

聞き覚えのある声も耳に入ってきた。

 

子供たちのいる観客席で応援団長をしていたイリナだ。

 

『そうだよ!皆!!イッセーくん――おっぱいドラゴンはどんなときでも立ち上がって強敵を倒してきたの!だから、応援しよう!!信じよう!!おっぱいドラゴンは皆のヒーローなんだからっ!!!』

 

涙で顔をくしゃくしゃにしながら、イリナは必死で子供たちに訴える。

 

『皆、おっぱいドラゴン好き?』

 

「「「「「「「「「「大好きーっ!」」」」」」」」」」

 

『私も大好きだよ!すごいスケベで、いつもエッチなことを考えているヒトだけど……誰よりも熱くて、諦めなくて、努力して、大好きなヒトのために戦えるヒトだって、私は知ってる!皆も知ってるよね!!』

 

 

「「「「「「「「「「知ってるーっ!」」」」」」」」」」

 

『だから、応援しよう!!声を届けるの!おっぱいドラゴンは!どんなときでも立ち上がって!冥界や天界、いろんな世界の皆のために戦ってくれるんだからーっ!』

 

『おっぱい!』

 

『おっぱい!おっぱい!』

 

『皆も一緒にぃぃっ!おっぱいッ!!』

 

『おっぱい!おっぱい!おっぱい!』

 

『おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!』

 

俺は――知らないうちに涙を流していた。

 

そのときだった――。

 

声が聞こえてくる。俺の知っている声。いつも隣にいて、俺を励ましてくれたヒトの声――。

 

『ねえ、イッセー。聞こえる?皆、あなたを呼んでるの』

 

映像が移り変わり、声の主が映しだされた。

 

俺の視界に紅が映り込む――。

 

紅い――ストロベリーブロンドよりもさらに鮮やかな紅の髪。

 

そう、あの人の美しく紅い長髪は、いつも俺のそばにあった――。

 

鮮やかな紅。

 

血の色と同じ色。

 

けど、いまはそうじゃないと思ってる。

 

気高く、優しくて、温かい。俺を包んでくれる紅――。

 

『私もね。あなたを求めてるのよ?だって、私はあなたのことを……』

 

俺の大好きな女――リアス・グレモリー。

 

俺もあなたのことを……。

 

彼女を思う俺のもとに暗い声が近づいてくる。

 

『さあ、現赤龍帝の兵藤一誠。暴れよう。「(ジャガーノー)(ト・ドライブ)」を発動しよう』

 

先輩の一人が黒いオーラをまといながらそう言ってくる。しかし、俺を呼ぶ声もさらに高まっていく。

 

『おっぱいドラゴン』

 

『がんばって!』

 

『立ち上がって!』

 

『おっぱい!』

 

『おっぱいッ!』

 

あの男の声も聞こえてくる。

 

『どうした、兵藤一誠。――終わりか?これで終わりなのか?そんなものではないだろう?――立ち上がってみせろ。おまえの想いはそんなに軽いものではないはずだッ!!』

 

…しかし、先輩たちは子供たちやサイラオーグさんの声を聞いても邪悪なオーラを揺るがさない。

 

『さあ、あの者を破壊しよう。覇道の力で――』

 

「うるせーよ」

 

俺は先輩たちを見渡すようにして言う。

 

「聞こえないのか?俺を呼ぶ声が――。部長だけじゃない、あんなに大勢の子供たちの声だよ」

 

『いや、天龍は覇王となることが本来の道程。あり得ない。そんなことはあり得ない』

 

「――あり得るんだよ、こいつにはな」

 

先輩の声を遮って、その者は現れた。

 

俺の横に並び立ち、すべてを透かしているような瞳で見ている人物――兄さんだった。

 

「……よく、抑えられたな……イッセー。さすがに肝を冷やしたぞ」

 

「な、なんで兄さんが…?」

 

「手助けにきたんだよ、そのくらい察しろよな…」

 

軽くため息を吐いた兄さん。

 

先輩たちのほうを向いた兄さんは口をひらく。

 

「まっ、そういうことだ。俺の義弟(おとうと)は覇王にはならんよ」

 

「あぁ、俺は……覇王になんてならねぇ。俺は兵藤一誠!ただのスケベで、いくならやらしい王様になってやるッ!」

 

『否、覇王こそが、(ジャガーノー)(ト・ドライブ)こそが、この(セイクリッ)(ド・ギア)に組み込まれた本来の――』

 

『――良いじゃないか』

 

再度先輩の言葉を遮って、その者は現れた。

 

白い光に包まれた男性が一人――。それを見て、先輩が激昂した。

 

『貴様は……ッ』

 

白い光に包まれている男性は俺に向かって言う。

 

『僕は歴代アルビオンの一人だ』

 

――っ。えっ……?

 

アルビオンの……歴代の先輩ってことか?

 

『そう、あなたはあのとき、アルビオンの宝玉をブーステッド・ギアにはめ込んだ。あの宝玉に僕の残留思念が少しだけ乗っていたみたいなんだ。本来の僕はディバイン・ディバイディングのほうにいるだろうけどね』

 

アルビオンの先輩が手を差し伸べる。

 

『――赤龍帝、これも何かの縁だ。あなたを助けよう。僕が持つ半減の力で、ブーステッド・ギアに渦巻くものを抑えてみせるよ』

 

「いいのか?俺は赤龍帝で、ヴァーリじゃないのに……」

 

俺の言葉にアルビオンの先輩が笑む。

 

『あなたはおもしろい。歴代最強の赤龍帝お二人が笑いながら消えていったのもうなずけるんだ。呪いを吹き飛ばすほどの熱意と可笑(おか)しさのあるあなたなら、天龍を、いや、二天龍自体を新しい可能性に導けるのかもしれない。――――だからこそ』

 

先輩が手を天高くかざして、光を広げていった。

 

『あなたはヴァーリ・ルシファーと共に新たなドラゴンになるべきだ』

 

パァァァァッ。

 

淡い白銀の閃光が白い空間に広がり、歴代赤龍帝の先輩たちの黒いオーラを取り払っていく!憎悪の念が半分に消失して、さらに黒いオーラも半分に減っていく。

 

『させるか!!憎しみが!悲しみが!恨み辛みこそが赤龍帝の(セイクリッ)(ド・ギア)なのだッ!呪いを内に込め、怨嗟(えんさ)を吐きながら負をまき散らすことが天龍の――』

 

「――おっぱい。俺はこれに救われた。そして、これからもそれを求めていくぜ」

 

しかし、先輩たちは最後の抵抗で(ジャガーノー)(ト・ドライブ)の呪文を口にしだした。

 

『我、目覚めるは覇の理を神より奪いし、二天龍なり――』

 

ちがう!!俺は違う呪文を独自に唱えだした!

 

「我、目覚めるは覇の理を捨て去りし、赤龍帝なり!」

 

『無限を(わら)い、夢幻を(うれ)う――』

 

「無限の希望と夢を胸に(かか)え、王道を()く!」

 

『我、赤き龍の覇王と成りて――』

 

「我、紅き龍の王者と成りて――」

 

(なんじ)を紅蓮の煉獄(れんごく)(しず)めよう――ッ!』

 

「汝らに誓おうッ!真紅の光輝く未来を見せると!!」

 

俺が最後に唱えた一節に先輩たちは晴れたような表情となった。

 

『――未来。未来を見せる……だと』

 

「そうだ!俺が見せてやる!!いや、俺と見よう!俺と共に見せてやろうぜ!仲間に!!友に!!好きな女に!!子供たちに!!俺たちが未来を見せてやるんだよッ!!!」

 

『未来……。僕たちが……未来を……!破壊ではなく、未来を……!!』

 

そうさ、それができるんだよ、皆で力を合わせればさ!!

 

「行こうぜ、先輩たち!――俺は赤龍帝で、おっぱいドラゴンで、リアス・グレモリーに惚れた男!!兵藤一誠だぁぁぁぁぁあああああああああああッッ!!!」

 

                    D×D

 

映像のなかでイッセーを抱きかかえるリアスの胸が紅く輝き、イッセーの体を紅色のオーラが包み込んでいく。

 

……結局、ムラクモの力を使わなかった――いや、使わなくて済んだのか。

 

俺はイッセーが意識を戻しつつあるなか、白い空間で白く発光していた。

 

「……あまりすることがなかったな。まぁ、(ジャガーノー)(ト・ドライブ)だけは使わなくてよかったよ……歴代赤龍帝の思念も明るくなったことだし、俺も元の体に戻ろうと思う」

 

そう言うと、歴代白龍皇の思念が言う。

 

「最強の歴代赤龍帝のお一人に皆のことを伝えてください。きっと喜ぶと思います」

 

俺は「あぁ」とだけ返して、半分だけ大蛇化していた状態を戻して扉のほうへ駆け出した。

 

――てか、エルシャが蘇ってるの気づいてたんかい!!

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