ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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進級試験とウロボロス
昇格…!?


――ドドドドドドドドドドドオォォォォォォォォオオンッッ!!!!!

 

爆音が鳴り響くなか、俺はすべての攻撃を避けていた。

 

『裁きを受けるがよいッ!!』

 

ドオォォォォォオオンッ!!

 

アルセウスが放った『裁きの(つぶて)』が上空で拡散し、俺に向かって降り注いでくる!

 

ダッシュして回避する俺だが、影から現れたダークライの『シャドークロー』をもろに受けた。

 

「くっ…」

 

回避できず左腕を持っていかれたが、とっさに出したチャクラ糸で左腕を引き戻して傷口にくっ付ける。

 

(しょう)(せん)(じゅつ)で傷口を治癒しながら、雨あられの攻撃をかいくぐり続ける俺。

 

特殊なバトルフィールドで特訓をしている俺だが……、確実に腕を上げているアルセウスたちに苦戦していた。

 

                    D×D

 

特訓が終わり、家へ戻るとリビングへと足を進める…。俺はそのままソファの上に突っ伏した。

 

頭からはプスプスと煙を上げている。さすがに、能力限定でアルセウスたち全員を相手にしたのが体にきた。

 

……早朝なので、そろそろイッセーたちが下りてくる時間帯になる。

 

俺は気合を入れ、用意しておいた服とエプロンに着替えて朝食の準備に入る。

 

調理を始めて数分経った頃、リビングのドアが開いた……誰かな?

 

俺は振り返ってみると、そこにいたのは――アーシアだった。

 

「あ、おはようございます。リュースケさん」

 

「おはよう、アーシア。今日は早いな……当番だっけか?」

 

アーシアはうなずいたあと、かけてあるエプロンを着てキッチンに入ってきた。

 

「え~と…、朝食は何にしますか?」

 

「ん?今日は卵焼きと味噌汁と焼き鮭だな」

 

「わかりました。私は卵や――」

 

「――ちょぉと待ったぁぁ!!」

 

いきなり割り込んできた声。その声の主は……春奈だ。

 

「朝から元気がいいな。おはよう」

 

「うん!あたしが卵焼きを作る!あんたは味噌汁なっ」

 

「は、はい」

 

ちょっと戸惑い気味にアーシアは手に取っていた卵をボールの横に置き、俺が用意しておいた具を切っていく。

 

……大体の状況は先読みしておいたので、俺が焼き魚、アーシアが味噌汁、春奈が卵焼きを作る係りとなる。

 

それから数十分が過ぎた頃――。

 

「ぁ~、おはよ~」

 

「おはようございます」

 

「おは~」

 

起きてきた皆がリビングに入ってくるなり、それぞれがあいさつをして席に着く。

 

それからしばらくして、リアスがリビングに入ってくる。

 

「え~と、イッセーさんを起こしてきますね」

 

そう言ってリビングを出ていったアーシア。味噌汁はちゃんとできているようだ。

 

「でっきたぁぁ!!あたしの手作り卵焼きっ」

 

どうやら、春奈のほうもできたみたいだ。

 

「俺のほうももうすぐで焼き上がるから、各自運んでくれ」

 

俺の言葉に席で待っている皆が反応して、各自盛りつけられていく皿を受け取って席に着く。

 

それから少しして焼き魚が完成すると、突然焼き魚が浮きだして並べてある皿へ次々と乗せられていく……そして、その皿たちも宙へ浮いて各自の眼前で停止したあと、そっと置かれるように並べられていく。

 

「これで少しは楽になっただろう?」

 

その声の発声主は――ミュウツーだ。

 

少女の姿だが、話し方が相変わらずといったところだな。まぁ、かなり強力なサイコキネシスのおかげで楽になったがね…。

 

ミュウツーの眼の光が静まり、完全に並べ終えられた焼き魚たち。

 

――空いている席が六つ。上の一つは俺だが、リアスの横四つはイッセー、アーシア、ゼノヴィア、イリナ。反対側の一つは朱乃だ。

 

「……遅いな。起こしにでも行くか…?」

 

俺はエプロンをかけながらそう言うが、リアスが「もうすぐ下りてきますから」と言うので、俺は自分の席に着く。

 

少しの間、皆の談笑を聞きながら待っていると…リビングのドアが開いて入ってきた。

 

「す、すみません、お待たせしました」

 

「お、おはようございます」

 

「あらあら、朝食の用意ができていますわ」

 

「イリナ、今日の朝食は和風みたいだぞ」

 

「そうみたいね、おいしそう!」

 

五人がそれぞれ席に着いたところで、俺は手を合わせた。

 

「それでは、いただきます」

 

『いただきます』

 

全員が合掌したあと、朝食の時間となった。

 

皆がいろいろな話題を話して食しているなか、俺は特訓に出る前のことを思い出していた。

 

『――龍介、訪問者を呼ぶのだが、その前に訪問の許可を取りたいと思ってな。どうだ?』

 

突然、アザゼルから連絡用の魔方陣が飛んできた…数秒後にはこの質問だった。

 

別に断ることもないので、簡単に許可してやった。アザゼルもそのことは予測していただろうから、何の反応も見せなかった。

 

……ただ、訪問日が未定のため、決まりしだい順を追って説明をしてくれるようだ。

 

そんなことを考えていたためか、箸が止まっていて隣に座っているリエが頬を軽くつまんできた。

 

俺は一言「考え事をしていた」と言って、食事を再開した。

 

                    D×D

 

全員の食器を洗い終わり、イッセーたちを見送りに出たあと…俺は研究室の一端で白音のISの修理をしていた。

 

先日のバアル戦で深刻なダメージを受けたIS。各所の部品が欠損し、新たに入れ替えないとならない状態だった。

 

…まぁ、それは問題ないな。白音にISを授けたときには、部品の一つや二つ…量産していたからな。

 

白音は白虎(びゃっこ)完全解体(オーバーホール)は…してないみたいだった。

 

接続しているノパソを操作して部品の一つ一つの状態をモニタリングする…。

 

その結果、部品の損傷は酷いものだった。外傷がないものも内側は相当なダメージを受けているものが多い…。

 

俺は持ち主の白音のことをふと思い出した…。

 

……ここ最近だが、どこか元気のない様子だった。普段通りに接してはいるものの、イッセーの近くにいるとすごく落ち込んでいるような状態になっていた。

 

そのことを黒歌に尋ねたが…、

 

『にゃ…、だいじょうぶよ。誰もが通る道だし、女の子の秘密に男の子が入り込むのはどうかと思うにゃん』

 

…と、簡単に返されてしまった。

 

そう言われれば俺は何も言えなくなるし、何事もないのなら……そっとしておいたほうがいいのか…?

 

そんなことを思ったが、俺はすぐに部品の取り換えと修理に取りかかった。

 

先ほども言ったように、部品の損傷が酷い。修理できるものはするとして、取り換えにも問題はないが……外装の損傷は部品自体がないために修理するほかない。だから、少しの間だけ白音には武装なしで戦ってもらうことになる…。

 

完全に修復するには、軽く見積もっても半月はかかるな……。

 

白音には悪いが、白虎はしばらく没収ということになる。

 

そんなことを考えながら、俺は修理に集中していった。

 

                    D×D

 

俺は修理に熱中しすぎて、時間が経っていたことをすっかり忘れていた。

 

研究室を出て部屋を出る。リビングに行くと全員が集合していて、テーブルを取り囲むように立っていた。

 

「――お、ちょうどいいところに来たな。龍介」

 

俺が入ってきたことに気がついた者――アザゼルが俺を呼んできた。

 

何事かと思って近寄ると、アザゼルの隣にはサーゼクスが座っており、その隣にはグレイフィアが座っていた。

 

その三人の前には、イッセーと祐奈と朱乃とリアスが座っている。

 

アザゼルが「ここに座れ」とジェスチャーで隣の席を指していたので、俺はアザゼルの隣の席に腰をおろした。

 

すると、確認を取ったサーゼクスが話を切りだした。

 

「先日も話した通り、イッセーくん、祐奈くん、朱乃くんの三名は数々の殊勲(しゅくん)を挙げた結果、私を含めた四大魔王と上層部の決定のもと、昇格の推薦が発せられる」

 

……そうだったな、サイラオーグとの戦いが終わってすぐにサーゼクスから直接イッセーに昇格の話が持ちかけられていた。当の本人はすごく混乱していたけどな…。

 

悪神ロキや『(カオス)(・ブリ)(ゲード)』と戦っていたことが大きな功績になったらしい。

 

…少しは手伝っていたとはいえ、俺から見てもリアスたちの死線率は相当なものだ。

 

それらが認められて昇格できるとは、俺としても鼻が高い気分だ。

 

「昇格なのだが、本来、殊勲の内容から見ても中級を飛び越えて、上級悪魔相当の昇格が妥当なのだが、昇格のシステム上、まずは中級悪魔の試験を受けてもらいたい」

 

俺はイッセーの狼狽っぷりを見ていて、おもしろさのあまり口をつけていたお茶を吹きそうになった。

 

アザゼルがグラスのお酒をあおりながら言う。

 

「イッセーと祐奈と朱乃は、殊勲だけ考えれば上級悪魔になってもおかしくはないんだが、悪魔業界にも順序があるらしいからな。特に上がうるさいそうでな。おまえらに特例を認めておきながらも順序は守れと告げてきたそうだ。――とりあえず、中級悪魔になって、少しの間それで活動しろ。そのうち、再び上から上級悪魔への昇格推薦状やらが届くはずだ。なーに、中級の間に上級悪魔になったときの計画を本格的に練り出せばいい」

 

簡単に言ったアザゼルにイッセーが訊き返した。

 

「ちゅ、中級とか、じょ、上級悪魔……っスか!!お、俺にそんな資格があると……?」

 

サーゼクスはイッセーの問いに笑顔でうなずいた。

 

「うむ。テロリストと悪神ロキの撃退は大きな功績だ。そして先日のバアル戦でも見事な戦いぶりを見せてくれた。何よりもイッセーくんは冥界の人気者『乳龍帝おっぱいドラゴン』でもある。昇格の話が出てもおかしくないのだよ。いや、むしろ当然の結果だろう」

 

例の特撮番組もポイントになっているらしい。そう言えばこの間、『スポンジドラゴン』とかいう洗い場用スポンジを売り出したらしい…ここのキッチンにもあるがな。サイラオーグ戦のときの会話を商品にするところに商魂のたくましさをしっかりと感じ取れた。

 

「昇格推薦おめでとう、イッセー、朱乃、祐奈。あなたたちは私の自慢の眷属だわ。本当に幸せ者ね、私は」

 

リアスは満足そうな笑みを浮かべている。自慢の眷属が評価されて、心底うれしいのだろう。

 

「イッセーさん、祐奈さん、朱乃さん、おめでとうございます!」

 

「うん、めでたいな。自慢の仲間だ」

 

「中級悪魔の試験とかとても興味があるわ!」

 

「イッセーくん、昇格推薦おめでとう!」

 

「ウチも応援してっからね~」

 

アーシア、ゼノヴィア、イリナ、レイナーレ、ミッテルトの教会クインテットも喜んでいる。

 

「ぼ、僕も先輩に負けないように精進したいですぅ!」

 

ギャスパーも前向きなコメントをかけている。以前より前向きに、そして明るくなってきている。

 

「私も早く昇格して高給で安定した生活が欲しいところです」

 

ロスヴァイセは相変わらず堅実な夢を持っていた。

 

「ライザーお兄さまのチームではもう太刀打ちできないほどの眷属構成になってしまいましたわね」

 

と、レイヴェルが言う。…ハハハ、イッセーは禁術を使わずとも勝てるさ。

 

「フェニックスのところは長男がトップレベルのプレイヤーじゃないか。あそこのチームはバランスがいい」

 

アザゼルがそう言う。

 

「うちの長兄は次期当主ですもの、強くなくては困りますわ。それはともかく、さすがリアスさまのご眷属ですわ。短期間で三人も昇格推薦だなんて。ね、白音さん?」

 

レイヴェルが白音にそう投げかけた。

 

「……当たり前。――おめでとうございます、兄さま、祐奈さん、朱乃さん」

 

笑顔を見せる白音だが、若干テンションの低い。

 

「ま、その三人以外のグレモリー眷属にも直に昇格の話が出るさ。おまえらがやってきたことは大きいからな。強さって点だけで言えばほぼ全員が上級悪魔クラス。そんな強さを持った下級悪魔ばかりの眷属チームなんざレア中のレアだぜ?」

 

アザゼルがそう言う。そう、他のメンバーにも大いに昇格があり得るってことだ。あれだけの死線を潜り抜けてきているからな…、眷属全員の評価がないわけじゃあるまい。

 

祐奈と朱乃が立ち上がり、サーゼクスに一礼する。

 

「このたびの昇格のご推薦、まことにありがとうございます。身に余る光栄です。――リアス・グレモリー眷属の『騎士(ナイト)』として謹んでお受け致します。魔王サーゼクス・ルシファーさま」

 

「私もグレモリー眷属の『女王(クイーン)』として、お受け致します。このたびは評価していただきまして、まことにありがとうございました」

 

祐奈と朱乃はサーゼクスたち上の者のご厚意を受ける。

 

「イッセーくんはどうだろうか?」

 

サーゼクスがイッセーに問う。イッセーも立ち上がり、サーゼクスに深々と頭を下げた。

 

「もちろん、お受け致します!本当にありがとうございます!……正直、夢想だにしなかった展開なので驚いてますけど、目標のために精進したいと思います!リ……部長にも応えられて俺も満足です!!」

 

リアスのことを名前で呼びかけて言い直したイッセーに、サーゼクスはイタズラな笑みを浮かべて言う。

 

「おやおや、イッセーくん。私の手前でもリアスのことは名前で呼んでくれてかまわないよ」

 

「いえ、しかし……」

 

かしこまるイッセーに、サーゼクスは嬉々として続ける。

 

「ハハハ、むしろ呼んでくれたまえ!私も嬉しいし、見ていて幸せな気持ちになれる」

 

「も、もう!お兄さま!茶化さないでください!!」

 

リアスが顔を赤く染め、立ち上がって怒り出した。

 

「ハハハ、いいではないか。なあ、グレイフィア」

 

サーゼクスがグレイフィアに話しを振る。グレイフィアはいつもと変わらないクールな表情のまま言った。

 

「私風情が分に過ぎた事など言えません。……ですが、この場の雰囲気ならば名前で呼び合っても差し支えないかと」

 

「……グレイフィア……お義姉さままで」

 

さすがにリアスもグレイフィアにそう言われれば顔を赤くして黙るしかなかったようだ。うんうんとうなずくサーゼクス。

 

「よしよし。それならばついでに私のことも義兄上(あにうえ)と呼んでくれてかまわないのだよ!さあ、呼びたまえ、イッセーくん!お義兄(にい)ちゃんと!!」

 

その頭部をグレイフィアのハリセンが激しく叩く。

 

「サーゼクスさま、それはこの場ではやり過ぎです。――いずれ。いずれではありませんか」

 

「……そ、そうだな。性急すぎるのがグレモリーの男子の悪いところかもしれない……コホン」

 

俺の隣でその様子をゲラゲラと笑って見ていたアザゼルは息を吐くと改めて言う。

 

「てなわけで来週、イッセー、朱乃、祐奈の三人は冥界にて中級悪魔昇格試験に参加だ。それが一番近い試験日だからな」

 

来週ね……。あまりゆっくりはしていられない期日だな。

 

「来週ですか。急ですね」

 

祐奈がそう言い、朱乃も続く。

 

「中級悪魔の試験って、確か、レポート作成と筆記と実技でしたわよね?実技はともかく、レポートと筆記試験はだいじょうぶかしら」

 

不安な表情になっているイッセー。アザゼルが言う。

 

「心配するな。筆記は朱乃と祐奈ならまったく問題ないだろう。悪魔の基礎知識と応用問題、それにレーティングゲームに関することが出されるが、今更だろうしな。レポートは……何を書くんだ?」

 

アザゼルがグレイフィアに問う。グレイフィアは立って説明をし出す。

 

「試験のときに提出するレポートは砕いて説明しますと、『中級悪魔になったら何をしたいか?』と目標と野望をテーマにして、『これまで得たもの』と絡めて書いていくのがポピュラーですね」

 

ふ~ん、レポートねぇ……。前世のことを思い出したが、あんな大変な思いをしなくていまはいいと思った。

 

「なんだか、人間界の試験みたいですね」

 

イッセーがそう言うと、アザゼルがサーゼクスのほうに視線を向けた。

 

「ま、倣ってんだろう?」

 

サーゼクスがうなずく。

 

「中級悪魔に昇格する悪魔の大半は人間からの転生者なのだよ。そのため、人間界の試験に倣ったものを参考にして、昇格試験を作成している」

 

すると、アザゼルはこっちに視線を向けて言った。

 

「そう言えばさ、龍介は向こうでは社会人だったんだろ?そういうのは経験済みのはずだろうから、イッセー、祐奈、朱乃、このお兄さんに遠慮なく教えてもらえ」

 

その言葉にイッセーたち三人の目が輝いてこちらを見つめだす。

 

「……やめろ、その目で俺を見るな。俺は教える気もないし、さっきグレイフィアが説明したことを中心に考えれば、おのずと思い浮かぶだろう。俺は二度とレポートに関わりたくはないんだ…」

 

その言葉を聞いて、三人がシュンとしてしまったが…少し言いすぎたかもしれないが、俺は気にしないようにした。……あとで、何かお菓子でも出してやろう。

 

すると、アザゼルが膝を叩いてイッセーたちを見渡した。

 

「何はともあれ、レポートの締め切りが試験当日らしいから、まずはそれを優先だ。だが、イッセー!!」

 

「は、はい?」

 

アザゼルがイッセーに指を突きつけて言う。

 

「おまえはレポートの他に筆記試験のための試験勉強だ!基礎知識はともかく、一週間で応用問題に答えられる頭に仕上げろ!!安心しろよ。おまえの周りには才女、才児がなんでもござれ状態だ」

 

「任せなさい、イッセー、私がいろいろと教えてあげるわ」

 

「イッセーくん、僕も改めて再確認したいから一緒に勉強しよう」

 

「あらあら。じゃあ、私も一緒に勉強ね」

 

リアス、祐奈、朱乃が教えるのなら心強いだろう。

 

「えーと、じゃあ、実技のほうは?」

 

イッセーがそう言うとサーゼクス、グレイフィア、アザゼルがきょとんとした顔で見合わせた。

 

「それは必要ないんじゃないか?」

 

と、アザゼルがごく当たり前のように言う。

 

…俺もその答えには同感だ。

 

「え……、でも、俺的に一番得点を稼げそうなところなんでぜひともトレーニングとか欲しいところなんですけど!!」

 

イッセーがそう言ったが、アザゼルは手を横に振った。

 

「だから、いらないって。ぶっつけ本番にしとけ。そこは試験当日じゃないとわからないかもな。朱乃、祐奈、おまえらも実技の練習はいらんからレポートに集中しとけよ」

 

「「はい」」

 

返事をする朱乃と祐奈。

 

「まぁ、おまえの実力なら実技は余裕だろうよ。アザゼルの言う通り、実技の試験内容は当日にしかわからないが……取れるものは少しの間、何もしなくたって取れるさ。それより、筆記のほうを重点にしておけ。そっちが落ちたら、実技でも落ちるぞ?」

 

俺は軽くプレッシャーをかける。そのほうがイッセーは少しでも筆記に集中できそうだしな…。

 

まだ不安に駆られているイッセーは恐る恐る手をあげて質問した。

 

「あのー、最後にひとつだけ。……まことに恥ずかしい話なんですけど、もし落ちたらどうなるんですか?推薦取り下げですか?」

 

サーゼクスは横に首を振る。

 

「いいや、そんなことはないよ。一度挙げられた推薦は、仮に来週の試験で落ちても受かるまで何度でも挑戦できる。よほど、素行の悪いことでもない限りは推薦の取り下げは起こらないよ」

 

その言葉に安堵するイッセー。

 

「それに私はイッセーくんが次の試験で合格すると確信している。イッセーくん自身は突然のことで不安かもしれないが、まったく問題ないのではないかな」

 

魔王から直々に太鼓判を押されたイッセー。

 

「俺、頑張ります!絶対に中級悪魔になります!そして、いずれ上級悪魔にもなります!」

 

気合を入れて宣言するイッセー。

 

「さて、話がまとまったところで、私は少しばかり出かけようと思います」

 

そういえば、先ほどから外出用の格好をしていたロスヴァイセ。

 

「ロスヴァイセさん、どこに行かれるんですか?」

 

イッセーが問うと、ロスヴァイセは遠くに視線を送るようにして言う。

 

「――北欧へ。一旦帰ろうと思います」

 

……はて、いきなりだったわけで…俺は一瞬首をかしげてしまった。

 

「例の件ね?」

 

リアスの言葉にロスヴァイセは静かにうなずく。

 

「ええ、このままでは、力不足だと思いますから。グレモリー眷属は強者と戦う機会が多い。いまのままでは、私は役立たずになりかねません。――『戦車(ルーク)』の特性を高めようと思います」

 

アザゼルが訊く。

 

「ロスヴァイセ、ヴァルハラにアテがあるのか?」

 

「はい、そちら専門の先輩がいましたので。……ヴァルキリー候補生時代、攻撃魔法の授業を重点に単位を取っていたのがここにきて(あだ)になりました」

 

バアル戦後、ロスヴァイセも思うことが多かったようで、実力を発揮しきれなかったことを悔いていた。

 

魔法を得意とするロスヴァイセ。

 

魔力と魔法は似ているが異なるもの…。

 

魔力は超自然現象を自らの力で起こす能力――。具現化できるだけの創造力が必要となる。

 

魔法は超自然現象を発生させる法則を術式、方式で操る力――。術式と方式を常に計算できるだけの演算能力が必要となる。

 

……まぁ、この理論はここだけのことであって…一部を除いて俺には当てはまらない。

 

確かに魔法を使うときには演算をして魔法陣の術式を変化させて発動している。だが、ほかに俺の用いる魔法には……覚えて身につけた魔法『能力系(アビリティ)』やアイテムを持って使う魔法『所持系(ホルダー)』、四系統魔法と口語(コモン)魔法、虚無や精霊魔法など、いろいろな魔法を持ち合わせている。

 

――と、まぁ、面倒なことはここまで。

 

アザゼルが言う。

 

「リアスチームのバランスを見ると魔法の使い手はいたほうがいい。できることなら『兵士(ポーン)』か『僧侶(ビショップ)』でロスヴァイセの長所を伸ばしたほうが良かったかもしれないけどな。リアスの眷属は圧倒的に火力が高いが、全体的に見ると防御面が薄く、テクニック――ハメ技にやられやすい。過去、実戦でもゲームでもそれでつけ込まれているからな。要はチーム全体的に脳みそまで筋肉傾向なんだよ。『やられる前にやれ』ってな。それを魔法で補うのはいいことだ」

 

アザゼルの評価に全員が苦笑いする。リアスも恥ずかしそうに顔を赤く染めていた。

 

サーゼクスが言う。

 

「だが、そちらのほうが好みだというファンはとても多い。戦術タイプのチームやテクニック重視のチームだとひと目では判断が付きづらく、派手さも少なめなためか、玄人のファンが好むからね」

 

アザゼルもうなずいた。

 

「だな。リアスとサイラオーグのチームは派手さを売りにしつつ、戦術を高めたほうが将来のプロ戦で盛り上がるぞ」

 

俺もアザゼルの言葉にうなずいた。

 

……将来、デビュー直後に対戦を申し込んでおきたいと思ったのは…内緒にしておこう。

 

「何はともあれ、そのパワーを補う力は必要だ。ロスヴァイセがヴァルハラに行ってもいいんだろう、リアス?」

 

アザゼルがリアスに訊く。

 

「ええ、自ら伸ばしたい点があるのなら、断る理由はないわ」

 

リアスも合意する。それを見て、ロスヴァイセは礼を口にする。

 

「ありがとうございます。あ、それと学園の中間テストのほうはすでに問題用紙を作成しておきましたのでご心配なく」

 

ロスヴァイセの報告にリアスと朱乃がうなずいた。

 

「さすがね」

 

「そうでしたわね。学園でもそろそろ中間テストの時期ですわ」

 

俺はそれを聞いて、速攻でイッセーのほうを向いた。

 

「やべぇ!そうだ、中間テストあるんだった!!べ、勉強あんまりしてねぇぇぇっ!!!」

 

立ち上がって叫んだイッセー。

 

……まぁ、中間試験のほうぐらいなら…勉強会を開いてやらんでもないかな?

 

俺は同情と哀れみの目をイッセーに向けて考えていた。

 

頭を抱えているイッセーをよそにサーゼクスがレイヴェルに言う。

 

「レイヴェル、例の件を承諾してくれるだろうか?」

 

「もちろんですわ、サーゼクスさま!」

 

快諾するレイヴェル。イッセーと同じ表情になる俺。

 

「例の件ってなんですか?」

 

そうイッセーがサーゼクスに訊いた。

 

「うむ。レイヴェルにイッセーくんのアシスタントをしてもらおうと思っているのだよ。いわゆる『マネージャー』だね」

 

……ほほぅ、イッセーにマネージャーか。

 

サーゼクスは続ける。

 

「イッセーくんもこれから忙しくなるだろう。人間界での学業でも、冥界での興行でも。グレイフィアはグレモリー眷属のスケジュールを管理しているが、それでも身はひとつだ。どうしてもまかなえきれない部分も今後増えるだろう。特に細かい面で。それならば、いまのうちからイッセーくんにはマネージャーをつけるべきだと思ってね。そこで冥界に精通し、人間界でも勉強中のレイヴェルを推薦したのだよ」

 

…うん、マネージャーがついてくれるなら、今後のスケジュールに無駄がなくなる。俺としても、イッセーのプライベートには入り込まないようにしているから…どうしてもそこら辺のことが気になっていたりしていた。カミュが主に見ていたが、冥界に行ったらほとんど世話ができない状態に陥っていた。だから、レイヴェルがしっかりとイッセーのスケジュール管理や手伝いなどをしてくれれば、こちら側としても安心できる。いろいろと大変そうになりそうだがね…。

 

「さっそくで悪いのだが、レイヴェル、中級悪魔の試験についてイッセーくんをサポートしてあげてほしい」

 

サーゼクスの言葉にレイヴェルは立ち上がり、自信満々に手をあげる。

 

「わかりました。このレイヴェル・フェニックスめにお任せくださいませ。必ずやイッセーさまを昇格させてみせますわ!さっそく、必要になりそうな資料などを集めてきます!!」

 

言うやいなや部屋を飛びだしていくレイヴェル。

 

「レイヴェルにとっちゃ、将来の自分の生き方にも大きな意味を持つからな、おまえの昇格は」

 

などとアザゼルは言う。…俺はそこの事情をある程度は把握している。

 

「白音、油断しているとおまえの大好きなお兄さんがレイヴェルに取られちまうぞ?」

 

アザゼルが白音をあおる。白音はレイヴェルに対抗心を燃やしているので、その手の話をすると何かと言うのだが――。

 

「…………」

 

とうの白音は顔をうつむけ、心ここにあらずの状態だった。

 

『………?』

 

白音の無反応に皆が首をかしげていた…たった一人を除いて。

 

家族の心配をする俺だが、別の用を思い出して席を立つ。

 

離れる前に一瞥したが……昇格試験と中間テストのふたつの難題にイッセーは頭を抱えていた。

 

                    D×D

 

俺は自室に戻り、手元にひとつの魔方陣を展開した。

 

『――おう、どうした?リュースケ』

 

顔と声の主――飛段はテンションのある声で返答をしてきた。

 

「ん?どうしたんだ、そんなにテンションのある声音と表情は」

 

俺が問うと、飛段は笑顔で返してきた。

 

『そうだな、俺はいま――デート中だ』

 

「はぁぁぁぁぁ!?」

 

……デ、デートだと!?

 

俺は驚きを隠せないまま、飛段に訊いた。

 

「デートって、いつからいたんだ?相手は…?」

 

『なに、驚いてんだよ。そうだな…最近付き合い始めたばかりだぜ?』

 

俺の問いに焼夷弾級の返答をした飛段だが、さらにその上をいく――核弾頭級の言葉を口にした。

 

『――「女王(クイーン)」だ。元ディオドラ眷属の』

 

「……マジかっ!」

 

俺は声がひっくり返った状態で叫んだ。軽く苦笑している飛段。

 

『付き合いだした理由は省くが、結構前から気が合ってたんだぜ?』

 

「……そ、そうか。もしかして、角都もか?」

 

俺の問いに飛段は『そうだった』と思い出したように言う。

 

『角都の旦那もできてるぜ?二人で「兵士(ポーン)」。いま、デート中で渋谷にいるとよ』

 

「……あいつもデート中か。って、二人!?」

 

『リュースケほどじゃないだろうよ。あ、俺たちは秋葉原にいる』

 

「……通りで人の声が賑わっているわけだ。じゃあ、他は留守なのか?」

 

俺の問いに飛段は笑顔で答えた。

 

『留守の奴らは全員リュースケを待ってるぞ!よかったな、ハーレム王よぅ!!』

 

……ハーレム王って、俺は望んでいないのに…。

 

俺の疲れた表情を見て、笑顔で言う飛段。

 

『いいじゃねぇか、将来は子宝だな!俺は一人で十分だぜ。複数を相手にするのはきつそうだからな』

 

「…俺って、どこにハーレムの要素があるんだ?」

 

『なにを今更…全部だろうが、全部がハーレムの要素だろうよ』

 

平然とした口調で言う飛段。いまでも死にかけていますよっ。

 

『おっ、リアナが呼んでるから、俺は行くぜ?じゃあな』

 

「あぁ、またな」

 

そこで魔方陣がふっと消えた。

 

「……って、イッセーの昇格試験のことを言うの忘れてたっ」

 

俺は当初の目的を思い出して叫んだが、時すでに遅し。

 

「まぁ、いいか。後日、向こうの皆に伝えればいいか」

 

ベッドに横になった俺。目を瞑ると、そのまま意識を持っていかれた…。

 

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