ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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訪問客

――あれから数日。夕食後、俺は例の訓練場のある一角で煙を上げながら突っ伏していた。

 

…なぜかって?

 

「ゴメン、ちょっと強く撃ち過ぎたわ」

 

その声の主が俺の傍まで駆け寄り、手を差しだしてくれる。

 

俺はその手を取って立ち上がり、ケガをしたところに掌仙術を当てて治癒する。

 

「…奏、フェイントはいいんだが…九喇嘛の腕を使った上に雷神衝(らいじんしょう)を放つのは……俺がもたん」

 

俺は特訓の相手として奏の攻撃を生身で受けていた。

 

「それは仕方がないでしょ。写輪眼を相手に燕返しだけでは読まれるし、覚えたての『螺旋丸(らせんがん)』も使ってみたかったから…我慢して」

 

目を細くして、ため息を吐きながら言う奏。

 

俺は攻撃の衝撃が大きかった腹部を抑え、治癒を急ぐ。

 

……いまは推薦を受けたイッセー、祐奈、朱乃は家で勉強会をしているんだろうな。

 

俺がそんなことを考えていると――、

 

バヂヂヂヂヂヂッッ!!

 

大きなスパークノイズが遠くで……ん?どんどん近くなっていないか?

 

俺はその音のほうに顔を向けると、超巨大な蒼雷の球体が迫ってきていた…ッ!!

 

「ちょっ……待った!待った!!」

 

静止をかけるが超巨大な蒼雷の球体は止まるわけもない。

 

高速で近づいてくる球体……仕方なく、俺は眼を白眼に変えてかまえた。

 

――(はっ)(けく)(うへ)(きし)(ょう)!!

 

両方の手から練り上げたチャクラの真空波を放出し、空中で超巨大な蒼雷の球体にぶつける。

 

ドオォォォォオオンッッ!!

 

フィールド全体に振動が伝わっていく…。

 

球体は霧散して、四方八方へ放電していった。

 

……雷球(ディアラ)か。ということは――、

 

「メイル、不意打ちはないだろう…?」

 

俺は雷球(ディアラ)を放った本人に視線を向けた。

 

「練習だからいいでしょ?実戦なら、尚更だよ~」

 

…………。

 

そう言われては、返す言葉もないな…。

 

と、その言葉が合図だった。

 

パキパキパキ…!!

 

俺の足元が凍っていき、膝辺りまで氷が張りついていた。

 

その氷は徐々に脚を凍らせていき、太もものところまで迫っていた。

 

……メイルによる絶対零度の冷凍攻撃だ。

 

(セルシウス)で表せば −273.15 ℃、K(ケルビン)で表せば0K。熱力学上、極低温の領域だ。

 

すべてを凍らせ、圧力を0とする……どうすれば解放されるのか?

 

……なら、その逆のことをすればいい。

 

俺は氷と服の間に極わずかにできている真空間に結界を張る。そして、魔法を駆使して体面で絶対零度を下回る……いや、上回る温度――ケルビン温度-0℃の極高温空間を作りだす。

 

パキンッ――。

 

結界が耐えられなくなり、ひび割れてしまった…。 

 

ひびが広がり、全体に行きわたると…音を立てることもなく霧散してしまう。

 

その直後に、絶対零度によって作られていた氷が解け始める…俺の作りだした-0℃の極高温によって。

 

――リバース・インフェルノ。

 

それが、この魔法の名だ…第二の天照(あまてらす)と呼んでもいい術だ。

 

氷が解けていくなか、俺は白眼で後方より神速で迫ってくる二人を捕捉(ほそく)した。

 

その二人が触れる瞬間、俺は両手にチャクラを集中させて後方へもっていく。そして、二人の腕をつかむと…そのまま前方に投げ飛ばす。

 

クルクルと空中で回転して着地した二人――スコルとハティだ。

 

「惜しかったなぁ~。もうちょっとでリュースケの首を狩れたのに」

 

「……ハティ、首じゃなくて…」

 

「あぁ~、そうだったね。リュースケとデートするの、私だから!」

 

「……あっ、ずるい!」

 

ハティがダッシュで飛び出し、少し遅れてスコルも飛び出す。

 

フェンリルの腕と脚、耳と尻尾を出現させているスコルとハティが神速で突っ込んでくる!

 

「……そろそろ、頃合いかな?」

 

俺は解凍し終えた脚を確認すると、後方へ飛び退きながら魔法を使用する。

 

(テイク)(オーバー)!!」

 

叫び声と共に全身が光に包まれ、手と脚、頭部と腰下が変化する感覚に襲われる。

 

光が止むと、俺の体はスコルとハティと同様の姿となっていた。

 

――動物の魂(アニマルソウル)

 

対象と同じ姿に体を変化させ、能力も同じものを行使することができる。

 

俺は着地と同時にスコルとハティへ神速で突進し、攻防戦を始める。

 

神速でぶつかり合う両者。空気が裂けている感覚を全身に感じるほど速い。

 

二人の攻撃を(さば)ききることはできないが、当たらないように避けることはできる。

 

そんな風に攻防戦をしていると、ハティがバランスを崩して攻撃の手が緩む。

 

俺はそこを見逃すことはなく、ハティを突き飛ばしてスコルに衝突させた。

 

「「キャッ!!」」

 

悲鳴をあげて床を転がるスコルとハティ。

 

俺は魔法を解除して人間の姿に戻る。

 

「うっ…!?」

 

突然襲ってきた激痛に表情を歪ませた。その激痛が走った腹部に手を当ててみると……赤い液体が流れ出ていた。

 

「……油断しちまったか」

 

血痕のあとを辿ると、ハティの腕の爪に俺の血が付着していた。

 

血は(おびただ)しいほどに腹部から流れ出ていた。

 

「……さすがにこれはヤバいな」

 

俺は腹部の傷を塞ごうと術を発動させようとした………が、術が発動しない!?

 

「…………っ」

 

気が遠くなっていく…。どんどん、目の前が暗くなって――。

 

                    D×D

 

気がつけば、目の前には見覚えのある天井があった。

 

少しの間、脳を起こすのに先ほどまでのことを思い出してみる…。

 

…………。

 

いちおう思い出せたが……俺はぶっ倒れたようだな。

 

俺は体を起こすと、腹部に巻いてあった包帯を解いてみる。

 

……傷口は見当たらない。花楓か奏辺りが治癒してくれたみたいだ。

 

喉が渇いてきたので、リビングに下りようと部屋を出た。

 

階段を下りると、リビングにアザゼルを含めた遠山家に住んでいる全員が集まっている気配を感じ取った……いや、白音以外だな。

 

リビングに入ると、全員の視線がこっちに向いた。俺は特に気にもせず、キッチンに入って水をコップに注いで飲んだ。

 

それから空いている席に着くと、リアスから話の全容を聞いた。

 

「……発情期ねぇ」

 

俺は黒歌を一瞥すると、黒歌はペロッと小さく舌を出す。

 

……反省の色なしか。

 

いつものシスコンぶりはどこへやら…。そう思えてならないほど黒歌は冷静でいる。

 

「…ま、イッセーが手を出さなければいいだけだな。白音を想うのなら、我慢してみせろ」

 

俺がそう言うと、イッセーは少し間を置いてうなずいた。

 

そのあと、リアスのお願いと約束でイッセーがそれを呑む。

 

「おらおら、バカップルが暑苦しいぞ」

 

アザゼルが半眼で言うと、握り合っていた手をパッと離すイッセーとリアス。

 

すると、アザゼルが「バカップルぶりは二人のときだけで…」という話をアーシアたちに振ったが……眷属の女子とレイナーレたち五人は安堵していたり、何やら意味深なことを言っていた。レイヴェルは…ライザーをいじめるようなことを言っていた。

 

俺たちは半笑いするだけ…。

 

「……ったく、いい女たちに恵まれているな、イッセーは。それとついでの報告だ。――朱乃」

 

アザゼルが朱乃に話題を振る。

 

「バラキエルは承諾した。俺もそれでいいと思う。あとはおまえの意思しだいだ」

 

「父が……そうですか。わかりました。これ以上、眷属に迷惑はかけられませんものね。――ギャスパーくんもがんばっているのですもの、私も近くに必ず」

 

…なにやら、二人の会話から堕天使関係の話をしているように思えた。まぁ、あれ以来、朱乃とバラキエルの間にあった溝は埋まっていっているらしく、カミュからも朱璃さんに会いに行ったときのことを時々だが聞いている。

 

アザゼルは朱乃の言葉を聞いてうなずく。

 

「わかった。――と、それは置いておくとして、他の皆もちょっといいか」

 

アザゼルが改まった声音で俺たちを見渡す。

 

「明日、この家に訪問者を呼ぶ予定だ。リアス、それについての了解を取りたい」

 

「あら、初めて聞いたわ。突然ね」

 

俺の家なので、先に許可を出しているが…リアスが好き勝手に家のあちらこちらを改造している(俺の許可あり)のだから、そちらのほうでも許可がいるようだ、な…。

 

「ああ、ちょっと、な。…龍介には先日許可を取ってもらっている」

 

アザゼルの表情はいつなく真剣なものになっていた。

 

「おまえたちはその訪問者に確実に不満を漏らす。いや、そいつに対して殺意を抱いてもおかしくないはずだ」

 

アザゼルの発言に一部を除いて皆一様に顔を見合わせて驚いる。不満は確実な上に殺意を抱くほどの者が来るのだから、当然の反応だろう。

 

「イッセー、おまえがいま頭に過ぎった集団があるだろう?それで半分正解だ」

 

「――っ!先生、ヴァーリたちがまたここに?」

 

ロキ戦のときにヴァーリたちはここを拠点に動いていた。

 

別に、次に会うとしても死闘を繰り広げるわけじゃあるまいし、なにより…ここの料理を気に入ってくれているので、潰せば損をするのは確実なこと。…潰されはしないけど。

 

「ヴァーリはテロリストですもの。一時共闘したけれど、ここにもう一度用があるというのなら、戦う準備ぐらいはして当然だわ。けれど、極端な話、すぐに殺意を抱くというのはないのではないかしら。話では京都でもイッセーたちを助けてくれたみたいだし、私個人の見解では、敵だけれど英雄派ほどの危険性はないと思うわ。会うぐらいならまあ……警戒は最大限でおこなうけれど」

 

リアスの意見にアザゼルは息を吐きながら、頬をかく。

 

「まあ、ヴァーリチームに関してはおまえたちも曖昧な立ち位置であることは認識しているだろう。ただな……。いま言ってもしょうがない部分があってな。明日の朝まで待ってくれ。それでわかる。だが、俺の願いとしては決して攻撃を加えないでくれ。それだけだ。話だけでも聞いてやればそれで十分なんだ。――うまくいけば情勢が変化する大きな出会いになるかもしれない。俺も明日の朝、もう一度ここに来る。――だからこそ、頼む」

 

総督のアザゼルがイッセーたちに頭を深く下げた。そうまでして招き入れたい重要な訪問者みたいだ。訝しげしている遠山家の皆。

 

会議が終了したあと、俺と龍巳は玄関で帰り際のアザゼルに呼びとめられた。

 

「龍介と龍巳、明日の訪問者が来たときに一番に対応してくれ。おまえら二人なら殺意を抱くことはないと思うし、龍巳は…その逆になるだろうな」

 

アザゼルの言葉に、俺と龍巳は納得した表情になる。

 

「わかったわ。私としてはうれしいことね」

 

「よくわかった。明日の朝、対応は一番にしよう」

 

アザゼルは俺と龍巳の言葉にうなずき、一言「ありがとう」と言い残して帰った。

 

俺と龍巳はリビングに戻る。その途中で俺は龍巳に一言釘を刺しておく。

 

「龍巳、皆にバレないように普段通りの状態でいてくれよ」

 

「わかっているわよ。ちょっと、興奮が止まりそうもないだけ」

 

…そこが不安なんだが。

 

俺は不安になりながらも、普段と変わらぬ態度で龍巳とリビングに戻った。

 

                    D×D

 

翌朝、インターホンが鳴らされ、俺は龍巳と一緒に出る――。

 

玄関前に立っていたのは黒いゴスロリ衣装を着た細身の少女。

 

その少女は一言、簡素に漏らした。

 

「久しい、お姉ちゃん、ドライグ」

 

少女は俺の隣にいる龍巳を見たあと、後方を見ていた。

 

「オ、オ、オ、オ、オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ、オーフィス!?」

 

後ろを見ると、イッセーが一歩後退し、指を突きつけて叫んでいた。

 

玄関に集まっていた皆が臨戦状態に入っていた。数人はその後方で静観しているが…。

 

俺と龍巳はその場でオーフィスの前に立つ。

 

「やめろ、俺はこの家を壊したくはない」

 

ひとつの動作もせず、俺は仙術を練り込む。

 

ゴゴゴゴゴゴゴ――。

 

俺が仙術を練り込んだだけで、家全体が大きく揺れだした。

 

それを見て、イッセーたちは出しかけていた矛を収める。

 

「ほらほらほら!昨夜言ったじゃねぇか!誰が来ても殺意は抱くなってよ!……って、遅かったか」

 

アザゼルが飛んできて俺たちの間に入って言うが、周囲を見渡して頬をかいた。

 

「……話は、なかでしよう」

 

俺の言葉で話し合いの場をリビングに移した。

 

イスに座る俺、龍巳、アザゼル、オーフィス、リアス、朱乃。朱乃とリアスは俺たちの反対側に座り、オーフィスは龍巳の膝の上に座っていた。

 

その周囲を囲むように立っている皆。

 

静寂のなか、俺は口を開いた。

 

「……アザゼル、俺たちはことの成り行きを理解しているつもりだ。天使、堕天使、悪魔のスタッフや上の者を騙してまでオーフィスを招き入れたのは、無血であいつらを瓦解させられると踏んだからだろう?」

 

俺の言葉にうなずくアザゼル。

 

「あぁ、そうだ。俺はこいつを招き入れるためにいろんなものを現在進行で騙している。だが、こいつの願いは、もしかしたら『(カオス)(・ブリ)(ゲード)』の存在自体を揺るがすほどのものになるかもしれないんだ。……無駄な血を流さないために、それが必要だと判断した。改めておまえたちに謝り、願う。――すまん、頼む。こいつの話だけでも聞いてやってくれないだろうか?」

 

アザゼルが再びイッセーたちに頭を下げた。プライドの高いアザゼルが何度も頭を下げる。

 

「俺は先生を信じます。俺がここにいるのは先生のおかげですから」

 

この大きな意味を理解したのだろう、イッセーはそれだけ言い籠手を消した。

 

眷属の皆も顔を見合わせつつ手に持っていた武器をしまう。

 

……皆がそれぞれの想いで呑み込んでくれた。

 

俺も仙術を解いて落ち着く。

 

ここに来ていないギャスパー、自室で寝込んでいる白音、北欧に一時帰還しているロスヴァイセたちもここにいたら、同じように呑んだことだろう。

 

俺はふと思ったことをアザゼルに訊いた。

 

「…なぁ、肝心のヴァーリたちは来ないのか?」

 

そう訊いた直後、玄関に人と魔物の気配を感じ取った。

 

廊下を歩いてくる気配――。

 

トントン…。

 

控えめなノック音と共にリビングのドアが開く…。

 

「お、お邪魔します」

 

そこには――魔法使いが被るだろうとんがり帽子にマントという出で立ちの少女と、灰色の毛並みを持つ大型の狼が立っていた。――ルフェイと神喰狼(フェンリル)だ。

 

「ごきげんよう、皆さん。ルフェイ・ペンドラゴンです。京都ではお世話になりました。こちらはフェンリルちゃんです」

 

物腰やわらかく、丁寧にあいさつをくれるルフェイ。…フェンリルのほうは、こちらにはまったく敵意を示していないようだ。

 

ルフェイとフェンリルの後ろから着物を着こんだ金髪の女性が、俺を目がけて抱きついてきた。

 

俺は隙を見せないように、右手の人指しと中指を重ねて……その金髪グラマーな女性――金華の額をつついた。

 

「い、痛いにゃん!」

 

「そういうハグは妹の黒歌と白音にしてやれ」

 

頬を膨らませて抗議してきた金華を軽くいなす俺。

 

…玄関のほうからは気配を感じないところからすると、どうやらこの二人と一匹がオーフィスの護衛と見ていいようだ。

 

「話、したい」

 

イッセーをじっと見つめているオーフィス。

 

アザゼルも念を押す。

 

「お茶してやれ。このセッティングをするため、俺は他の勢力を騙しに騙してんだからな。これがバレて悪い方向に進んだら、俺の首が本当の意味で飛ぶんだよ」

 

「そのときは、俺が介錯(かいしゃく)を請け負うぞ?」

 

俺の冗談にアザゼルは「やめてくれ」と言わんばかりの顔をした。

 

俺は席を立つと、「何か、菓子でもだそう」と言ってキッチンに入る。

 

「……確か、なかに作り置きしているやつがあったような……」

 

冷蔵庫のなかを見ると、奥にいくつか作り置きしていたプリンを取り出した。

 

「…あったぞ。遠山家特製の手作りプリン」

 

トレイに乗せている人数分のプリンを運んで、一人ずつテーブルの上に並べた。

 

……もちろん、ルフェイの足元に座っているフィンリルにも、皿に盛りつけて置いてやる。

 

プリン以外にも茶うけの菓子を用意しておいた。

 

オーフィスは龍巳の膝の上で食べている…。まるで、二人羽織のような光景だな。

 

ルフェイは頬に手を当てて満足そうに食べており、金華は遠慮ということを知らないのか、プリンを平らげた上に茶請けの菓子を食べていた。まったくの緊張を見せていない…。

 

その反対に、イッセーたちは緊張した態度でプリンを食べながらチラチラと目を配らせている…。

 

「…………」

 

プリンを食べ終えて、じっとイッセーを見つめているオーフィス。

 

「そ、そ、それで、俺に用ってなんでしょうか……?」

 

イッセーは口を引きつらせながら、笑みを無理矢理浮かべ、訊く。

 

オーフィスはお茶を口にし、ティーカップを置くと口を開いた。

 

「ドライグ、天龍をやめる?」

 

会話のキャッチボールで、いきなり暴投を投げつけられたイッセー。だが、笑顔を絶やさず声を絞り出した。

 

「……いや、言っている意味が……」

 

「宿主の人間、いままでと違う成長している。我、とても不思議。いままでの天龍と違う。ヴァーリも同じ。不思議。とても不思議」

 

オーフィスはイッセーとヴァーリの成長が歴代たちと違うことが気になっているようだ。

 

オーフィスは続ける。

 

「曹操との戦い、バアルとの戦い。ドライグ、違う進化した。鎧、紅色になった。初めて。我の知っている限り、初めてのこと」

 

イッセーの真『女王(クイーン)』のことは筒抜けみたいだ…。

 

オーフィスはさらに続けた。

 

「だから、訊きたい。ドライグ、何になる?」

 

オーフィスは首をかしげながら訊く。

 

イッセーが「ん~」と考えている…。――と、イッセーの左腕に籠手が出現して、ドライグが皆に聞こえるように声を発す。

 

『わからんよ、オーフィス。こいつが何になりたいなどと、俺にはわからん。わからんが……おもしろい成長をしようとしているのは確かだ』

 

イッセーは会話の頼みの綱が現れたことで、安堵していた。

 

オーフィスはイッセーの籠手に視線を移して話を続ける。

 

「二天龍、我を無限、グレートレッドを夢幻として、『覇』の力の呪文に混ぜた。ドライグ、なぜ、覇王になろうとした?」

 

『……力を求めた結果だろうな。その末に俺は滅ぼされたのだ。「覇」以外の力を高めることにあのときは気づけなんだ。俺の赤が紅になれるなぞ、予想だにしなかった』

 

「我、『覇』、わからない。『(カオス)(・ブリ)(ゲード)』の者たち、『覇』を求める。わからない。グレートレッドも『覇』ではない。我も『覇』ではない」

 

『最初から強い存在に「覇」の理なぞ、理解できるはずもない。無限とされる『無』から生じたおまえと夢幻の幻想から生じたグレートレッドは別次元のものだったのだろう。オーフィスよ、次元の狭間から抜け出てこの世界に現れたおまえは、この世界で何を得て、なぜ故郷に戻りたいと思ったのだ?』

 

「質問、我もしたい。ドライグ、なぜ違う存在になろうとする?『覇』、捨てる?その先に何がある?」

 

質問を質問で返す。イッセーや数人の者には理解ができていないと思う…。

 

「……実に興味深い。龍神と天龍の会話なんてそう見られるもんじゃない」

 

アザゼルは目を爛々と輝かせながら双方の会話を聞いていた。……龍巳がいるの忘れてやがるな?まぁ、ここに住みついて長い時間が経過しているから、仕方ないか…。

 

すると、次のオーフィスの質問を受けた途端、ドライグの様子が激変した。

 

「ドライグ、乳龍帝になる?乳揉むと天龍、超えられる?ドライグ、乳を司るドラゴンになる?」

 

それを聞いたドライグは――過呼吸気味な様子となっていた。

 

『うぅ……こいつにまでそんなことを……。うっ!はぁはぁ……!!意識が途切れてきた!カウンセラーを!!カウンセラーを呼んでくれぇぇぇぇっ!!!』

 

精神的なダメージを受けすぎたせいで、ドライグが壊れ気味になっていた。

 

イッセーは懐から薬を出して、籠手の宝玉に振りかける。

 

「落ち着け、ドライグ!ほら、薬だ!」

 

『……あ、ああ……す、すまない……。この薬、き、効くなぁ……』

 

繊細すぎる天龍の片割れに俺は悲哀の視線を向けた。…エルシャの隣で話を聞いていたティアマットが懸命に笑いをこらえているのをスルーする。

 

「我、見ていたい。ドライグ、この所有者、もっと見たい」

 

三再びイッセーをじっと見つめるオーフィス。

 

アザゼルは息を吐いて、イッセーの肩に手を置いた。

 

「てなわけで、数日だけこいつらをここに置いてくれないか?オーフィスはこの通り、おまえのことを見ていたいんだとよ。そこに何の理由があるかまではわからないが、見るぐらいならいいだろう?」

 

オーフィスに興味を持たれたイッセー。

 

助け船を出してもらおうとリアスへ視線を送っていたが――。

 

「イッセーがいいなら、私はかまわないわ。もちろん、警戒は最大でさせてもらうし、何かあったら、全力で止めるしかないでしょうね。それでいいなら、私は……呑むわ、アザゼル」

 

俺はリアスの返答に内心笑いそうになりながら…うなずく。

 

あとは…イッセーの返答だな。

 

「俺もOKですよ。ただ、試験が近いんで、そちらの邪魔だけはしないでくれるなら」

 

最低限の条件だけを出してイッセーは折れた。アザゼルがイッセーの頭に手を置く。

 

「毎度悪いな、イッセー。大切な試験前だってのに、おまえに負担をかけちまって。――だが、これはチャンスなんだ。うまくいけば各勢力を襲う脅威が緩和されるかもしれん」

 

アザゼルに頭を下げられ、断ることができなくなったイッセー。

 

「俺が言える義理じゃないが、オーフィス、金華、こいつらは大事な試験前なんだ。邪魔だけはしないでやってくれ」

 

アザゼルの願いに、

 

「わかった」

 

「適当にくつろぐだけにゃん♪」

 

オーフィスも金華も了解してくれる。

 

怪しく半眼で二人を見ていたイッセーにルフェイが何かを突き出した。――サイン色紙だ。

 

「あ、あの!!この間のバアル戦!感動しました!!差し(つか)えなければ、サインをください!」

 

……お~、モテるねぇ、イッセーは。…まぁ、乳龍帝のファンでもあるから、自然な流れだな。

 

「へいへい」

 

イッセーは苦笑いしながらルフェイのサインに応じる。

 

こうして、妹龍神(オーフィス)とルフェイ、金華、フェンリル(ハティとスコルの親)を迎え入れ、イッセーたちの試験日まで共に過ごすこととなった。

 

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