ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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災難

昇格試験当日、俺たちは遠山家の地下にある転移用の魔方陣の前に集合していた。

 

イッセーたちの服装は駒王学園の制服。鞄も手にしている。

 

試験会場となる昇格試験センターに行くのはイッセーと祐奈と朱乃、マネージャーのレイヴェルの四人だ。

 

俺やアザゼルたちは冥界まで付いて行くが、会場近くのホテルで待機する予定だ。

 

転移は一気に会場まで行くとのこと。まずはイッセーたち受験者とマネージャーのレイヴェルだけ。

 

そのあと、俺たちがホテルにジャンプ。

 

直接ジャンプする理由は――長くなるので省く。

 

「純血であり、姫でもあって、魔王の妹でもあるリアスと、それの眷属下僕悪魔であり、赤龍帝でおっぱいドラゴンなおまえとは身分違いの恋愛ってことになる。貴族社会でそんなニュースが出てみろ。そりゃ、こぞっておまえたちの様子をうかがいたくもなるだろう?一般市民の女性の間じゃ、身分違いの恋がキャーキャー言われているようだぞ」

 

と、アザゼルがイッセーにそう言っていた。

 

……俺は悪魔でないため、冥界で騒がれていないわけでもないが…イッセーたちに比べれば、マッチの火程度の広まりだった。

 

「お兄さまのもとにもマスコミが取材を申し込んできていて大変なことになっているそうですわ」

 

レイヴェルもそう言っていたな。ライザー……草不可避。

 

イッセーがきょろきょろと見渡して言う。

 

「ギャスパーは見送りに来ていないのか」

 

「あいつなら、一足早くここで転移して、冥界――グリゴリの(セイクリッ)(ド・ギア)研究機関に行ったよ」

 

アザゼルがそう答えた。

 

「――っ。あいつ一人で、ですか?」

 

予想もしてなかったのだろう答えに驚くイッセー。

 

「バアル戦が終わってすぐにな。あいつ、泣きながら俺のところに来たんだよ」

 

『先輩たちのように強くなりたいんです!もう、守られるだけじゃ嫌です……!僕はグレモリー眷属の男子だから、情けない姿だけはもう嫌なんです……!』

 

ギャスパーはアザゼルにそう懇願したらしい。

 

「引きこもりの上に臆病だったあいつが、それだけの決心をして一人でグリゴリの門を叩いたんだ。生半可な決断じゃないだろう。今頃、研究員指導のもと、自分の(セイクリッ)(ド・ギア)と向き合い始めたはずだ」

 

「そういうことだから、試験に集中しとけ、イッセー」

 

俺の言葉にうずいたイッセー。

 

――と、イッセーの視線がオーフィスと金華とルフェイに向く。

 

「オーフィスや金華たちはどうするんですか?」

 

アザゼルに訊く。

 

「俺たちと共にホテル行きだ。さすがに会場まではマズいだろう」

 

確かに、試験会場に連れていってはいろいろと問題が出かねない。アザゼルの判断は適切だろう。

 

「それにな。おまえらの試験が終わったら、一度サーゼクスのもとにオーフィスを連れていくつもりだ。いい機会だからな。オーフィスもおまえが行くなら付いていくと言っている。だから、おまえたちも試験が終わったら、その足でサーゼクスのところに行くぞ」

 

「わかりました。何ができるかわかりませんけど、オーフィスをサーゼクスさまと会わせるのには大きな意味があるんですよね?」

 

「ああ、少しでもいい方向に向かわせたいからな。無理だと思われていた話し合いが可能かもしれない。大きな一歩だ。オーフィスは何を考えているかわからないが、だからこそ、戦いを避けられるかもしれない。うまくいけば敵の組織自体を瓦解させ、分散できるだろう。そうすれば各個撃破も可能となる。――オーフィスの『蛇』を失えば、奴らの打倒も予想以上に早まるだろうさ。この案件を申し出てきたヴァーリに感謝したいところだ」

 

…だろうな。ヴァーリがアザゼルにオーフィスを任せたのが事の始まりだ。

 

「……隠そうとしたのかもな。――脅威から」

 

俺はぼそりとつぶやいた。首をかしげているイッセーたち……数人は気がついているみたいだが。

 

オーフィスはテロ組織の親玉に立っていた。どの勢力も狙ってはいたが、下手に手を出せずにいただけ。姉の龍巳もいるわけだし…。

 

先にイッセーたち四人が試験会場に転移しようとしたときだ。

 

「待って」

 

リアスイッセーたちを引き留めた。そして、イッセーに近づいていき――イッセーの頬にキスをした。

 

「おまじないよ。イッセー、必ず合格できるって信じているわ」

 

イッセーはリアスにもらった『おまじない』でテンションが上がったせいか、俺たちがいることを忘れ、顔を赤くしながら言う。

 

「俺、絶対に合格します!ご、合格したら、俺とデートしてください!!」

 

イッセーがデートの誘いを告げると、一瞬だけポカンとしたリアス。すぐに満面の笑みで答える。

 

「うん、デートしましょう。――約束よ。私、待ってるから」

 

ガッツポーズをするイッセー。気合がさらに入ったようだ。

 

「……ったく、人前でイチャイチャしやがって……若いっていいね!」

 

おもしろくなさそうに嘆息したアザゼル。

 

「てなわけで、行ってきます!」

 

イッセーたち四人は俺たちに一時の別れを告げ、転移の光に包まれていった。

 

「――ひゅ~、噂以上にあついね~」

 

後ろを向くと、いつもの浴衣姿で頭の後ろに両手を組んでニヤついている飛段と、私服姿でやれやれとため息を吐いている角都が立っていた。

 

「よぅ、約束通りきてやったぜ」

 

飛段が組んでいた片手をあげてそう言った。

 

「あぁ、そうか。……今日は一緒じゃないんだな」

 

俺の言葉に飛段はため息を吐いて言う。

 

「リュースケなぁ、今日はリアナたちの保釈日だろ。全員手続きがあんだから、冥界の魔王領に行ってんぞ」

 

俺は「そうだったっけ?」と、おとぼけ(まなこ)で返した。

 

溜め息を吐く飛段。

 

「まぁ、そのことはまた後日に話すとして…行くんだろ?」

 

「そうだな、そろそろ飛ぶ時間だ」

 

俺は部屋に三つの大きな魔方陣を作りだす。

 

「それじゃ、飛びますか」

 

指定されている座標を魔方陣に記録する。この場にいないギャスパーとロスヴァイセ以外の全員が乗ったのを確認して、俺は魔方陣を同時に起動した。

 

                    D×D

 

光が収まるとそこは広いロビーだった。無事に予定していたホテルに飛べたようだ。

 

「ここがグラシャラボラス領のホテルね」

 

リアスが周囲を見渡してつぶやいた。

 

そう、俺たちは中級悪魔の試験会場の近くにあるホテルに転移した。…イッセーたちが受ける試験会場の近くね。

 

カウンターでチェックを受けた後、各自が自由に行動する。…俺は屋上に出て冥界の空気に触れていた。

 

肩まで伸びて結んでいる髪が、温い風に吹かれて小さくなびく。

 

「――結構高いわね、ここの屋上」

 

俺の隣に立っていたのは……レヴィだ。

 

「そうだな、下の連中は見えるか?」

 

柵の上に手を置いて下を見下ろすレヴィ。

 

「見えるわ。本当、高いわ」

 

玄関口に集まる取材者たちが、小さく見える。……例えるなら、(あり)のよう。

 

「――たかぁ~い。落ちたらどうなるんだろう?」

 

「やめてくれ、アリス。冗談に聞こえないから」

 

俺は引きつった顔でレヴィの隣に立っているアリスを見る。

 

「冗談よ。リュースケったら」

 

バカにした笑顔で笑うアリス。

 

しかし、その表情が黄昏のものに変わる…。

 

「釈放かぁ…。ちょっと寂しいかもね、私」

 

遠くを見つめるアリス。すると、レヴィも黄昏る。

 

「本当、早かったわね。私もカテレアのこと…心残りだわ」

 

「…………」

 

俺は何も言えないでいた。

 

その様子に気がついたアリスは、黄昏の表情を悪戯のある笑みへと変えた。

 

「な~に?心配しなくても平気よ、リュースケ。あの子が最愛の人と新しい歩みを始めるんだから、何も心配する必要はないでしょ?」

 

そういうアリスだが、俺はアリスが二人を心配していることはわかっている。

 

…だから、俺は微笑んで答える。

 

「そうだな、あの二人は二度と『(カオス)(・ブリ)(ゲード)』に関わることはしないだろうし、幸せに過ごしてくれるならそれ以上のものはない」

 

その言葉に二人は「そうだね」と微笑んで答える。

 

俺はここに来る途中で買った缶コーヒーの口を開け、一口飲む。

 

「ところで、リュースケ」

 

「ん?」とレヴィのほうを向く俺。

 

すると、レヴィとアリスはお互いの顔を見合わせて――同時に言う。

 

「「いつになったら、子作りしてくれるの?」」

 

「――っ!!けほっ!!」

 

二人の爆弾発言に、俺は飲み込んだコーヒーが違うところに入って(むせ)た。

 

「お…、おまえら…。いきなり、何ちゅうことを言ってくんだよ…」

 

言葉がおかしくなるぐらい慌てた俺。二人は真面目な表情で続ける。

 

「だって、やっとリエと恋仲になれたんだから…私たちも受け止めてもらわないとね?」

 

「そうだね。じゃないと、私はリュースケを……」

 

アリスの言葉の最後の部分を聞き取れなくて、何と言ったのかはわからなかったが…とにかく、聞かなかったことにしておいたほうが身のためかもしれないな。

 

「まぁ、ライバルは多いけど…」

 

「そのほうが、自分を磨くことができるわ」

 

「ねー」と、何やら二人だけで話が進んでいるようだった。

 

「――いたいた!!」

 

すると、屋上入り口付近から聞き慣れた声がした。

 

「……ルリエル?それに、ベラナたちも」

 

俺は声のしたほうを見て呼んだ。

 

「なにを楽しそうに話してるの?リュースケ」

 

マキアが俺の前に立って顔を覗きこんでくる。

 

「えーとね――」

 

そのマキアやルリエルたちに耳うちをするレヴィとアリス。

 

「……なるほど、ね」

 

サルベリアが頬を薄く紅潮させて、俺のほうを見てくる。

 

「それなら……」

 

ルリエルが姉妹の六人に小さくつぶやく。

 

「それは……」とか、「もう少し…」とか……話しの端しか聞き取れないために、俺は全容をつかめないでいた…。

 

少しして、意見がまとまったのか……七人はうなずき合ったあと、俺のほうを向いてゆっくりと近づいてくる…。

 

七人とも若干だが、頬を紅潮させているように見えた。

 

俺はいつもと違う七人の迫力に少し気圧(けお)されたのか、じりっと足を擦って後ずさる。

 

近づいてくる七人に対して俺はゆっくり後ずさったが、背中に策が当たり足を止めた。

 

完全に逃げ場を失った俺。七人はそんな俺を押し倒してきた。

 

恍惚な瞳で俺を見る七姉妹たち。

 

「…リュースケ、子作りしましょ」

 

俺はその言葉を聞いて、背中に冷や汗をかく。

 

「お、おい…ここは屋上――」

 

そう言おうとしたが、ルリエルが言葉を被せてきた。

 

「安心して。屋上と下の階の階段には結界を張ってあるの。しかも、すごく強力なやつ。それに、私たち以外に誰もいないわよ?」

 

それを聞いて、俺は背中に大量の冷や汗をかく。

 

…………なんつう行動力してんだよっ。

 

俺は押し倒された状態で、どうやって逃げ出すのかを考えていた。

 

俺の脳内では、A龍、B龍……数人の俺が緊急会議をしていた。

 

あぁでもない、こうでもないと議論は出るだけで…まとまらない様子だった

 

そんなとき、俺の服のなかに何かが入って……なでなでと這ってきた。

 

「うぉっ……!!」

 

俺は一瞬感じた感覚に、全身を震わせて奇声をあげてしまった…。

 

「…ふふ、かわいい」

 

…誰が言ったのだろう?

 

誰の声かも判断できなくなるほど血が上っている俺。

 

「…わ、わかった、わかったから。せめて順を踏んで――」

 

逃げの一手で言ったつもりだったが、逆に肯定をしてしまったと後悔した。

 

「……え?順を踏んで…?リエとしてないの?」

 

ベラナが目を点にしながら、そう言う。

 

「い、いや…まだ、だが…」

 

俺がそう言うと、姉妹たちはお互い顔を見合わせて……俺の上から退いてくれた。

 

「…残念ね。本命のリエとしてないのなら、するわけにもいかないもの。ちゃんと約束事はあるのよ?私たちのなかで」

 

ルリエルがそう言うと、姉妹たちはうんうんとうなずいた。

 

……まぁ、なんだ。いちおうだけれど、命拾いした状況なのかな?これ。

 

「…そう、なのか?」

 

俺はゆっくりと起き上って見渡した。

 

「そういうこと。ロビーに戻りましょう」

 

そう言って屋上の階段へ向かうベネチア。

 

姉妹たちも階段へ向かいだす。

 

「戻るわよ、リュースケ」

 

微笑んで手を出してくるルリエル。俺はルリエルの手を取って立ち上がり、一緒に階段へ向かう。

 

「ねぇ、リュースケ」

 

「…何だ?」

 

ルリエルが笑みを向けて言う。

 

「また、増えそうね。家に帰ったら覚悟しておかないといけないかもね」

 

それを聞いて俺は……、

 

「そうだった…」

 

頭を抱えた。

 

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