「リュースケ、こっち」
俺たちがロビーに戻ると、黒歌たちが手を振ってきた。
「悪いな、遅くなっちまって」
俺は皆のところに行くと、詫びの言葉を入れる。
「ううん、私たちもさっき集まったばかりよ。それより、少し早い昼食にしましょう?」
奏がそう言う。
「昼食ねぇ…。意外と長い時間屋上にいたんだな…俺」
苦笑する俺は、アザゼルのところに行く。
「龍介、レストラン行くぞ。もちろん貸し切りだ」
貸しきりって…そりゃそうか、この大人数じゃあな。
レストランへ移動する俺たち…。
その途中、それぞれの会話が俺の耳に入ってくる。
そんななか、俺の袖を軽く引っ張るものがいた…。
「…ん?どうした、ユー」
少女――ユーは、メモに書いた丸ゴシックな字を見せてきた。
『たまには、外食するのもいいと思う』
その瞳には薄らと興奮の光が浮いていた。
「そうだな、料理を堪能するも料理の腕を上げる工夫の一つだと思う」
『龍介はこれ以上、上達しないで十分』
そうユーに言われてしまえば、何も言い返すことができない俺。代わりに微笑むことぐらいだ。
レストランに入ってそれぞれが好きな席に着く。
「さぁて、何を頼もうかな」
俺はメニューを開くと、ひとつひとつ見ていく。
「俺は昼酒だ」
そう言って店員に酒を注文しているアザゼル。
「ほどほどにしとけよ」
近くに座っている俺がそう忠告するが…、
「潰れねぇ程度に飲むぜ」
調子のいいアザゼルはそう言ってスルーしやがった!!
それから数分が経ったとき――。
アザゼルが突然、魔方陣を展開した。
『せ、先生!実技なんですけど……!』
魔方陣の向こうから声がし、見慣れた顔が現れた――イッセーだ。
俺はアザゼルの傍に立って会話の様子をうかがう。
「おー、どうした。こっちはホテルのレストランで貸し切りの昼酒中だ」
『実技の試験なんですけどね!あ、あの、俺も祐奈も朱乃さんも問題ないというか、むしろ俺たち……』
「圧倒的、だったろう?」
にやけるアザゼルの言葉に向こうにいるイッセーがうなずく。
「当然だ。おまえら、下級悪魔のなかでは異例の強さを誇るからな。そこに試験に行くのは強くても中級悪魔の上クラス相当だぞ?で、おまえらの実力はというと、上級悪魔クラスだ。特にイッセーはトリアイナや真『
『……知りませんでした。俺――俺たち、そんなに強くなっていたんですね』
イッセーの言葉を聞いて、俺は嘆息した。
「おまえらが相手にしてきたのは、伝説級がゴロゴロのヴァーリチーム、北欧の悪神ロキと最悪の魔物フェンリル、それに最強の
……そうだな。よくボコっている俺はともかく、
「よくもまあ、これだけのメンツと巡り合ったよ、おまえの惚れた女は」
『はい、リアスは最高の女性です!!』
イッセーがそう言うと、アザゼルはいやらしい声音で近くに座っているリアスに声をかけた。
「おい、リアス。イッセーが『リアスは最高の女性です』だってよ」
アザゼルの言った言葉を聞いて、手元のフォークを止めて顔を真っ赤にしているリアス。
『ちょ、ちょっと、先生!何、それを報告してるんですか!!』
慌てて問い詰めるイッセーだが、時すでに遅しというもの…。
「ははっ!リアスの奴、おまえのそれを聞いて真っ赤っかだぞ!!ったく、お熱いこって!クソ!涙が出てきやがる!!俺、独り身を極めっかな、ちくしょうッ!!!」
悔しさを入り交らせた声音で言う。
独り身って…。完全にいじけてるな、アザゼル。
アザゼルは気を取り直して続ける
「ま、リアスにもちょうど言ってはいたんだよ。リアス自身が猛トレーニングをして強くなることもないってな」
さすがに猛特訓まではしないでいいとは思う…。そこは、アザゼルと同感ってところだ。
「おまえの惚れた女が持つ一番の武器は、巡り合わせの良さだ。グレモリー眷属の豊富さは他の上級悪魔が持つ眷属の比じゃない。ライザーの野郎も言ってたことらしいな。こいつばかりは教えて得られるものじゃない。そいつが生まれながらにして持ってるものが必要だ。そういうのは今後も続くもんさ。俺的にはさっきも言った生存率の高さを評価したい。修羅場を全員体験して生存するなんざ、奇跡を通り越してイカレてるレベルだ」
イカレているレベルねぇ…。俺たちも関与しているんだから、それも影響しているんだろうさ。
「何はともあれ試験は終わったんだろう?センターの転移魔方陣でこっちのホテルまで移動してこい。合否はまだだが、こっちで打ち上げをしよう」
向こうでは、イッセーたち四人の歓喜した声が魔方陣を通して聞こえてきた。
イッセーとの連絡はそこで終わり、アザゼルは息を吐いた。
「悪いな、龍介。俺だけ話しちまってよ」
「かまわないさ」
俺はそう言って自分の席に戻った。
D×D
「てなわけで、試験お疲れさん。乾杯」
アザゼルがそう言うと注がれたグラスを
イッセーたち四人がホテルに移動して、ここで試験の疲れを労っている。
「どうだった?」
イッセーの横に座るリアスがそう問う。
「えーと、そうですね。どちらも手応えがありました。これも皆が協力してくれたおかげです。でも、実技でちょっとやり過ぎまして……」
実技で相手を赤龍帝の力で吹っ飛ばした上に、会場の壁に穴を空けてしまったことを述べるイッセー。
「壊してしまった壁の修理代はこちらで払っておくから、気にしなくていいわ。けれど、今後他の中級悪魔と出会っていざこざに発展したとしても、いきなり本気で殴りかかってはダメよ?あなたは現時点でかなりの強さなのだから」
リアスに注意されるイッセー。
「イッセー、おまえは上級悪魔……いや、ひいきして言えば最上級悪魔に匹敵しないとは言えないほどの実力を身につけてきている。中級悪魔クラスの相手なら、鎧を身にまとって軽く吹かせば裕に倒せる。少し学んだな、力加減を覚えることを」
俺は軽く笑いながら言うが、イッセーは顔を赤くしてうなだれてしまった。
イッセーはそのまま左腕を凝視しだす…ドライグと話しているのだろうな。
「おいしいですねぇ~」
俺の隣に座っているリエは、幸せそうな表情で京豆腐の豆腐料理を堪能していた。
俺は相変わらずのリエに苦笑してしまう。
「…………」
反対側に座っているユーは、無言で出ている料理を食べていた。一瞬で目の前にあった料理はなくなり、ユーの口のなかへ瞬間移動するという珍現象が起きている…いつものことながら。
――と、視線を移した先で微笑ましい光景が視界に映り込んだ。
「ほら、白音さん。これとこれとこれを食べたほうがいいですわ」
「……別に取ってもらわなくても自分で食べられる」
「私だって好きでお世話しているわけではありません。あなたが元気にならないとイッセーさまが悲しむんです」
「……わかった。食べる。……ありがとう」
「いいえ、こちらこそ。元気になってもらわないと張り合いがありませんもの」
という白音とレイヴェルのやり取りを見かけた。
家では毎日口喧嘩している二人。初めて会ったときなんか、上空で激戦を繰り広げていたものな…。鳥猫、腹のなかを見せ合った仲だからこそ、仲良くなれたのかもしれない…思い人が同じなだけに。
「……我、じーっとドライグを見る」
…レストランの隅ではじーっとイッセーを見つめているオーフィス。もぐもぐとパスタ料理を口に運んでいた。そのオーフィスの隣で口についたソースを口拭きで取ってあげている龍巳がいる。
金華とルフェイもレストランの隅の席で甘い物を食べているようだ。
フェンリルは姿を見せていないが、俺の影に隠れている。ルフェイにスコルとハティが「お父さんにも食べさせてあげたい」と懇願した。結果、ルフェイは文句を言わず笑顔で「フェンリルちゃんをお願いします」と言って預けてくれた。もちろん、俺は影を操って食事を運んでいる。
金華は、はぐれ悪魔であり、冥界では指名手配中のため、猫耳と尻尾をしまっており、ルフェイと同質のローブをまとっている。
気や魔力、その他のことは心配いらない。試作してあった腕輪をつけているため、その効力で、その手の感知をされることはない。だから、三人は怪しまれずに共に行動できている。
俺は手を動かしながら、怪しまれないように影を動かしている状態だ。「右を見ながら左を見れ」と言われているような状況と差ほど変わりない…。
アザゼルたちが
少しすると、アーシアが話にまざる…回復のことについて話しているみたいだ。
それから少しして、俺が食を終えようと口元を拭いたときだった。
……俺――いや、この場の全員が違和感を感じ取ったようだ。食事と会話を止め、険しい表情になっている。
つかつかと近づいてくる人影――金華だ。
猫耳と尻尾を出して、ピクピクと耳を動かしている。その口元は皮肉気な笑みを浮かべていた。
「ありゃりゃ、ヴァーリはまかれたようにゃ。――本命がこっちに来ちゃうなんてね」
それを聞いた瞬間、俺は一気に仙術を練り込む。
『――きます!敵襲です!!』
花楓の
見覚えのある霧が俺たちの周囲にたちこめて、辺りを包み込んでいった――。