ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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禁術と変身

俺は龍巳の前に現れた直後――サマエルの攻撃に向けて、右腕を払って相殺した。

 

いまの俺の挙動に驚いている曹操とゲオルク。……サマエルの攻撃を払い退けたからな。

 

――俺は左眼の視力が低下しだしたのを確認した…禁術の反動がきたことを。

 

「…どうやって抜け出した?サマエルの…神の毒の中から」

 

曹操は俺が抜け出したと思っているらしい。だから、俺は言った。

 

「抜け出したんじゃない。――夢と現実を結び、変えただけだ」

 

その言葉に驚愕する周囲。

 

「――イザナギだな?リュースケ」

 

角都が近くまで歩み寄ってきて、術の名を口にした。

 

「あぁ、その通りだ。――イザナギ。己に不利な事象を『夢』に、有利な事象を『現実』に変える…。写輪眼の瞳術のなかで禁術に指定している究極の幻術、それが『イザナギ』だ」

 

現にサマエルは目標を見失ったために、俺の入っていた塊を解放して舌を収納していた。

 

「でもよ、それじゃ…おまえ……」

 

飛段が寄ってきてそう言う。

 

「そうだな、もうすぐ術の反動で左目の視力を失う」

 

ほとんど見えていない左目に、懐から取り出した黒い眼帯をつけた。

 

「さて、仲間たちを苦しめたお返しをしないとな……曹操?」

 

俺は角都と飛段に「離れていろ」と距離を取らせて、神の呪いを身にまといだす。

 

その状況に曹操たちだけでなく、皆の表情が驚愕していた。

 

「――ドラゴンソウル」

 

ドンッ!と爆発する音と共に俺は神の呪いに包まれていく。

 

周囲が真っ暗になり、視界がゼロになる…。

 

漆黒が晴れたとき、俺の視線はサマエルと同じ高さにあった。

 

腕を軽く動かしてみる…自由に動く。

 

脚は…東洋の龍と同じで長い。

 

背中にある堕天使の翼を動かしてみると…力強く体を浮遊させることができる。

 

「サマエル化…だと!?」

 

曹操が驚愕の表情でこちらを見ている。

 

《これが俺の使う変身魔法の上位種だ。ドラゴンの力の一部にでも触れられれば、能力と体の一部を得られる。俺はイザナギを発動している間、サマエルの力をこの魔法に蓄積させていた。直接繋がっていたからな、サマエルと俺は》

 

俺は右手を前に突きだす。すると、低く唸り声をあげたサマエルが俺に向けて右手を突き出してくる。

 

右手から撃ちだした俺とサマエルの攻撃。ブゥゥッゥウン!という音と共に空中でぶつかり、轟音を立てて消滅した。

 

「――曹操!サマエルの制御が効かなくなった!すぐに封印する!!」

 

俺のサマエル化に対して暴走状態と化したらしい。サマエルがゲオルクのいうことをきかなくなっているようだ。

 

俺との相対でサマエルの舌から解放されていたオーフィス。神速でオーフィスを奪取した奏は、龍巳のもとにオーフィスをおく。

 

『オォォォォォォオオオオォォォ……』

 

サマエルは苦悶に満ちた呻き声を発しながら、魔方陣のなかへ消えていく。そして、その魔方陣も消滅していった。

 

俺は漆黒の輝きと共に魔法を解呪して元の人の姿に戻った。

 

まだ慣れていないため、片膝を床について呼吸を整える。

 

龍巳の傍にいるオーフィスは曹操に視線を向ける。

 

「我の力、奪われた。これが曹操の目的?」

 

曹操は愉快そうに笑む。

 

「ああ、そうだ。オーフィス。俺たちはあなたを支配下に置き、その力を利用したかった。だが、あなたを俺たちの思い通りにするのは至難だ。そこで俺たちは考えを変えた」

 

曹操が聖槍の切っ先を天に向ける。

 

「あなたの力をいただき、新しい『ウロボロス』を創りだす」

 

「――ッ!……そうか!サマエルを使ってオーフィスの力を削ぎ落とし、手に入れた分を使って生み出す――。……新たなオーフィスか」

 

血を吐きながら言ったアザゼルの言葉にうなずく曹操。

 

「その通りですよ、総督。我々は自分たちに都合の良いウロボロスを欲したわけだ。グレートレッドは正直、俺たちにとってそこまで重要な存在でもなくてね。それを餌にご機嫌取りをするのにもうんざりしたのがこの計画の発端です。そして、『無限の存在は倒し得るのか?』という英雄派の超常の存在に挑む理念も試すことができた」

 

「……お見事だよ、無限の片方の存在をこういう形で消し去るとはな」

 

「いえ、総督。これは消し去るのとはまた違う。やはり、力を集めるための象徴は必要だ。オーフィスはその点ではすぐれていた。あれだけの集団を作り上げるほどに力を呼び込むプロパガンダになったわけだからね。――だが、考え方の読めない異質な龍神は傀儡(かいらい)にするには不向きだ」

 

「……人間らしいな。実に人間らしいいやらしい考え方だ」

 

「お褒めいただき光栄の至りです、堕天使の総督殿。――人間ですよ、俺は」

 

曹操はアザゼルの言葉に笑みを見せる。

 

ゲオルクが満身創痍のイッセーたちに視線を向けた。

 

「曹操、いまならヴァーリと兵藤一誠をやれるけど?」

 

「そうだな。やれるうちにやったほうがいいんだが……。どちらもあり得ない方向に力を高めているからな。将来的にオーフィス以上に厄介なドラゴンとなるだろう。だが、最近もったいないと思えてなぁ……。各勢力のトップから二天龍を見守りたいという意見が出ているのもうなずける。――今世に限って、成長の仕方があまりに異質すぎるから。それは彼らに関わる者も含めてなんだが……データとしては極めて稀な存在だ。(セイクリッ)(ド・ギア)に秘められた部分をすべて発揮させるのは案外俺たちではなく、彼らかもしれない」

 

そこまで言う曹操は…輪後光と七つの球体を消失させ、(バランス)(・ブレイカー)を解除する。俺を一瞥して、(きびす)を返し、ロビーをあとにしようとしていた。

 

「やっぱり、止めだ。ゲオルク、サマエルが奪ったオーフィスとうちはイタチの力はどこに転送される予定だ?」

 

「本部の研究施設に流すよう召喚するさいに術式を組んでおいたよ、曹操」

 

「そうか。なら俺は一足早く帰還する」

 

……二人はイザナギの力を把握しきっていない。取られたのはオーフィスの力だけであって、俺の力は1ミリたりとも取られてはいないからな。

 

帰ろうとしている曹操に、ヴァーリが全身から血を垂れ流しながらも立ち上がって問いかけた。

 

「……曹操、なぜ俺を……俺たちを殺さない……?(バランス)(・ブレイカー)のおまえならばここにいる全員を全滅できたはずだ……。女の異能を封じる七宝でアーシア・アルジェントの能力を止めればそれでグレモリーチームはほぼ詰みだった」

 

一旦足を止めた曹操が言う。

 

「作戦を進めると共に殺さず(ぎょ)する縛りも入れてみた……では納得できないか?正直話すと聖槍の(バランス)(・ブレイカー)はまだ調整が大きく必要なんだよ。だから、この状況を利用して長所と短所を見極めようってね…。それと、グレモリーの眷属が全滅しようと、暁は全滅しないと思っているからね」

 

「……舐めきってくれるな」

 

「ヴァーリ、それはお互いさまだろう?キミもそんなことをするのが大好きじゃないか」

 

曹操が自身に親指を指し示す。

 

「赤龍帝の兵藤一誠。何年かかってもいい。俺と戦える位置まで来てくれ。将来的に俺と(セイクリッ)(ド・ギア)の究極戦ができるのはキミとヴァーリを含めて数人もいないだろう。――いつだって英雄が決戦に挑むのは魔王か伝説のドラゴンだ」

 

……俺って、その数人に入っているんだろうから…魔王かドラゴンになるのか?

 

曹操がゲオルクに言う。

 

「ゲオルク、(グリムリ)(ッパー)の一行さまをお呼びしてくれ。ハーデスは絞りカスのオーフィスのほうをご所望だからな。……それと、ヴァーリチームの者がやってみせた入替転移、あれをやってみてくれ。俺とジークフリートを入れ替えで転移できるか?あとはジークフリートに任せる」

 

「一度見ただけだから、うまくいくかわからないが、試してみよう」

 

「さすがはあの伝説の悪魔メフィスト・フェレスと契約したゲオルク・ファウスト博士の子孫だ」

 

「……先祖が偉大すぎて、この名にプレッシャーを感じるけども。まあ、了解だ。曹操。……それとさっき入ってきた情報なんだが……」

 

ゲオルクが何やら険しい表情で曹操に紙切れを渡す。それを見た曹操の目が細くなっていく…。

 

「……なるほど、助けた恩はこうやって返すのが旧魔王派のやり方か……。いや、わかってはいたさ。まあ、十分に協力はしてもらった」

 

……そのやり取りのあと、ゲオルクは魔方陣を展開させてどこかに転移していった。

 

曹操が俺たちのほうを振り返る。

 

「ゲオルクはホテルの外に出た。俺とジークフリートの入替転移の準備中だ」

 

あぁ…あのフェンリルとヴァーリを入れ替えた転移法のことね…。

 

曹操は俺たちに告げる。

 

「まあいい。ひとつゲームをしよう、ヴァーリチームとグレモリーチーム、それと暁。もうすぐここにハーデスの命令を受けてそのオーフィスを回収に死神の一行が到着する。そこに俺のところのジークフリートも参加させよう。キミたちが無事ここから脱出できるかどうかがゲームのキモだ。そのオーフィスがハーデスに奪われたらどうなるかわからない。――さあ、オーフィスを死守しながらここを抜け出せるかどうか、ぜひ挑戦してみてくれ。俺は二天龍に生き残って欲しいが、それを仲間や死神に強制する気はさらさらない。襲い来る脅威を乗り越えてこそ、戦う相手に相応しいと思うよ、俺は」

 

それだけ言い残し、曹操はこの場を去っていった。

 

俺は両手を上げて「ヤレヤレ」と呆れていた。

 

                    D×D

 

「先に行っていてくれ」

 

俺はロビーの一角でアザゼルたちにそう促した。

 

そのあと、リエからこっそりと例の『生体の宝珠』を受け取って体のなかへ入れる。

 

全員がロビーを出たのを確認して、俺は影分身を一体作りだした。

 

「こいつで頼んだ」

 

「任せろ」

 

自問自答しているようで、不可解極まりないが…。

 

俺は携帯の時計を確認したあと、あぐらを組んで座り、瞑目する。

 

後方でカチリ――と刀の抜かれる音がする。

 

ザシュ!!

 

俺は胸部に激痛を感じたが、すぐに意識が遠退いていって――。

 

                    D×D

 

「うっ……」

 

息が詰まりそうになって目を覚ますと、目の前に愛刀の一振りが転がっていた。

 

刀を手に取ると、刀身には血がべっとりと付着していた。しかも、付着して間もないのだろう、血が滴っていた。

 

俺は刀身の血を近くにあったシーツで拭き取って、鞘に納刀する。それをいつものように背腰にさした。

 

「実験は…成功だな」

 

俺は赤く染まっている服を脱ぎ捨てて、神威(カムイ)で取り出した予備に着替えた。

 

左目の眼帯も外し、視力が元に戻っているのを確認したあと、浮遊しながら神威(カムイ)で天井をすり抜けて集合場所まで飛んでいった。

 

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