ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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開花

ホテルの一室の窓から外を見下ろす。

 

…漆黒のローブを着た不気味な雰囲気の輩が多数こちらを見上げているな。

 

あのおぞましさ…全身を駆けめぐっていく、凍えるような感覚――久しぶりに感じる。

 

死 神(グリム・リッパー)か……あのハーデスがけしかけてきた奴らだな…。

 

……あの骸骨神、俺の家族たちに何かあったら…そのときは消し去ってやろう。

 

俺はハーデスの越権行為に、冷静なまま怒りのボルテージを上げていた。

 

ゲオルクによって創られた疑似空間を脱出するには三つの方法しかない…いまのところはな。

 

アザゼルがその説明くれる。

 

「三つの方法とは、ひとつ、術者――ゲオルクが自ら空間を解除すること。これは京都での戦闘が例だ。ふたつ、強制的に出入りする。これはルフェイや初代孫悟空と玉 龍(ウーロン)がやってのけたことだ。さっきも説明したが、こいつは相当な術者でなければ不可能。ルフェイの場合は現状一度が限界で連れて行けるメンバーも限られる。ルフェイの術での三度目の出入りは無理だ。――ゲオルクが結界を更に強固にするだろうな」

 

…そう、たった一度だけの脱出には人数が限られる。

 

「最後は単純明快。術者を倒すか、この結界を支えている中心点を破壊することだ。アーシアが捕らえられたときイッセーが結界装置を破壊したが、あのように結界の中心となっている装置を壊す」

 

…本当、単純明快な方法だ。…ただ、単純でシンプルなほど難易度が上がりやすいってのも考えものだ。

 

ここの装置については、すでにルフェイと金華たちが魔法や仙術で探りを入れていた。

 

部屋の床に紙に描かれているホテルの見取り図を置く。そこに駒となるもの――紙で折った鶴を複数置いて、外部に『目』を作り出す。

 

…俺の白眼、探知結界が複合したものみたいな感じだな?

 

瞑目するルフェイが手を見取り図に向けると、鶴がカタカタとポル的な動きをしだす。魔術文字が光り、灰が独りでに動きだして何かの紋様を描いていく…。

 

ルフェイが言う。

 

「駐車場にひとつ、ホテルの屋上にひとつ、ホテル内部の二階ホール会場にもひとつ、計三つの結界装置が確認できました。それらは蛇……いえ、尾を口にくわえたウロボロスの形の像です」

 

ルフェイが紙に描いた像のデザインをアザゼルが受け取る。

 

アザゼルが言う。

 

「壊すべき結界装置はウロボロスの像か。しかも三つ。相当大がかりだな。この空間はオーフィスを留めるためだけに作られた特別な専用フィールドってことだ。本来のオーフィスなら問題はなかった。力が削がれたオーフィスを封じる前提で結界空間を作ったんだろうな。それでルフェイ、装置の首尾はどうだ?死神の数はさっき調べたときより増えているか?」

 

「はい、総督。どの結界装置にも死神の方々が集結しています。というか、すでにこの階以外の場所には廊下にまでその方々がいらっしゃってて……。駐車場が一番敵が多いです。曹操さまはこの空間からすでに離れてますが、代わりにジークフリートさまがいらっしゃってますし、ゲオルクさまも当然駐車場にいらっしゃいますね」

 

「駐車場にある装置は、三つある装置のなかで一番の機能を発揮しているんだろう。それをすぐに壊せればいいんだが……」

 

リアスがアザゼルに言う。

 

「アザゼル、先ほど話した作戦通りに行きましょう」

 

リアスの提案にアザゼルもうなずく。

 

「ああ、ったく、えらい方法を考えるもんだぜ、おまえもよ。イッセー、おまえの惚れた女は誰よりもおまえを理解しているようだぜ?」

 

アザゼルが苦笑しながら言う。俺もその作戦のことは知っているので、つい苦笑してしまった。

 

訝しげに思っているイッセーに朱乃が耳打ちする。

 

「実は――」

 

内容を聴いているイッセーの目が丸くなる。

 

「とんでもないこと考えたもんスね!!」

 

尊敬の眼差しをリアスに送るイッセー。アザゼルがイッセーの肩に手を置く。

 

「まあ、確かにすごいんだが、リアスはおまえに夢中だから思いついた作戦だぞ?ソーナの戦術とはまた違う方向だ」

 

ブルルル……。

 

俺のポケットに入っているケータイが振動する。

 

……ここは圏外のはず…って、この状況はあいつなのか?

 

俺は皆から少し離れて携帯のディスプレイを確認する。

 

――ロリ神からだ。

 

俺は文句を言ってやろうと電話に出る。

 

「おい、この状況のなかで電話をかけてくる奴がいるか!?」

 

『あ~、やっと繋がりましたぁ。ちょっとした朗報ですよぉ~』

 

俺は「朗報」と聞いて、「何がだ?」とつい聞き返してしまった。

 

『いえ~、先ほどそちらに弟さんを転生いたしまして~。その報告をいたしましたぁ』

 

「弟…さ、佐助か?………はぁぁぁぁぁぁああっ!?」

 

突然叫んだ俺に視線が集まったが、俺は気にせずに会話を続ける。

 

「……な、なぜ佐助を?あいつはまだ小さかったはずだし、向こうで生きているはずじゃ…」

 

『そうでしたが、不慮の事故で死んでしまいましてぇ…。どうせならぁ、兄のあなたのいる世界に転生させてあげようかなぁと思いまして、ね。かわいそうでしたよぉ?たった一人で生きていたんですから~』

 

……まぁ、いまのいままで佐助のことは忘れていたからなぁ…。俺が死んだときは、あいつは四歳だったっけ?

 

「そう、か。で?佐助はいまどこにいるんだ?」

 

『先ほど転生させたばかりですので~、少ししたらそちらに現れると思いますよ~』

 

「外見は?何となく予想はついているが」

 

『うふふ。予想通りの外見ですよ~。あなたと同じ兄弟なんですから~』

 

俺は眉間に手をやる。

 

「わかった。いまは忙しいから、切る」

 

『は~い、頑張ってくださいね~』

 

電話が切られて機械音がしていた。

 

俺は携帯をポケットの中にしまうと、皆のところに戻る。

 

「リュースケ、いまのって…」

 

奏がそう訊いてきたので、俺はそのまま答えた。

 

「ご察しの通りだ、例の電話だよ。もうすぐ『ここ』に弟が来るみたいだ。俺の予想が外れてなければ、かなりの戦力になるだろうな」

 

俺がそう口にすると、皆の目が丸くなっていた。

 

「それより作戦を決行する準備に入ったほうがいいんじゃないか?相手は待ってくれないだろう」

 

飛段が三刃の大鎌を肩に担いで立ち上がった。

 

「あぁ、作戦決行だ!おまえら!!」

 

アザゼルが気合を入れて叫ぶ。それに続いて皆が気合を入れていく。

 

こうして、俺たちの脱出作戦は幕を開ける――。

 

                    D×D

 

ホテル内、ルフェイとエールの結界に覆われた階層――その廊下の一角に俺とイッセーは立っている。

 

イッセーの横には猫耳モードの白音。瞑目状態で床に正座をしている。

 

その近くの部屋にはルフェイとイリナ、ゼノヴィアの姿がある。脱出用魔方陣の準備をしている最中だ。

 

扉は解放していて、その部屋の窓際には他の作戦メンバーが集結している。いまだに体力の回復していない金華が黒歌に肩を貸してもらっていた。あと、解呪しきっていない状態のヴァーリもそこの部屋にいる。

 

作戦を立てた部屋から移動し、窓から駐車場の様子が一番広く見下ろせる部屋に集まった。

 

この階層を囲んでいるルフェイとエールの結界はあまり長くはもたない。すでに非常階段のところで死神が結界を壊している。俺が仕掛けておいたトラップ――結 界 法 陣(けっかいほうじん)はその内側にいくつも設置してある。

 

俺とイッセーは素早く(バランス)(・ブレイカー)となり、赤い鎧を身にまとう。あとはルフェイの魔方陣ができあがりしだい、作戦を決行する。

 

目を閉じて、探っていた白音が立ち上がる。天井の一角と床の一点を指し示す。

 

「……兄さま、そことそこです」

 

「了解だ」

 

うなずくイッセー。それを確認すると白音は部屋に入っていこうとしていた。

 

イッセーは白音の手を引き、言う。

 

「白音ちゃん、金華は悪い奴だと俺も思う。仙術に魅入られて力を求めているのもわかる。テロリストに身を置いているアイツが善良なわけがない。――けどね」

 

金華のほうに視線を向けるイッセー。金華は気づいてはいない。

 

「やっぱり、白音ちゃんのお姉さんなんだと思うよ。野良猫でイタズラ好きで悪い女だけどさ、白音ちゃんの肉親なんだ」

 

「……金華姉さまのせいで私は辛い目に遭いました」

 

……あぁ、白音と黒歌は金華が「はぐれ」となってしまったせいで、金華の罪を浴びて、大怪我までしていた。

 

「……金華姉さまを恨んでいます。……嫌いです。――でも、私をさっき助けてくれました」

 

白音は強い眼差しでイッセーに言う。

 

「いまだけは信じようと思います。少なくともここを抜け出るまでは」

 

俺はマスクのなかで表情を緩めていた。白音がここまで強くなっていたとはな…。灯台下暗しとは、このことかもしれない。黒歌も金華のことはあまり良くは思っていなかったが、いま金華に肩を貸して共に立っている。

 

「――それで十分だ。もし、これからも金華に何か変なことされそうになったら俺に言ってくれ。こらしめてやるからさ」

 

イッセーがそう言って白音の頭をなでる。白音はイッセーに抱きついた。

 

「……兄さまのおかげで強くなれたんです。兄さまのおかげでギャーくんも強くなれた。だから、私も強くなろうと思って……」

 

「なれるさ。俺でもなれたんだ、白音ちゃんならすぐだよ」

 

「……大好きです、兄さま……。部長が先にいても、アーシア先輩や朱乃さんが先にいても、必ず追いかけていきます……。だから――」

 

白音は真っ直ぐにイッセーを見上げて爆弾を投下した。

 

「おっきくなったら、お嫁さんにしてください」

 

「「「「「「「「「「「えっ!?そこで逆プロポーズしちゃうの!?」」」」」」」」」」」

 

白音の告白にイッセーが驚く前に、仰天しているリアス、アーシア、朱乃、ゼノヴィア、イリナ、レイヴェル、カミュ、レイナーレ、ミッテルト、理子、春奈。

 

…告白の現場に直面した兄の俺。いや、別に近親ではないし、血は繋がっているわけでもないし。あっ、でも、一応家族だから…近親なのか?これ。

 

こんな風に冷静に二人の関係を考えていた俺。

 

「背と、おっぱいをおおきくしてくれると……俺はうれしい!」

 

イッセーが懸命にしぼりだした言葉で、俺は現実へと引き戻された。

 

…何言っているんだ?俺の義 弟(おとうと)はっ。

 

「……わかりました。牛乳たくさん飲みます。待っててくださいね、兄さま。兄さまのお嫁さんになるため、姉さまたちに負けないお乳になってみせます」

 

気合の入っていた白音。何と言ったらわからないが、恋は盲目…ということにしておこう。

 

「――術式、組み終わりました」

 

そうこうしているうちにルフェイが転移魔方陣の完成を告げてきた。

 

ルフェイ、イリナ、ゼノヴィアの足下に円形の光が走り、魔方陣が展開していく。

 

魔術文字により生まれた転移魔方陣。これで三人は外に出られる。

 

白音も窓際に移動し、作戦が開始される。

 

「『龍 牙 の 僧 侶(ウェルシュ・ブラスター・ビショップ)』にプロモーション!!」

 

Change(チェンジ) Fang(ファング) Blast(ブラスト)!!!!』

 

イッセーは魔力特化形態になる。リアスの作戦通りに左右のキャノン砲口を上下にそれぞれ向ける。

 

Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)Boost(ブースト)!!!!!!!!!!!!!!!!!』

 

Explosion(エクスプロージョン)!!』

 

俺は倍加させた力をイッセーへ譲渡した。

 

…そう、俺が提案した作戦もあった。「俺の倍加をイッセーへ譲渡して、死神を一気に屠り去る」というものをね。

 

「――行きます!」

 

イッセーは皆に向かって叫ぶ。

 

……この作戦は当たりだと俺は思っている。不意打ちで装置を破壊すれば、死神たちも手はだせないし、死神ごと吹き飛ばせる。

 

「さあ、いこうぜ、ドライグ!!当てるべくは結界の装置とその周囲にいる死神だ!一気にぶっ壊していくぞ!!!」

 

イッセーがドライグと意志を合わせて気合を入れた。

 

ドゥゥゥゥゥゥ……ッ。

 

イッセー背中にあるバックパックが静かに鳴動していく。砲身に強大なオーラが溜まっていく…。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇっぇえええええええっ!!ドラゴンブラスタァァァァァァッ!!!」

 

ズオオオォォォォォォォオオオオッ!!

 

左右のキャノンから膨大な赤いオーラが発射されていく。

 

砲撃が終わったのを確認して、俺は上下に視線を配る。

 

――天井と床に大きな穴ができていた。

 

瞑目していたルフェイが告げる。

 

「屋上とホールに設置されていた結界装置が破壊されました!周囲にいた死神の方々ごとです!!これで残るは駐車場のひとつだけ!――転移の準備も完全に整いました!!」

 

刹那、転移の魔方陣も輝きを増して、ルフェイたちを包み込んでいく。

 

「ゼノヴィア!イリナ!頼むぞ!!」

 

イッセーが転移していく二人にそう告げた。

 

「イッセー!死ぬなよ!!」

 

「必ずこのことを天界と魔王さまに伝えてくるから!」

 

それだけを言い残して二人はこの空間から消えていった。…脱出は成功のようだな。

 

「よし!これであとはあいつらをぶっ倒して装置も破壊すればしまいだ!!いくぞ、おまえらっ!!!」

 

アザゼルが光の槍を薙いで部屋の大きな窓を破壊する。

 

『はいっ!』

 

呼応する皆を背に俺は鎧を解除して、神速で屋上へと浮上した。

 

たどり着くと、そこは完全に瓦礫の山状態だ。

 

ぶっ倒れている死神が起きだしてくる。…倒れていればいいものを。

 

「リュースケ、私も手伝うよ?」

 

奏が重 明(ちょうめい)の羽を生やして飛んで俺の横に位置した。

 

「別にいいが…心配は無用か」

 

「そういうこと」

 

刹那、奏の姿が消えて前方に立っていた死神の一体を斬り払っていた。

 

なにも反応できずに霧散した死神。

 

奏は容赦なく反応できていない死神たちを神速で斬り払っていく…。

 

俺は写輪眼でその様子を見ていたが――突如、懐に飛び込んできた人影!得物の大鎌で斬りつけてこようとしたが、軌道は読めていたので難なく躱した。

 

その死神は高速で移動して、高速の斬撃を連発してくる!

 

俺は後ろ腰にさげている草薙の一振りを抜刀して大鎌ぶつけた。

 

ギィィィィン!!

 

金属音が鳴り響く。ぎちぎちと火花を散らせながら、押してくる死神。

 

左手で刀の背を押しているが、それでも押してくる力は強い。

 

……こんな、小さな体のどこに力があるんだ?

 

そんな風に思ったが、俺のところにも似たような者がいるのでやめた。

 

ドッゴォォォォオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

けたたましい快音と爆音が聞こえてきた。

 

俺はその瞬間に体勢を崩した死神に向けて刀を薙いだ。しかし、俺を押してくるだけの死神だ。薙いだ刀をスレスレで回避して、離れて体勢を立て直している。

 

少しかすったのか、フードの端に切れ込みが入っていた。

 

――そのとき、後方に突如現れた気配!そこから黒炎が周囲に拡散した。

 

俺も距離を取るために、後方へ大きく飛んで現れた気配の横に着地した。

 

「――久しぶり、兄さん」

 

「…佐助か?いつ以来ぶりだ」

 

俺は横に立っている人影に声をかけた。その影の主は――遠山佐助。前世では俺の実の弟で、俺が死んだときは四歳児だった。

 

――というより、たったいま思い出したんだけどな。完全に忘れてたわ。

 

「大きくなったな」

 

「あぁ…それより、この骸骨たちどうしたらいい?」

 

「天照放っておいて、いまさら…とにかく、殲滅させてかまわない」

 

「そう言うと思っていた。けん制で放った天照を活用できるな」

 

盾のように放たれた天照が、形態を鋭状に変化させて死神どもに突き刺さっていく。

 

「…散れ」

 

突き刺さった天照が再度形状を変化させて、死神どもを包み込んでいって――消滅させた。

 

「兄さん、周りの奴らは俺と奏義姉(ねえ)さんで片づける。兄さんは、あの小さい死神を頼む」

 

「…言われなくともそのつもりだ。もともと、()り合っていたのは俺だからな」

 

俺は佐助にひとつうなずいたあと、「こいつを使え」と草薙の一振りを手渡して、三叉のクナイ二本を小さな死神に向けて放った。

 

二本とも大鎌で弾かれて死神の近くに落ちる…作戦通りだ。

 

俺は神速で駆けだして小さな死神の前に潜り込む。その直後、小さな死神は高速で大鎌を振りかざしてくるが、俺は一本めのクナイに向けてもう一本を投げた瞬間に飛雷神をする。

 

瞬間移動した直後に鋭角で薙ぎってくる大鎌。こちらの動きはわかっていたようだ…。

 

キィンと金属音が鳴り、俺は投げたクナイを一本目のクナイで弾いて二本目の方向へ…直後に飛雷神で二本目へ飛ぶ。

 

移動した直後に振られてきた大鎌!…どんだけいい動体視力と反射神経持ってんだ?この小さな死神はっ。

 

俺は薙ぎってきた大鎌を小さな動作だけで避けて、死神の後方へクナイを弾き飛ばしてめり込ませた。

 

最後の仕上げに飛雷神で飛んだのは――小さな死神の頭上の二メートルちょいのところ。

 

三叉クナイがゆっくりと落下してきているところをキャッチして、そのままの態勢で正面に投げた。

 

食い込んだクナイと同時に、ぎゅっ!と何かが小さな死神を縛る。小さな死神は薙いだ直後の態勢で硬直していた。

 

――そう、小さな死神を縛っているのは…ナノサイズのワイヤーだ。しかも、このワイヤーは1トンもある象でも持ち上げられるほどの超頑丈すぎる耐久性を持っている優れたものだ…俺の自信作の試作品だけどな。

 

「……動かないほうがいいぞ?いくら死神とはいえ、そのワイヤーは素手では切れない。食い込んで、腕がもげるだけだぞ」

 

俺が忠告するが、小さな死神はそれを無視して腕を動かした。

 

ピシッとローブの袖に切れ目が入って赤い血が滴りだす。

 

「だから、やめとけって…ん?」

 

俺は目の前の光景に疑問を感じた。

 

――なぜ、死神なのに…赤い血を流しているのか?と。

 

「…まさか、おまえ」

 

俺は抵抗しようにも抵抗できない小さな死神のフードを取り払った。

 

そこにあったのは――。

 

「おい、嘘だろ……」

 

紫色の短い髪が生えていた……いや、正確には「骸骨の仮面を被っている」だ。

 

俺はその骸骨の仮面を取る。すると、そこには金色の双眸で俺を睨みつけている少女がいた!!

 

《……くっ!》

 

歯がゆいらしいその少女は、口を『へ』の字にしてそう漏らしていた。

 

「…………」

 

バヂヂヂヂッ。

 

俺は無言で雷遁の衣をまとうと、何か勘違いして眼をぎゅっと瞑っている死神少女に巻きつけているワイヤーを切った。

 

その行動に目を丸くしている死神少女。

 

「…俺はあくまで『テロリスト』をさばいているだけだ。敵対意識のないものは殺しはしない…いますぐにここから離脱しろ」

 

死神少女はそのつり目を瞬かせて驚いていた。

 

《…なぜ、ウチの心の中がわかった?》

 

「俺は目を見るだけで他者の心が読める。ただ、それだけだ」

 

俺がそう言うと、死神少女はワイヤーの取れた右腕を静かにおろした。

 

《ウチの負けだ。いさぎよく帰るよ》

 

そう言って死神少女は180度ターンした。

 

「…そのまえに、右腕を貸してくれるか?」

 

言うやいなや、俺は死神少女の右腕をそっと握って掌仙術を傷口に当てた。

 

《………っ!》

 

驚いているようで目を丸くしている死神少女。俺は気にせずに治癒を終わらせた。

 

「傷口は治癒しておいた。その大鎌を難なく振れるだろう」

 

死神にとって、その大鎌は相棒と変わらないもの。振ることができなければ身を守ることさえできなさそうだからな…この死神少女は。

 

《……借りを作ったな。戦場では名を名乗る…だったか?》

 

何かを盛大に勘違いしている死神少女。……戦場では別に名乗らなくていいんだけどな…。

 

《ウチの名はファーニア。あんたは?》

 

「…俺は遠山龍介だ」

 

《トーヤマ…リュースケ…うむ、覚えておく…その名を》

 

そう言うと、死神少女――ファーニアは足元に魔方陣を描くと、スポッという感じで落ちていった…。

 

「…………」

 

俺は苦笑いをした。

 

「兄さん、終わったのか?」

 

「リュースケ、こっちはひとまず殲滅したよ」

 

佐助と奏が俺の隣に立つ。

 

「まぁな。…さて、皆の援護射撃とでもしますかな」

 

俺と奏と佐助は屋上のふちに立つ。

 

「「須 佐 之 乎(すさのお)ぉぉっ!!」」

 

「いくよ、皆!!」

 

俺と佐助は半身の須 佐 之 乎(すさのお)――女神と武将を顕現させ、奏は守 鶴(しゅかく)から牛 鬼(ぎゅうき)までの尾獣八体を人のサイズで内から召喚させて、奏自身は九喇嘛(くらま)のチャクラモードとなった。

 

八 坂 ノ 勾 玉(やさかのまがたま)!」

 

俺は勾玉三つを繋げて投げ飛ばす。空中で三つは離れて手裏剣状となり、遠距離にいる死神どもを屠る。

 

須佐能乎加具土命(すさのおかぐつち)!!」

 

佐助は黒炎をまとわせた弓を放ち、宙に浮いていた死神ごと遠距離いる死神を屠る。

 

『『『『『『『『「尾 獣 玉 連 弾(びじゅうだまれんだん)!!!!!!!!!」』』』』』』』』

 

奏たちはソフトボール並みの尾獣玉を作りだして連射する。空中も含め、中距離と遠距離の死神たちを一気に屠る。

 

……だが、駐車場から霧が発生すると――そこから死神どもが一気に出現してきやがった。

 

「……(きり)がないな。佐助、奏、術を解いて俺の手を握れ」

 

俺は須佐之乎(すさのお)を解くと、静かに目を瞑る。

 

「何をするのかわからないが、兄さんならやらかしてくれそうだ」

 

「リュースケには何か考えがあるのかもね」

 

二人はそう言いながら、俺の左右の手をしっかりと握ってくれた。

 

俺は意識を集中させ、奏の内に戻った尾獣たちに話しかけた。

 

『皆、突然で悪いな』

 

『何の用だ?リュースケ』

 

九喇嘛(クラマ)が両手を合わせた状態で、片目を開けて訊き返してきた。

 

『…皆のチャクラを分けてほしい。ある術を試したい』

 

俺の言葉に尾獣たちは一瞬だけ唖然としたが、直後に笑いだした。

 

『シャハハハハハ!!かまわねーぜ!』

 

『はい、私もかまいませんよ』

 

『僕も』

 

『俺もだ』

 

(わたくし)もです』

 

『俺もよ』

 

『ラッキーセブン、いいぜ』

 

『かまわん、持っていけ』

 

『ふん、奏のためなら仕方がない』

 

ツンデレ気味に言う九喇嘛(クラマ)はスルーして、俺は尾獣たちと拳を合わせた。

 

『ありがとな。ちゃんと成功させる…』

 

俺は奏の内から出て、自分の精神の中で分けてもらった尾獣たち九体分のチャクラと輪廻眼の力を合わせる…すると――。

 

「……成功か」

 

俺の体はチャクラに覆われており、尾獣とあらゆるチャクラが体内で入り混じっている感覚がしている。

 

それと同時に体内で九体の尾獣のチャクラが合わさってしまい、大きなひとつのチャクラへ変化していた。

 

――十 尾(じゅうび)だ。

 

まだ寝ている状態だが…いつ起きだすかわからない。

 

俺は内にいる八岐大蛇――ムラクモに言う。

 

『ムラクモ、十尾が暴れださないように監視を頼む』

 

『わかっておる、主よ』

 

心配するまでもなく、ムラクモは十尾の監視を始めていた。

 

……次は奏か。

 

『…奏、いまから六道の力を流し込む。いいな?』

 

『わかったよ。準備万端!!』

 

奏は気合いを入れて返してくれた。

 

俺は奏に意識を集中させて、六道の力を流し込んでいく。

 

『やりおったな、リュースケ』

 

九喇嘛がそう言う。俺は奏から感じる異質のチャクラを感じ取って、流すのを終了させた。

 

「……すごい、これが六道の力…?」

 

奏の姿は俺と酷似しているが、後方に浮いている求 道 玉(ぐどうだま)の数がひとつ違うのと、俺の髪は白髪なのに対し奏は九喇嘛チャクラモードのときと同じ色だ。

 

『…つぎは佐助だ。準備はいいな?』

 

『いつでもかまわない』

 

俺は手元から木分身の要領で自身の細胞を分離させ、佐助の左手に移植した。

 

その直後に六道の力を流し込む。

 

「…感じるチャクラが違うな。見える世界も違う」

 

佐助は手を離すと両目を開眼させた。右目は普通の写輪眼だが、左目は違った。

 

「…ふぅ、成功したな」

 

…佐助の左目は、輪廻眼となっていた。ただ、形状は俺の輪廻眼と違い、輪廻眼の元々の文様だった。

 

「…さて、開花した六道仙術と開眼した輪廻眼。そして、その両方をもつ六道仙人か。奏、佐助…ついてこれるか?」

 

俺の問いに奏は笑顔で、佐助は静かにうなずいた。

 

「佐助、これに乗れ」

 

俺は求道玉のひとつを平たい円状にして佐助の足元に浮かせた。

 

「行くぞ!」

 

俺たち三人は群がる死神の大群に向けて空中に飛び出した――。

 

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