ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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補習授業のヒーローズ
進行


「――ん……ぅ」

 

目を開けると、目の前には少し見慣れた天井が広がっていた。

 

俺は重い体を起こすと、広いベッドから降りて広い部屋をでる。

 

廊下を歩いていると、使いの服を着た使用人が慌ただしく動いているのが目に入る。

 

階段を下りて一階に出る。そのまま歩いていくと広いフロアに出た。

 

ある一角に目を向けると、ソファの近くに立っていた祐奈とカミュを見つけた。

 

二人は俺に気づくと歩いて近寄ってくる。

 

「もう平気なのかの、リュースケ」

 

「あぁ、まだ快復したわけじゃないが…戦闘には支障はないだろうな」

 

カミュの問いに俺は答えた。

 

「それは良かったです。二日も寝たままでしたから、心配していました」

 

祐奈がそう言う。

 

…俺、二日も眠り込んでいたのか。

 

俺は寝ていた二日間のことを二人に訊いた。

 

「…………」

 

聴き終えた俺は、何とも言えない心境だった。

 

ちょうどそのとき、フロアに備え付けられている大型テレビの音声が耳に入ってそっちを見た。テレビにはトップニュースとして、進撃中の巨大な魔獣を映し出していた。

 

『ご覧ください!突如現れた超巨大モンスターは歩みを止めぬまま、一路都市部へと向かっております!』

 

魔動駆動の飛行船やヘリコプターからレポーターがその様子を恐々と報道している。

 

冥界に出現した『魔 獣 創 造(アナイアレイション・メーカー)』の巨大な魔獣は全部で十六体――。百五十メートルはあるだろう。ただ、あの空間で一体は俺たちが倒した。

 

テレビにもそれらすべての様子が克明に報道されている。チャンネルごとに各魔獣の様子が見られるような状況だ。

 

あの疑似空間で見たときの姿は人型で黒オーラを放っていた。それが、冥界に出現してから姿が変わったらしい…。人型の巨人タイプもいれば、四足歩行の獣型のタイプもいる。姿かたちは統一していないようだ。

 

人型は二足歩行であるものの、頭部が水生生物になってるものや、眼がひとつだったり、腕が四本も生えているものもいる。一言で表すなら合成獣――キメラのよう。

 

魔獣どもはゆっくりと一歩ずつ歩みを止めずに進撃を続けている。

 

そして厄介なのは、この魔獣どもが進撃を続けながらも小型のモンスターを独自に生みだしているところだ。魔獣どもの各部位が盛り上がり、そこから次々と肉を破って小型モンスターが誕生していく。大きさは人間サイズだが、とにかく数が多い。一度で数十から百体ほど生みだされるようだ。

 

魔獣どもが通ったあとは、何も残らないという凄惨な状況だった。

 

――と、ここでテレビの画面が変わって速報が入った。

 

『た、ただいま入りました情報によりますと――都市の外れにある山のふもとで、一体目の『豪 獣 鬼(バンダースナッチ)』を倒したとのことです!』

 

画面が切り替わって映し出されたのは――山のふもとに横たわって黒炎に包み込まれている魔獣の姿があった。その周囲には、分裂した百以上の人サイズの魔獣どもが倒れていた。

 

その点々とするなか、見覚えのある服がチラチラと映っていた。

 

――リエたちだ。

 

俺は隣にいるカミュたちに訊く。

 

「なぁ、あいつらはいつ出陣していたんだ?」

 

「……帰還してすぐぞ」

 

カミュが声音を低くして言う。

 

「二日間ずっと戦っていました。僕たちがこうしている間、休まず戦っていました」

 

祐奈も声音を低く、涙声になりつつも言う。

 

「わかった、祐奈も頑張っているほうだ。このなかでしっかりと正気を保っている者がいないと、持ち直すことができなくなる」

 

俺は薄々気づいていた。ここにはリアスや朱乃、アーシアたち数人が顔を見せていない。…おそらくだが、部屋にこもっているのだろう。

 

祐奈は涙を拭って前を見る。そして、俺に言ってくる。

 

「……すみません、お見苦しいところを」

 

「いや、気にしていない」

 

俺はテレビを凝視する。

 

「……あいつらが総動員しても、一体倒すのに二日かぁ…。どうしてだ?あの空間では数十秒で仕留められたはずなんだが……」

 

いくら数が多すぎても、二日はかかりすぎている。

 

俺は瞑目して考える。――どうして、ここまで時間がかかったのかと。

 

数十秒が経って目を開けて思考を止めた。…結局、答えは出なかった。

 

服の(すそ)を軽く引っ張られる。後ろに振り向くと、ユーが立っていた。

 

『おはよう、寝坊はほどほどに』

 

いつものかわいらしい丸ゴシックで書かれたメモ帳の字を見て、俺は「ふぅ」と嘆息した。

 

「さすがに六道の術は、体力の消耗が大きかったからな…。次は出力を調整して使用するから、心配しなくていい」

 

『そう。あまり無茶だけはしないで…』

 

俺は「あぁ」と言って軽くうなずく。

 

「やっと起きたね、リュースケ」

 

声がかけられる。そこには、エールが立っていて…その隣にはエルシャとティアマットがいた。

 

「…出陣しなかったのか?」

 

と俺は問う。

 

それに答えたのは…エルシャ。

 

「私たちは二人の護衛なの。エールは各区域にある避難所に強力な防御結界を張ってまわっているのよ。魔獣たちから守るために幾重にも、ね」

 

「…そうか」

 

俺は暁の装束を手にして…羽織る。

 

「いまから、俺も出陣する。……メンバーで出陣していないのは何人いる?」

 

俺が問うと、エルシャが答えた。

 

「冴子とマリア、私とティア、ユーちゃんとカラワーナ、黒歌よ。…冴子とマリア、カラワーナと黒歌は、妹たちを慰めにいっているわ」

 

……カラワーナは、妹分二人だと思うのだが…。

 

俺は心のなかでエルシャに突っ込んで、一呼吸おいて言う。

 

「四人には、俺が出陣したことを伝えてくれ。それと――」

 

俺は祐奈に向けて言った。

 

「――ッ!!」

 

祐奈は口元を抑えてうなずく。……俺はそれを見て「リアスたちに伝えておいてくれ」と言い残して、フロアを出ていく…。

 

「――さて、魔獣どもを蹴散らかすか」

 

俺は玄関を出ると、宙に浮かんで高速で飛び出す。

 

高い位置から周囲を見渡すと、遠い場所で進行している魔獣どもが見えた。

 

俺は一番近い魔獣のほうへ神速で飛ぶ。――すると、戦闘をしているその魔獣が俺に気がついたようで、数十…数百という数の小型魔獣を生みだして……俺のほうに攻撃を開始してきた。

 

…空中、陸上を駆ける小型魔獣ども。俺は手元に黒炎を発火させて、剣を創りだした。

 

炎遁(えんとん)加具土命(かぐつち)ッ!」

 

一薙ぎすると、黒炎の弧が前列の魔獣どもを斬り裂いて燃やし尽くしていく。

 

魔獣どもも攻撃を仕掛けてくるが、黒炎の盾で防いで燃やし尽くす。

 

俺は攻撃を防ぎきると、黒炎の剣と盾を形態変化させて……いくつもの勾玉を創りだし、散弾させた。

 

『グオォォォォオオ!!!』

 

勾玉に当たった魔獣どもは、黒炎に包まれて四散していく…。

 

影 分 身(かげぶんしん)!」

 

俺は黒炎を消した直後に一体分身体を作りだし、後方につかせた。

 

火遁(かとん)豪 火 滅 却(ごうかめっきゃく)ッ!!」

 

俺は広範囲に大きな複数の火球を放ち――、

 

風遁(ふうとん)烈 風 掌(れっぷうしょう)ッ!」

 

分身体は、後方から強風で援護する。

 

優劣関係で広範囲に広がっていた多量の火球が強さを増し、空中を真っ赤に染め上げていく!!

 

『グギャァァァァアアッ!!!』

 

向こう側で悲鳴を上げて焼失していく小型魔獣ども。

 

俺は空中戦から陸上戦へ戦場を変える。

 

超 加 重 岩(ちょうかじゅうがん)痛 天 脚(つうてんきゃく)ッ!!」

 

全身を岩以上に重くし、チャクラを踵に集中させて――地を打ち砕く!!

 

…いまので、数十程度の小型魔獣どもが一気に四散していった。おまけで、地面には巨大なクレーターができてしまったが…。

 

俺は即体勢を立て直し、吹き飛ぶ小型魔獣どもを迎撃していく――。

 

                    D×D

 

「――かなり、しぶとかったですね」

 

私は九喇嘛(クラマ)モードを解いて、目の前に黒炎に包まれながら倒れている『豪 獣 鬼(バンダースナッチ)』を眺めていた。

 

…上空には報道のヘリが飛んでいる。戦闘に集中しすぎていて、まったく気がつかなかった。

 

「…さすがに、こいつ一体でここまで疲れるなんてな」

 

飛段がそうつぶやいた。私も、六道仙術の影響で体力が危ういところまで削れている状態だった。

 

ここにいるのは、リエ(ねえ)、角都、飛段、花楓、サスケ、龍巳、それと私の七人。…とにかく、この豪 獣 鬼(バンダースナッチ)…再生力が強すぎて、いくら神速や強力な攻撃を与えても倒れないし、龍巳以外の全員は戦う前から体力を持っていかれていて、限界ギリギリで戦っていた状態だった。

 

…龍巳は、豪 獣 鬼(バンダースナッチ)の動きを封じるために『蛇』で全身を縛っていた。それでも凶悪すぎる豪 獣 鬼(バンダースナッチ)は、少しずつ『蛇』の縛りを振り解きながら歩みを進めていた。

 

しかも厄介なことに、数百単位で小型の魔獣を体全体から作りだしてきて…足止めを食らっていた。…おかげで、二日間も戦闘を続ける羽目になったわ。

 

『大丈夫?かなり疲れているわね』

 

又旅(またたび)が寄り添ってくる。

 

「大丈夫よ、又旅。あなたたちこそ、疲れているんじゃないの?」

 

『シャハハハハッ!俺さまは疲れてねぇぜ!』

 

『はい。守鶴(しゅかく)の言う通り、(わたくし)たちはあまり疲れを感じておりませんので、気になさらないでください』

 

守鶴と穆王(こくおう)がそう言う。

 

……嘘ね。皆、体中ボロボロだし、いつもより若干声のトーンが落ちている…。私にはわかるわ、優しい嘘だって。

 

「そうなんだ…心配しちゃって損しちゃったかも」

 

私は苦笑いして、又旅に背を預ける。

 

「又旅って、熱くないんだよね…不思議」

 

私は空を仰ぐ……まったく見えないけど。

 

『寝ちゃダメよ、奏。まだあいつら(魔獣)は動いているわ』

 

「わかってるよ、又旅。私たちは、冥界の人たちが避難し終えるまでの足止め役なんだから」

 

そう言っても、強がりにしか聞こえないんだろうなぁ…。

 

「――皆さん起きてくださ~い。出発しますよ~」

 

のんびりな口調でそう言うリエ姉。真っ白だった白衣はボロボロで、汚れていた。

 

私は脚に鞭を打って立ち上がり、九喇嘛モードになる。

 

「さーて、もう一体倒すよ!」

 

花楓がそう叫んだ。……体力的にギリギリなんだけど。

 

そう心の中で突っ込みながら、私たちは次の『豪 獣 鬼(バンダースナッチ)』へ向けて駆けだした――。

 

                    D×D

 

「……いますぐイッセーさんのもとにいきたい……。……でも、私がイッセーさんを追ったら、……イッセーさんはきっと悲しむから……。……ずっと一緒だって、約束したんです……。それなら、私もそこにいければずっと一緒だって思ってしまって……。……お姉ちゃん……私はどうしたらいいんですか……?」

 

グレモリー邸にある客間のひとつ……アーシアの部屋で、アーシアが私の膝の上で泣いている。

 

「アーシア、私はイッセーくんが死んだとは思ってないよ。だって、奇跡を起こす赤龍帝でしょ?それに、リュースケの義弟であなたの想い人でしょ?」

 

…正直なところ、わからない。リュースケが龍 門(ドラゴン・ゲート)を潜って戻ってきたとき、リュースケの持っていた駒ではなく…周囲にサマエルのオーラを感じた。

 

いまの私は、アーシアを慰めることしかできない。お姉ちゃんなのに……。

 

                    D×D

 

「……バカッセー……、……エロッセー……なんで、……どうして……」

 

「……ひどいよ、イーくん……。……理子より……先に逝っちゃうなんて……」

 

客間のひとつ……私は泣いている理子と春奈を抱きとめていた。

 

「……だいじょうぶ、イッセーは必ず帰ってくる」

 

…何の根拠もない私の言葉。でも、二人のことを考えて言ったこと。

 

……殺したくてたまらない。理子の、春奈の想い人を殺した奴を。

 

…でも、そいつはこの世に存在していない。イッセーとリュースケが、壊れゆく疑似フィールドで葬ったから。

 

「…………」

 

私は…静かに…ただ静かに、怒りの炎をたぎらせていた――。

 

                    D×D

 

「……面倒な奴らに遭遇か」

 

サスケがそう言う。

 

私たちは途中で角都と飛段と別れたあと、町の外れで旧魔王派の悪魔たちに遭遇していた。

 

「我らの邪魔をするな、人間。真なる魔王の意志を継ぎし者が、偽りの存在に荷担する貴様らを葬ろうぞ!」

 

旧魔王派の悪魔がそう言った。

 

「……くだらないな」

 

「そうですねぇ……」

 

「だから、なに?」

 

「う~ん、もう少しマシな台詞は無かったのかなぁ」

 

サスケ、リエ姉、龍巳、花楓がそう吐き捨てた。

 

『おまえもそう思っているだろう?奏』

 

九喇嘛がそう言ってくる。…そうだね、私もくだらないと思っているよ。

 

旧魔王派の悪魔たちがいっそう怨恨と殺気をまとい、手元から大質量の魔力の波動を放ってきた!

 

「遅いよっ」

 

Half(ハーフ) Dimension(ディメンション)!!!!』

 

花楓が白い光翼を出現させて、飛んでくる魔力の波動を空間ごと半減させた。

 

「ニャーン!!」

 

一回り大きくなった、ぬいぐるみ型魔装兵器の『ふうりんかにゃん』が大きく腕を振って魔力の波動を薙ぎ払う。

 

「あまり、使いたくはないけど」

 

龍巳が数人の悪魔を大きな『蛇』で縛りあげ……潰した。

 

「……無に帰れ」

 

サスケは半身の須佐之乎(スサノオ)に頭から布を被せた修験者のような姿へ変化させ、左手に黒炎の剣を握らせていた。そして、その黒炎の剣を振り下ろして一気に屠っていく。

 

「あらあらぁ、遅いですねぇ~」

 

ニコニコフェイスのリエ姉は、神速で旧魔王派の悪魔の懐に潜り込んで――二本の日本刀型魔装錬器で四肢を斬り払って、バラバラにしていく。

 

「勝てると思っているのが、間違いなんだけどね」

 

私は左手を掲げ、複数の性質で作った複数の剣を一斉に飛ばす。

 

「――ッ!!」

 

旧魔王派の悪魔たちは魔方陣の防御壁を作りだすが、簡単に砕いて串刺しにしていった。

 

地に伏せ、四散していく旧魔王派の悪魔たち。

 

…まったく、本気なんて出してなかったんだけど。

 

「はやく、巨大魔獣を止めに向かいましょう」

 

私はそう言って歩みだす。

 

「街の人たちは避難できてるのかな…?」

 

花楓が少し心配そうに言った。

 

「心配ないんじゃない?アースたちが行っているんだから、ね」

 

そう言うと、花楓は小さくうなずいた。

 

私たちは旧魔王派の小隊と交戦したあと、街の中心に向けて移動し始めた。

 

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