ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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出陣

 

俺は人型サイズの魔獣どもを蹴散らかすと、物陰に隠れる。

 

「――口寄(くちよ)せの術!」

 

親指の腹を噛みきり、印を結んで術を発動させた。

 

大きく煙が立ち上り……シルエットが羽根ではらって煙を吹き飛ばした。

 

目の前には目測で全長が160センチほどある大鳥……八咫烏(やたがらす)が出現した。

 

《――龍介、またこのようなところに私を呼び出すなんて…何かあったのか?》

 

黒い目でこちらを睨みつけてくる八咫烏のヤミ。

 

「あぁ、そうだ。旧魔王派の奴が巨大な魔獣を放ちやがってな…、冥界の都市部に向けて進行しているわけだ。俺たちはそれの足止めと殲滅をしているところだ」

 

《…なるほど、私を呼んだ理由は何だ?》

 

俺は懐から緋色に光り輝いている三叉のクナイを取り出す。

 

「こいつを渡してほしい人物がいる。そいつがどこにいるかは、俺の記憶を渡すから…すぐに飛んでくれ。たのむ」

 

《状況がいまいちだが…わかった、すぐに飛ぼう》

 

ヤミは俺から三叉のクナイを預かった直後に両目を神威(カムイ)の写輪眼へ変化させ、神威によって転移していった。

 

「……行ったか。さて、もう一暴れしますか!」

 

俺は赤、黄、青の神 器(セイクリッド・ギア)を出現させ、宝玉から解放した。

 

「オシリス、ラー、オベリスク…魔獣どもを片づけるぞ!!」

 

その巨体の三体は咆哮を上げ、魔獣どもを蹴散らかすように消滅させていく。

 

「ブーステッド・ギア!!」

 

Boost(ブースト)!』

 

三つの神 器(セイクリッド・ギア)を消すと、左手に赤い…イッセーと同じ神 器(セイクリッド・ギア)を出現させて、力を倍加させた。

 

「…こいつで、一気に屠ろうか」

 

両手の先の空間を歪ませ、中から二振りの大剣を取り出す。――片方は禍々しい魔のオーラをまとい、もう片方は神々しいまでの聖なるオーラをまとっている。

 

「魔帝剣グラムと聖王剣コールブランドよ、二つの相反する力を一つにして、真なる帝王の剣と成れ!」

 

魔のオーラと聖なるオーラが反発し合うが、錬金の要領で二振りの大剣を引き合わせていく。

 

バジッ!ビシッ!!

 

周囲に両方のオーラが飛び回り、大きく地面が抉れていく。

 

まばゆい光と、漆黒の闇が重なり合い…溶け合っていく――。

 

ドォォォォォォオオンッッ!!!

 

爆風と共に、強大なオーラが周囲を吹き飛ばした!

 

俺は砂塵を払いのける。目の前に浮いている一本の大剣を手にして、感じ取った。

 

「……成功したな。聖王と魔帝の大剣」

 

聖なるオーラと魔のオーラの両方をまとっている、その一振りを天に掲げた。

 

「大剣の名は――」

 

俺はその大剣を振り下ろす。すると、極大な聖と魔オーラが前方に群がっていた人型の魔獣どもをのみ込んでいくッ!

 

「『聖魔の帝王剣 グラム・カリバーン』だ」

 

                    D×D

 

「――どう?わたくしの奴 隷(ドール)たちは」

 

「えぇ、十分すぎるくらい役に立っていますよ……」

 

背が小学生ほどのゴスロリの姿の少女が、フードを被り手元で印を結んでいる女に問う。

 

その女は印を結び終わると、地面に両手をつく。

 

すると、地響きと共に幾数の木の棺が地面から浮かびだす。

 

「私の『真・穢土転生』の実験のサンプルに使わせてもらってますからね」

 

棺の蓋が倒れるように開くと、中からこの世の者ではない者たちが歩み出てくる。

 

「歴代に名を遺した者たちですわね。……それで、どちらにつきますの?反乱軍?転生者の連合軍?」

 

少女の問いに女は口角を軽く吊り上げた。

 

「どちらでもないさ。様子見ってところかな?特に、あの転生者たちの力を見てみたいからね。もちろん、魔獣たちの殲滅に手は貸すけどね」

 

「うふふ…。わたくしも見てみたいですわ。――たった十数年しかこの世界で生きてない者たちが、どこまで強いのか…。楽しみですわ、最強と謳われし転生者…」

 

少女と女は不気味に笑い、屍人を生みだしていった――。

 

                    D×D

 

荒れ地と化した街の外れで、転移させられた屍人が一斉に駆け出す。

 

数は十…数百ほどの軍勢が移動をしていた。

 

軍勢は幾数の人型の魔獣とぶつかっては散り、塵あくたが集まって元の体を再生させる。

 

逆に人型の魔獣は再生する前に攻撃を受け、その体を四散させていく。

 

『オォォォォォォォオオオッッ!!!』

 

屍人の軍勢は雄叫びを上げ、得物で人型の魔獣を次々と屠っていく――。

 

                    D×D

 

「クソッ…これじゃ、(きり)がないな」

 

俺はグラム・カリバーンを両手で握り一閃すると、数十から数百単位の人型魔獣どもが四散していく。……だが、この大剣は燃費がとても悪すぎる。十数回振っただけで、体力をかなり持っていかれてしまった…。

 

「…仕方ない」

 

俺はグラム・カリバーンを亜空間にしまう。そして……。

 

「――パンドラモードッ!!」

 

体内深くに埋め込んでおいた試作の『聖痕』を起動させる。

 

……思ったより発動は順調で、体力の消費を抑えることができている。

 

――テンペストターン!!

 

駆け出しと共に、三十ほどの分身を作り出す!

 

アーシアを奪還するときにフリードに使ったが、あのときより聖痕の出力はかなり強い。

 

俺は接近と共に、加速していき……。

 

――四 重 加 速(クワトロフルアクセル)ッ!!

 

俺を含め、三十体がほぼ同時にフル加速した。

 

体力を消耗する代わりに聖痕へ負担がかかるが、聖痕は消耗したりはしない。

 

俺は人型の魔獣どもを蹴散らかすなかで、視界の隅に何かが映った…。

 

『オォォォォォォォオオッッ!!!』

 

軍勢が近づいてくる…!それも、相当な数だ!

 

その軍勢は人型魔獣どもとぶつかる!

 

……増援か?いや、何かがおかしい。

 

そう、その軍勢のなかで見覚えがある現象が起きていたからだ。

 

斬り裂かれた者が血を流すどころか、塵あくたが集まりだして……蘇生したからだ。

 

「……穢土転生かっ!!」

 

そう、それは穢土転生の能力…特徴がそのままだからだ。

 

その軍勢は人型の魔獣どもを殲滅し終えると、見境なくこっちへ足を進めてきやがった!!……どこからどう見ても、襲いにかかってきてるって!得物を俺に向けてるし!!

 

こちらも人型の魔獣どもを殲滅し終えたので、その軍勢へ向けて突進していく。その際、分身は元に戻って、聖痕を停止させた。

 

「さて、ここから先へは行かせないよッ!!」

 

俺は二振りの大鎌を亜空間から引っ張り出した。

 

「おまえらには、この『封印の大鎌(デスサイズ)』と『魂 喰 ら い(ソウルイーター)』で相手するぞ!!」

 

俺は大鎌を羽根のように振り、攻撃をいなしながら次々と斬り裂いていく…。

 

斬り裂かれた穢土転生は、塵あくたの塊となって崩れおれる。

 

                    D×D

 

私はフロアの隅にあるソファに座っている白音の横に座っている。

 

「はい、レイヴェルさんは僕たちがお預かり致します」

 

すぐ傍でレイヴェルの兄――フェニックス家の長兄と祐奈が話していた。

 

「うむ、では行くぞ、ライザー。おまえもフェニックス家の男子ならば業火の翼を冥界中に見せつけておくのだ。これ以上、成り上がりとバカにされたくはないだろう?」

 

「わかっていますよ、兄上。じゃあな、木場祐奈。リアスたちを頼むぜ」

 

フェニックス兄弟はそれだけ言い残してこの場を去っていった。

 

再びしんと静まりかえるフロア。

 

レイヴェルが白音の隣…私と反対側に座る。

 

途端に目元に涙を溜めて、顔を手で覆う。

 

「……こんなのってないですわ……。ようやく、心から敬愛できる殿方のもとに近づけたのに……」

 

……レイヴェルはイッセーのことを想っていた。白音に負けないほど親愛を寄せていた。

 

白音がつぶやいた。

 

「……私はなんとなく覚悟はしていたよ。……激戦ばかりだから、いくら兄さまや皆が強くてもいつか限界がくるかもしれないって」

 

――っ。

 

白音の一言を聞き、レイヴェルが立ち上がって激昂した。涙を流しながら白音に食ってかかる。

 

「……割り切りすぎですわよ……ッ。私は白音さんのように強くなれませんわ……っ!」

 

レイヴェルの激情を当てられた白音。感じ取っていた気が緩みだし、徐々に表情を崩壊させ、震えながら涙を流していく。

 

「……私だって……っ。……いろいろ、限界だよ!やっと想いを打ち明けられたのに、死んじゃうなんてないもん……っ!兄さま……バカ!バカです……ッ!」

 

白音は嗚咽を漏らしながら、制服の袖口で目元を隠した。

 

……白音はその体で懸命に溜め込んでいたものを一気に崩したかのように泣き崩れた。

 

レイヴェルはその白音の姿を見て、やさしく抱きしめた。

 

「白音さん……ごめんなさい」

 

「……うぅ、レイヴェル。つらいよぉ、こんなのってないよぉ……」

 

私はそっと立って二人の前に座ると、やさしく二人の頭を抱く。

 

「………」

 

私は黙って、胸のなかで泣く二人を抱きしめた…。

 

                    D×D

 

しばらく二人を抱きしめるなか、ふと誰かの気を感知した。

 

……この気、確か…。

 

その感じ取った気のほうをちらっと一瞥すると、祐奈と話している堕天使の一人を見つけた。

 

――『雷光』のバラキエルだ。

 

堕天使の幹部で、朱乃の父親。…十中八九だけど、朱乃の様子を見に来たのだろう…。

 

聞き耳を立てていると、祐奈が現状を説明をしながらバラキエルと廊下へ行ってしまった。

 

……気がつけば、白音とレイヴェルは泣き止んでいて…私の胸を強く押していた。

 

「あら…、やっと泣き止んだみたいね」

 

そっと話すと、二人は私の胸から離れて軽く深呼吸していた。

 

「…黒歌姉さま、少し苦しかったです」

 

白音は涙を拭い、目元を真っ赤に腫れさせて私を見つめていた。

 

「にゃはは、ゴメンゴメン。二人とも、場所を移動するよ」

 

私が立つと白音とレイヴェルも立ち上がる。そのまま三人でフロアから出て、廊下を歩いていく。

 

ちらっと後ろを歩いている二人を見ると、お互い励まし合うかのように手を握り合っていた。

 

……何だかんだで、仲がいいのよね。

 

二人は鳥猫の間柄だけど、喧嘩したあとはそっぽを向きながらでも仲良くしていた。それがこんなときに出るなんて、本当に二人は仲がいいんだから…。

 

私は前を見ながら、思わず苦笑してしまった。

 

目的の部屋へ歩みを進めていると、奥の方から三人の人影が見えてきた。

 

「……考えていることは、同じみたいね」

 

私がその人影の前でそう言うと、向こうも苦笑しながら言う。

 

「…そうだな。同じことを考えている、か。誰に似たのだろうな」

 

私はその人影――冴子と合流したあと、目的の部屋の前に着く。

 

ドアを二回ノックすると、なかから声がして…ドアが開く。

 

「……あら、皆こっちに来ちゃったんだ…。入って」

 

部屋のなかから出てきたのは――マリア。そう、この部屋はアーシアとマリアが使っている。

 

なかに入ると、広い空間の一角に置いてあるソファにアーシアが座っている。

 

…たぶん、泣き止んだばかりみたいで…目元を赤く腫らして、小さくしゃっくりをしていた。

 

アーシアにマリアが言う。

 

「アーシア、皆来てくれたよ。元気出しなさいって!」

 

明るく接するマリアに小さくうなずくアーシア。

 

私は白音とレイヴェルを、冴子は春奈と理子をそれぞれソファに座らせた。

 

「五人はそこで大人しく待機してて。私たちは()()をしてくるから」

 

マリアの言葉にアーシアが反応した。

 

「……お、お姉ちゃん…どこに……っ!!」

 

アーシアはマリアの考えていることに気がついたようで、立ち上がると同時に目を見開いて口元に両手を当てていた。

 

「そう、アーシアがいま思ったことを私たちは実行するのよ」

 

「で、でも!お姉ちゃんが行ってしまったら…私…っ!!」

 

そのとき、マリアの表情が変わり、怒鳴った!

 

「アーシア!」

 

突然の檄にアーシアが驚いて、ソファにペタンと座り込む。

 

「いつまでも甘えていないで、一人で立ち上がりなさい!!あなたの想い人――イッセーくんはいつも立ち上がってきたでしょう!?横に並んで歩みたいのなら、一人で立ち上がって相応しい女性になりなさい」

 

そう言うと、マリアの表情がやわらかくなって…微笑んでいた。

 

……激励の言葉だった。妹想いで、甘い接し方ばかりだと思っていたけれど……しっかりと見ていた、心配していたからこそ、怒鳴ったんだと思う。

 

私と冴子も白音とレイヴェル、春奈と理子にそれぞれ小さくうなずく。

 

「…さて、そろそろ行きましょう。二人は準備できてる?」

 

マリアがそう言いながら、テーブルの上に置いてある腕輪を左腕にはめていた。

 

「私はできている」

 

冴子は腰に提げている二本の刀に手を当てる。

 

「私もとっくに準備してるにゃ。武器はないけどね」

 

そう言って猫耳と尻尾を出す。

 

「行ってくるわね、アーシア」

 

「行ってくる。春奈、理子」

 

「白音、レイヴェル…行ってくるにゃ」

 

私たちは微笑みを見せて、部屋を出た。

 

廊下に出ると玄関へ歩みを進める。その途中で、マリアが口を開いた。

 

「……現状はどうなってるの?」

 

すると、冴子が厳しい表情で言う。

 

「部屋を出る前にテレビで確認したが、おおよその非難は完了しているそうだ。ただ……」

 

冴子の声色が変わり、立ち止った。

 

「二体の超 獣 鬼(ジャバウォック)は、進行の足を緩めていないそうだ。二体とも別々の方角から、首都へ歩みを進めている」

 

私はそれを聞いて、沸々と内から黒いモノが沸き上がってくるのを感じていた。

 

「久しぶりに暴れられそうね。マリア、冴子」

 

そう言うと、二人はうなずく。

 

「そうね、今回は規模が規模だけに加減なんてしてられない。本気で向かいましょう」

 

「そうだな。私も最近、本気で戦っていなかったからな。地形が変わりすぎると何かと問題が多くなるから、極力で押さえていた。だが、あれだけ大きい相手に手は抜けないな」

 

私たちはそう言いながら、玄関に到着する。

 

「――待ってたわよ。黒歌、マリア、冴子」

 

突然かけられた声に、一瞬驚いてしまった……。すぐに振り返ると、そこには――。

 

「カミュ…カラワーナ」

 

カミュとカラワーナが立っていた。

 

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