ハイスクールD×D 力ある者   作:塩基

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異空間

「オーフィスの力を借りて……グレートレッドの体の一部で肉体を再生させた!?」

 

素っ頓狂な声をあげるのは…ロスヴァイセだ。

 

ジャンヌを眠らせてイッセーたちのところに戻ってみてすぐ、イッセーの口から大よその経緯を聞いたが…。俺もそうだが…皆が皆、驚いていた。特に、ロスヴァイセなんか素っ頓狂な声を上げて驚きまくっていたが…。

 

…いやはや、ここまでくると…イッセーがドラゴンに縁があるのがよくわかるな。というより、赤龍帝だったな。

 

「――強者を引き寄せる力、ここまで来ると怖いな。首都リリスを壊滅させるモンスターという情景を見学しにきたら、まさか、グレートレッドと共にキミが現れるなんてね」

 

――俺たちに向けられた、第三者の声。

 

振り向けばそこには――曹操がいる。

 

「……わずかな間で超えられたというのか。異常なるは、グレモリー眷属の成長率……。ヘラクレスはともかく、ジャンヌは『魔 人 化(カオス・ブレイク)』を使ったはずなのだが……力を吸い取る能力に持っていかれたのか……」

 

俺のほうを見る曹操。

 

次に曹操の視線がイッセーに移る。……以前のように興味に彩られたものではなく、異質なものを見ているかのような目つきだ。

 

「……帰ってきたというのか、兵藤一誠。旧魔王派から得た情報ではシャルバ・ベルゼブブはサマエルの血が塗られた矢を持っていたと聞いていたのだが」

 

「ああ、喰らったぜ。体が一度ダメになっちまったけど、グレートレッドが偶然通りかかったようでさ。力貸してもらって肉体を再生させた。……先輩たちやオーフィスの協力があってこそだったけどな」

 

イッセーの台詞を受けて、皮肉めいたものを返すのかと思っていたが…曹操は目元をひくつかせていた。初めて見るな、曹操のそんな表情。

 

「……信じられない。あの毒を受けたら、キミが助かる可能性なんてゼロだった。それがグレートレッドの力で体を再生させて、自力で帰還してくるなど……っ!グレートレッドとの遭遇も偶然で済ませられるレベルではないんだぞ……っ!」

 

仙術で曹操の出方を探ろうとしたが、ちがう方面の気配を察知してしまう。

 

「………」

 

俺は黙ってこの場を去ろうとしたが、また奏に気づかれて止められた。

 

「…また、一人で行こうとしたでしょ」

 

「……はぁ」

 

俺は息を吐くと、仕方なしに「来るか?」と訊いてみる。……返事はわかってはいるが。

 

案の定「行く!」と言う奏。

 

「どこに行くの?お兄ちゃん」

 

花楓も気づき、そのやり取りで全員が気づいちまった…。

 

「……お灸を据えに。『死者を操るのは、程々にしろ』…ってメッセージを込めてだ」

 

リアスがイッセーに『悪 魔 の 駒(イーヴィル・ピース)』…八つの『兵士(ポーン)』の駒を戻しているのを、視界の端に映して。

 

「……穢土転生だな?」

 

角都が確信をもってそう口にする。俺は軽くうなずいた。

 

「…たくよぉ、厄介なもんばかりが来やがって!」

 

ボロボロの姿で、リアナに肩を貸してもらっている飛段が毒づく。

 

「どうする?あの子たちを呼び戻すの?」

 

「……そうだな。アルセウスたちとは移動中に合流するように伝えてくれ」

 

「りょーかい♪」

 

嬉しそうに念話をする奏。

 

「……スコルとハティはどこにいるんだ?」

 

俺は感知できないスコルとハティのことを訊いてみると、リエが答える。

 

「え~とぉ、あの二人はアザゼルの付き添いでぇ、ハーデスのところに向かいましたよぉ~」

 

……そりゃ、感知できないわけだ。

 

「スコルとハティは預けるとして……このメンバーで向かうとするか」

 

俺の言葉にうなずく面々。

 

「――イッセー、俺たちはここから離脱する。あとは任せた」

 

イッセーたちは「えっ?」と拍子抜けしていたが、俺たちはかまわずにこの場をあとにする。

 

向かっている方角は北東。距離はかなりあるが、空を飛べば問題ない。出撃メンバーは俺が率いる『暁』。元ディオドラ眷属の十三名。緊急で呼び寄せたヒルダ、セルベリア、ヤミ。移動途中で合流予定のアルセウスたち二十八名。転生仕立ての近衛美柑。この場にいないメンバーは…ユー、ティアマット、エール、エルシャ、スコル、ハティ…だ。

 

「…何なのよ、この負の気は!?」

 

黒歌も穢土転生の集団を感知したみたいだな。

 

「それが穢土転生だ。いくら殺そうとも死なない、不死身の体を有する……禁術中の禁術だ」

 

俺の言葉に、穢土転生を知らない者の表情が強張っていく。

 

「……術者はとんでもない奴ね。馬鹿げているよ、こんな数!」

 

奏が九喇嘛モードで感じ取ったのだろう。俺が感知できている範囲だと、穢土転生は約六千いる…。

 

                    D×D

 

穢土転生の集まっている地点に到着し、前方を眺める。

 

「多いですねぇ~、容赦なく殺しちゃいましょう~」

 

リエが嬉しそうに言う。……いやいや、死んでるから!あいつら。

 

俺の隣に立った花楓が、天に向けて手を挙げる。

 

「── 我がもとに来たれ、勝利のために。不死の太陽よ、我がために輝ける駿馬(しゅんめ)を遣わし(たま)え。駿足にして霊妙なる馬よ、汝の主たる光輪を()く運べ!」

 

花楓が呪文を唱えると天に日が昇り、焔の鳳が六千の中央へ放射される。

 

放射が終えると、百単位で穢土転生が塵と化していく。…だが、すぐに塵が集まりだして再生していく。

 

俺は『封印の大鎌(デスサイズ)』と『魂 喰 ら い(ソウルイーター)』を握り、神速で斬り込んでいく。斬り裂くと、穢土転生体は塵と化して散っていく。その塵からは体が再生しない。

 

皆が次々と攻撃していく……。合流したアルセウスたちも、参戦して穢土転生体を塵に変えていく。

 

六千に対し、こちらは百未満だ。

 

……仕方がない、ここなら被害は出そうもないな。

 

俺はこの周辺を探知したが、周囲数百キロは住宅や施設、公共機関など一切見当たらなかった。

 

『――皆、聞いてくれ。いまから天に星を創る。……避難してくれ!』

 

念話で全員に伝えると、俺は六道仙人になり、遥か上空へ昇る。

 

ある程度の地点で停止すると、眼下には穢土転生の軍団が蟻の群れのように見える。

 

『全員退避したか?』

 

俺の声にそれぞれが返してくる。

 

『退避中の奴はいないな?いたら、返事してくれ!』

 

少し待つが、応答がない…どうやら全員が退避できたようだ。

 

「一気に決める!――地 爆 天 星(ちばくてんせい)!!」

 

宙に放ったバスケットボールほどの大きさの物体。停止すると共に、引力で地が割れ、塊となった地面が引き寄せられていく。

 

俺はそれから距離を取る。

 

核の真下にいた穢土転生体どもは次々と引き寄せられ、逃げることができずに押し潰されていく――。

 

地は抉れ、小惑星並みの大きさまで成長する。……そして、その成長が止まる。

 

地上には巨大なクレーターができ、穢土転生体は一体も残さず核に吸い寄せられていた。

 

『……マヒトツ、一気にチャクラを流してくれるか?この小惑星を飛ばしたいからな』

 

『………わかった』

 

すると、マヒトツから莫大なチャクラが流れ込んでくる!

 

天之御中(アメノミナカ)

 

――刹那、俺と小惑星は別の空間へ転移した!眼下には煮えたぎる溶岩の世界…。

 

「じゃあな」

 

俺は神 羅 天 征(しんらてんせい)で、小惑星を溶岩の海に向けて動かす。溶岩の飛沫を大きくさせて浸かる小惑星。徐々に熔解していき、ものの数分ですべてが熔けて消えてしまった…。

 

これで、穢土転生体どもは再生できないだろう。たとえ再生できたとしても、この空間からは脱出できない。

 

俺はそれを見届け、黄泉比良坂(よもつひらさか)で空間を移動して、皆のいる冥界上空に姿を現す。

 

六道仙人の状態を解き、地上に降り立つと――、

 

『リュースケ!!』

 

少し離れたところにいた皆が…駆け出してきて、俺に飛びつきというタックルをかましてくる。まぁ、それをしてきたのは…奏や花楓たちだけど。

 

少し離れたところでその様子を見ている角都と飛段、リアナとミナとリザイア。

 

「兄さん、さっきのは……一体」

 

サスケが近衛という少女に肩を貸してもらいながら…問う。

 

「さっきの…か?天之御中(アメノミナカ)黄泉比良坂(よもつひらさか)だ。本来じゃあ、この姿で使える代物ではないことだけ言っておく。内にいるマヒトツに頼んで、チャクラの総借りをした結果…できた術だ」

 

「……マヒトツ?」

 

奏が頭をかしげ、「誰だっけ?」という表情になる。

 

「わからないのか?奏のなかにもいるだろうに…」

 

それでも「わかんない」という奏に、俺は深くため息を吐く。

 

「マヒトツ……『天 目 一 箇 神(あめのまひとつのかみ)』、十尾のことだよ」

 

「なるほど、十尾……え?」

 

「え?」じゃなかろうに…。

 

俺はさらに深いため息を吐いた。

 

『主…我は少し寝る。…顕現できる感覚は大よそ覚えた。無理を言ってすまない』

 

そう言いながら、俺のなかに戻っていくムラクモ。

 

『おつかれさん』

 

『…………』

 

何も返事をすることなく、眠ってしまったようだ。

 

「――さてと、穢土転生を使っていた奴を探そうと思ったが……逃げたな、逃げ足が早い」

 

仙術とマヒトツに借りていた残りわずかなチャクラで逆探知をしてみたが…どうやら、探知直後に気がついてトンズラしやがった。まぁ、向こうの人数は二人か。

 

俺は地面に転移魔方陣を展開して、広げていく。

 

全員の足もとに広がるのを確認して、発動させる。…まばゆい光が、視界を白くする。

 

視界が戻ると、そこは先ほどイッセーたちと別れる前にいた首都。

 

「――兄さん!!」

 

近くから声がすると、前方からイッセーたちが歩いて向かってきていた。

 

「終わったか、イッセー」

 

「兄さんこそ、用事は終わった?」

 

イッセーの返事に俺は「まあな」と答えた。

 

そんな俺の横を通り過ぎて、イッセー横にいたオーフィスに抱きつく龍巳。

 

理子と春奈と会話をしている冴子。

 

アーシアを抱きしめるマリア。

 

皆がそれぞれ会話などをはじめ、俺はゆっくりと瓦礫の上に腰を下ろした。

 

「おかえり、イッセー。それと、おつかれさん」

 

「兄さんこそ、おつかれ」

 

イッセーが笑顔で言うが、その表情に陰りがあったので訊く。

 

「何があった?イッセー」

 

イッセーはひとつ間をおいて、口を開いた。

 

「ドライグが、眠っちまって。しばらくは起きそうにないんだ」

 

そう言って籠手を見せてくる。……確かに、籠手の宝玉の光が失われている。

 

すると、いっそう暗い表情をするイッセー。

 

「どうした?」

 

俺の問いに、イッセーは深刻な表情で…、

 

「曹操は倒したんだけど…中間テスト、どうしよう……」

 

そう言ったイッセーに…俺は……、

 

――爆笑した。思いっきり笑ってしまった。

 

「――ハハハ、そんなことだったのか…」

 

「そんなことって、俺は結構悩んでんだ!」

 

ブスッとするイッセーの額を小突いて、言う。

 

「中間か…。俺が時間を作って先生ぐらいはしてやる」

 

その言葉に、「マジ?」というような表情のイッセー。

 

「さて、家に帰ろうか。何事も、それからだな」

 

俺は腰を上げる。前方に広がる破壊された建築物や路面などを背景に、皆が疲れを見せずに会話をしているのを見て…戦闘が終わったのを再確認できた。

 

                    D×D

 

冥界での一騒動から幾日か経ったあと、俺たちは家のリビングである事態を聞かされる。

 

「そ、総督を更迭(こうてつ)された!?マジっスか!?ええええええええええええええっ!!」

 

内容はアザゼルが総督を辞職したと言うことだ。

 

理由はオーフィスをイッセーたちに会わせた件。

 

…まぁ、俺は帰ってきて早々に聞かされていたから知っていたが。

 

アザゼルは耳をほじりながら嘆息する。

 

「うるせぇな。仕方ねぇだろ。うるさい連中に黙ってオーフィスなんざをここに引き連れて来たんだからな」

 

「じゃ、じゃあ、いまのアザゼルの肩書きは……?」

 

イッセーがそう聞くと「うーん」と首をひねるアザゼル。

 

「三大勢力の重要拠点のひとつであるこの地域の監督ってところか。グリゴリでの役割は特別技術顧問だな」

 

監督で技術顧問。前職とほとんど変わらんなぁ……。

 

「……総督から、監督」

 

白音がぼそりとそうつぶやく。

 

「ま、そういうことだ。グリゴリの総督はシェムハザがなったよ。副総督はバラキエル。あー、さっぱりした!ああいう堅苦しい役職はあいつらみたいな頭の堅い連中がお似合いだ。俺はこれで自分の趣味に没頭できる」

 

…肩書きと役職を取り払ったことで、こいつのフリーダムさが増すな…これは。

 

などと、浮かれていたアザゼルだが、書類を三通取りだす。

 

「先日の中級悪魔昇格試験なんだが、先ほど合否が発表された。忙しいサーゼクスの代わりに俺が代理で告げる」

 

事前連絡なく、いきなり合否の発表に……イッセーは慌てていた。

 

「まず、祐奈。合格!おめでとう、今日から中級悪魔だ。正式な授与式は後日連絡があるだろう。とりあえず、書類の面だ」

 

「ありがとうございます。謹んでお受け致します」

 

書類を手に取り、頭を下げる祐奈。

 

「次に朱乃。おまえも合格。中級悪魔だな。一足早くバラキエルに話したんだが、伝えた瞬間に男泣きしてたぞ」

 

「……もう、父さまったら。ありがとうございますわ、お受け致します」

 

赤面しながら書類を受け取る朱乃。

 

二人は無事合格。…あとはイッセーだけだな。

 

発表直前にアザゼルが目で俺を呼ぶ。俺はアザゼルの横に座ると、アザゼルの口角がごくわずかに上がる。

 

……そういうこと。一役買うか。

 

「最後にイッセー」

 

「は、はい!」

 

緊張しているイッセー。俺の死んだ目を見て、表情がいっそう固くなっていく…。

 

それを見ながらアザゼルは言う。

 

「おまえも合格だ。おめでとさん、中級悪魔の赤龍帝が誕生だ」

 

「や、やったぁぁぁあああああっ!!」

 

イッセーは両手をあげて大声を張り上げる。

 

「今日から俺も中級悪魔だ!やったー!マジうれしいっス!!」

 

この一瞬の表情の変化…面白い。

 

「おめでとさん」

 

「おめでとうございます!」

 

「おめでとう!」

 

「おめでとう!」

 

「おめでとうございます。兄さま」

 

「私がマネージャーをしたのですから、当然です!……で、でも、おめでとうございますわ」

 

俺、アーシア、ゼノヴィア、イリナ、白音、レイヴェルが合格したイッセーに賛辞を送る。

 

男泣きして喜ぶイッセーに、アザゼルは指を突きつける。

 

「ていうか、おまえはあの危機的状況から自力で戻ってこられるほどのバカ野郎だからな。おまえの復活劇はすでに上層部の上役連中の間で語り草になってるぜ?何せ、現魔王派の対立派閥は、おまえに畏怖し始めたって話だ」

 

「ど、どうしてですか?」

 

「当然だろう。文字通り、殺しても死なないんだぞ?こんなに怖い存在はねぇだろう?サマエルの毒で死なない上にグレートレッドの力借りて体新調してきて自力で次元の狭間から帰還しただなんてどんだけだ。どんだけだよ!おまえ、本っ当におかしいぞ?頭もそうだが、存在がだ」

 

まぁ、確かに一連の流れを改めて確認すると……おかしいのか…?俺は死んでも蘇えれるし、そこのところの感覚がおかしくなってきているのかもしれないな…。

 

冥界では、偶然現れたグレートレッドと共にルシファー眷属とイッセーが共闘して東側の『超 獣 鬼(ジャバウォック)』を倒したと報道されている。イッセーがグレートレッドと合体したこと一般の悪魔には伏せられている。危機的状態だったことも知らせていないようだ。…俺のほうは、西側の『超 獣 鬼(ジャバウォック)』を召喚魔獣や魔術の類を用いて、暁の全メンバーで倒したと報道されていた。最終形態の須佐能乎とかは、報道されていなかったな…。

 

「ま、おまえの強者を引き寄せる力はもはや異常を通り越して、なんでもござれ状態だからな。もう、あれだ。各世界で悪さする奴らもおまえが倒せ。そうすりゃ俺もサーゼクスも龍介も楽ができる」

 

そう言うアザゼル…。確かに、俺だって楽はしたいさ。

 

イッセーが何かを思い出したようにアザゼルに訊く。

 

「あの、先生、『禍 の 団(カオス・ブリゲード)』――英雄派のその後の動きはどうなんですか?」

 

俺たちが穢土転生の討伐をしているときのことを、あのあと訊いたが…イッセーが曹操にサマエルの毒を詰めた弾丸で倒したようだ。そのときに使ったものもイッセーらしい…ものだったな。

 

「ハーデスや旧魔王派の横やりもあってか、正規メンバーの中枢がやられたからな。奴ら英雄派がおこなっていた各勢力の重要拠点への襲撃も止んだよ。それにおまえらのおかげで正規メンバーを何名か生きたまま捕らえることもできたし、いま締め上げていろいろ尋問しているところだ。曹操たち神 滅 具(ロンギヌス)所有者は……ろくなことにはなっていないだろうな。奴らが体に負ったものはフェニックスの涙や『聖 母 の 微 笑(トワイライト・ヒーリング)』で完治できるほど生やさしいものじゃない。ただ、天界では奴らが保有する神 滅 具(ロンギヌス)の消失が確認されていないため、生存しているのではないかとの見解だ」

 

アザゼルは息を吐きながらそう答える。

 

ヘラクレスとジャンヌは冥界に捕縛。ジャンヌの尋問は全面的に俺に任されていて、ある程度は自供してくれている。

 

「……奪われた、ってことはないのかしら?曹操たち所有者が重傷なら、強力な神 滅 具(ロンギヌス)を横から奪う輩が出てもおかしくないわ。あの集団は派閥が生じていて内部抗争も激しそうだもの」

 

リアスがそう口にする。

 

ふむふむ……そういう考え方もあるな。

 

アザゼルもリアスの意見にうなずいている。

 

「まあ、その線が浮かぶってことになるよな。……そうだとして、俺が考える最悪のシナリオが今後起きないことを願うばかりなんだが……」

 

アザゼルが険しい顔つきで何かを考えている……だが、途端に苦笑いする。

 

「ま、あいつらの最大の失点はおまえらに手を出したことだな。見ろ、奴らを返り討ちにしやがった。成長率が桁違いのおまえらを相手にしたのが英雄派の間違いだ。触らぬ神に祟りなしってな。あ、この場合は触らぬ悪魔に祟りなし、かな?」

 

「腫れ物のように言わないでくださいよ!俺たちからしてみれば襲い掛かってきたから応戦していただけです!なあ、皆!」

 

イッセーが皆に訊く。

 

「そうだな、修学旅行で襲撃してきた恨みは大きい」

 

「ミカエルさまのエースだもの!襲ってきたらギチョンギチョンにしちゃうわ!」

 

「……来たら潰す。これ、最近のグレモリーの鉄則ですから」

 

「私が上級悪魔になるためのポイントがあちらから来てくれているのではないかと最近思うようになりました。このメンバーで戦う分には強敵来襲が美味しいですよね」

 

…触らぬ悪魔に祟りなしじゃん、これ。

 

あ、プラス天使もだな。

 

皆の意見を聞いてアザゼルが豪快に笑う。

 

「さすがグレモリー眷属だ!こりゃそのうち伝説になるぞ。『奴らにケンカを売ったら生きて帰れない』――とかよ」

 

俺はメモを取り出して、アザゼルの言葉を書き留める。

 

アザゼルの冗談にリアスが嘆息する。

 

「私たちは怨霊や悪霊ではないのよ?変な風に言わないでちょうだい」

 

「うふふ。けれど、実際襲われたらやっちゃうしかありませんわ」

 

朱乃は微笑みつつSの表情を見せている。

 

アザゼルは話を続ける。

 

「だがな、『禍 の 団(カオス・ブリゲード)』はまだ活動をしている。一番大きい派閥『旧魔王派』と二番めに大きい派閥『英雄派』も幹部を失い活動停止したと見ていい。三大勢力の裏切り者もある程度粛清が済んだ。だが……それでも俺たちの主張に異を唱える奴らはそこに残っている。ふたつの派閥の陰に隠れていた連中も浮上してくるはずだ」

 

そうだったな…魔女の派閥もあったし、イッセー…いや、ドラゴンの強者を引き寄せる力は相当なものだからなぁ。

 

アザゼルは部屋の隅に視線を送る。

 

「とりあえず、元ボスの二人がこっちにいるからな」

 

俺たちもアザゼルの視線の先に目を向けると――そこにはボケェーとしているオーフィスを膝の上に乗せて抱きしめている龍巳の姿がある。

 

イッセーと目が合ったオーフィスは言う。

 

「我、ドライグと友達」

 

「俺、ドライグじゃなくて、兵藤一誠って名前があるんだよ……。友達は俺のことを『イッセー』って呼ぶんだ」

 

「わかった。イッセー」

 

即答したオーフィス。相変わらず、十五年前の龍巳とのやり取りを思い出したぞ…。

 

「俺の呼び方はそれでよし」

 

イッセーとオーフィスのやり取りを見ていてアザゼルがこう言う。

 

「言っておくがイッセー、おまえが将来上級悪魔になったとしてもオーフィスは眷属にはできないぞ。理由は話さなくてもわかるな?」

 

「はい、オーフィスはここにいないことになっているから、ですよね?」

 

そう、オーフィスはこの場にはいるが、世間的には龍神は龍巳しか存在しないことになっている。

 

曹操に奪われたオーフィスの力が、現在の『禍 の 団(カオス・ブリゲード)』にとっての「オーフィス」となっている。

 

アザゼルが続ける。

 

「そいつはテロリストの親玉だった奴だ。いくらこちら側に引き込めたからといって、それを冥界の連中に知られてはまずい。現にそいつの力は幾重もの封印を施して、ちょっと強すぎるドラゴン程度に留めてある。というよりも神格クラスは『悪 魔 の 駒(イーヴィル・ピース)』の転生対象外だったはずだ。半神のヴァルキリーは可能だったようだが」

 

龍巳がほんのわずかずつだが、オーフィスに力を流していると本人から聞いている。

 

「『禍 の 団(カオス・ブリゲード)』に奪われたオーフィスの力がどうなるか、それが気になるところですね」

 

祐奈がそう口にする。俺もそのことは気にしていた。

 

アザゼルが言う。

 

「……それは俺を含め、事情を知っている連中のなかでも意見がわかれているな。ただ、そのまま計画が進行しているって意見だけは一致している。……どんな形になろうとも近いうちに(まみ)えるかもしれない。それだけは覚悟しておけ」

 

うなだれるイッセーだが、リアスは話題を切り替える。

 

「いつ来るかわからないものに対する備えも大事だけれど、私の当面の目的は三点。一点はギャスパーね」

 

リアスの視線がギャスパーに注がる。慌てるギャスパー。

 

……例の件だな。聞いた話にあったが、多分そのことを踏まえたものだろう。

 

リアスが続ける。

 

「いままで他の事情が立て込んでいて静観していたけれど、あれを切っ掛けにそろそろ本格的にうかがってもいいと思ったわ」

 

「と、言いますと?」

 

イッセーの問いにリアスはうなづく。

 

「――ヴラディ家、いえ、ヴァンパイアの一族にコンタクトを取るわ。あのギャスパーの力はきちんと把握しなければ、ギャスパー自身――私たちにもいずれ(るい)を及ぼすでしょうね」

 

「……す、すみません。ぼ、僕にそのような力があったなんてまったく知らなくて……この眼だけが問題だと思っていたものですから……」

 

ギャスパーが恐縮しながらそう口にしている。

 

ヴァンパイアか……セルベリアの経営している旅館で働いている奴がいたな。冥界の騒動のとき、俺がヤミを遣って呼び出したけども。いまは旅館で働いているんだろうな…。

 

「ヴァンパイアもいま内部で相当もめている。……閉鎖された世界だが、だからこそ変な事情に巻き込まれなければいいんだが」

 

アザゼルが嘆息しながらそう言う。

 

「ご、ご迷惑おかけします……。で、でも……家のヒトとはあまり……」

 

ギャスパーが言葉をつぐんでしまう。

 

ギャスパーもギャスパーで複雑な事情を抱えている。

 

朱乃があごに指をやりながらリアスに言う

 

「ギャスパーくんのことと、あとは魔法使いかしら?」

 

リアスはうなずいて続ける。

 

「そうよ。そろそろ魔法使いから契約を持ちかけられる時期でもあるの」

 

「それって、本とかに書かれてる魔法使いとの関係性とかいうやつですか?」

 

イッセーが訊く。

 

リアスが首を縦に振る。

 

「ええ、そうよ。魔法使いは悪魔を召喚して、代価と共に契約を結ぶ。私たちは必要に応じて力を貸すの。一般の人間の願いを叶えるのとはちょっと様式が違うわね。名のある悪魔が呼ばれるのが常だけれど、若手悪魔にもその話は来るわ」

 

「俺たちにも話が来るってことですか?」

 

イッセーの問いにリアスがうなずく。アザゼルが紅茶をすすると話を続ける。

 

「先日、魔術師の協会が全世界の魔法使いに向けて若手悪魔――おまえたちの世代に関するだいたいの評価を発表したようだ。奴らにとって若手悪魔の青田買いは早い者勝ちだ。特に評価が高いであろうグレモリー眷属は格好の的。魔王の妹たるリアスをはじめ、赤龍帝のイッセー、聖魔剣の祐奈、バラキエルの娘で雷光の巫女である朱乃、デュランダルのゼノヴィアなどなど、そうそうたるメンツだ。――大挙して契約を持ちかけられるぞ?契約する魔法使いはきちんと選定しろよ?ろくでもない奴に呼ばれたらおまえたち自身の価値を下げるだけだからな」

 

立て続けにアザゼルが俺に「いちおう、おまえらの契約もあるかもしれないぞ」とか言うもんだから、俺は額に冷や汗をかいてしまった。……魔術師でいい話がこれっぽっちもないんだよな、俺。

 

鼻の下を伸ばしていたイッセーの頭をリアスが軽く叩く。

 

「――と、リアスがしめをする前に俺から一つ報告がある。……サスケと美柑の二人には駒王学園に通ってもらうことになった。サスケ、美柑」

 

リビングのドアを開けてなかに入ってくるサスケと美柑。その服装は、駒王学園のものだ。

 

「……兄さん、こんな感じでいいのか?」

 

サスケが若干顔を赤くして俺に訊いてくる。

 

「いいと思うぞ。最初のイメージが大事だからな、そういうのは」

 

「そうか…」

 

サスケは不満そうに首もとをいじろうとする。

 

「美柑は…よく似合っているな。編入日には特殊なコンタクトを用意しておく。目のことは気にしないでいい」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

おさげの髪を揺らして頭をさげる美柑。

 

「それとだが、サスケと美柑はここではなく、ギャスパーと同じマンションに住むこととなった。部屋はふたつ。さすがに相部屋はいろいろと問題があるから…と、俺が言っても仕方ない上に、強引に入るな…美柑が」

 

サスケを見つめる美柑の目が怪しすぎるな……。

 

「がんばれ、サスケ。いろいろと大変かもしれないが」

 

「あぁ」

 

首もとを緩めたサスケは、「ふぅ…」と深く息を吐く。

 

「以上だ。リアス、三つ目の点は何だ?」

 

俺がそう言うと、リアスはイッセーのほうを向いて言う。

 

「ところでイッセー。試験前に約束したこと覚えているかしら?それが私の当面の目的の最後の一点なのだけれど?」

 

リアスはほんのりと頬を赤く染めていた。

 

「リアス、今度の休日、デートしましょう」

 

イッセーの答えにリアスは満面も笑みを見せていた。

 

……やばいぞ、この流れ。

 

俺は冷や汗を一筋流した。こういうときの流れは、決まって面倒なんだよな。

 

そっとソファから抜けるように這ってリビングから離脱しようとしたが、後方から放たれてきたものに足が止まる。

 

「…………」

 

俺は油切れのロボットのように首を後方へ向ける。すると、そこには――、

 

「どこに行こうとしてるのかな…リュースケ?」

 

満面の笑顔で一歩ずつ迫ってくるハティ。その後ろにはスコル、メイル、スバル………。

 

ゾンビのように、目を光らせて迫る集団が目の前に!!

 

『デート行こうよ…デート行こうよ…デート行こうよ…デート行こうよ…』

 

声がハモって怖っ!!何に感染したんだ?デート病か!?

 

俺は立ち上がりと同時に振り返ってダッシュをする!

 

ゴンッ!!

 

見えない壁――結界に額を打ちつけちまったぁぁぁ!!

 

この結界は…まさか!

 

「リ、リエ!!」

 

「あらあら~、逃げるのは卑怯ですよぉ~。リュースケさ~ん」

 

おっとりとした口調で右手を突き出しているリエ。指先には、赤い光が灯っていた。

 

……に、逃げられねぇぇぇ!!

 

「おい、ちょ…、助けろ!」

 

俺の声は虚しくも……ルリエルたちの波に飲み込まれていった――。

 

……後日、俺は時間がある限り、メンバーの女子どもと連日でデートをすることとなった。

 

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